インボイス制度に備える

2年後の令和5年10月1日から消費税のインボイス制度が始まることに先立ち、いよいよ来月から適格請求書発行事業者の登録申請手続きが開始されます。

現行の制度では外注先や仕入先が消費税の免税事業者でも課税事業者に対して支払った場合と同じ処理が可能ですが、インボイス制度が始まると登録事業者以外への支払では原則、消費税分を納税額から差し引くことができなくなります。

簡単に言えば、登録事業者になっていない外注先や仕入先に現在と同額で支払をすれば、その支払額の概ね6~8%程度、皆さんの会社の納税額が増えてしまうのです。

理屈としては、売上高が1000万円以下で消費税の免税事業者である外注先等にも登録事業者になってもらうように促し、さもなければ今後は取引しないと言えばいいだけですが、現実はそれほど単純ではありません。

地方においては特に、地元の外注先や仕入先が個人事業の消費税免税事業者で、今でも手書きの請求書・領収書でやり取りしているということが珍しくありません。

こうした事業者にも登録申請を行ってもらえばいいのですが、例えば直接の仕入先である農業を営む高齢者に対して消費税の申告納税義務を強いたうえで、仕入れの都度、適格請求書(インボイス)の発行を求めることには現実的に無理があります。

それでも2年後にはこの制度が始まってしまう以上、フリーランスなど小規模な事業者と取引がある企業は、これに備えておかなければなりません。

欠かすことのできない小規模な外注先、仕入先等が2年後に登録事業者にならなくても、今まで通り取引を続けることを前提とした場合に考えられる対応は2つです。

(1) 自社の税負担が増えてしまうことを受け入れる。
(2) 登録事業者にならない取引先には、インボイス制度開始後は消費税相当額を
  支払わないことを話しておく。(実質、値下げの交渉)

自社にとっては(2)を選択すれば、納税額が増えることはありませんが、免税事業者である取引先にとっては単純に売上・利益の減少となってしまいます。

いずれにしても、登録申請が始まるこのタイミングで取引先にそれとなく登録予定の有無について確認を取るとともに、インボイス開始後の影響を視野に入れて、今後の外注・仕入価格の改定に気を配った対応を考えておく必要があります。

業種によっては、小規模事業者との取引が不可欠であることが少なくなく、地元で共存していくためには杓子定規に登録申請を強いることも、値下げを強いることもできない場面が多々あることは想像に難くありません。

制度開始直前での交渉等は取引先との信頼関係を壊してしまいかねません。
自社に起こる影響を今から理解し、しっかりと意図を持って準備をしておきましょう。

エー・アンド・パートナーズ税理士法人

ベストセラー多数の人気税理士岡本吏郎が主催する税理士法人。 マーケティングコンサルタントでもある岡本吏郎を中心に、東京・新潟事務所には、専門知識と実務経験の豊かなスタッフが在籍。 全国の中小企業経営者が独自ノウハウを支持。