加速する世界

新型コロナにより自粛を余儀なくされ、活動が再開された現状というのは、以前とは異なる世界です。

たとえば飲食店の座席は間引きされて半分程度しか座れません。しかし、未来のどこかでお客様が半分しか入らないという状況が到来してもおかしくはないはず。

いまはその未来にまで一気にワープした世界を体験しています。そこから徐々に現在まで戻りつつありますが、新型コロナ以前の世界までは戻れません。

いま体験している、お客様が半分しか入らないという状況…。では今後、飲食店はテイクアウトや宅配を増やせばよいのでしょうか?

もともとお店で提供されていたものを、テイクアウトや宅配で食べても美味しいと感じないのは皆さま共通の認識のはず。その上、宅配はウーバーイーツを中心にプラットフォーマーが大きな利益を持っていきます。

味の評価は落ちるし、利益も取れない…。

そもそも新型コロナ以前、飲食店の傍ら、テイクアウトや宅配まで手掛けて儲かっていたお店はどれほどあったのか?

残念ながらほとんどありません。儲からないのに、それでも周りがやっているからやるということが常態化していました。

さらに、宅配「専業」の代表格である宅配ピザは儲かっていたのか?

残念ながら儲かっていません。
業界首位のドミノピザが何とか利益を出していたという程度です。

つまり、飲食か、テイクアウトか、宅配かではなく、上手くポジションを取れるお店のみが利益を出せるというシンプルな事実。

とても残念ですが美味しいお店が生き残るわけではありません。

新型コロナは、皆が同じようにやっていることを同じように、しかも丁寧にやっても儲からないということを改めて気付かせてくれました。

いま過分なほどに行われ、まだまだ止まない国の支援は、前年よりも売上が下がっていることを前提としています。

売上の底である当年に比べて、来年の売上が下がるのでしょうか? 売上が前年比で下がらなくなる1年後、基本的には国の支援は受けられなくなると考えてください。もし、1年後、自社の状況が改善していなければ金融機関の対応も淡泊になってきます。

そして、問題は「いま」だけではありません。

最大の敵はコロナ渦でさらに加速しそうな人口減です。ときどき災害も起こります。

ダメ押しは、早ければ3年後以降に行われると考えられる「容赦できない増税」。所得税、相続税と少しずつ上がるでしょうが、焼け石に水。本丸はやはり消費税。いつになるかは分かりませんが、当初想定していたよりもかなり早く消費税率15%以上が実現しそうです。
(もし増税を口にできない状況だったら日本経済は死んでいます)

新型コロナが無ければ、多くの企業は地獄に向かいながらも自転車をのんびりこいでいる状態でした。地獄に向かっていることに気付いていても、止めることはできませんでした。

しかし、世界は一気に加速しました。
すでに地獄に足を踏み入れています。
地獄に来てしまったからには、転がるスピードは今までの比ではありません。

いまの状態のまま、売上から経営を考えてはいけません。絶対に。

新型コロナで一つ良いことは、経営者を強制的に立ち止まらせ、自社の行く末について考える必要性を気付かせ、考える時間を与えたことです。

繰り返しますが、飲食店の例のように、周りと同じことをやってもダメなのは皆さまもお気付きのとおり。ただ、誰をお客様とすべきか?という点について明確になっている企業は驚くほど少ない(これもしつこく繰り返しています)。

「私たちのお客様は誰か?」を本当に明確にしたときに、売上の規模が決まります。もしかしたら、1億円が限界かもしれないし、100億円まで届くかもしれない。それに比べれば、新型コロナの影響により一時的に売上が下がる、上がるなんてどうでもよいことです。

あとは、明確となったお客様と出会い、継続的にお付き合いすべく仕組みを整え、競合よりも早く実行するだけ。

収益性の向上を図るというのは、技術的な部分(私どものような立場からの技術という意味)もありますが、そのほとんどはお客様を明確にするというところから始まります。

世界は加速しています。

しかし、売上をいち早く戻すことを優先する前に、考える時間があるいまこそ、一度立ち止まってください。

売上が元に戻ってしまったら、何かを変えることは逆に難しくなりますので。

エー・アンド・パートナーズ税理士法人

ベストセラー多数の人気税理士岡本吏郎が主催する税理士法人。 マーケティングコンサルタントでもある岡本吏郎を中心に、東京・新潟事務所には、専門知識と実務経験の豊かなスタッフが在籍。 全国の中小企業経営者が独自ノウハウを支持。