問題が起きてからでは遅いと分かる、勤労統計問題

勤労統計問題がメディアを賑わせていますが、おそらく誰もが「どうでもよい…」と思われていることでしょう。

国家としての問題は大きいといえども、私たちへの影響は皆無…。しかし、気にされている方も多いと思われるのが、この問題の原因が「忙しい」にあると報道されている点です。

では、実際はどうなのかと調べたところ以下のような資料がありました。

*引用:霞が関国家公務員労働組合共闘会議
「中央府省等に働く国家公務員の第26回残業実態アンケート(2017年1月から12月の1年間)の結果について」

まず、結論部分から引用します。

霞が関に働く国家公務員は(1)月平均 33.0 時間の残業をし、(2)58.3%の人が休日勤務をしており、(3)退庁時間が 23 時以降が 9.7%、(4)6.3%が過労死ラインで働いていて、(5)過労死の危険を感じた者が 28.0%、(6)「体調不良」「薬等の服用」「通院加療中」32.2%、(7)「からだの具合が悪く休みたかったが、休めなかった」人が約半数の 45.7%に達していることなどから、霞が関の中央府省の過酷な勤務実態が組合員等の尊い生命を奪いかねないという危機的状況にあることを示しています。

そして、その残業の要因のアンケート結果が以下です。

この中でも厚生労働省は残業時間が突出しているらしく、月平均の残業時間は50時間超とのことでした。

このデータはあくまで労働組合の組合員のアンケートを基にしている…ということを考慮しつつも、各部署の中心で働く方の実態はもっとひどいと想定できます。

そう考えると「なるほど、これは大変だ…」と同情できる部分はあるかもしれません。児童虐待問題で揺れる児童相談所の対応も労働同問題と合わせて考えると、他人ごととは思えません。

経営者の皆さまからすれば「忙しいを理由に自社でこんな仕事をされたら困る!」と言いたいところではありますが、自社で大きな問題が起きた際、その背景にこのような労働実態があったとしたら、これを放置していた経営者の責任ということになってしまいます。仕事ができないとか要領が悪いとか言っても始まりません。

働き方改革や生産性の向上など、実際は名ばかりなのです。旗振り役の自己満足に過ぎません。

形だけの改革を進めたとしても、現実問題として必ずどこかで歪みが生じてしまいます。結局はそれがいつ露呈するのかというタイミングの問題だけで、それまでは現場が巧妙に隠ぺい工作をつづけます。

今回の統計問題も、全数調査が理想であるとはいえ、現場として対応ができないのであれば抽出調査しかあり得ません。

結局、労働力と業務量が一致していなければ必ず仕事は破綻するということを、働き方改革を主導するはずの厚生労働省がみごとに証明してくれました。

こういうことを自社にて客観的に判断することはとても難しいことですが、自社の労働時間を改めて把握したり、間接的な調査になるとはいえCUBIC等で社員のアンケートを取る方法もあります。

問題が起きてからの対処では遅いのですから、皆さまの会社もまずは現状把握から始めてください。社内アンケートを取るのはとても怖いですが…。

人手不足はこのまま続くのか?

私が見る限り店員はわずか3名でした。
1月初旬に私が訪れた300坪を超えるGUの大型店舗です。
ご存知のようにGUはファーストリテイリングの完全子会社で、ユニクロより低価格なカジュアル衣料品を販売することで知られています。
今回私は、近所にあるGUで導入されているセルフレジがすごいという話しを妻から聞き、遅ればせながら「どれどれ」と実際に体験しに行くことにしました。
米のアマゾン・ゴーや中国を始め、日本でも無人コンビニの実験店舗などが話題になっていますので、それに比べればあくまでも「セルフレジ」と、高を括っていました。
しかし、正直かなりの衝撃を受けてしまいました。
今までのセルフレジとは比べ物にならないほど簡単で、しかも圧倒的に早いのです。
買い物客は購入したい商品を買い物かごに入れ、セルフレジ手前でシャツやニットにかけられていたハンガーを外し、そのまま買い物かごごとレジの下にあるボックスに入れてボックスのドアを閉めます。
すると一瞬にしてボックス内の商品についたICタグが読み取られ、レジ画面に商品と価格が表示されます。そして現金を入れるかクレジットカードをスキャンするだけ。
あとはドアを開けて買い物かごを取り出し、用意されている袋に商品を自分で詰めて終わりです。
デニムなどパンツ類をレジが認識すると画面で裾上げの有無を尋ねられます。
裾上げを選ぶと引換券がレシートと一緒に出力され、この時だけレジ付近にいるスタッフが近寄ってきて、その時の込み具合によって仕上がりの時間を記入してくれます。
文章だと伝わりづらいかもしれませんが、スーパーで品物1つ1つを自分でスキャンするセルフレジとは全く異なり、レジ下にあるボックスにかごごと商品を入れるだけで、一瞬にして複数の商品を読み取るこのセルフレジ、とにかく「すごい」の一言でした。
有人レジと比較して精算所要時間は最大で約3分の1に短縮されたそうです。
現在、業界を問わず人手不足は中小企業にとっても大きな問題となっています。
採用は困難を極め、私達の感覚とはかけ離れた賃金と、人材紹介会社への高額なフィーを支払わなければ採用ができなくなってしまいました。
しかし、その一方で、私たちの想像をはるかに超えたスピードで進化する世界。
皆さんはこの相反するとも捉えられる2つの現実をどう考えるでしょう。
GUではデニムなどを除いて、シャツやニットなどは全てハンガーにかけてあるため、お客様が手に取った商品を畳んで戻すスタッフは基本的に見当たりません。
300坪を超える大型店舗で目にしたのはセルフレジの利用をサポートするスタッフ1人に、試着室の横で裾上げ対応をするためのスタッフが2人、計3名でした。
しかも、このセルフレジ2015年5月には試験導入が開始され、既に2017年8月には全国GUの約半数の176店舗に設置されています。
私たち中小企業は税制も含め、常に様々な変化に対応していかなければなりません。
言わば「変化対応業」である我々は常に変化に対して敏感である必要があります。
経営者によって、目の前の変化をどう捉え、どう考え、どう動くか、または動かないかは異なるでしょう。
もちろん正解は分かりません。
インターネットで調べれば動画も見られますが、まだGUのセルフレジを体験していない方は、セルフレジが導入されている店舗へ足を運び、ぜひ自ら体験してみてください。
きっと多くの方の感覚が刺激され、様々なことを考えさせられるきっかけになるはずです。