『税理士セカンドオピニオン』再登録のご案内

いつもメールマガジン『税理士セカンドオピニオン』をお読みいただき、ありがとうございます。

今回は『税理士セカンドオピニオン』再登録のご案内となります。

前身のメールマガジン『裏帳簿のススメ』の配信開始から18年ほど。これまで私どもは中小企業経営者のお役に立てるよう、他の税理士では語られない切り口で情報をお届けしてきました。また、業界初の税理士によるセカンドオピニオンサービスを開始するなど、微力ながら一定の役割を担ってきたとも自負しております。

しかし、SNSを中心に、税理士による情報提供が当たり前になってきた現在、私どもが啓蒙活動を行う必要性はなくなりました。そして、中小企業の経営環境が激変する中、不特定多数の方に好き勝手書いた内容を一方的にお届けする弊害も感じておりました。

過去に何度か配信名簿の整理を行ってまいりましたが、現在でも数千件に配信しております。そのため、当社のお客様、あうんの会員様を除けば、どのような方にお読みいただいているのか分からない…というのが正直なところです。

そこで、今後はご登録者の属性を踏まえたうえで、これまで以上に提供情報に責任を持ち、本当に中小企業経営に飢えている方々にお届けしたいと考えました。これはコロナ禍での心境の変化でもあります。

つきましては、今年3月末までをメールマガジン『税理士セカンドオピニオン』の再登録期間とさせていただき、4月からは再登録者のみに配信させていただきます。

今回から「お名前」、「メールアドレス」のみならず、「生年月日」、「会社名」、「業種」、「役職」、「会社住所」の登録が必須となります。

とはいえ、私どもの基本スタンスが変わるわけではありません。これからも好き勝手言わせていただきます。それでも配信をご希望の場合は以下のフォームより再登録をお願いいたします。

 

『配信の再登録はこちらから』

 

なお、今後の配信数によって配信管理コスト程度の有料化を検討しております。予めご了承ください。

引き続き『税理士セカンドオピニオン』をよろしくお願いいたします。

贈与のセオリーが変わる

ご存じのように昨年12月23日に与党税制改正大綱が閣議決定されたことで2023年度の税制改正の大枠が固まりました。

コロナ直前の平成31年度税制改正以降、非常に小粒な改正が続いてきましたが、コロナ過で行われてきたバラマキがついに本格的な回収の段階に移行しそうです。とはいえ、先送りされた案も多く、今回は中小企業経営に直接大きな影響を与えるような改正はそれほどありません。

個人的に最も驚いたのは贈与税の相続時精算課税制度の見直しです。
詳細はこれから詰めていくことになりますが、税制改正大綱を読む限りは、これまでの贈与のセオリーを覆すかもしれない内容になっているのです。

前提として、事前の報道で概ね明らかになっていた生前贈与加算制度の見直しから確認しておきましょう。

ご存じのように暦年贈与とは、1月1日から12月31日までの1年間(暦年)で、贈与額が110万円以下ならば贈与税がかからないというしくみを用いた贈与方法を言います。110万円を超える部分に関しては贈与額に応じて贈与税がかかることになります。

亡くなる直前で「相続税逃れ」のために行われる駆け込み贈与を防止するため、見直し案では暦年贈与において、贈与を受けた日から7年以内(現行は3年以内)に贈与者(あげた人)が亡くなってしまった場合には、その生前贈与はなかったものとみなされ、贈与済みの財産が相続財産に加算されて相続税の課税対象となります。ただし、延長する4年間に受けた贈与については総額100万円までは加算されません。

『生前贈与加算』

改正後は贈与者の死亡から遡って7年間に行った贈与が相続税の計算対象となるため、贈与による節税効果が減少することは間違いありません。

次に相続時精算課税制度の概要を確認しておきましょう。

【相続時精算課税制度とは】

60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子・孫への生前贈与について「相続時精算課税制度」の適用を選択した場合に累計2500万円までの贈与について贈与税が非課税になり、2500万円を超える贈与については一律20%の贈与税がかかります。
制度選択した贈与者が亡くなった際には、贈与を受けた額全てが相続財産に加算されて相続税が計算されるため、基本的に節税対策には使えませんが、子や孫へ早期に財産(例:家賃収入を生む不動産など)を移したい場合に効果的です。

相続時精算課税制度については「利便性を高める」という趣旨での見直しが事前に報道されていましたが、私たち専門家が予測していたものとは大きく異なる内容でした。

現行では相続時精算課税制度を選択すると、その贈与者からの贈与については、それ以降110万円の基礎控除は使えなくなりますが、改正案では毎年110万円以下の贈与については課税されず、申告も不要になるというのです。

『相続時精算課税』

暦年贈与では相続開始前7年間の贈与が相続財産に加算されることになるのとは対照的に、相続時精算課税制度を選択すれば、驚くことに相続開始直前でも年間110万円までの贈与は相続財産に加算されない案になっています。

であれば、贈与者(あげる人)がある程度高齢になった時点や、病気などにより残された時間がそう長くないと予測された時点で相続時精算課税制度を選択するという新たなセオリーが生まれます。制度の対象となり得る子や孫が多いほど、非課税の枠が大きく使えることになります。

詳細が決まるのはこれからですので、現時点では分からない部分はありますが、節税対策としての今までの贈与のセオリーを覆す改正となりそうです。

事業承継や相続対策を必要とする中小企業経営者にとって、贈与税の改正は長期的な戦略として重要な内容ですので、詳細の行方には是非ともアンテナを張っておいてください。

今年も中小企業経営者の皆様の経営に役立つ情報を発信していきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願い致します。

お金の増やし方について考える

なんと、目玉は『NISA』でした!

もちろん2023年度の税制改正大綱の件。経営者の皆さまに関係が深い法人税・所得税は無風とお考えいただいて結構です。

岸田首相が当初掲げた「令和版所得倍増計画」は曖昧なままですが、実際に所得を倍増するにはGDPを凄まじい勢いで上げなければならず、夢物語でした。

今度は「資産所得倍増計画」を掲げています。「貯蓄から投資へ」が合言葉ですが、これがお金について考える機会になるのであればとても良いことです。

では、早速考えてみましょう。

たとえば貯蓄1,000万円を投資、複利で運用。これを倍にするには利回り10%で8年掛かります。5%では15年、3%では24年。なかなか大変です…。

これが100万円でも1億円でも同じ期間が掛かるため、投資額が多い方が有利なのは言うまでもありません。

投資額を増やすためには貯蓄を増やす必要があり、結局は所得を増やすしかありません。なんと、所得倍増計画に戻りました!

所得を倍にする場合も理屈は同じです。年収500万円を倍にするには毎年10%の昇給で8年。5年で年収を倍にするには毎年15%の昇給が必要となり、これもなかなか大変です…。また、収入が増えても支出が増えれば、貯蓄は簡単には増えません。

最後に、これを企業経営で考えてみましょう。

内部留保1億円を倍にするには…。平均経常利益1,000万円を倍にするには…。結局は成長率に応じ、成長率が低ければ時間を掛けるしかない。すべて同じ結論です。

いわゆるスタートアップ企業は成長率20%、30%と高いレベルを求め、さらに複利効果を活かすべく資本をかき集めて投資を続けます。基本は赤字ですが、ばくちと同じですから当然のようにチップを積み上げます。外部から投資を受け、借入も保証が外れれば経営者個人としては痛くもない。ばくちを行いやすい環境も整ってきました(スタートアップへの投資に関する税制も整備されています)。良し悪しを別にすれば理屈どおりです。

いずれにしても、内部留保を目標額にまで引き上げるためには成長率と期間の掛け合わせが必要であり、期間を区切ることで必要な成長率が決まります。

「10年後に会社を10億円で譲渡したい」ということであれば、現在地から成長率で計画を立てられます。

なるほど、企業経営に置き換えてもお金について考えることは重要だということが分かります。

なお、国は学生に向けて金融教育の推進を始めています。ただし「貯蓄から投資へ」の前に「消費から貯蓄へ」の教育も改めて必要ではないでしょうか。

経営者の皆さまは、むやみに売上高を増やすよりも、ムダな費用を削った方がお金が貯まることを身をもって経験されているはず。

支出を抑えて収入を増やすからこそ、投資に回せるだけの内部留保が増えやすくなるのです。そして貸借対照表や損益計算書、その他の経営数値を用いて企業経営を正確に管理し、計画する…という当然の話に戻ります。

結局、「貯蓄から投資へ」がそのまま資産所得倍増「計画」になる訳ではありません。まず、これだけ増やしたいという具体的な目標があり、いつまでにと期限を決め、実際に行動する。あとは行動しながら目標に向かって軌道修正するしかありません。投資でも企業経営でも構造は同じです。

2023年に向けて、皆さまもお金の計画を立ててみてください。

以上、本年も『税理士セカンドオピニオン』をお読みいただき、ありがとうございました。
2023年が中小企業経営者の皆さまにとって良い年となるようお祈り申し上げます。

生前贈与

今週中にも公表される令和5年度税制改正大綱で、どうやら生前贈与加算が現在の3年から7年になりそうです。

ご存じのように、現行の生前贈与加算は「贈与を受けた日から3年以内に贈与者(あげた人)が亡くなってしまった場合には、その生前贈与はなかったものとみなされ、贈与済みの財産が相続財産に加算されて相続税の課税対象となる」制度です。

亡くなる直前で「相続税逃れ」のために行われる駆け込み贈与を防止するためのもので、この加算期間が7年になれば贈与者の死亡から遡って7年間に行った贈与が相続税の計算対象となるため、贈与による節税効果は大きく減少します。(延長する4年間に受けた贈与は総額100万円までは相続財産に加算しない案のようです。)

ただし、先に納めた贈与税は相続税から差し引くことができますので、2重に税金がかかることはありませんし、相続(遺贈)によって財産を取得しなかった者(例えば孫)への贈与が相続財産に加算されることもありません。

今回の生前贈与加算の改正案については「課税負担が重くなる期間を長くすることで、早い時期からの生前贈与を促し、子育て費用などが必要な若年層への資産移転が進みやすいようにする」ことが狙いだと説明しています。(本音は課税強化が狙いに決まっていますが)

基本的に節税だけを目的とした贈与には弊害が多いこともあって賛成しないことも多いのですが、早い時期から相続について考え備えることには賛成です。相続の準備は、なにも税金対策に限りません。

特に中小企業経営者の事業承継を考えた場合には、早くから贈与を使った対策が効果的に機能します。ものごとの結果の八割は準備で決まります。

世間のイメージとは異なり、財産がそれなりにある方の相続で揉めることは実はあまりありません。相続する側もされる側も、早い時期から対策の必要性を認識して感情の問題にも配慮しながら周到に準備を進めていくからです。

一方で「うちは揉めるほどの財産はないから」「兄弟みな仲が良いので大丈夫」と言って何も準備していない家庭ほど危うかったりします。

相続は一部のお金持ちだけの話しではありません。財産の額が少なくても必ず相続は発生します。財産も債務も誰かが引き継ぐのです。

家族の死が目の前に迫ってから初めて行われる話し合いでは、逝く側も残される側も冷静さを欠き、それぞれの想いがよりストレートに色濃く全面に出てきがちです。

人の感情はとても複雑です。差し迫った場面で行われる財産の話しには、本人はもちろん、周囲の感情も激しく揺り動かされることになります。とっくに忘れていたはずの昔の記憶もよみがえります。

家族の死を目の前にしての負の感情のぶつかり合いは、やり切れないほど悲しく切ないものです。

互いの感情に寄り添った争いのない相続とするための準備は「まだだいぶ先のことだけど・・」くらいの時期から始めてちょうどいいのです。

贈与の利用価値は節税だけに限りません。もし、個々の感情にも配慮した望ましい形で活用できるのであれば、結果として相続の際に加算の対象となってしまったとしても、それ以上の意味があるはずです。

今年も残すところあとわずか。

今年の贈与は、もうお済みですか?

経営者保証というラベル

今月、経営者保証を“実質的に制限”する改正案が金融庁から発表されました。

金融機関による中小企業向け融資に対する監督指針の改正であり、2023年4月から予定しているようです。

もちろん朗報です。

経営者保証に実質的な意味はありませんでした。しかし、いままであったものが無くなるということはトレードオフも発生するため、注意が必要になってきます…。

まず、平成25年に経営者保証のガイドラインが公表され、以下の3要件を充たせば「経営者保証なしで融資を受けられる可能性がある」、または「すでに提供している経営者保証を見直すことができる可能性がある」とされました。

【1】 資産の所有やお金のやりとりに関して、法人と経営者が明確に区分・分離されている
【2】 財務基盤が強化されており、法人のみの資産や収益力で返済が可能である
【3】 金融機関に対し、適時適切に財務情報が開示されている

ただし、あくまでガイドラインですから拘束力はありません。直近の中小企業向けの新規融資における経営者保証の割合は約7割とのことですから、有効に機能しているとは言えません。

金融庁はここにメスを入れます。

今後、金融機関が経営者保証を求める場合には、上記の3要件を踏まえ、具体的にどの部分が十分ではないのか、どこを改善すれば経営者保証の変更・解除の可能性が高まるのかを説明し、その旨を記録する義務を課すということです。

これまで金融機関は定量的な判断基準を示さずに経営者保証を求め、経営者はこれを受け入れるしかありませんでした。一方、ガイドライン公表以降は、経営者がゴネたら簡単に外れたということもありました。つまり、本来は経営者保証が必要ではない中小企業に対しても、一律に経営者保証を求めていたケースが多くあったということです。

今回の改正により、理由なく経営者保証を求められることはなく、透明性が高まるのは間違いありません。

しかし、金融機関が個別具体的に経営者を丸め込めば、これまでどおり経営者保証を求めることはできるわけです。結局は金融機関とのパワーバランスにもよるため、経営者が自ら折れることもあるでしょう。

そもそも、融資を受けなければ経営が立ち行かないという状況では、上記【2】の要件を充たせるとも思えません。経営者保証がなくなれば、融資金額が抑制される可能性もあります。金利にも影響しますし、どうしても経営者保証を外したい場合は、信用保証協会付きにして上乗せ保証料を支払うしかありません。

なお、改正の発端の一つは、日本でもっと起業を促すために経営者保証のリスクを取り除くという点にあるようです。しかし、融資金額が少なくなれば、起業しても資金繰りに困る可能性が高まります。倒産からの再出発はしやすくなるかもしれませんが、勝負を掛けたいときに資金不足に困ることもあります。これらを踏まえると、経営者保証を簡単に外すことが中小企業経営にとって最善なのか、という点は疑問が残ります。

また、3要件自体に変更はありません。あくまで3要件を充たすことが求められ、充たしていなければ状況は変わりません。

そして、定量的に判断されるということは、いままでのグレーゾーンがなくなり、白黒をはっきり付けられることになります。経営者保証の有無が対外的に公表されることはありませんが、定量的な基準が明確になれば、信用調査など、見る人が見ればすぐに分かってしまいます。

経営者保証が外れないレベルの会社、つまり財務基盤が弱いと判断される会社と重要な取引をしたいと思われるのか?

今後は下手に節税やムダ遣いをしている場合ではありません。値上げができないと嘆いている場合でもありません。確実に利益を出し、内部留保を積み増し、財務基盤を強固にすることの優先順位が高まります。

財務基盤が強固になるということは、融資を受けなくても自己資金でまかなえる可能性も高まります。同時に、経営者保証が外れ、かつ融資を受けやすくなる。

中小企業において定量的に勝ち組・負け組が明確になり、経営者保証というラベルが、これまで以上に際立つ格好になります。

以上、経営者保証の基準が明確になるということは、実はメリットだけではないことが想定されます。

繰り返しますが、これまで以上に中小企業の財務力は重視されます。皆さまの会社も準備を始めてください。経営者保証という「負け組ラベル」を貼られないよう注意する必要があります。

大きく変わるか?退職金税制

先月18日に開催された政府税制調査会の総会で、会社役員・従業員等の退職金への課税の際に適用される「退職所得控除」について、勤続年数を問わず一律にすべきという意見が出されたことが報道されました。

勤続年数が長い人ほど有利な現在の退職金税制が「雇用の流動化」を阻んでいる可能性や、働き方が多様化していることなどを理由としてあげていますが、なかなかの暴論と言わざるを得ません。要は課税強化、とにかく増税したい政府の思惑が透けて見えます。

ご存じのとおり、現在の退職金税制は勤続年数が長くなるほどに優遇されており、中小企業経営者にとっては、会社に内部留保を蓄えつつ、最終的には退職金税制の恩恵を受けて取るというのが1つのセオリーです。

『現在の退職金税制』

改正すべきとする論拠はツッコミどころ満載で納得がいくようなものではありませんが、
「退職金税制」については令和2年度の税制改正大綱の基本的考え方でも触れられており、遠くない将来に課税強化の方向で進んでいく可能性が高いでしょう。

そうなれば普段の役員報酬の取り方はもとより、経営の出口戦略の立て方にも影響が出ることは間違いなく、改正の度合いによってはM&Aや事業承継、退職時期を数年早めるといった判断を下すケースが出てくるかもしれません。

退職金税制だけではありません。税制調査会では相続税・贈与税の一体課税についても議論がなされており、次の税制改正で生前贈与加算が現在の3年から、それ以上の年数に延ばされる可能性が高くなってきました。

もちろん事業承継も相続対策も税金面の有利不利だけで動いてはいけませんが、場合によっては無視できないほどに税負担が異なってくることも事実です。

事業承継、特に中小企業の親族内承継にあっては相続対策も相まって、一朝一夕にはいきませんので、どれだけ早くから周到に準備を進めていけるかがカギになります。

準備万端とまではいかなくても方向性を定めてある程度の準備が進んでいれば、改正内容に応じた臨機応変な計画のマイナーチェンジが可能ですが、まるで進んでいないとなると、お手上げです。

中小企業経営者の多くが50代半ばに差し掛かるころから、本気で事業承継について考え出しますが、昔と違って子どもに仕事を継がせる前提で準備を進めてきている方は少数です。

私も3人の子を持つ親です。我が子には自分の好きな道を歩んで欲しいと考える気持ちはとてもよく理解できます。しかし実際に多くの経営者が、その時が近づくと思うのです。
「やはり、できれば我が子に継いで欲しい」。

時代など気にする必要はありません。もしも事業を継いで欲しいという想いが少しでもあるのであれば、できるだけ早くにその想いを伝え、我が子にもその選択肢を認識してもらいつつ、互いに必要な準備をしていくべきです。

その結果、仮に我が子への承継がないことがはっきりしたのであれば、別の方向での準備を始めていけばいいのです。
日本電産の永森氏が先月の決算発表で「後継者問題が10年遅れたことは最大のミス」と語っていたことが印象に残ります。

事業承継計画や相続対策に影響を及ぼすであろう税制改正論議が進んでいます。
どれだけ準備をしても事業承継が全て思い通りに進むことはありません。
だからこそ入念な準備が必要なのです。

インボイス制度対応の実務について、ひと言

皆さまの会社にも、取引先から「適格請求書発行事業者の登録番号」の通知や、状況確認の書類が届き始めていることと思われます。

ここで気になるのは、それが郵送、FAX、メールなどで、ご丁寧に行われている点です。
取引先が100社あれば、100社に向けてそれを行っている…。

まず、法人については「法人番号」というものが割り振られていることはご存じのとおり。
この法人番号は国税庁のサイトで簡単に検索できます。

  ⇒ 『国税庁 法人番号公表サイト』

そして、インボイスの登録番号は法人番号の先頭に『』を付けただけです。つまり、法人番号が分かれば登録番号も分かります。ただし、その法人が現時点で登録しているかどうかまでは分からないため、同じく国税庁のサイトで登録の有無を確認できます。

  ⇒ 『国税庁 適格請求書発行事業者公表サイト』

ここで登録されていることを確認できれば、わざわざ取引先に問い合わせる必要はありません。そうであるにもかかわらず、郵送でやり取りする必要があるのか…という点がとても気になっています。

「とはいえ、取引先が100社あれば、自分で100社分検索するのも面倒だろう?」

いえ…、紙で取得した番号をわざわざ手で入力する方が面倒だと思われます(入力しないのであれば取得の必要もありません)。公表サイトのデータであればコピペで済みます。なお、気の利いた事業者は自社のホームページで登録番号を公表しています。隠すものでもありませんし、取引先から問い合わせがあれば「ホームページを見てね」と言ってしまえば終わりです。

基本的に、消費税の免税事業者(おおむね売上高が1,000万円未満)ではない限り、登録しないというケースはほぼ無いとお考えいただいて結構です。

つまり、インボイス制度に乗ってこないのは、消費税の納税のメリットがない特殊な事業を行う事業者、および個人事業者を中心とした売上高が1,000万円未満の小規模零細事業者となります。

このような可能性がある事業者と取引がある場合には、個別で確認が必要かもしれませんが、それ以外の事業者は確認すら不要ではないかと考えています。少なくとも1年後からは請求書などに必ず登録番号が記載されるため、事後的な対応でも問題ないのです。

また、取引先にこのような通知を行うことは「必ず登録してね!」と圧力を掛けていることと同じです。それなりの規模の企業にこのような通知を送るのはそもそも失礼ですし(気を付けてくださいね…)、小規模零細事業者に対しては圧力以外の何物でもありません。

「登録しないと取引しないぞ!」

本来は消費税の納税を行う必要が無い規模なのに、取引の継続を人質に取るような手法が今の時代に合っているのかという点は、気に留めていただく必要があります。

優秀な方が副業などで数百万円程度を稼いでいる場合も同じです。このような方に圧力を掛けても意味がありません。すぐに登録番号無しを容認してくれる取引先に乗り換えるでしょう。

この登録番号の取り扱い一つとっても、その企業のスタンスが垣間見えます。とくに個人事業の方との取引が多い場合は、炎上しかねませんのでご注意を。

インボイス制度は消費税だけの問題ではないのです。
大切な取引先とは丁寧なコミュニケーションを行われてください。

扶養から外れてしまうので休ませてください問題

中小企業の採用市場は厳しさが増す一方。
他社より多少待遇を良くしたくらいでは、応募すらないという状況が当たり前になってきました。

こうなると、募集は常にかけつつも今いる社員でどう戦っていくかが重要になるわけですが、これから年末にかけて多くの中小企業で巻き起こるのが、パート・アルバイト従業員の「扶養から外れてしまうので休ませてください」問題です。

しかし、話しを聞いてみると現在の制度の内容を正しく理解しておらず、なんとなく「103万円の壁」にこだわっているケースがいまだに少なくなくありません。

ここ数年の改正で複雑さが増しているせいで、理解することを諦めた結果、知識が更新されることなく「103万円の壁」の印象だけが、なんとなく残り続けているのです。

ではまず、「収入の壁」から整理していきましょう。
最もよくある「ご主人の扶養の範囲内で働きたい妻」のケースで考えていきます。
壁は大きく6つです。

『収入の壁の整理』

結論から申し上げると、重要な壁は社会保険の加入が絡む「106万円の壁」と「130万円の壁」2つだけです。

皆さんの会社が従業員数101人以上であれば今月からの改正で「106万円の壁」がパート・アルバイト従業員に立ちはだかることになりますが、従業員数100人以下の企業を経営する読者が多いと思われますので、今回は「130万円の壁」を用いて、夫の年収が400万円の場合の影響額を具体的に見てみることにしましょう。

『世帯収入影響額表』

いまだよく耳にする「103万円の壁」ですが、ここを超えても収入が増えれば手取りも増えるため、気にする必要がないことが理解できるはずです。130万円の壁を超えなければ、税金はかかっても妻の手取り額は増え続け、夫も変わらず配偶者控除が受けられますので、働いた分だけ世帯としての手取り額が順調に増加していくことが分かります。

一方で妻の年収が130万円の壁を超えると、夫の社会保険の扶養から外れることで妻自身が社会保険に入る必要が出てくるため、手取り額が大きく減ってしまいます。妻の手取り額を回復させ、世帯の手取り額を再び増加させるには150万円を超えて稼がなければなりません。

妻の年収によって、ご主人が勤めている会社から配偶者手当をもらえなくなることがありますので、「配偶者手当の壁」も注意する必要がありますが、そもそも配偶者手当自体が廃止されている企業が増えたため、「ご主人の扶養の範囲内で働きたい妻」の多くが気にすべきは「130万円の壁」だけということになります。

経営者からの要望で、このことを顧問先のパートさんに丁寧に説明してあげると、それならばもう少し働きたいといった反応が返ってくることを私は何度も経験しています。

採用が困難を極めるなか、今あるパート・アルバイトの戦力はとても貴重です。
そして、あらゆる物の値段が上がるなか、扶養の範囲で少しでも家計を助けたい人が大勢いるはずです。

社内の知識を正しく更新し、しっかりと共有していきましょう。

創業者の後継問題

日本電産、永守さんの後継候補が退任との報道…。
毎度のことですが、カリスマ創業者からのバトンタッチは一大事です。

ユニクロの柳井さん、ソフトバンクGの孫さんも後継者問題についてよく取り上げられていますね。

ちなみに、現在の3人のご年齢は以下のとおり。
 ・永守さん(78歳)
 ・柳井さん(73歳)
 ・孫さん(65歳)

あまりにも高い経営目標を掲げるゆえに、この3人の経営者は「大ぼら3兄弟」と呼ばれているそうです。同じように成果を出す人材のみが後継者ということなのでしょう。

この3社の後継者問題をややこしくしているのは、3兄弟の体力が衰えても自分の手足として動く忠実で優秀な部下がそろっているという点です。今回の日本電産も大番頭の73歳の幹部が中継ぎを引き受けるとのこと。これがカリスマとして君臨しつづける仕組みでもあります。

しかし、忠実、かつ優秀であるがゆえに後継者となるような部下はおらず、3社とも外部から招聘しては失敗するという皮肉…。

自分が求めている方向性で成果が出なければクビ。
自分と方向性が異なればクビ。

自分が求めている方向性で、自分並みに成果を出したときに合格。
ですが、それは無理筋ということはご本人たちも分かっているはず。

仮に後継者が業績を伸ばせるとしたら、節目でいち早く引き継いだ場合のみ。基本的にイケイケドンドンの時期に後継するなどあり得ません。失敗も目に見えています。そのため、ここまで来くると3社の株価が低迷をつづけたタイミングでしか退任は難しいかもしれません。結果が出るかは別として、仕切り直しは後継者の専売特許ですので。

一方、中小企業は後継者問題の先送りが破滅に直結します。そもそも、自分の手足として動けるような忠実で優秀な部下はいません。いたとしても一人か二人。もちろん後継者にはなり得ません。経営者の体力の衰えがそのまま会社の急激な衰退につながります。

中小企業こそ社内昇格など夢のまた夢ですから、親族が継がないのであれば早めに外部に引き継いでもらい、存続を優先しなければなりません。3社とは異なり、事業承継の時期に会社が下降曲線を描いていたら目も当てられません。

なお、日本電産の報道と同じ時期に稲盛さんが亡くなられました。同じくカリスマと称された稲盛さんは50代半ばで京セラの社長を退任し、73歳で取締役も完全に退任されています。現KDDIを含め、創業した会社に固執することなく、道筋をつけた上で、きれいに身を引いてきました。時代が少し違うとはいえ、やはり対照的です。

稲盛さんは創業した京セラの社長を退任されても、最後はJALの会長まで引き受け、経営者として活動をつづけられたのは周知のとおり。

後継者問題を引っ張りつづける大ぼら3兄弟が引退した後、この3社の5年後、10年後がどうなっているのか見ものです。その結果によって、カリスマ創業者としての最終的な評価が下されるのでしょう。

中小企業の経営者である皆さまも、体力の限界まで事業承継問題を引っ張らず、自社が下降曲線を描く前に決着をつけてください。例外は、一代限りの会社のみです。

親族に承継するにしても、外部に譲渡するにしても、その準備に最低5年は掛かります。

そして、後継が早ければ、次の経営者人生も待っています。
創業した会社、引き継いだ会社がすべてではありません。

生存対策

「不動産小口化商品」をご存じでしょうか。

これは2015年に行われた相続税の基礎控除縮小以降に増えた、都心オフィスビルなどを小口化して共同で所有することができる商品です。

分配金(家賃収入)を受け取れることに加えて相続税の財産評価を下げることができるため、先月末の日経新聞の記事によれば、節税したい高齢者に人気で急伸しているそうです。

1口100万円程度から買えるため、アパート・マンション経営などに手が出せない中流層からの関心が高く、記事では神奈川県在住の78才の二宮太郎さん(仮名)が少額から始められるうえ、子ども2人に相続するときに分けやすいとみて4000万円を投じたことが紹介されていました。

土地の評価は時価の約8割、建物は固定資産税評価額が相続税評価額になりますので、現金での相続に比べて相続税が抑えられることはご存じの通りです。都心一等地の物件であれば資産価値が落ちにくいことも事実。小口化されていますので、遺産分割もしやすいでしょう。

しかし、不動産を利用した節税対策が、そもそも中流層に必要なのでしょうか。

基礎控除の改正後、金融資産1億円未満の中流層が広く課税対象となってしまったことは確かですが、記事で紹介されている二宮さんの相続財産が仮に9000万円だとした場合、お子さんが2人いる二宮さんの相続税は奥さまがご存命なら240万円、すでに他界されているようであれば620万円です。

もちろん小さな額ではありませんが、9000万円の金融資産があれば、この額の納税に困ることはないはずです。にもかかわらず、普通に支払える相続税を減らすために9000万円のうちの半分近い4000万円を不動産に変えてしまっていいのでしょうか。

二宮さん自身、まだ78才です。仮に5才年下の奥さまがいらっしゃれば、20年以上の時間が残されていると考えて備えなければなりません。9000万円を20年で割ってみれば、それが思ったよりも大金ではないことに気づくはずです。

長く生きれば病気をして入院することや、施設に入ることにだってなるかもしれません。
そうなればまとまったお金が必要になります。

平均寿命が80才を超え、女性は90才から100才くらいまで生きることを前提に考える必要がある現在、ご自身が生きている間はもちろん、わが亡き後も配偶者がお金の心配をしなくて済むこと、子や孫たちに金銭的な迷惑をかけないように備えておくことのほうが、税金対策よりもはるかに重要です。

「不動産小口化商品」で検索をかければ、節税効果をことさらに強調した広告であふれています。狙いは中流層です。

節税の必要性を熱心に説いてくる人はたくさんいますが、長寿時代の「生存対策」の必要性を説いてくれる人は残念ながら少数です。

中小企業経営者には中流層か、それ以上の方が多くいらっしゃいます。
何が一番大切なことか。今のうちから考えておきましょう。