税務調査で分かる税理士のタイプ

6月は決算月です・・・。
税務署の!
正確には事務年度と言い、7月1日から6月30日が対象期間。
7月に人事異動が行われ、新しい年度がスタート。
本格的に税務調査が始まるのは8月に入ってからです。
今年は東日本大震災の影響があるので、例年に比べて風向きが異なるかもしれません。
被害が大きな地域では税務調査どころではないでしょうし。
また、震災に関連した寄附等の処理に注目が集まるでしょうから、ここは注意しておかなければなりません。
全額経費として処理出来ると考えていた支援行為が、まさか・・・という具合に。
「そういう場合は調査官の情に訴えるんだ。人として恥ずかしくないのか!と・・・」
とおっしゃる税理士が意外に多いのがおもしろいですが(笑)
ところで、税務調査と言えば、企業側が税理士の評価を一変させるタイミングでもあります。
「税務調査の結果に納得できない!」
とはいえ、このような場合は既に税理士に違和感があって、税務調査の結果に対して評価を確定させただけです。
逆に、このような機会が無いと税理士を替えられないというのが企業側の難しいところ。
「あまり納得していないのだけれども、5段階評価の3の評価の税理士をいきなり首に出来ない・・・」
まるで社員に対する評価と一緒ですね(苦笑)
そういう意味でも、一番白黒付きやすいのが税務調査です。
3の評価の税理士が、1になったり4になったりします。
例えば、普段から細かく指導してくる税理士と、細かい事は何も言わない税理士では、前者の方が煙たがられます。
つまり、普段の評価は低め。
「あれもこれもダメと言われました・・・」
実は、細かく指導してくれる先生の方が、比較的きちんとした先生と言えます。
ですから、税務調査では指摘事項が少ない傾向にあります。
ただ、ここでよくご相談があるのが、ダメと言われた後の対応です。
「税理士にこれはダメと言われたのですが、無理ですか?」
「そうですね。先生がおっしゃる通りです。ただ、このような方法がありますが、ご存じですか?」
それはダメだけど、“こういう方法がある”という代替案を教えてくれる税理士はかなり少ないようです。
そして、大抵ダメな理由も説明してくれない。
意外と思われるかもしれませんが、本当に相談が多いのです。
それだけ、“ダメ”という拒否型コミュニケーションは印象が悪い。
税理士への一番の要望はコミュニケーションです。
生真面目で正確な指摘をする先生ほど損をしています。
逆に、細かい事は何も言わない税理士は、“ダメ”とも言いません。
この時点の評価は良くもなく悪くもない。
しかし、曖昧のままにしていた場合は、税務調査のときにツケが回ってきます。
「先生、調査官がこれもあれもダメって言っています・・・」
「そうですね。それは“ダメ”なんです」
税務調査になった途端に“ダメ”と言う。
このような税理士が、税務署寄りと言われる所以です。
ちなみに、前者の税理士は、税務署寄りとは少し違います。
税理士はあくまで法律家ですから、その法律を真正面からお伝えしているだけ。
弾力的運用が出来ない法律家というのが残念ですが。
また、もともと継続的な赤字企業は税務調査を受けにくいと言われていますが、このような企業でミスが見つかっても、税金が発生しなければ曖昧のまま終わります。
「まあ、いくつか指摘事項がありましたが、税金は出ませんでしたよ。良かったですね」
この税理士が良いのか悪いのかよく分からないままです。
以上、税務調査だけが税理士の評価ポイントではありませんが、やはり大きなウェートを占めているのは間違いありません。
そして、普段5の評価の税理士が税務調査で1の評価になったり、普段1の評価の税理士が5の評価になったりすることはあり得ません。
税務調査で評価が大きく変わるのは、普段3の評価の税理士です。
しかし、税務調査の結果が出てからでは取り返しがつかなくなる場合もあります。
普段から税理士の評価を見極め、早めに対処する事が会社を守る事にもつながります。
税務調査等でご心配な点がございましたら、いつでもエー・アンド・パートナーズ税理士法人にご相談ください。
 
P.S.
「税務署上がりの税理士なので、税務調査の対応は任せてください!」
という宣伝文句は、
「私、普段はきちんと指導しません!」
と言っているのと同じだと思うのは私だけでしょうか・・・。
帳簿がしっかりしていれば、税務調査で対応することなど無いのですから。

税理士の探し方について考えてみた

『税理士セカンドオピニオン』とメールマガジンのタイトルを変えてから3カ月が
経過しました。
たまにはタイトル負けしないような内容もお伝えしなければと思い、地方の方
から特にご相談が多い「税理士の探し方」について触れてみます。
とはいえ、これを真正面から取り上げても、抽象的な話で終わってしまいます。
あるいは、具体的過ぎてメルマガでは書けません・・・。
そこで、今回は都道府県別の下記データを用いて考察してみます。
(1)税理士事務所数(公認会計事務所を含む)
(2)企業等数(個人事業を含む)
(3)1税理士事務所当たり企業等数
(4)1税理士事務所当たり県内総生産
(5)1km2当たり税理士事務所数
まずは、下記表をご覧ください。

このデータから税理士の探し方の何が分かるのか?
お客様からお話を伺うと、税理士を探すポイントは大きく分けて次の3つです。
・税理士報酬は高くないか?
・頼みたい税理士事務所は近くにあるか?
・希望するサービスを行ってもらえるか?
■税理士報酬は高くないか?
どの業種においても競争相手が多いほど価格が下がるという理屈はご存じの通り。
つまり、税理士事務所が多い地域ほど、その報酬も低くなるという図式が成り立ち
ます。
税理士事務所が多い上位3地域は、東京、大阪、愛知(データ(1))。
とはいえ、この3都府県は企業等の数も上位3位を占めるので(データ(2))、一概に
税理士事務所が多いとは言えません。
そこで、企業等の数を税理士事務所数で割ったのが、「1税理士事務所当たりの
企業等数」(データ(3))。
東京、大阪、愛知は見事に下位3位に沈みました。
1税理士事務所当たりのお客様の数は少なく、それだけ競争が激しいと言えます。
ここで最初の理屈に当てはめて考えてみると、この3都府県の税理士報酬は
“意外と高くない”可能性があります。
その補完データとして「1税理士事務所当たり県内総生産」(データ(4))をご確認
ください。
県内総生産とは国民総生産(GDP)の都道府県別のようなもので、これを税理士
事務所数で割ってみました。
データ(3)と同じように、大都市地域の1税理士事務所当たりの県内総生産は下位
に沈み、お客様の数が少ないとともに、お客様の企業規模合計も少ないと推定
できます。
これが大きければ、数は少なくても比較的規模の大きな会社が多く、1企業当たり
の報酬も高いという図式が成り立つはず。
「いやいや、東京の税理士事務所の報酬は高いよ!」
という方もいらっしゃるでしょう。
当然、大都市に拠点を構える一部の大手税理士事務所は非常に高い報酬を
取っています。
こういう事務所はもともと大規模企業のお客様が多いため、人件費の高いスタッフ
を雇い、一等地に事務所を構えているからです。
もし、中小規模事業者がこのような税理士事務所に顧問を依頼すると高くつきます。
これは、企業の規模に照らして相対的にという意味です。
つまり、大都市地域の大手以外の税理士事務所は、その競合状況から、企業の
規模等に照らして報酬は低めに抑えられていると考えます。
当法人は東京と新潟に事務所があり、全国のお客様の相談を受けているので、
かなりの地域の報酬相場を把握しています。
正直なところ、大都市地域と地方の相場は同等レベルです。
例えば、東京の税理士事務所に頼むのならば“大きなところ”というのが盲点で、
地方と同じような感覚で探せば、数は多いし、報酬も変わりません。
■頼みたい税理士事務所は近くにあるか?
やはり、税理士事務所は“近くがいい!”というニーズは根強いです。
“近くがいい”だけならば問題はないのですが、これが“近くて、良い”税理士事務所
と続くので厄介です。
こうなると、大都市地域は狭いエリアに数多くの税理士事務所があるので、“近く
の”税理士事務所は探しやすいと言えます(データ(5))。
しかし、“良い”税理士事務所に巡り合えるかどうかは、“宝くじで1万円が当たる
くらいの確率”です。
当たる人には当たるけど、当たらない人には当たらない・・・。
だから、税理士事務所も当たるまで“買い続ける”のが現実的。
また、近くにないのなら、遠くに買いに行けばいいのです。
それも、隣県ではなく、思い切って大都市地域へ。
地方の方も、宝くじを西銀座チャンスセンターに買いに行くように!
そして、こういう声もよく聞きます。
「税理士が来ない」
もちろん、毎月来てくれる“近くて、良い”税理士事務所が見つかればベストです。
これが探せないのであれば、“遠くて、毎月来ないけど、満足できる”税理士事務所
を探してください。
これであれば、どこの地域の税理士事務所でも問題ないはず。
ちなみに、当法人は東京と新潟に事務所を置いておりますが、顧問契約を結んで
いるお客様の所在地域は15都府県です。
セカンドオピニオン契約を合わせると倍近くになります。
当然、遠隔地のお客様は近場のお客様に比べれば訪問頻度は下がります。
しかし、当法人を含め、遠隔地のお客様と契約しているような税理士事務所は、
訪問しなくてもサービスを提供出来るようにと工夫も行っております。
このような税理士事務所も大都市地域に多く、WEBで探しやすいはずです。
“近くて、良い”から“遠くても、良い”と基準を変えるだけで、税理士事務所の選択肢
も飛躍的に増加します。
■希望するサービスを行ってもらえるか?
昔の税理士事務所は、ほどほどの報酬で“何でも”やっていました。
しかし、近年は税理士事務所もメニュー化が進み、最小構成単位で仕事を依頼
すれば報酬は安くなります。
特に大都市地域の税理士事務所ほどメニューの細分化が図られ、少しでも報酬を
安くしてお客様を取り込もうと懸命です(東京、大阪、愛知はこの傾向が顕著です)。
これに比べ、地方の税理士事務所はまだ“何でも”の傾向が強いと言えます。
“何でも”だから、サービスが陰に隠れてしまう場合もありますので、まずは今の
税理士事務所に、「このサービスをやって欲しい」と明確にお伝えしてください。
意外とこれを言わない方が多いのも事実。
言ってダメだったら税理士事務所を変えざるを得ませんし、言うのが嫌であれば、
やはりメニュー制の税理士事務所の方が依頼しやすいのではないかと考えます。
とはいえ、気をつけなければならないのは、メニュー制を取り入れている税理士
事務所に“何でも”頼むと総額はかなり膨らんでしまうという点です。
最近は“顧問料なし”の税理士事務所も増えてきましたが、これにもカラクリが
あって、“顧問料あり”のときと同じような仕事を依頼すれば、むしろ報酬が高く
なる仕組みです。
その実態は、お客様のためというよりも、事務所の経営効率を高めるための場合
も多く見受けられます。
また、サービスメニューが多彩という事と、サービス品質が高いかどうかは別問題
です。
これも、税理士事務所という宝くじを買い続ける事によって“当たり”を探さざるを
得ません。
以上、なんだか大都市地域の税理士事務所が良いと推奨しているようになって
しまいましたが、そうではありません。
地方の方からの「良い税理士がいない」というご相談に対し、圧倒的に税理士
事務所が多い大都市地域も選択肢に入れる事によって、「税理士の探し方」に
幅が出る事をお伝えしたかったのです。
競争が緩い地方の税理士事務所は寝ている所が多く、昔からのお客様が多い
ので、口で言うほど危機感はありません。
危機感がなければお客様へのサービス向上など期待できませんので。
是非、皆さんに税理士業界をたたき起していただきたいです(笑)

【参考】
今回用いたデータは、統計局の統計データ「平成21年度経済センサス基礎調査」
です。
『政府統計の総合窓口』というサイトがあり、ここで様々な統計データを調べる事が
出来ます(URL:http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/eStatTopPortal.do)。
私も今回このデータを加工していて、この地域に新しく事務所を出したら結構行ける
んじゃないかと思ってしまいました。
エリア戦略等、使いようによってはおもしろいのではないかと考えます。

「税務訴訟」してみますか?

武富士の親族が贈与税の裁判で逆転勝訴、利息等含め2000億円還付!
保険金の二重課税について主婦が勝訴、数十年来の二重課税が解消!
最近、このように納税者が税務の訴訟を行い、国と争って勝訴するといった記事を多く目にするようになってきました。
もともと司法は行政から独立しているはずなので当然と言えば当然なのですが、これまでの裁判ではどちらかというと国が行った課税処分をくつがえす判決を出すことは滅多にありませんでした。ですが最近は、裁判所も少しずつ中立な立場に立った判決を出し始めたようです。
中小企業の場合には、税務調査等で指摘された点について納得いかないことがあっても、「税務署と争うなんて面倒だし時間ももったいない。そもそも顧問税理士は税務署の言いなりでどっちの味方かわからないから、国と争うなんて無理!」というご意見が多く、「税務署の言うとおり修正申告するしかない。」という経営者が大部分かと思います。
そんな悔しい思いをしながらも安易に修正申告をしてしまうその前に・・・
税務調査に臨む前には、以下の3点だけは押さえるようにしてください。
(1)疑念を持たれそうな点について、事前に準備して説明できるようにしておく。
(2)根拠となる書類は、必ず作成して残しておく。
(3)日頃から税務の処理について分かりやすく説明してくれて、税務調査でしっかりと戦ってくれる顧問税理士を雇う。
最後が一番難しいかもしれません(苦笑)が、これだけで結果は変わってきます。
さて、これでも納得いかない場合には最終的に裁判となりますが、その前に「異議申し立て」や「審査請求」という手続きも可能ですので、流れを見ておきましょう。

そしてこの「国税不服審判所」の裁決にまだ不服があるときは、裁決から3カ月以内に訴訟を起こすことになりますが、訴訟となるとその費用や税理士・弁護士などの費用もかかります。
争点となった部分の税額を考えると割に合わないため、ここまでで断念する方が多いのも、残念ながら事実です。
ですが「金額の問題ではない!こちらが正しいと思って行った事を否認されるなんて、許せん!」とおっしゃる方。今回の話は覚えておいて損はありません。
まずは事前準備をしっかりと行い、もしものときに備えるようにしてください。

これは誰に頼むべきか?

とうとう中国から、「会計事務所」が進出してきます。
中国国内第3位の会計事務所「信永中和」が、日本での会計監査の拠点と
して、国内事務所を設立しました。
この春から中国企業の日本子会社の会計監査や日本企業のM&A、対中投
資の支援などを行うようですが、これら中国関係の業務は、これまで大手の監査
法人や中国に強いコンサルティング会社などが担ってきましたので、今回の進出はひとまず彼らにとっての「脅威」となるかもしれません。
しかしながら、一番影響を受けるのは、上場企業などの大企業を相手にする監査
法人などではなく、むしろ私たちのような中小企業をお客さまに持つ「税理士事務
所」であると言えます。
というのも、一般的には知られていませんが、企業が税理士事務所などに依頼
して いる記帳代行や経理代行などのアウトソーシング業務は、すでに人件費が
安くて「漢字」にもなじみの深い中国へのシフトが進んでいます。顧問税理士は
黙っていますが、皆様の会社の伝票も、すでに中国で優秀な中国人が入力して
いるかもしれません(苦笑)。
今回の進出を足がかりに中国の会計事務所が本格的に進出し、これらのサービス
を表立って開始することになった場合には、中小企業にとって業務を依頼する先
として有力な選択肢となるかも知れません。結果、これまで「安いだけ」で勝負をして
きたような国内の税理士事務所は、自然淘汰されていくことになるでしょう。
ですが実は、中国が進出してこなくとも、この税理士事務所の淘汰の流れはすで
に国内の税理士業界で加速しているのです。
私共はこのメルマガのタイトルの通り、税務会計の「セカンドオピニオンサービス」
も行わせていただいているのですが、その中で面白いことがわかってきました。
当初、私共はこのサービスを「ある事柄について、お客様がまず顧問税理士に
相談をし、その税理士が出した回答に納得がいかないときに、別の税理士にも
相談したいというお客様がいるはず」だと考えてスタートしたのですが、実際に
お客様からご相談をお伺いしてみると、顧問税理士に意見を聞く前に、最初に
私共にご相談いただくケースが以外と多いのです。
一応、その後に顧問税理士の意見も聞いて最終的な結論を出していらっしゃる
ようですが、これは私共の当初の想定とは、全く逆のものでした。
つまりこれらのお客様は、顧問税理士をすぐに変える予定ではないけれど「普段
あまりコミュニケーションを取らず、事務処理だけを依頼する税理士事務所」と
「大切なことを相談する税理士事務所」をうまく使い分けているといえます。
このように税理士業界は、すでに昔ながらの悪しき(?)「先生業」ではなく、お客様
と対等な関係の「サービス業」に変貌を遂げています。
これからは、皆様が関係者にうまく情報を共有させることにより、「記帳代行に
ついては中国」に依頼、「通常の申告業務はA税理士」に、「重要な相談について
はB税理士」に依頼、などと目的に応じて相手を選んで相談するといったことが
可能であり、それはもうすでに皆様の隣で始まっているのです。