起業大国、ニッポン!

日本は起業大国を目指すのだそうです。
先月、中小企業庁から2014年版『中小企業白書』が公表されました。
注目すべき程のものではありませんが、国が中小企業の現状と今後についてどのように考えているのか、参考になる場合もあります。
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その中で、国は起業“希望者”が急激に減少していることを憂い、開業率が低い理由として以下の3つの課題を伝えています。
1.起業意識
「教育制度が十分ではない」、「安定的な雇用を求める意識高い」、「起業を職業として認識しない」
2.起業後の生活・収入の不安定化
「生活が不安定になる不安」、「セーフティーネットがない」、「再就職が難しい」
3.起業に伴うコストや手続き
「起業に要する金銭的コストが高い」、「起業にかかる手続きが煩雑」
そして、「起業大国」に向けた3つの課題の対応策として以下を提言しています。
【課題1】起業意識の変革
対応策1 ⇒ 起業家教育
対応策2 ⇒ 起業に対する社会的評価の改革
【課題2】起業後の生活・収入の安定化
対応策1 ⇒ 起業のセーフティーネット
(1) 経営者保証のガイドラインの見直し
(2)小規模企業共済制度
(3)起業後の収入の安定化(失業保険)
対応策2 ⇒ 兼業・副業の促進
【課題3】起業に伴うコストや手続きの低減
対応策1 ⇒ 誰もが起業家応援社会の構築
対応策2 ⇒ 起業することでメリットのある仕組み
対応策3 ⇒ 起業に関する相談体制の拡充
実際に起業してきた皆さんは、これらの対応策を目にされて、どのように感じますでしょうか?
私個人的には、リスクが低ければ起業するという考え方は、ものすごく違和感があります。
そもそも、このようにリスクを低くしたとして、起業後に一体どれだけの方が食べていけるようになるのでしょうか?
しかも、ご丁寧に兼業・副業のアンケートまで採り、

(2014年版『中小企業白書』19頁)

フランスでは、近年これほどまでに起業数が増えているのだ!のダメ押し。

(2014年版『中小企業白書』19頁)

開業数が増えると潤うかもしれない税理士の息でも掛かっているのかと疑ってしまいます。
まず、フランスでの起業数の爆発的な増加は、2009年に導入された『個人事業主制度』が大きく影響しています。ここで詳しくは述べませんが、この制度は、税金や社会保障費を一定期間優遇することによって起業を促し、失業者対策や副業を奨励するためのものでした。そうしたところ、登録が簡単だったこともあり、失業者やサラリーマンが大勢起業したということです。
このフランスの制度が長期的に成功を収めるかどうかはまだ分かりませんが、日本も同じようなことを狙っているのかもしれません…。
とはいえ、起業数を増加させることによって弊害がない訳ではありません。フランスでも問題視されているのは、企業に勤める従業員を退職させ、個人事業主として起業させた上で同じ仕事をさせるという点です。
当然、安易に起業できる制度ができれば、正規雇用から非正規雇用へのシフトが問題視されたように、雇用から契約(事業者同士の)へのシフトが問題となってきます。お金も人もない起業者が、手っ取り早く仕事を取るには下請けが早いのですから。
おっ! そう考えると、中小企業白書の裏側には、大企業の思惑も見え隠れするのか…。
ちなみに、この10年間で、製造業の給与所得者数は265万人減少したのに対し、サービス業の給与所得者数は285万人増加。そして、平均給与は、製造業が2万円の微増に対し、サービス業は46万円の大幅減少とのこと(2014年版『中小企業白書』10頁)。
供給が減れば価格は上がり、供給が増えれば価格は下がるのは当然のこと…。
そうであるならば、起業者数が増えれば、一人当たりの平均所得が減るのも必然ではないでしょうか。
それで潤うのは、そのような起業者に仕事を頼む企業側だけのような気がします。
もちろん、起業が増えることによって、今まで想像もできなかった新しい物やサービスが誕生するかもしれません。ただし、前述したように、起業のリスクが低くなったから起業するというような方々から、そのような革新性のあるものが誕生するというのはあまり想像ができません。
さらに言えば、経営者からすると、兼業や副業に励んでいるような社員を雇いたいとは思わないのではないでしょうか。
働き方の多様化というのは必然的な流れとはいえ、それが構造的に低所得化を促しているとも言えます。
個人の働き方と同様に、企業の事業展開も多様化の様相を見せていますが、自社が抑えておくべきポイントを理解しておかないと知らぬ間に…ということになりかねないかもしれませんね。