税理士吠える!?

私のところに来られた相談者から聞いた話によれば、
「そんなことしたらスゴイ税金になるぞ!!」
税理士はそう言って吠えたのだそうです。
いったい税理士と相談者の間に何があったのでしょうか?
皆さんは『名義株』という言葉をご存じでしょうか?
言葉はご存じなくとも、字を見ていただければ、何のことかはおおよその察しがつくと思います。
その昔、株式会社の設立には7人の発起人(株主)が必要な時代がありました。
7人集まらなければ会社が作れなかったのです。
しかし、本当にお金をだすのは、オーナー社長だけで、あとは、親戚や知合いの名前を借りて、株主名簿に名前だけを載せておくということをしていた時代があるのです。
それによって生まれたのが『名義株』であり、名義株主です。
その他にも節税が温床となって、うまれた名義株もあります。
節税の世界にもトレンドがあります。
今では信じられないことですが、その昔、相続対策のとして『株式の分散』が勧められていた時代がありました。
これによって、実際には売買等が行われた事実がないにもかかわらず、株主名簿だけを書き換えるということが行われたのです。
ところが、最近では、中小企業の株式対策についてのトレンドは『分散から集中へ』です。
従来は何の問題視もされていなかった名義株ですが、会社法の改正以後、その存在が重要視されるようになり、一時は『モノ言う株主』という言葉も聞かれるようになりました。
つまり、会社経営は『税法』でするのではなく『会社法』で行うのだということです。
それでは、今まで重要視されてこなかった名義株が問題となってくるのはどういうときなのでしょうか?
それは、会社が儲かってきたときや、事業承継を意識したときです。
当初は一株数万円だった株価が、数十倍になっていることも珍しくありません。
そこで、本来の名義人である経営者は、名義株の名義を自分自身に戻そうということを考えるのですが、それに、今回の税理士が吠えたという訳です。
「そんなことをしたら贈与だから贈与税がかかる!」というのです。
つまり、税務上は、お金のやり取りがなく、株の名義変更が行われたときは、原則としてこれらの行為は贈与として取り扱われ、贈与税の認定がされるというのです。
しかし、これは名義株でない株の名義変更が行われた場合の話です。
名義株の名義変更は、『真正な名義回復』のための行為です。
そのためには、株式の真実の所有者が名義人以外の者であったことを証明することが必要です。
名義株の事実を証明するためのポイントは次の通りです。
・出資をした事実が、通帳等で判明するか。
・(株券を発行している場合)株券は誰が保管しているか。
・(配当が行われている場合)配当は誰が受取っているか。
・(配当が行われている場合)税務署に誰の名前で報告しているか。
・名義株主は株主であることの認識があるか。
・名義株主に株主総会の通知を出しているか。また、総会に出席していたか。
以上は、すべて状況証拠であり、間接証拠に過ぎません。
上記を裏付ける強力な証拠は、名義株主として登録されている本人から、『私は株主ではありません。』という“直接証拠”をとることです。
もちろん口頭ではなく、書面で残る証拠をとらなくてはいけません。
そのためにもっとも重要なことをいいます。
“死人に口なし”という状態になる前に、当事者が生きているうちに名義変更をしてしまうということです。
卑近な事例をお話いたします。
私の祖父が亡くなったとき、金庫の中にあった遺品の整理をしていると、地元では名前の知れた建設会社の決算書がでてきました。
決算書を見るとかなりの内部留保があり、株価もそこそこであることはすぐにわかりました。
すぐにその会社に連絡をとり、株主名簿に祖父の記載があるかの問い合わせをしました。
回答はすぐにあり、株主として記載されていることと、株数がわかりました。
ここでポイントになってくるのが、祖父が亡くなった今、この株が名義株なのか、それとも本当に祖父が出資したものなのかが、相続人にはわからないということです。
その後、相続による名義変更を申し出るとともに、変更後の株主名簿を送ってもらいました。
そこの社長さんからは、その後、何度か「株式を買い取らせていただきます。」という連絡をいただきましたが、その都度、「祖父から引き継いだものですので、大切に持たせていただきます・・」とご遠慮させていただいております。(笑)
皆さんの会社に将来問題となりそうな株主はいませんか?
株主が親族ばかりであれば安心ということは決してありません。
親族だからこそおこる問題もあります。
もしかしたらという目で、一度株主の点検をしてみてください。