ついに消費税法改正により消費税率が8%になりました。皆さんご存知のように、1年半後にはさらに2%上昇し、税率は10%になる予定です。こうした税制の変化は、時に長年の商慣行を変えていくきっかけになることがあります。つまり、消費税増税をきっかけに、ビジネス環境が大きく変わっていく可能性がある業種が存在するということなのです。
消費税増税を目前に控えた3月27日、生活情報サイト「All About」などを運営する株式会社オールアバウトがカーコンビニ倶楽部と業務提携し、全国のカーコンビニ倶楽部加盟店を中心に自動車業界における専門家ネットワークを構築、標準化された査定プロセスを導入し、品質が確認された車両のみが売買される体制を整え、中古車の個人間売買を支援する新サービスを始めるとの記事が日経新聞に掲載されました。
インターネット広告以外の、稼ぎ頭となり得る新規事業を検討していたオールアバウトは、消費税増税により、今後、消費税のかからないモノやサービスの個人間売買市場の拡大が見込まれると判断し、中でも取引金額が大きい「中古車」領域に目を付け、個人間売買支援サービス事業への参入を決めたのです。
皆さんはこのニュースをどのように見るでしょうか。既に以前から中古車業界ではインターネットオークションなどを中心に個人売買が行われていました。しかし、中古車流通に占める個人間売買は、推定で10%前後といわれており、インターネット販売が当たり前の現代においても業界構造の再構築を迫るほどではありませんでした。
消費税(付加価値税)率が高い欧米では、ご存知のように、すでに個人間売買が主流です。また、お隣の韓国でも、付加価値税率が引き上げられるたびにユーザーが個人間売買に流れ、中古車業者のビジネスは下降、一見、店舗に中古車を並べているようなところも、個人からの委託販売形式をとっているケースが多いようです。
以前から中古車業界では、ユーザーが消費税のかからない個人間売買の利点を理解することにより「消費税がかからない個人間売買が増える」という説が囁かれていましたが、面倒な名義変更手続きや品質不安を理由に「海外ほど個人間売買のシェアは伸びない」との見方が多かったようです。
しかし、今回、オールアバウトとカーコンビ倶楽部が始めるような、個人間売買の増加を見込んだ新サービスが登場することで、ユーザーが次第に個人売買へ流れていくことは想像に難くありません。
誰もが見ず知らずの人や会社からインターネットで物を買う事への抵抗がかなり強かった頃の記憶は、そう遠くないはずです。それが今や、実物は店舗で見たり説明を聞いたとしても、購入はインターネットで安値の店を探して行う、いわゆる「ショールーミング」が当たり前に行われる時代です。インターネットで物を買う事に抵抗を感じている人の割合は、かなり少ないといえるでしょう。
そこへ来て、消費税増税です。今後も上昇するであろう消費税率を考えれば、数年後には「中古車購入は消費税がかからない個人売買」が当たり前になっていても何の不思議もありません。むしろ、そうならない可能性の方が低いといってもいいかもしれません。
このように消費税の引き上げにより、長年の商慣行が変わっていくであろうことが容易に想像できる業種はまだまだ他にもあります。品質や手続きなどの不安要素が解消されれば、何もわざわざ消費税が8%も10%もかかる企業から購入する理由を探すほうが難しいかもしれません。
昨年と同じことをしていて、今年も同じだけの売上、利益が確保できる時代ではありません。私達は、こうした税制の変化などが、自社のビジネスにどういった影響を与える可能性があるのか、常にアンテナを張っておく必要があります。そして、その影響を正確に見極め、行動していくことが生き残っていくために必要なのです。