駄菓子屋を始めたら相続税が安くなった!?

私が子供の頃は、学校が終わると毎日のように小銭を握りしめて買い物に行く駄菓子屋がありました。

その駄菓子屋は老夫婦が二人でやっていました。
一個10円や50円程度のお菓子しか売っていないのですから儲けがあったわけではないと思います。
おそらく子供好きのご夫婦だったのでしょう。

コンビニができるようになり、残念ながらその駄菓子屋は今はもう閉店してしまいました。
そんな昔懐かしい駄菓子屋を始めることによって相続税が安くなる!?
というのが今回のお話です。

 

以前から、相続をした土地を評価する場合には『一定の特例』がありました。

それが、『特定居住用宅地等』と『特定事業用宅地等』です。

この特例は、亡くなられた人がお住まいだった自宅の土地や事業に使われていた土地をごく近しい身内の人が相続し、申告期限まで従来と同様に居住し、又は、事業を行っている場合には、一定の面積分について、『80%評価を引き下げる』というものです。

この場合の自宅だった土地を『特定居住用宅地等』といい、事業に使われていた土地を『特定事業用宅地等』といいます。

繰り返しになりますが、この特例自体は以前からあるものです。

それでは以前と何が変わったのかというと、厳密には間違った説明になりますが、従来は、居住用か事業用を合算して一定の面積までしか特例が受けられなかったところ、平成27年以後の相続については、居住用と事業用の両方の特例がそれぞれに受けられるようになったということです。

つまり、事業用の土地を持っていなかった人が、これからなんらかの事業を始めることによって、新たに事業用宅地をつくり出し、以前に比べ概ね倍の土地について評価引き下げが受けられる機会ができたということです。

その面積は、居住用+事業用で『730m2』です。
ちなみに従来の制度では、居住用の土地の場合『240m2』、事業用の土地の場合は『400m2』でした。
これにより、1万円/m2の土地なら、584万円の評価減に、
10万円/m2の土地なら、5,840万円の評価減となります。

ところが、事業を始めるといっても一朝一夕に始められるものでもなく、できるだけ手間をかけずに、かつ、安定した収入を得たいというのが誰もが考える人の常というものです。

そこで従来はコインランドリーや精米機を設置するというのが一般的な事業用宅地をつくり出すための手段でした。

そんな中、政府の後押しを受けて、脚光を浴びているのが『太陽光発電事業』です。

太陽光発電については、グリーン投資減税の恩恵もあり、『即時償却』や『税額控除』が受けられ、かつ、固定資産税の軽減や政府系金融機関から低利融資を受けることもできます。

さらに、収入面では法律で電力会社による20年間の『全量固定価格買取制度』を設けていることから長期的な安定収入が保障されています。

そのため、大手のハウスメーカーをはじめ、太陽光発電設置に向けた営業を行っていますが、固定買取制度については、『買取拒否』と『接続拒否』といった、発電した電力を買い取ってもらえない事態も一部で起きており大きな問題となっています。

さらに、特定事業用宅地としての適用についても専門家の間で見解が分かれており、今後、相続申告後に税務調査で否認されることも考えられます。

それは、特定事業用宅地とは事業のための建物や構築物の敷地として利用されていることが前提となっているためです。

太陽光発電設備は税務上、『機械装置』に該当することから、更地に野立ての太陽光発電設備を設置しただけでは、特定事業用宅地の要件を満たさないことから特例の適用が受けられない可能性があります。

太陽光発電事業は一見するととても魅力的な話に聞こえますが、相続対策としては慎重に判断をする必要があります。

 

そこで私は駄菓子屋を始めてみてはいかがかと思うのです。

どうせやるのであれば、事業としての実態を備え、かつ、年長者にとってもやり甲斐のある昔懐かしい駄菓子屋を始めるというのはいかがなものでしょうか?

いずれにしても、現在、事業用の土地をお持ちでない資産家の方々は相続対策としての事業を始めてはいかがでしょうか。

ご存知ですか?H27年から始まる新しい贈与課税?!

今年も早いもので年末が見えてきましたね。
ところで、あなたは平成27年から始まる、新しい贈与税課税を知っていますか?

相続税増税の報道にかくれて、意外と知られていないかもしれません。
今回は、平成27年から適用される新しい贈与税の課税について簡単にお伝えします。

H27年以降の贈与税の改正では次のようになっています。
・最高税率を、最高50%⇒55%に引き上げる
・一定の親子間の贈与は、税率を緩和する

では具体的に見ていきましょう。

★従来の速算表

★改正による速算表

ご存じの通り、贈与税は累進課税方式となっていて、贈与の金額が大きければ大きいほどその適用される税率も高くなっていきます。

上記表のように、新しい税率表では、(1)一般税率と(2)特例税率の2つに分かれ、その贈与の対象者によって適用される税率が変ることとなりました。

(2)特例税率は上記の「一定の親子間」の場合の贈与に適用され、それ以外の贈与については(1)一般税率が適用されます。
なお、(2)の「一定の親子間」とは、具体的には「その年1月1日に20歳以上の者が、その者の両親や祖父母(直系尊属)から受けた贈与」となります。

そこで、従来の税率表と(2)の特例税率をよく見ると、確かに課税価格の範囲によって税率が軽減されています。
しかし一方で、最高税率は従来の50%から改正後は55%に引き上げられていますので、どこかの時点で税負担の逆転が起こるはずです。
そこで、上記の速算表に当てはめ、実際に計算をしてみました。
順に見ていきましょう。

なお、税額の計算は「課税価格×税率-控除額」で算出されますが、この場合の「課税価格」とは、「非課税とされる年間110万円考慮後」になりますので、例えば年間300万円贈与した場合には、「300万円-110万円=190万円」が課税価格となります。

まず、(1)一般税率の場合です。
従来の税率と比較すると、課税価格1,000万円以下までは一緒ですが、課税価格1,000万円超のところでは従来の税率では50%なのに対し、改正(1)一般税率では45%となっています。
したがって、課税価格1,000万円を超える贈与の場合には改正後の方が得ということになります。

しかし、最高税率は55%へ引き上げられていますので、どこかで税負担は改正後の方が大きくなります。実際に計算してみたところ・・・課税価格3,500万円では両者とも税額は1,525万円となり税負担が一緒となりました。すなわち課税価格3,500万円を超える贈与の場合には、改正後の方が税負担は大きくなるということになります。

次に(2)特例税率の場合です。
従来の税率と比較すると、課税価格300万円以下までは同じ15%です。しかし課税価格300万円超からは、改正後の税率のほうが低くなっているのがわかります。
したがって、課税価格300万円超の贈与の場合には改正後のほうが得ということになります。

しかし、先ほどの一般の場合と同様に最高税率は55%へ引き上げられていますので、どこかで税負担は改正後の方が大きくなります。実際に計算してみたところ・・・課税価格8,300万円では税額が3,925万円となり税負担が一緒となりました。すなわち課税価8,300万円を超える贈与の場合には、改正後の方が税負担は大きくなるということになります。

まとめましょう。

★(1)一般税率の適用される贈与((2)以外の贈与)の場合
・課税価格1,000万円までは税負担は一緒。
・課税価格1,000万円超から課税価格3,500万円未満までの贈与は改正後がお得。
・課税価格3,500万円超の贈与は改正前がお得。

★(2)特例税率の適用される贈与(一定の親子間)の場合
・課税価格300万円までは税負担は一緒。
・課税価格300万円超から課税価格8,300万円未満までの贈与は、改正後がお得。
・課税価格8,300万円超の贈与は改正前がお得。

H26年中に贈与を考えていらっしゃるあなた、その金額によっては贈与は来年以降にした方が税負担がおさえられます。特に、連年でなく単年での贈与を考えていらっしゃる場合には、是非参考にしてみてください。

税務上の「賃貸借契約」とするには?!

「固定資産税の2~3倍の賃料を払っておけば大丈夫!!」

このフレーズを聞いただけで「ピン!」とくる方も多いかと思いますが、この「固定資産税の2~3倍の賃料」で、本当に税務上の賃貸借契約は成立するのでしょうか?

これは、個人所有の土地を同個人の経営する法人等に貸し付ける際に、その賃料を設定するときに巷でよく聞くフレーズなのですが、そもそもこの目的は、主には将来の相続のときには貸宅地(貸付用の土地)として土地の評価額の引き下げ、さらには、その個人の事業用の土地として小規模宅地の評価の減額を受けるなどの、相続対策としてのものが多いかと思います。

先日、お客様からこのようなご質問がありました。

「法人に賃貸している土地に買い替え特例の規定(課税の繰延)の適用を受けたいのですが、私の土地はその適用対象となるでしょうか」

お聞きすると、法人への賃料は、その土地の固定資産税の年額の3.5倍程度、とのことでした。

事業用買い替えの適用資産につては、国税庁のHPでは以下のように記されています。(一部簡略化)
https://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3402.htm

1 事業用資産の買換えの特例における事業用資産の範囲
事業用資産の買換えの特例を受けるためには、売った土地建物等が事業に使われていたもので、また、買換資産も事業に使うことが必要です。この事業には農業、製造業、小売業などの他、事業に準ずるものの用途に使われている土地建物等も特例が受けられる事業用資産となります。

2 事業に準ずるものとは
例えば不動産の貸付けなどの場合で事業といえるほどの規模ではないものの相当の対価を得て継続的に行われるものをいいます。
(1) 相当の対価を得ているかどうかは、不動産の貸付けなどの場合、減価償却費や固定資産税などの必要経費を回収した後において、なお相当の利益が生じているかどうかにより判断します。
(2) 継続的に行われているかどうかについては、原則として、貸付けなどに係る契約の効力が発生した時点の現況において、その貸付けなどが相当期間継続して行われることが予定されていたかどうかにより判定します。
また、対価を一度に受け取りその後全く賃料などの対価を受けていないときは、継続的に対価を得ていることにはなりません。

このように、ポイントは「相当の対価を得て継続的に行われるもの」というところになりますが、今回のテーマである「固定資産税の2~3倍の賃料」は、果たしてこの「相当の対価」と成り得るのでしょうか。

実は、この判断基準の基となったといわれている規定があります。
法人税法では、その第二条において、「収益事業」の定義をさだめていて、政令等において次のように記しています。  

政令で定める事業は、次に掲げる事業(その性質上その事業に付随して行われる行為を含む。)とする。
◎不動産貸付業のうち次に掲げるもの以外のもの
⇒土地の貸付業で、その貸付けの対価の額が低廉であることその他の財務省令で定める要件(当該事業年度の貸付期間に係る収入金額の合計額が、当該貸付けに係る土地に課される固定資産税額及び都市計画税額で当該貸付期間に係るものの合計額に三を乗じて計算した金額以下であること)を満たすもの

言い回しが少し難しいですが、要約すれば「固定資産税の年額の3倍以下の賃料での賃貸は、法人税法上では収益事業とならない」ということになります。すなわち裏を返せば「固定資産税の年額の3倍超であれば収益事業」ということになり、「相当の対価を得た」事業という解釈ができるものと考えられるのです。

先のご相談の例は、個人の所得税の話であり税目は異なりなますが、「固定資産税の2~3倍の賃料を払っておけば大丈夫!!」(厳密には3倍超になりますが・・)という根拠は、実はこの法人税法上の規定によるものと言われています。

この解釈に則れば、先のご相談の「固定資産税の3.5倍」というのは法人税法上の収益事業ということになり、所得税法に置き換えても「相当の対価」としての判断はできるものと考えられます。

その他にも「相当の対価」の基準となりうるものに「通常の地代」というものがあり、
★直前3年間の自用地の相続税評価額の平均額×(1-借地権割合)×6%
で計算することができます。

要は、「底地部分の価格(自用地価格-借地権価格)の平均額の6%相当額」ということになりますが、賃料の設定に関しては説得力のあるものと考えられます。
先の固定資産税の2~3倍(厳密には3倍超)に、この算式の金額を考慮に入れれば、さらに説得力のある「相当の対価」となるものと考えられます。

今回は、お客様のご質問から、「賃貸借契約となりうる賃料」について考えてみました。
法人からの賃料は最低限に抑えつつ、賃貸借によるメリット(評価減や小規模、買い換えなど)を享受したい場合など、ご参考になれば幸いです。

会計ソフトのクラウド化の是非

皆さんの会社では、どの程度システムのクラウド化が進んでいらっしゃいますでしょうか。

前回、中小企業の採用は致命的な状態であり、今後もさらに悪化する可能性が高いという内容を書きましたが、人材がいないとなれば、何かで補完する以外方法はありません。そして、補完のための有効な選択肢の一つがシステム化です。そして、今は新しいシステムや既存のシステムが続々とクラウド化しています。

システム化やクラウド化が全て良いという訳ではありませんが、今後は従業員一人当たりの生産性を高めることが至上命題ということを考えると、やはり中小企業も各業務のシステム化及びクラウド化を進めざるを得ないのではないかと考えます。

当社でも、人材不足は“永遠に解消されない”とみなして、近年、各業務のシステム化、そしてそのシステムのクラウド化を急速に進めてきました。

基本的な方針は、「今は困っていなくても、長期的に生産性に影響があるものは全てシステム化、クラウド化を図る。そして全てのシステムを連携させる」というものです。

ということで、今回は、中小企業においても比較的システム化が早いと言われている会計ソフトについて、税理士業界の現状と絡めてお伝えします。

実は、ここ1年半くらいで、クラウド型の会計ソフトへの移行が加速しました。

既にご存知の方も多いかと思いますが、freee(http://www.freee.co.jp/)というクラウドの会計ソフトがリリースされてから、一気にクラウド化が盛り上がりを見せています(もちろん業界的に…)。スマートフォンの対応アプリもリリースされています。ご興味がある方はwebサイトをご確認いただければと思いますが、一番良いところは会計ソフトっぽくないところです。良い意味でも悪い意味でも粗っぽい。専門家からすると使いづらいのですが、それ故に将来性を感じます。

ちなみに、freeeに続けと言わんばかりに、クラウド型の会計ソフトが次々にリリースされていますが、どう考えてもfreeeを模倣しつつ、既存の会計ソフトの枠組みにあてはめ、税理士とのタッグで開発と販促を行っているという印象を拭えません。つまり、いいとこどりを狙っているという感じでしょうか…。

私見ですが、既存の会計ソフトの構造に近くしたり、税理士とのタッグで進められる会計ソフトの問題点は、微妙に税理士側の部分最適が行われる可能性にあります。

税理士事務所の生産性が非常に低いというのは有名な話ですが、税理士事務所の生産性を上げるために、顧客にクラウド会計ソフトを導入していただき、「WIN-WINで行きましょう。そうすれば、税理士報酬が低くなりますよ」という使い方がされています。

さらに、クラウドの会計ソフトなのに税理士事務所が記帳代行の一部として利用するというのもおかしな話です。もちろん、やり方としては“あり”ですが、部分最適の最たるもので、会計ソフトがクラウド化して、企業も税理士も帳簿の入力が便利になる、ただそれだけで会計ソフトをクラウド化するという思考はいかがなものでしょう。税理士事務所がその先に受注したい業務があるのも分かりますが、それにしても…。

それに引き換え、freeeのスタンスは、税理士ともちょっとだけ協力するけど開発に関しては関係ないよ、あくまで企業側の利便性重視で税理士の利便性は考慮しないよというスタンスが貫かれているように感じます(あくまで私の勝手な推測です)。私はこのスタンスが正しいと考えます。

freeeリリース以前にもクラウド型の会計ソフトはありましたが、普及していなかったというのが現実です。それは、クラウド化といえども、既存の会計ソフトと同様の構造のものがインターネット上で使えるだけだったからです。企業側からすれば、それだけのためにわざわざ切り替える必要がありませんでした。

また、中小企業においては、会計ソフトの選択についても税理士が影響力を行使します。TKC(http://www.tkc.jp/)のように、TKC会員の税理士しか扱えない会計ソフトを筆頭に、税理士に扱っていないと言われれば、企業側が使いたい会計ソフトがあっても使えないというケースが多いというのが現実です。

それでも最近は企業側に会計ソフトの選択権も出てきましたが、企業側が選択した会計ソフトが本当に良いのかどうかは別の問題です。そもそも、経営者にとって都合がよい、経理担当者にとって都合がよいというのでは、税理士にとって都合がよいというレベルと変わりません。このような思考での会計ソフトの選択では、他の部分で歪がおきてしまう可能性があります。つまり、そこに関連する人、関連する仕事にムダが生じる可能性があります。

たかが会計ソフト、されど会計ソフト…。

基本的に、全ての企業行動の結果は数字として表現されます。そして、行動の評価の基準となる数字は、会計ソフトに入力されるべき数字となります。会計ソフトをどう考えるかは企業の方針次第ですが、企業が利用するシステムとして絶対外せないものの一つが会計ソフトになります。

そして、各業務とのつながりという意味では、会計ソフトは中心に据えやすいということは間違いありません。主に大企業で導入されているERPと同じ思考です。

例えば、freeeが打ち出している特徴の一つに仕訳の自動化があります。インターネットバンキングやクレジットカードのデータと連動し、明細が自動的に仕訳を計上してくれるというものです。また、請求書機能、給与計算機能、経費精算機能も実装しており、ここで行われたデータも自動で仕訳化されます。

そして、もう一つはスマートフォンやタブレット等のアプリやシステムとの連携です。例えばこれらのシステムに入力された売上データもfreeeに取り込み、仕訳を自動化します。

つまり、極論で言えば、freeeによって、仕訳を入力しなくても会計データが出来上がる環境が整備されつつあるということになります。

仕訳の自動化というレベルでは、あくまで経理の効率化ということにしかつながりません。しかし、会計ソフトを業務のど真ん中に据え、他のシステムとの連携を前提に、横断的にクラウド環境を構築するということはとてもインパクトのある効率化になります。なぜなら、各業務がつながりを持つということは、部分最適が行われにくく、全体最適が図られやすいからです。本当の意味で可視化されるはず。

もちろん、あくまで理屈上の話ですが、小回りと力技が利く中小企業であれば、実現はそれほど難しいものではありません。当社もそれぞれ別のシステムですが、会計ソフトはクラウド型で、預金はもちろん、売上、給与、経費精算は会計ソフトと全て連動させており、仕訳は概ね自動化されています。ですから今は専任の経理担当者はおりません。

現在、freeeの利用者の多くは個人事業主かと思われますが、給与計算、経費精算という機能まで実装してくると、法人利用の拡大も進んでいくはず。

例えば、年商規模で1億円を超えてくると経理担当者が専任でいる中小企業も多くなりますが、経理担当者は既にスタンドアロン型の会計ソフトを使いこなしているため、既存の会計ソフトを捨て、あえてクラウド化する必要があるのかという点がポイントになってきます。

それこそ、会計ソフトの問題よりも、連携させる業務のシステム化を行えるかという方が問題として大きくなってきます。

中小企業でも、システム連携を行っていかないと業務効率が悪くなる年商10億円規模辺りを境目に、システム連携が容易なクラウド型の会計ソフトの導入が進んでいます。その場合は、freeeのようなオープンなクラウド型ではなく、アクセスが制限される環境でのクラウド型となります(例えばhttp://www.tkc.jp/fx4/)。

繰り返しますが、会計ソフトのクラウド化の最大の利点は、クラウド化・仕訳の自動化よりも、他の業務ソフトとの横断的な連携の可能性と、それに伴い各現場での人員を最小限に抑え、生産性を上げることにあります。

従って、会計ソフトはクラウドが最善なんてことはなく、連携が可能であればスタンドアロン型でも何も問題はありません。ただし、将来的にはクラウド型の方が連携させやすいのは間違いありません。

当社でも、システム間連携を進めるにあたって、一部スタッフには「システム化する方が時間が掛かる。手でやった方が早い」と何度も言われてきました。

ですが、「いま、あなたがやっている仕事はいずれなくなる。いずれなくなるなら今からなくした方が良いし、あなたが一生この仕事をやる訳ではない。それならシステムで自動化しておけば、引き継ぐ必要もない」と言い放って、半ば強引にシステム化を進めてきました。もちろん、上手くいかないこともあります。

今後、人が足りなくなるということを前提にした場合、限られた労働力を振り向ける先を集中させる必要があります。人がやると生産性が低い仕事は全てシステム化し、人でないとできないところに戦力を集中させなければ、中小企業など吹き飛んでしまいます。

これは、分断されている各業務、各スタッフの仕事を、システム化、クラウド化することによって横断的に連携させ、各業務のみ各スタッフのみで行われていた部分最適を、全体最適に替えるためです。各業務を連携させることによって、各業務、各スタッフの問題点も浮かび上がるというメリットもあります。

そういう意味で、freeeのコンセプトは、中小企業にとって生産性向上のためのお手本となるものと考えます。もちろん、年商数千万円クラスの小規模事業者以外が、いきなりfreeeに移行するというのは、現時点では無謀というのは付け加えておきます。

当社は業務上、たくさんの中小企業の現場を見ておりますが、横断的なシステム連携を行っているところはトコトン行っておりますし、行っていないところは全くと言っていいほど手を付けていません。

これは、ある一面では、常に全体最適で会社を運営していこうとしているか否かの分かれ目にもつながります。もし、まだこのような思考で生産性向上を模索されていないのであれば、一度検討していただくのもよいかと考えます。