仕事柄、ハウスメーカーや工務店からのご依頼でセミナー講師を務めることがあります。
賢い住宅ローンの借り方やら固定資産税の節税法などいろいろな話をさせていただくのですが、参加者の関心が一番集まるのはやはり『住宅資金贈与』についてです。
中でも「いくらまでなら(もらっても)税金がかからないのか?」
という質問を一番多くいただくのですが、その質問を受ける度に、私は、「皆さんよくそんなに親から贈与を受けられるもんだなぁー」と関心させられます。
今、アベノミクス政策によって住宅取得等資金の贈与をはじめとした『甘やかし税制』が増え、これによる高齢者の『やり過ぎ貧乏』が懸念されています。
『相続税の節税』という大義名分もあって、子供や孫は祖父母にお願いし易く、また、話をされた祖父母もその期待に応えようと、多額の資金を一括贈与してしまいます。
その結果、自分達の生活資金が足りなくなるというものです。
アベノミクスの『甘やかし税制』には次のようなものがあります。
- 住宅取得資金の一括贈与(消費税増税後は3,000万円に拡充)
- 教育資金の一括贈与
- 結婚・子育て資金の一括贈与
このうち、結婚・子育て資金の一括贈与は今年度の税制改正で新たに創設されたものです。
教育資金の一括贈与については本年度より制度が拡充し、『通学定期券代』、『留学渡航費』が非課税対象となりました。
さらに、平成28年からは『子ども版NISA(ニーサ)』も開始されます。
NISAは『少額投資非課税制度』のことで、子ども版については年間80万円以下の投資額が認められており、この口座内での譲渡益や配当金の所得税が『非課税』となります。
アベノミクス政策によって、高齢者から若年層への資金移転がしやすい状況にありますが、当の贈与をする側の祖父母は必ずしも快く思っていない向きがあります。
平成25年に教育資金贈与の制度が創設されたときに数件のご相談をいただき、ご説明、お手続きをさせていただきました。
このとき私のところにその相談を持ってこられたのは、贈与をされる祖父母ではなく100%そのご家族でした。
今年から相続税の基礎控除が6割に減額されたこともあり相続税の心配をされるご家族が増えています。
「今のままでは相続税がかかるのではないか?」
「それならば制度を使って節税をしたい」
というのですが、私が受けた相談のうち、少なくみても半分は相続対策の必要がない案件です。
確かに現状では相続税がかかるかもしれない案件はあるのですが、当の贈与をする祖父母からしてみたら、最大の関心事は相続対策ではなくこれから先、老後の『生存対策』なのです。
そこで資金の贈与を行う前には必ず必要老後資金の計算を行ったうえで、贈与可能な余裕資金を確認して欲しいのです。
計算はザックリで結構です。
計算方法は次のとおりです。
『年間の生活費』については生活ランクでわけて考えます。
自分がどの老後を送りたいかで決めましょう。
Aランク |
VIPな老後生活 |
1,000万円 |
次に『余命年数』についてですが、日本人男性の平均寿命も80歳を超えたことから考えると少なくとも90歳までの老後資金はみておいたほうがいいでしょう。
自分は100歳まで生きると思えば、それでも構いません。
こうして計算してみるとお孫さんたちに贈与可能な資金などそれほどないということがお分かりいただけると思います。
相続税の改正によって相続税への関心が高まっていることから国税庁ホームページでは相続税の申告要否を判定するコーナーが設けられました。
国税庁 『相続税の申告要否判定コーナー』
https://www.keisan.nta.go.jp/sozoku/yohihantei/top#bsctrl
こちらのサイトで相続税の申告の要否を確認してみてはいかがでしょうか?
試算するときには今の財産額から十分な老後資金を控除していただくことをお忘れなく。