改めて考えてみる。自計化なのか、外注なのか。

基本的には結論が出ている問題です。
自計化(会計ソフトへの自社での入力)が望ましいと…。
ただし、いつも付きまとうのは費用対効果の問題です。
自計化は分かるのだけれども、新たに経理担当者を雇ってまで行うことなのか?
あるいは、経理担当者が会計ソフトに入力する時間があるのであれば、他の仕事を手伝って欲しいと思うのはおかしいことなのか?
そのような流れで、経営者自ら会計ソフトに取引を入力している中小企業もまだまだ見受けられます。
自社で業績を把握できるのは大切だけれども、外注先である税理士事務所が適時適正に処理してくれれば業績は把握できるし、そもそも経理担当者の処理が正しいとは限らない。そうであるならば、外注しよう!というのは理に適っています。
では、自計化とは本当に望ましい事なのでしょうか?
自計化に話を限定した場合、求められるのはあくまで会計ソフトへの入力。
ある程度の規模の会社になると、経理担当者が必要になってきます。パートスタッフは時間が限定されるため何でもやっていただくという訳には行きませんが、社員の場合は、基本的に何でも任せたくなります。
どうせ給与は固定なのだから、外注して外注費を支払うくらいなら、内製化したい。つまり自計化もしたいという消極的理由は否めません。
年商5億円~10億円程度になると、そもそも取引量が多くなってくるため、私どもにも「経理は何人程度が好ましいのか?」という相談が多くなります。
以前、縦割りの弊害ということをお伝えしましたが、経理は比較的分断された部署のため、人数が多くなりすぎると不要な仕事が増えやすい傾向もあります。他の部署から仕事を押し付けられるのも経理や総務が中心です。他の部署と共有される情報も、請求書等の紙ベースが多いです。
そもそも、経理や総務は雑務が非常に多く、適正人数というのは会社ごとの雑務量に応じるため、簡単に答えはでません。
また、年商数十億円という会社でも、会計ソフトへの入力は派遣社員や外注というのは珍しくはありません。データ入力としてパターン化されている訳ですから、経理からデータ入力を切り離した方が効率が良い場合もあります。
他の経理の業務としては、現預金の入出金管理、請求書、給与や総務関係なども兼ねるケースが多いです。ただし、中小企業においては、振込みの最終承認はあくまで経営者やその親族となるケースが圧倒的です。ここまで経理担当者に任せてしまうと横領の危険性が高まるからでしょう。もちろん、任せてしまった方が良い場合もありますが、判断が難しいところ…。
では、中小企業の経営者は、経理担当者に何を求めるのか?
いわゆる経理としての経理担当者なのか、
経営者の補佐としての経理担当者なのか。
もちろん、経営者は後者を求めます。
しかし、現実問題として後者としての仕事ができる経理は、全体の数パーセントというところでしょうか…。
そして、後者の仕事をできる環境にある経理担当者というのは本当に一握り。経営者は後者を求めますが、他の仕事に忙殺されて、とてもそこまで手が回りません。結局、経営者から管理指標を出すように言われた経理担当者は、税理士事務所に助けを求めます。
先ほど、自計化に話を限定した場合、求められるのはあくまで会計ソフトへの入力とお伝えしましたが、経営者の補佐となると、入力された会計データを基に分析し改善を提言できる人材です。
これができる経理担当者がいるのであれば、やはり自計化は必須です。しかし、単に会計ソフトへの入力を行い、試算表を出力するだけであれば、それは誰が行っても変わりません。
また、自計化と外注の基本的な違いは、会計データの主導権がどちらにあるのかという点につきます。外注という場合は、基本的に税理士事務所側にデータがあり、会社は結果である試算表を受けとるだけ。自計化の場合は自社にデータがありますが、基本的には経理のパソコンに入っています。
従って、経営者のパソコンに会計ソフトが入っており、自身でデータを確認するするというケースは稀です。そうなると、自社の経理のパソコンに会計ソフトが入っていようが、税理士事務所のパソコンに入っていようがあまり関係がなくなります。
さらに言えば、クラウド型の会計ソフトが増えてきたため、経営者でも自由にアクセスできる環境にあります。
経理担当者による不完全な入力で税理士事務所に補完してもらうよりも、完全な外注で完全な入力をしてもらい、経営者が直接会計ソフトにアクセスして確認するという方法もあります。
振込みや入金管理なども、クラウド型の会計ソフトとネットバンキングが直結し始めているため、わざわざ別管理しなくてもよくなってきました。さらに給与ソフトもクラウドなら同様です。
ここまでお読みになった皆さま、
経理担当による自計化は不要になってきているのでは?とお感じではないでしょうか。
お察しの通り、自計化=善、外注=悪、という考えは古くなってきました。
もちろん、業種や規模に応じますので単純には言えませんが、一昔前より、外注の方がむしろ好ましいという中小企業は増えているはずです。
特に創業したての会社であれば、この構造のままある程度の規模まで成長できると思います。
経営者の補佐として経理担当者の役割を求めるのであれば、まずは経理担当者の仕事を明確に定義する必要があります。定義された仕事をこなすのが最優先で、そこに会計ソフトへの入力を組み込むのがよいのかどうかは、その余力があるかどうかです。
比較的規模が大きくなってくると、財務担当者が必要だなんて話が出てくる場合があります。業種にもよりますが、基本的には年商数十億円規模でも必要ないかと考えます。ただし、経理の仕事を明確に定義するのが大前提です。
繰り返しますが、自計化が好ましいのは間違いありませんが、企業規模が大きくなっても自計化以外の選択肢は取り得るということです。外注しているのは後ろめたいと思われる必要もありません。
特に、経理の仕事もAIに駆逐される可能性が非常に高くなっています。より重要な仕事へのシフトを考えた方がよさそうです。