現場検証 ~ライバル分析~

自社の業績がこの先どうなっていくのか?
そして、ライバルと目する企業がどのような業績なのか?
経営者であれば気に掛けるのは当然です。
自社の業績がこの先どうなっていくのか?という点については、経営計画を継続的に立ててみるというのが一つの方法です。
しかし、5年後の経営計画が、5年後に実際に達成できていることなど稀ですし、その計画通りに進めたが故に、違う結果が待っているということも十分考えられます。
そこで参考になるのが、5年後に“あの企業”のようになっていたいなと考える、“あの企業”の業績です。外から見て憧れる“あの企業”のビジネスモデルや印象、そして規模も、業績から分析すると大したことがないというケースが多々あるからです。
つい先日も、お客様から、ある企業のサービスの手法を取り入れるとお話を伺った際、少し引っかかった点があったため、その企業の帝国データバンクの調査報告書を取り寄せていただきました。
お客様からすれば、サービス一つの相談からその企業の調査報告書にまで話が及んで、私が何を考えているのだろうと思われたかもしれません。しかし、そのある企業については、私が別のラインからあまり良くない噂を耳にしていたため、業績はどうなのかなと気に掛かったのです。
結果としては、その企業の業績はあまり良いと言えるものではありませんでした。現状では特別悪いという訳ではありませんが、この先どのような方向性に進むのだろうか?と、こちらが心配してしまう状態でした。
その企業は多くのライバル企業からベンチマークされていたらしく、お客様は少し驚かれていました。表向きの印象からはもっと良い業績と思われていたようです。
もちろん、その企業の数あるサービスのうち、ごく一部を取り入れたからといって、その企業の業績のようになる訳ではありません。しかし、そのサービスによってオペレーションが大幅に変わるようであれば、業績に与える影響も大きくなりがちです。そして、その企業と目指す方向性が同じであるならば、おのずと財務体質も似てくるのです。
もし、ベンチマークしていた企業が、実は業績不振であったとしたら、その企業をベンチマークするのがよいのかどうかを再検討しなければなりません。
ちなみに、そのお客様は他のライバル企業の調査報告書も持ち合わせていたため、自社も含めて分析を行い、今後の方向性について考えるよいきっかけになりました。
また、別のお客様からは、自社よりも規模がかなり大きい同業者が自社のエリアに入ってきたため、その影響を検討するためにその同業者を分析して欲しいという依頼がありました。その際もお客様から受け取った資料は、その同業者の帝国データバンクの調査報告書です。
分析の結果、そのお客様は健全経営を続けているのに対し、その同業者は規模は大きいもののかなり苦しんでいるというような状態でした。つまり、苦しさゆえに単価を下げてエリアを広げているような感じで、仮に短期的にはシェアを奪われても、長期的には自滅する可能性もありました。
そのような企業に合わせて自社も単価を引き下げ、ガチンコ勝負をしても意味はありません。また、製品の品質では優っているということで、相手にしないというのが基本路線となりました。そのお客様は財務体質が強固で耐える力は十分にあり、相手はエリアを広げている分、固定費も増え続けているのです。同業者の体力がいつまで続くか見物です。
なお、自社の業績を、規模もやり方も違う他社と比較しても意味がないとおっしゃる方が多いのは事実。しかし、比較しても意味がないかどうかは、比較してみなければ分かりません。そして、業績も情報です。
自社のエリアに殴り込みを掛けてきたライバル企業が、どの程度の体力があるのかどうかを知らずして戦うというのは馬鹿正直すぎます。
戦争はロジスティクスと言われますが、ビジネスも同じです。十分な体力を有さずに勢いだけで殴り込みを掛けてきた相手なのか。それとも、十分な体力を有して、用意周到に殴り込みを掛けてきた相手なのか。これを把握せずして、いたずらに張り合うのは相手の土俵で相撲を取るようなものです。
そして、もしライバル企業が自社の業績を分析した上で攻め方を検討していたとしたら、とても嫌らしい攻め方をされるかもしれません…。
ちなみに、同業者分析を行う際、帝国データバンクや東京商工リサーチの調査報告書の質が良いかどうかの問題はあります。ただし、決算書だけでは分析データとしては足りないため、それを補足するものとして調査報告書などのデータを用いて分析するというのは有効な手段と考えます。
「ライバル企業が何をしようが関係ない! 自社が頑張れば何とかなる!」も悪くないのですが、相手を知ることによって、余計な事をやらなくて済む場合が多々あります。
自社の今後を知る上でも、ライバル企業を分析してみることをお勧めします。