税制改正、異常なし。ただし…

12月14日、税制改正大綱が発表されました。
これは来年改正される予定の税制の内容を与党がまとめたものです。

まれに大改正が行われたり、隠し玉が入っている場合があるため、私どもの業界は発表と同時に目をとおします。

そして、今年の内容はというと「この場でお伝えすべきものは皆無!」と言ってよいほど、何もありませんでした…。

これまで散々報道されてきた、消費税増税対策が盛り込まれているだけです。これならば皆さまに新聞をお読みいただいた方が早い!

さて、これに先立つ11月28日。

消費税率の引上げに伴う価格設定について(ガイドライン)』なるものが公表されました。

要約すると「増税に合わせてこういう表現をして消費者を煽るな。だけどこういう表現はOKだよ」等のガイドラインです。

そして、この中で、便乗値上げについて以下のような記載がありました。

また、従来、消費税率の引上げを理由として、それ以上の値上げを行うことは「便乗値上げ」として抑制を求めてきましたが、これは消費税率引上げ前に需要に応じて値上げを行うなど経営判断に基づく自由な価格設定を行うことを何ら妨げるものではありません。

 

あくまで間接的な表現ではありますが、便乗値上げについて『容認』しています。

皆さまの中にも、本来は値上げをしないとやっていられないという状況であるにもかかわらず、便乗値上げとの指摘をおそれて耐え忍んでいるケースがあるのではないでしょうか。

そもそも便乗の批判をおそれて、その結果企業がつぶれてしまっては元も子もないのです。政府もそれを懸念しているのでしょう。

したがいまして、政府は「消費者対策は国がやるので、価格設定については企業がきちんと経営判断を行ってくださいね」と言っているわけです。

つまり、皆さまにとって注目すべきは消費者対策である税制改正の内容ではなく、事業者対策であるこのガイドラインの趣旨ではないでしょうか。

原材料費や人件費の高騰など、いくらでも値上げの根拠はあるでしょう。ただし、仮に根拠がなくとも、今の価格で経営が成り立たないのであれば、値上げか事業縮小かのいずれかを選択しなければなりません。値上げを行った上での事業縮小も重要な選択肢です。

ちなみに、ガイドラインの中で、このような記載もあります。

『⼤企業においても、消費税率引上げ後、⾃らの経営資源を活⽤して値引きなど⾃由に価格設定を⾏うことに何ら制約はありません。』

大企業は値引きOKだよとあえて記載していることを考えると、値上げについての言及は中小企業向けのメッセージであると読み取れます。

さあ、増税前に値上げをするのか、増税後に値上げに追い込まれるのか。準備を含めても残された時間は多くありません。

年末年始に掛けて、よーく自社の事業構造を見直してはいかがでしょうか。

今年もあとわずか、まだまだお得なふるさと納税

総務省は、なんて親切なんでしょう(笑)。
11月16日、ふるさと納税の返礼品の見直し要請に応じていない自治体(11月1日時点)を総務省がHPで公表しました。
総務省の発表資料によると、「返礼割合実質3割超の返礼品を送付している」自治体は9月1日時点で246あったのが25に減少、「地場産品以外の返礼品を送付している」自治体は190あったのが73に減少したようです。
資料からは「返礼品割合3割超」「地場産品以外」の2つともを守らなかった自治体が7あることも、その具体的な自治体名も分かります。
自治体に、見直し要請に応じる義務はないため、総務省は指導に従わない自治体を公表することで懲罰的な意味合いを持たせようとしたと考えられます。
さて、勘のいい人はもうお気付きでしょう。
この公表により、ふるさと納税のお得感が薄れてきた現在でも、納税先としてまだまだ「お得な自治体」を、総務省自らが教えてくれているという結果になってしまっているのです(苦笑)。
実際、公表されている自治体の返礼品を調べてみたところ、返礼品の金額が明らかに寄付額の5割ほどであることが分かる自治体がありました。
ふるさと納税が税制として欠陥があることは明らかですが、必死に自社の利益をあげて納税し、自身の役員報酬からも多額の納税を行っている中小企業経営者にとって、自らの必死な努力によって納めた税金の一部を合法的に取り返す有効な手段である以上、利用しない手はありません。
ちなみに、ふるさと納税の返礼品は「一時所得」として課税対象になります。
特別控除50万円がありますので、通常はあまり気にする必要はありませんが、多額のふるさと納税をした方や、生命保険の満期保険金や解約一時金などを受け取った方については合算になりますので、申告漏れにならないように注意が必要です。
ただでさえ忙しい年末、納税先が多くなるほど決済手続きなどが面倒でイヤになってしまいますが、2019年4月以降は制度そのものに規制が入りそうですので、お得に楽しめるのは最期かもしれません。
手間を惜しまず、今年も1年間、仕事を応援してくれた家族に喜んでもらうための仕事と考え、年末年始は家族でふるさと納税を楽しみましょう。