アフターコロナに行き着くまでに・・・

想像の上を、さらに大きく超えてきた…。

それが皆さま共通の認識ではないでしょうか。

すでにアフターコロナについて語られていますが、そこまで行き着く中小企業がどの程度あるのだろうか…それが私どもの認識です。

日本の中小企業で働く方は約3,000万人。

このメールマガジンをお読みになられている方の多くは中小企業の経営者または経営に関与されている方だと思われます。

現状は完全に戦場です。
皆さまは今まさに重大な決断を行われている最中のはず。

後方(国)から支援物資(制度融資、助成金など)を送り続けると約束はされていますが、支援物資が届くまでには時間が掛かります。量にも限度があります。まさに持久戦です。

支援物資では半年が限度と考えられるため、新型コロナウイルス感染症が流行する前でさえも四苦八苦されていた中小企業の最終的な帰還率はかなり低くなるはずです。

もともと余剰物資(お金)を持っていた中小企業は、さらなる支援物資を得て持久戦を耐え抜き、傷付きながらも戦場から撤退できるでしょう。

もちろん、業種業態・地域により現時点での新型コロナの影響の及び方はまるで異なります。地方はまだ様子見かもしれません。しかし大都市圏および観光地の被害は甚大です。

そして、このたび失われた物資は永久に戻ってきません。傷付いた中小企業は国からの支援物資によって穴埋めしなければなりません。

「手元資金がすべて」

経営者なら誰もが分かっていることです。
ですが今回ほど身に沁みる時はなかったことでしょう。

生き残って事業を続けるのであれば、とにかく無駄な荷物(不要・不急の固定費)を今すぐ捨てるべきです。少しでも身軽になって、少しでも多くの物資を持ったまま戦場から離脱してください。

不要・不急の固定費と判断された中に人件費が含まれていたら…。それはもう仕方がありません。不要な人件費があったということは「不要な事業」があったということです。これまで不要な事業をだましだまし継続していた経営者の責任です。

これで日本中の労働者が気付いたはずです。
平時に給与をたくさん払ってくれる会社よりも、非常時に雇用と給与を守ってくれる会社に身を置くべきだと。今後は人材も大きく動き出します(既に動き始めています)。

繰り返します。

「手元資金がすべて」

復興(あえてこう表現します)が始まったとき、どの企業も疲弊しています。疲弊していても、お金がある企業からいち早く動けます。復興時はスピードが全てです。

疲弊している同業を横目に、皆さまはいち早く日常を取り戻す必要があります。

「いまの売上がない」ということで、焦って不要な事業または不急の仕事を始めないでください。同じことが繰り返されてしまいます。復興時の本業のみにお金とエネルギーを集中させてください。

もし、自社の売上がお客様にとって「不要・不急な固定費」の対象であったとしたら…。それはもう仕方がありません。中小企業が原理原則とすべき、高付加価値の事業からずれていたということになります。

今回の件を糧に、復興時に備えて今からでも自社の事業を再定義してください。

新型コロナ戦争はまだまだ続きます。
国もさらに支援物資を送ってくるでしょう。
支援物資を確実に受け取り、不要・不急な固定費は今すぐに捨ててください。

まずはアフターコロナに行き着くことが重要です。

今、自社株の異動を考える

家電量販店最大手のヤマダ電機は新型コロナウイルスの影響で株価に割安感が出てきたことを勘案し、株主還元の強化や資本効率の向上を図るために、500億円を上限に自社株を取得することを4月1日に発表しました。

新型コロナウイルス騒動の収束が未だ遠く見えず、経営にも大きな影響が出ているところですが、この機会を利用して検討していただきたいことがあります。

それは自社株式の異動です。

事業承継における株式の問題は、特に業績の良い中小企業にあっては切実です。
100%の納税猶予を受けることが可能な事業承継税制などもありますが、実務上多くの問題があり、簡単には使えないのが実状です。

ご存知のように今回の新型コロナウイルス騒動で、現在、上場株式の株価が大きく乱高下しています。
こうした状況に至るそもそもの原因が違いますので単純に同じものとして捉えることはできませんが、リーマンショック時、非上場株式の評価計算に使用する類似業種批准価額が信じられないほど下がり、私たち中小企業の自社株評価額も総じて下がることになりました。

そうです、今回の騒動によって類似業種比準価額が大きく下がることで、自社株評価額も大きく下がることが期待されるのです。

株価評価に使用する類似業種批准価額は例年、1~2月分が6月中旬前後、その後2か月分ずつ、3~4月分が7月中旬前後、5~6月分が8月中旬前後に公表されています。

つまり、実際の株式異動時期においては類似業種批准価額が公表されていないため、タイムリーに税務上の評価額を算定することができず、株価が最も下がる時期がいつになるかを今知ることはできません。

しかし、いずれにしても幅広い業種において4月以降の類似業種批准価額が下がり、自社株の評価額が下がる可能性が非常に高く、ここから数か月の間を、自社株式を異動する時期として検討する価値はおおいにあるのです。

今回の騒動で業績に大きなダメージを受けている企業が多いと思いますが、事業承継を見据え、株を異動するチャンスと切り替えることも重要です。

対症療法と原因療法

ついにはオリンピックまでも吹き飛ばしてしまった新型コロナウイルス。

事態が収束しても、すべての経済活動を「再開」で済ませられるような状況ではなくなりました。その間に潰れていく企業は増加し、自粛モードが続けば停滞期間が長期に渡ることも考えられます。

以下の図表は現在も申請が殺到している雇用調整助成金の過去の実績データです。

(労働政策研究・研修機構(JILPT)労働政策研究報告書No.187、6ページ)

リーマン・ショック後に突出して支給が行われ、その後に東日本大震災も発生、最終的には4~5年間は影響があったことが分かります。

次に同期間の完全失業率と有効求人倍率の図表です。やはり元に戻るのに同程度かかっています。

(労働政策研究・研修機構(JILPT)労働政策研究報告書No.187、5ページ)

雇用調整助成金の主な支給要件には「直近1ヵ月の売上高が前年同期に比べて10%以上減少」というものがありますが、あくまで一時休業を行った場合に支給を受けることができるというだけであって、売上高が10%以上減少しているが一時休業するほど暇ではない・余裕がないという場合は申請できません。

そして、今回は全国的、かつ幅広い業界に影響を与えており、雇用調整助成金の支給を受けない企業においても10%以上の減収は当然のごとく発生するはず。

これが3ヵ月程度の10%減ではなく、リーマン・ショック時のように4~5年間も影響を受けるようであればどうしていくべきなのか…。

普通に考えたら制度融資や返済猶予を中心とした国の支援で乗り切るしかありません。世の中にあふれている情報も対症療法がほとんどです。しかし、対症療法だけで乗り切ろうとするのはとても危険だと考えます。

それは新型コロナウイルス発生前の売上高を完全終息後にも維持できるのか?という点が抜けているからです。

「そもそも発生前にも十分な利益が出ていたのか?」、「そもそも無理して経営していたのではないか?」。

つまり、今回は新型コロナウイルスにより強制リセットを強いられましたが、これを機会にいま一度自社の売上高と固定費の構造を冷静に分析してみるべきです。

売上高を維持できないにもかかわらず、今後も固定費を維持しようとすれば無理が生じます。例えば売上高が現在よりも20%減となれば以下のように固定費を変えなければなりません(なお、限界利益率を上げるというのは鉄則ですが、大幅な固定費の削減は外注比率を増加させることにもつながるため、あえて限界利益率を下げています)。

「固定費を30%下げることなど不可能…」

そのとおり、実際にできる企業は数少ないでしょう。しかし、「売上高が半分になったら?」という話と一緒で、「固定費を30%下げたら?」というところから検討を始めないと大きな赤字を垂れ流すことになります。

新型コロナウイルスの影響が大きい中小企業にとっては対症療法で何とかなるレベルではありません。しかし、国は対症療法を進めてきますし、その対症療法も受けなければなりません。

しかし、同時に原因療法も模索してください。

自社の経営状態が改善しないのは、「新型コロナウイルスの影響ではなく、対症療法を繰り返した結果であり、原因療法に手を付けなかったことだ」と自覚する。

これがすべてだと考えます。

それでもまだ原因療法に手を付けられないのであれば、まだ心のどこかで景気が良くなることを願っているのではないてしょうか?