今、自社株の異動を考える

家電量販店最大手のヤマダ電機は新型コロナウイルスの影響で株価に割安感が出てきたことを勘案し、株主還元の強化や資本効率の向上を図るために、500億円を上限に自社株を取得することを4月1日に発表しました。

新型コロナウイルス騒動の収束が未だ遠く見えず、経営にも大きな影響が出ているところですが、この機会を利用して検討していただきたいことがあります。

それは自社株式の異動です。

事業承継における株式の問題は、特に業績の良い中小企業にあっては切実です。
100%の納税猶予を受けることが可能な事業承継税制などもありますが、実務上多くの問題があり、簡単には使えないのが実状です。

ご存知のように今回の新型コロナウイルス騒動で、現在、上場株式の株価が大きく乱高下しています。
こうした状況に至るそもそもの原因が違いますので単純に同じものとして捉えることはできませんが、リーマンショック時、非上場株式の評価計算に使用する類似業種批准価額が信じられないほど下がり、私たち中小企業の自社株評価額も総じて下がることになりました。

そうです、今回の騒動によって類似業種比準価額が大きく下がることで、自社株評価額も大きく下がることが期待されるのです。

株価評価に使用する類似業種批准価額は例年、1~2月分が6月中旬前後、その後2か月分ずつ、3~4月分が7月中旬前後、5~6月分が8月中旬前後に公表されています。

つまり、実際の株式異動時期においては類似業種批准価額が公表されていないため、タイムリーに税務上の評価額を算定することができず、株価が最も下がる時期がいつになるかを今知ることはできません。

しかし、いずれにしても幅広い業種において4月以降の類似業種批准価額が下がり、自社株の評価額が下がる可能性が非常に高く、ここから数か月の間を、自社株式を異動する時期として検討する価値はおおいにあるのです。

今回の騒動で業績に大きなダメージを受けている企業が多いと思いますが、事業承継を見据え、株を異動するチャンスと切り替えることも重要です。