無税の生前贈与

毎年恒例、税制改正論議が活発になる季節がやってきました。

今年の注目は、昨年の税制改正大綱で本格的な検討を進めることが明言された贈与税の暦年課税制度の見直しです。

もし仮に暦年贈与に大きなメスが入れば、中小企業経営者や資産家とそのご家族は財産の承継計画の見直しを余儀なくされてしまいますので、今後の改正動向には注意していきましょう。

そして、節税を目的とした生前贈与ができなくなる可能性がある今だからこそ、あらためて目を向けていただきたいことがあります。

それは両親の記憶を受け継いでおくこと。
「目に見えない財産」の承継、これも立派な生前贈与です。

両親の生い立ちや出会い、起業の経緯や過去の失敗談などの記憶を受け継ぎ、その生きざまを知ることは自分自身を知ることに他なりません。

しかしながら、両親と新旧経営者として対峙してきた2代目経営者の場合、両親との間に通常の親子関係とは異なる溝が生じてしまっていることが少なくなく、そうなると、よほど意識的にならないかぎりは、そうした機会を持つことができなくなってしまいます。

また、特に仲が悪くなかったとしても男同士であればなお、照れくささも手伝って両親がたどってきた歴史についてあらためて聞く機会など、なかなか持てないのが普通かもしれません。

しかし、両親がこの世を去った後では、どれだけ後悔してもこの財産だけは決して承継できないことを、きちんと認識しておいてほしいのです。

不動産や預金などの財産の承継も大切ですが、それと同じかそれ以上に「目に見えない財産」である両親の記憶の承継だって大切だと私は思います。

もし、まだ両親がご健在であるならば、ぜひたくさん話しを聞いておいてください。
きっと、ご両親は照れくさそうに、そして嬉しそうに語ってくれるはずです。
いつか必ず、あの時、聞いておいて本当に良かったと感じる時がきます。

お子さまがいらっしゃる方は、昔話をたくさん語ってあげてください。
受け継がれていく目には見えない財産が、いつか必ず我が子を助けます。

別れは明日来るかもしれないのです。