インボイス制度対応の実務について、ひと言

皆さまの会社にも、取引先から「適格請求書発行事業者の登録番号」の通知や、状況確認の書類が届き始めていることと思われます。

ここで気になるのは、それが郵送、FAX、メールなどで、ご丁寧に行われている点です。
取引先が100社あれば、100社に向けてそれを行っている…。

まず、法人については「法人番号」というものが割り振られていることはご存じのとおり。
この法人番号は国税庁のサイトで簡単に検索できます。

  ⇒ 『国税庁 法人番号公表サイト』

そして、インボイスの登録番号は法人番号の先頭に『』を付けただけです。つまり、法人番号が分かれば登録番号も分かります。ただし、その法人が現時点で登録しているかどうかまでは分からないため、同じく国税庁のサイトで登録の有無を確認できます。

  ⇒ 『国税庁 適格請求書発行事業者公表サイト』

ここで登録されていることを確認できれば、わざわざ取引先に問い合わせる必要はありません。そうであるにもかかわらず、郵送でやり取りする必要があるのか…という点がとても気になっています。

「とはいえ、取引先が100社あれば、自分で100社分検索するのも面倒だろう?」

いえ…、紙で取得した番号をわざわざ手で入力する方が面倒だと思われます(入力しないのであれば取得の必要もありません)。公表サイトのデータであればコピペで済みます。なお、気の利いた事業者は自社のホームページで登録番号を公表しています。隠すものでもありませんし、取引先から問い合わせがあれば「ホームページを見てね」と言ってしまえば終わりです。

基本的に、消費税の免税事業者(おおむね売上高が1,000万円未満)ではない限り、登録しないというケースはほぼ無いとお考えいただいて結構です。

つまり、インボイス制度に乗ってこないのは、消費税の納税のメリットがない特殊な事業を行う事業者、および個人事業者を中心とした売上高が1,000万円未満の小規模零細事業者となります。

このような可能性がある事業者と取引がある場合には、個別で確認が必要かもしれませんが、それ以外の事業者は確認すら不要ではないかと考えています。少なくとも1年後からは請求書などに必ず登録番号が記載されるため、事後的な対応でも問題ないのです。

また、取引先にこのような通知を行うことは「必ず登録してね!」と圧力を掛けていることと同じです。それなりの規模の企業にこのような通知を送るのはそもそも失礼ですし(気を付けてくださいね…)、小規模零細事業者に対しては圧力以外の何物でもありません。

「登録しないと取引しないぞ!」

本来は消費税の納税を行う必要が無い規模なのに、取引の継続を人質に取るような手法が今の時代に合っているのかという点は、気に留めていただく必要があります。

優秀な方が副業などで数百万円程度を稼いでいる場合も同じです。このような方に圧力を掛けても意味がありません。すぐに登録番号無しを容認してくれる取引先に乗り換えるでしょう。

この登録番号の取り扱い一つとっても、その企業のスタンスが垣間見えます。とくに個人事業の方との取引が多い場合は、炎上しかねませんのでご注意を。

インボイス制度は消費税だけの問題ではないのです。
大切な取引先とは丁寧なコミュニケーションを行われてください。