【困難な時期】と【状況判断】

先日、当社のWEBサイトの下記文章をご覧になって、ご連絡をいただいた方がいらっしゃいます。
「最も困難な創業時を乗り切るためには、やはり経営計画の立案は絶対です。
それも、創業初年度のみならず、その後の5年間も含めた、6ヵ年の経営計画を立案していただきます。
そこまでやって、軌道に乗らないのであれば、早急に見切りをつけるべきです。
必ず次の機会があるのですから。」
この方はおっしゃいました。
起業から2年が経過し、上記文章を読んで考え出したところ、壁にぶつかったと・・・。
そこに商材があったから起業したものの、それが6年後にあるかどうかは考えていなかったと・・・。
そこで私は、以下のようにお伝えしました。
「今からでも遅くはないので、この先の計画を立てて、大いに苦しみましょうよ。
当社はそれを見て、好きな事を言わせてもらいますので(笑)」
この方が、これからどのような計画を立て、そしてどのように行動をされるのかはまだ分かりません。
ただ、たまたま目にした当社WEBサイトの情報から、自社の現状を考えられ、当社にご連絡いただくという判断をされました。
この方にとって、この判断は必須だったと考えます。
状況的にも、これからの行動計画と数字への落とし込みをしておかないと、大変な事態になりかねません。
走りながらでは、気付かない事がたくさんあります。
一度立ち止まって、自らに気付かせなければならない事が山ほどあります。
2008年12月。
今の状況判断が今後数年間の行動に影響を与えるという点について、これ程重要な時期は稀ではないでしょうか?
この金融危機で、損害を受けた方も多い事でしょう。
しかし、状況を見極め、タイミング良く判断された方は、損害を被らずに済んでいます。
一体、何が違うのだと考えられますか?
それは、皆さんもご存じのように、情報の選別、正しい分析及び適切な判断につきます。
何から情報を得て、そこで何を考え、そして何を判断するのか?
今回の金融危機で言えば、株価の暴落前に、岡本は自らの投資をキャッシュポジションに変えていたそうです。
そういう意味では、岡本は金融危機に対して、情報収集・分析・判断を成功させたという事になります。
また、岡本は同時にお客様にもアナウンスしていました。
中には、岡本の話を聞いて、同じくキャッシュポジションにされた方がいるそうです。
自分の考えと一致しているかどうかは別として、“岡本の判断を信じる”と判断された方は、被害を抑える事が出来ました。
今回の金融危機は、一つの状況判断が、大きな影響を与える典型例です。
それでは、皆さんの会社は、ここでどのような判断をされますか?
今の判断は、当面の不況期の行動及び結果に大きな影響を与えます。
判断するための情報は既に入手されていますか?
入手した情報を分析されていますか?
当社は、お手伝いをする事は出来ますが、あくまで判断するのは皆さんです。
ご自身で考えられる必要があります。
今年の年末年始は休みが長そうなので、苦しむ時間もたくさんあると思います。
結果を残す方は、仕事のMらしいですよ(笑)
私の担当としては、今年最後のメルマガになります。
よくお客様に、「読者を追い立てるような文章が多いよね」と言われます。
いまだに、「儲かる」と甘い言葉で釣ろうとしている方が多いので、個人的に逆へ行きたがるのでしょうね(笑)

会社を切り売る

人間良いところもあれば、悪いところもある。自分にとってイヤなところも、人から見ると良い場合もある。
最近ポッコリと出始めたおなか、とても憎らしい。でも人によっては「かわいいね」、「貫禄があっていいね」と言ってくれることもある。
だったらあなたに譲ります、このおなか。 もしもおなかを売っちゃうとしたら…?
今さら私ごときが言うまでもありませんが、今後は経営環境が厳しくなるばかり…、「企業再生」はますます進んでいくことでしょう。
「企業再生」とは、あらゆる方法を使って、時には会社が形を変えて、蘇ることを言います。
会社も生き物と一緒です。環境に適合するためには、フレキシブルに形を変えて順応していかなければなりません。恐竜はもういません。
今のご時世ですと「企業再生」がいつまでも対岸の火事とは限りません。そして、「企業再生」は果たして火事なのでしょうか?
「企業再生」の中から、例えば、会社分割、事業譲渡。
会社分割、事業譲渡とは、会社のうまくいっていない事業を、欲しがる別の会社に切り売りすることです。
自分にとっては憎らしいおなか。でも他人にとっては羨ましいおなか。
「わざわざ、うまくいっていないセクションを別の会社に移さなくても、閉じてしまえばいいじゃないか!」
そう割り切って、大幅なリストラが出来る社長さんは問題ありません。しかし、そこまで冷酷に徹しきれない社長さんが多いのもまた事実。
情と現実の狭間で、見ない振りをしていた結末が近づく…。せめてもの救いは配偶者に自宅を贈与していたこと…、なんてケースも十分にありえます。
会社には、うまくいっている事業もあれば、うまくいっていない事業もあります。
イヤだな、自分には向いていないな、と思いつつ、騙し騙し付き合っていくのか。
他人に売っちゃって、そのお金を資本に、本業を充実させるのか。
社長としての正しい判断は? 自分自身の本音は?
もちろん、実際の現場ではそんな単純な話ではありません。でもきっかけとしては十分。すこしでも心に触れた方は、周りのブレインにお話してみてはいかがでしょうか。

適正値の変更

このところ、取材を受ける機会が多くなっています。
ここ2週間でも、『フォーブス』『宝島』『夕刊フジ』の取材を受けました。
『クロワッサン』の取材を受けた辺りから、取材される雑誌などの幅が広くなってきているように感じます。
そして、ここ2週間で受けた取材の質問は、日垣隆さんとの共著『世界一利益に直結する“ウラ”経営学』の内容に関わるものに集中しています。
この著書は、倒産したアスコムの再建に、男気で協力した一冊ですが、再建中のアスコムには、取次会社の対応が冷たく、リアル書店では、紀伊国屋、丸善くらいにしか置かれることがなく、ほとんど幻の本みたいなことになっています(笑)。
しかし、そんな境遇の本の割には、日垣隆さんのブランドのおかげか、ジワジワと売れているようで、1万6000冊の初版の在庫はほとんどないようです(通常ならば、とっくに増刷ですが、この本の運命はこのまま終わらざるを得ません)。
比較的サラリーマン向けに書かれた本が、取次会社のサラリーマンの手で阻まれるというのが皮肉で笑ってしまいますが、その阻まれた本が雑誌社のサラリーマンの目にとまり、内容の一部が違った方法で公開されているというのも面白い現象です。
その雑誌の取材で必ず聞かれるのが、「変化する人間」と「変化しない人間」のお話です。
変化をする人としない人が一定割合でいる・・ということを著作に書いたのですが、この部分が、サラリーマン的に気になるらしく、「変化しない人はどうしたらいいのでしょうか?」という質問をいただくのです。
この質問には、ある前提があります。
それは、“世の中は変化するのだから、人も変化をしなければならない”という前提です。
そうでなくては、この質問は成り立たないでしょう。
では、この前提は正しいのでしょうか?
それは、ケースバイケースでしょう。
決して、いつも正しい前提とは言えないと思います。
ここのところ、サブプライム問題で大きく損失を出した人たちは、変化型の人々だと思います(売買時期によって様々ですから一概には言えませんが・・・)。
そして、郵便貯金に預けっぱなしのおじいちゃん、おばあちゃんは、結局、淡々と積み立てを続けていたことになります。
また、2003年から2007年前半くらいまでは、リスクを取る時代でした。
ですから、変化に積極的だった企業が良い思いをしてきました。
しかし、その時代が終わり、変化に積極的だった企業があえいでいます。
週刊誌などでは、倒産可能性企業の一覧も掲載されたりしています。
また、リスクが利益に変化しやすかった上記の期間に、大きく利益をあげた企業ばかりがあるわけではありません、この期間に投資に失敗し損失を積み立てた企業だってあります。
問題は、変化できるとかできないというところにはありません。
残念ながら、著作では、本の構成上、変化する方がよいという前提で書かれてしまった感がありますが、そんなことはないのです。
問題は、自分が、どちらの種類の人間であるかを知るところにあります。
そして、同様に、各会社の財務諸表にも、それぞれの個性に応じた適正値、その企業の時期に応じた適正値があります。
そうした適正値の管理こそが重要です。
問題は、多くの企業が、その自分にあった適正値に意識的ではないというところにあります。
当社は、最近、この適正値を変えました。
組織の成長過程から考えて変えるべきと考えたからです。
また、あるお客様の適正値も変えていただきました。
そろそろ、リスクに対して消極的になろうという考えからです。
また、あるお客様には、逆に保守的な数値から少しリスクを取っていただく数値の管理をお願いしました。
財務に、これが絶対という答えがありません。
そして、今はいろいろいろな意味で、こうした数値の見方を変える企業が多くなる時期だと思います。

【スタッフ】or【システム】

これは、中小企業にとって、永遠のテーマでしょうか?
特定の業務が、現状の体制では対応出来なくなった場合、基本的な選択肢は二つです。
人員を増加するか? システムを導入するか?
大企業であれば、良否は別にして、両方を同時に実行する事が出来ます。
つまり、正社員やパート、派遣社員等を大量採用し、
必要なシステムを導入する。
システムが順調に稼動すれば、順次、スタッフを減少させ、
システムが頓挫すれば、そのまま人力で対応する。
しかし、中小企業では同時実行が難しいので、選択せざるを得ません。
「スタッフ」or「システム」です。
スタッフについては、大企業のように大量採用で振るいに掛ける事が出来ません。
少ない採用人数の中で、経営者は常にドキドキしています(苦笑)
期待通りに働いてくれるか?
すぐに辞めないか?
一方、システムは、スタッフの採用以上に大きな決断が必要となります。
システムの規模にもよるでしょうが、投資額は少なくても100万円単位。
最近は、1,000万円単位のシステムを導入するケースも増えてきました。
ほとんどの企業は、システム導入について一度は考えた事があると思いますが、実際に導入している中小企業はまだまだ少数派。
それは、コストが最も大きな要因ですが、システムというブラックボックス的なものに、大きな投資を行う事への恐怖があるのも事実です。
例えば、スタッフ採用とシステム導入のコスト負担を比べると、3年未満くらいのスパンでは、スタッフ採用の方が低コストで済みます。
しかし、3年を越える辺りから、明らかにコスト負担が逆転してきます。
つまり、システム導入を決断出来るかどうかというのは、企業が3~5年以上の中長期的な戦略を描けるかどうかに大きく影響します。
当然のことながら、明日の事も考えられない企業は、システムを導入したところで上手くいくはずがありません。
そして、システム導入の決断という大きな山を越えたとしても、さらに大きな山が待っている点も怖いところ。
それは、システムが企業の期待通りに稼動するかどうかという事です。
かつては、大企業しか相手にしていなかったシステム開発会社も、大企業のIT投資が一段楽してきたため、近年は中小企業をターゲットにしています。
さらに、そのような会社が大企業の関連会社だったりすると、発注する側も名前で安心してしまい、他社との比較も十分行わずに、開発を依頼してしまいます。
そのような開発会社の見積書を何度も見た事がありますが、
お客様の「高い!」の一言で、驚く程の額の値引きが行われます。
じゃあ、その金額の根拠は何だったのだと(苦笑)
または、裏で手を抜くのかと勘ぐってしまいます。
システム導入に際しては、予算、業務プロセスの標準化、人材、セキュリティ等、クリアしなければならない問題が山積みです。
例え時間がかかっても、しっかりとコンサルティングを行ってくれ、
「業務オペレーション上、システムは必要ありません!」
とまでアドバイスをしてくれる会社に依頼したいものですね。
そこまで行ってくれて、見積もりの額が大きく変わる事などあり得ないのですから。
どの業界でもそうですが、見積もりの精度が、その会社の力でもあります。
当社も、お客様から紹介のご依頼をいただきますが、幅広いネットワークを持ってしても、安心してご紹介出来るシステム開発会社は数社しかないのが現実です。
売上高については、システムに頼らなくても、色々と勝負ができます。
ただ、いざ勝負しようとしたときに、業務効率が良くないと、大きな機会損失が発生してしまいます。
さらに、これからは、スタッフの人数は必要以上に増やさず、一人当たりの人件費を上げるような経営を行っていかないと、優秀な人材を確保できません。
そうであると、業務効率をいかに上げるか? そのためにシステム導入が必要なのか?
について、中小企業も真剣に考える時期に来ているのではないでしょうか・・・。
当社も、とうとう残業禁止デーが導入される事になりましたし(笑)

バランスを崩す経営

ソフトバンクの資金ショートの噂がまた出ています。
秋には資金ショートするというのがその内容ですが、銀行団がソフトバンクの申し出を簡単に断るとは思えませんから、何らかの形で乗り切るのでしょう。
この資金ショートの噂は今回が初めてではありません。
周期的に、ソフトバンク周辺で起こる噂です。
したがって、孫正義という経営者の行動は、財務的視点と心理学的な視点を交えて見てみるとおもしろいのかもしれません。
そのおもしろさを一言で言うと、
「孫正義という経営者は財務的な危機を自ら演出する性行がある・・」
というような言い方になるでしょうか?
まず、財務的視点から見て、財務的危機を演出することは決して悪いことではありません。
会計の専門家は、財務的に安全な経営をほめる傾向がありますが、財務的に安全なだけの会社は、成長余力に乏しく決して安全ではないというのが現実です。
何かの本にも書きましたが、経営者の仕事は財務的バランスを崩すのが重要な仕事であり、孫正義氏の行動は決して間違ったものではありません。
しかし、バランスを崩す程度という話になると、“間違っていない行動”にも問題があります。
経営では財務レバレッジや借入レバレッジなど、バランスを犠牲にするかわりに利益率を高くする手法がいくつかありますが、どれもバランスを崩しすぎては倒産になる可能性も出てきます。
そこで、そのバランスの「適正値」がどこかで誰もが悩むわけです。
ところが、孫正義という経営者は、一般の経営者が悩むラインを軽く超えて、バランスを崩しにかかります。
これは天才だからなのか、度胸があるだけなのかはわかりませんが、もしかしたら、孫正義氏の心理的な性行にある可能性もあります。
中小企業経営者の中には、少しうまくいきはじめると、そのうまくいっている状態が居心地が悪く感じられて、おかしな行動をし出す人たちがいます。
こういう人たちは決して少数派ではなく、中小企業経営者には結構な数がいると思われます。
中には、端から見たらナンセンスに思えるような投資ばかりを続ける、失敗に喜びを感じてしまうような人々も少なくありません。
こうした中小企業経営者の性行には、幼少期の親との関わりからおきている可能性もあるかもしれません・・というか心理学的視点から見ると、そういう言い方が成り立ちます。
私たちは、お金があり、家族が健康で・・・といった一般的な幸せ感が万人共通の幸せ感だと思いがちですが、個々に見ると、そうした一般的幸せ感を幸せ感として持つ人はほとんどいないのが現実です。
そして、孫正義氏の場合は、資金ショートなどの財務的危機を演出することに幸せ感を感じている可能性だってあるのです。
財務というと、絶対的な価値観のように思われがちですが、財務ほど相対的なものはありません。言い方を変えれば、いい加減と言っても良いでしょう。
そうした財務の世界にも、「ここまでいったら、ヤバイでしょ」という経験値があり、それを犯すと下に向かう重力が待っていることになりますが、それをも超える経営者は現に存在しますし、孫正義という経営者もそうした経営者の一人かもしれません(それは、今後結果が出ます)。
実は、財務の難しさはここにあります。
経営者によって百人百様なのです。
ソフトバンクの財務バランスが崩れている噂を聞くたびに、私はそんなことを思います。そして、財務屋の限界も感じます。
さらに、それ以上に経営者としての限界を感じます。
数字のプロである私には、バランスを崩しすぎた経営はできないからです。
時に、そうした経営ができる天才たちを羨ましくも思いますし、そんな思いから過去に、財務の常識を越えた天才たちの申し出を応援してきたこともあります。
ただし、ある種の経営者たちにとっては、そうしたギリギリ感は王道としても、そうしたギリギリが無知から生じた場合はもちろん論外です。
今回のソフトバンクはどうなるか?
注目しましょう。

横領!

いきなり、シリアスな出だしです(苦笑)
ニュースでは定期的に見聞きしますよね。
最近も、6億円の横領事件が話題となっています。
とはいえ、報道される横領など、氷山の一角の、更にごく一部・・・。
なぜなら、報道されるのは、企業側が発表せざるを得ないケースだから。
やはり対外的なイメージの悪化は避けられないので、普通は隠したい事実です。
例え報道されなくても、中小企業レベルでさえ、情報はどこからか漏れ伝わります。
そして、警察に訴え出ても、常に刑事事件になるとは限りません。
警察は、余程の事がない限り、動いてくれないからです。
また、諸事情により、警察にも相談できずに泣き寝入りするケースもあります。
ですから、被害に合われた企業は、その額に関わらず、悔しい想いをされた事でしょう。
特に、中小企業は内部統制制度がしっかり整備されていないため、横領の事実が発覚しても、その根拠となる物的証拠が残っていないのです。
基本的には、その担当者に任せ切りになっていますので。
実際、社内に明確かつ直接的な証拠が残っていない限り、裏取りが出来るのは、個人の金融機関の入金記録くらい。
とはいえ、金融機関の記録を調査出来るのは、警察や税務署です。
ということは、警察が動かない限りは調べられないですし、警察に動いてもらうためには証拠が必要。
そして、警察を動かすほどの肝心な証拠はない・・・。
ぐるぐる、ぐるぐる・・・袋小路状態。
更に言えば、横領される方は、現金で持っているケースも多いのです。
そもそもお金がないから横領する訳で、発覚する頃には使い切っています。
従って、例え刑事事件になったとしても、お金を取り返す事も困難・・・。
ですから、横領は、“発覚してしまった時点でアウト!”
事後では、どうにもなりません。
どちらかというと、横領した社員にケジメをつけさせるため、及び、今後の社内体制の再構築のきっかけとして、事後処理が行われます。
結局、横領は発生する前の時点、つまりは、横領防止のための仕組みが構築されているか否かで勝負は決まっているのです。
私の今までの経験からすると、経営者のほとんどは性善説に立っています。
出発点は社員を信じること。
従って、社員を信じていないと想像させるような仕組みを取り入れている中小企業は少ないのが現実です。
「うちの社長は、私たち社員の事を信じているはずがない!」
そう考える社員の方もいらっしゃるかもしれません(苦笑)
ですが、経営者の普段の言動が全てではありません。
「うちの社員に限って・・・」
これが経営者の本音です。
特に、中小企業の経営者にとって、社員は身内も同然。
社員を信じなければ、何も始まりません。
だからこそ、何かが起こった時は苦しむのです。
横領防止の対策としては、最低限、内部牽制の仕組みを取り入れる事が重要です。
内部牽制の導入と税理士による二重チェックで、横領の防止と横領発生後の早期発見を図る体制作りが基本です。
あれだけ騒いだJ-SOX法までは必要ありませんので(苦笑)
信頼出来るとはいえ、担当者一人に任せるというのは、本人にとっても責任が重く、辛いもの。
経営者側は、社員を信じていないからという事ではなく、社員に誤った判断をさせないために、横領防止の対策を導入するという思考の切り替えが必要です。
社員側も、自分達を信じているかどうかではなく、自分達や会社にとって本当に必要な事という視点で、積極的に協力してあげて下さいね。
身近で横領が発生するというのは、何かと傷跡を残しますので。

中小企業の利益構造

中小企業の利益の源泉は3つです(財務モデル)。
・売上高成長率
・利益率改善
・M&A
これは大企業も同様ですが、大企業ではこの3つにEPSベースで自社株購入を加えることができるかもしれません。
この3つを並べて見ると、どれも当たり前のことであり、どの企業経営者もM&A以外は、日々改善に努めていることと思います・・・・・・。
しかし、「・・・・・・・」と書きました。
理屈ではわかっていることですが、本当にすべての中小企業経営者が、常に3つの利益の源泉を考えているでしょうか?
この間、3年ほどで売上げを2億円から10億円に増加させた経営者から相談がありました。
この春から売上げが急減しているというのです。
私は、2年前から今年のような状況が来ることを口を酸っぱくして言っていた男ですが、実際に2008年を迎えてみると、業種ごとに時期に差はありますが、今までのトレンドに変化が起きてきていることを感じる方が増えています(実際には、昨年夏以降から痛感している方もいらっしゃいます)。
私の予測では、このトレンド変化はまだ前哨戦で、ある時期から第二段階にはいると思います。また、時期もいつぐらいになるかは予測がついています。
いずれにしても、次のさらに大きなトレンド変化までにはいろいろな準備が必要です。
そこで、私が相談者に言ったことが、冒頭に上げた基本です。
この相談者は売上高成長率を最も重要な指標としてここ数年を過ごしてきました。
私たちも側面からサポートさせていただき、順調に売上げが推移してきました。
ご本人は気づいていないようですが、この会社は利益率向上のための打ち手を十分打っていたのです。そこで今回、それを理解いただくときが来たと思いました。
早速、私は、売上高以外の指標の提出を頼みました。
もちろん、利益率系の指標の提出です。
提出していただいた資料からはいろいろな情報が手に入りました。
うまくいっている点がたくさん明らかになり、売上げが落ちたことは問題ですが、そうした現象が起きても、十分に対応できる形ができていることが判明しました。
むしろ、売上げが落ちたことこそがベストだったのだ・・という判断までできてしまいました。
もちろん、営業体制の強化すべき点なども多く明らかになりました。
意外な重点項目がなおざりにされていたのです。今は卓越した利益率をたたき出していますが、このままの体制では利益率が落ちてくることが十分予測できました。
ここで書いていることは当たり前のことです。
ウルトラCは一つもありません。
しかし、その「当たり前」の効果はとても大きなものです。
これからのトレンド変化は、当たり前の戦いが今まで以上に重要になります。
残念ながら、環境の良かったここ数年は、いろいろな幻想が流布しました。
例えば、「固定費は少ない方がいい」という財務的な常識も幻想です。一面は正しいですが、ある角度から見直すと、この「言い切り」は大間違いです。
しかし、そうした幻想も常識的に考えれば、化けの皮をはがすことは難しくはありません。
だから、もう一度、中小企業の利益構造という基本から考えていただきたいと思います。
すべての答えは、基本的な構造に中にすべてあると思います。

「割る」ということ

武道などの本を読んでいると、「身体を割る」という表現を目にすることが時々あります。
武道をまったくしたことがない門外漢には、言葉の意味を体感することはできません。
ですから、安易に言語化するのは抵抗がありますが、身体の動きを意識して細分化していくことと理解しています。
そう理解すると(正しいかどうかは別として・・)、「身体を割る」というのは経営にも重要な要素だということが思いつきます。
先般、ここ数年非常に順調に売上げを伸ばしてきたお客様から相談がありました。
「4月、5月の売上げが急減しているんです。どうしたらいいでしょう?」
というような相談内容でした。
私は聞きました。
「各取引先ごとの売上げの昨年対比のデータは出ていますか?」
「いやー、売上げなんて全体でしか把握してませんよ。順調だったせいもあって、そこまで考えないでやってこれちゃいましたから・・」
「数字を取ってみないとわからないけれど、きっと一部の取引先でインストアシェアが低下しているはずだから、まずはその事実を突き止めましょう」
「言われてみれば、そうですね~。思い当たります」
「御社の弱みをライバルが突いてきていそうですよね」
「んー、言われてみると・・」
こんな会話をしながら、いくつかのデーターの作成をお願いしました。
これらのデーターは、本来は、毎月押さえておきたい数字ばかりです。
どれも作成には手間がかかりますが、これから起こる環境の悪化を考慮すると、こうしたものの用意ができていないことは命取りになります。
経営全体の数字を細かく割っていく。割ること自体は普通のことですが、割り方にはコツとセンスがあります。武道での身体を割る行為にもコツとセンスがあるのと同様です。
そして、こんな程度のことからでも戦略が立つことがあります。
こうした管理が、マーケティングなどよりも重要になる時代がやってきています。
時代は繰り返しますね。

“売り”の怖さ

どの企業でも、売上高を上げるのには必死です。
そして、営業マンもノルマ達成のために、毎日、得意先回りをしてることでしょう。
しかし、売上高の明細を見ていると、「?」と思うことが時々起きます。
例えば、ある得意先に対する売上げの急上昇。
回収が90日手形だとして、3ヶ月後にその手形が落ちなければ大変なことになります。売上げが上がるのはうれしいことですが、売上げの急上昇の理由をきっちり押さえておかないととてんでもないことになる場合が・・・・・。
新規得意先の開拓でもそうです。
ライバルから移ってくる得意先というのは、ライバルにとって優良得意先ではない場合が多い。カンタンに言えば、ババを引いたようなものです。
当社では、クレーマー対策のアドバイスも行っていますが、そのアドバイスの中に、「クレーマーをライバルに渡す」という秘策もあります(笑)。
新規取引先が、そうしたライバルの秘策で移ってきたとしたら・・・・。
実は、「売り」は怖い。
このことを知らずに、深追いし、大きな傷を受けることがあります。
基本的な「売り」の姿勢は、“急がず、休まず”。
売上げの急上昇はうれしいことですが、回収されるまでは本当には利益は実現しないのですから、慎重に行きたいものです。
中小企業の決算書には、こうしたことを念頭に置かなかったことでできたウミがあるものです。
「売掛金」という項目には、そうしてできたウミが回収されないまま残っていたりします。
昔、私が融資の担当をしていたとき、新規取引先の決算書が手にはいると、こうしたゾンビ売掛金があるかどうかを探したものでした。
ちなみに、ゾンビの金額の大きさは様々でしたが、ゾンビがない会社はほとんどありませんでした。
売上げが立てば、法人税や所得税、そして消費税を納めなくてはなりません。つまり、その売掛金がゾンビ化すれば、税金の納めすぎになっている状態が続くということです。
確かに、貸倒処理により納めすぎの税金の回収は可能ですが、大きく「売り」に失敗した企業ほど、売掛金をそのままにして粉飾を続けるところがほとんどです。
来年の消費者金融の総量規制の開始を前に、自主規制の動きが消費者金融に限らず割賦販売などでも昨年から出てきています。
今までならば300万円で通っていた審査が、100万円しかダメだというような話はよく聞くようになりました。
現在の法改正では、総量規制にクレジットカードも入れるような話しも出てきています。ネット販売などの場合、クレジットでの回収が当たり前になっていますが、クレジットカードが総量規制の対象になれば、クレジットが使えない例は結構多く出ると思われます。
日本国内版サブプライム問題と言われている、こうした問題は、「売り」の怖さを改めて知るきかっけになりそうです。

経営環境の変化を把握する

減価償却の改正、リース資産のオンバランス化、逓増定期保険の資産計上等。
近年、貸借対照表に大きな影響を与える制度会計の変更が続いています。
企業が健全な成長を図る場合、売上や利益の増減よりも、資産、負債、資本のバランス、つまり貸借対照表の方が重要な事は、皆さんご存知でしょう。
従って、この流れは企業経営にとって注意すべき事項です。
つまり、今まで目標にしていた基準が、今後は通用しなくなる可能性が高いのです。
仮に、ある会社のROA(総資産利益率)の目標値が5%、前年度実績が4%だとします。
当年度の業績は、売上高が前年度と同額、業務改善により費用はダウン。
新たな投資や借り入れも行いませんでした。
この場合、通常であれば利益の増加により、ROAは上昇します。
それが、制度会計という判断基準が変わっただけでROAが3%に低下したらどうでしょう?
自社の目標基準をどこにおけばよいのか分からなくなりますよね?
しかも、会社間で適用基準が変われば、比較自体が無意味になってきます。
全ての簿外資産や負債をオンバランス(貸借対照表に計上すること)している会社と、可能な限りオフバランス(貸借対照表に計上しないこと)している会社では、比較しても仕方がないからです。
どちらが実態を反映しているかというと、もちろんオンバランスの方。
今後、融資の際に、金融機関からオンバランスされた貸借対照表を求められる可能性も否定できません。
当事務所は、今までも、お客様の実態を反映した貸借対照表は検討していました。
しかし、今後は、著しい経営環境の変動をより正確に反映させるため、測定できる全ての簿外資産及び負債を貸借対照表に計上し、その上で実態に即した減価償却費の計上、不良資産の時価換算の導入等を行う準備をしております。
当然、必要に応じて、中小企業には求められていない関連会社の連結も行います。
つまり、制度会計に捉われない、その企業独自の実態貸借対照表を作成し、最も厳しい状態での実態ROAを算出する予定です。
これを行ったら、ROAがマイナスに転落する会社も出てくるでしょう(苦笑)
ですが、それが本来の状態であるのですから、早急に立て直しの方策を検討する必要があるとも言えます。
生ぬるい基準で経営を行っている企業と、厳しい基準で経営を行っている企業では、どちらがこれからの厳しい経営環境を乗り切る事が出来るのか?
皆さんであればお分かりになるはずです。
人や会社は、その置かれる環境によって成長の仕方が大きく変わります。
そして、自社の正確な環境を理解し、成長のための方策を立てるのが経営者の仕事です。
皆さんは、自社の環境を正確に理解されていますか?