オーナー経営者の内部留保問題

老後2,000万円問題。

大騒ぎにはなりましたが、あの報告書を実際に読まれた方はほとんどいらっしゃらないでしょう。あえて読んでいただく必要はありませんが、考え方としては『あたり前』といえる内容が含まれています。

金融庁はメディアや政治家を巻き込んで見事な炎上を演出しました。
結果オーライとは正にこのこと。

もともと年金だけで生活ができるとお考の方は少ないでしょうから、結局は年金の受け取りが始まる前にどれだけの資産を確保できるかが重要という話の展開になってきました。

なお、2,000万円という金額の根拠は「毎月の赤字が5万円だとしたら30年でそのくらいの取り崩しが必要だよね」という点にあります。この赤字5万円に臨時支出は含まれていませんでしたが、退職金の受け取りは考慮されています。

人生100年時代として、70歳から2,000万円の取り崩しをスタートすれば逃げ切れるということでしょうか。

それでは、オーナー経営者の方が引退される際、会社の内部留保がどの程度必要かお考えいただいておりますでしょうか?

一般的なモデルケースとしての老後2,000万円問題とオーナー経営者の内部留保問題は、規模と人格こそ違えど、本質的には同じです。

「内部留保はどのくらいが適正か?」とご質問をいただくことも多いですが、それは今後の経営を具体的にイメージできていないということになります。

「とにかく内部留保を積み上げなければ!」という意気込みも同じです。具体性のない意気込みに意味はありません。

2,000万円問題で不安に陥った方々(特に若い世代)はiDeCoやつみたてNISA等の投資に興味を持ち始めたそうですが、「2,000万円なんて貯められないよ!」とグチばかりこぼしているよりも健全な行動ではないでしょうか。

オーナー経営者がどのような行動を取るべきかも基本的には同じです。迷うほどの選択肢すらないはずです。

ただし、「内部留保がどの程度必要か?」という質問だけで答えを出すのは無理な話です。繰り返しになりますが、そもそも会社をどのように経営していきたいのか、何歳ごろの引退を考えているのか、最後は会社をどのようにしたいのか等の質問とセットになります。

「数十年後のことなど分からない…」ということであれば、10年後、5年後でも構いません。

中には、5年後、3年後だって分からないという方もいらっしゃいますが、『それは考えたくないだけ』と同じです。「仮にこうなったら」という条件で考えることならいくらでもできます。

どんなに具体的な計画を立てたとしても、それはあくまで「こういう状態になったら」という仮説に基づいています。イケイケドンドンの計画だけを立てるのも困ったものですが、イケイケドンドンと最悪の両方の計画を立てて眺めてみれば景色が変わってくるはずです。

従いまして、計画を立てられない経営者など存在しません。存在するのは、それでも計画を立てる経営者と計画を立てない経営者です。

ちなみに、内部留保を貯めてばかりの状態が良いという訳ではありません。どこかにかならず歪が生じています。それがお客様なのか、社員なのか、今後の先行きなのか…。現状を把握しつつ、将来に備えていく必要があります。

老後2,000万円問題は大炎上の末に重要性が強調されましたが、世間的に裕福だと思われがちなオーナー経営者の内部留保問題がクローズアップされることはありません。相談できるとしても税理士くらいでしょう。

それでも将来起こりうる危機的状況に備えて、守りの要である内部留保のことを考え続けなければなりません。

役員の任期、大丈夫ですか?

皆さんが最期に自社の登記簿謄本を確認したのはいつでしょうか。

ご存知のように株式に譲渡制限を設けている通常の中小企業においては平成18年の会社法施行によって、取締役と監査役の任期を最長10年まで伸ばせるようになりました。

これにより、平成18年以降に設立された会社については最初から役員の任期を10年としていることがほとんどで、それ以前に設立された会社であっても、多くは会社法施行後に役員の任期を10年に伸ばしています。

役員の任期が満了し、そのまま役員を続ける場合には「重任」の登記が必要になります。
(有限会社は任期に制限がないため、役員に変更ない限り登記の必要はありません)
原則、取締役は2年、監査役は4年で任期満了であった任期が10年になれば、費用面においても手続き面においても非常にありがたいことなのですが、1つだけ問題があります。

それは重任登記を「忘れる」ことです。

経営者を含めて中小企業の役員が、自分の任期を気にしながら経営を行うことは通常ありません。
以前のように2年ごとであれば、まだ多少気にしていられますが、10年ともなるとまず覚えていられません。

会社のこととなると様々なことを顧問税理士に任せている方も多いと思いますが、登記は税理士業務ではないため、その任期管理を税理士に頼るのも難しい面があります。

そうなると、普段からお付き合いのある司法書士に任期管理を依頼するなり、自社で任期管理を行っていないと、任期満了による重任登記手続きが漏れてしまいがちになります。

会社法上、登記事項に変更が生じた場合、2週間以内に変更登記を申請しなければなりませんが、仮に2週間を過ぎたとしても登記申請自体は問題なくできます。

ただし問題は2週間の期限を過ぎると、過料(罰金のこと:通常、過料は1~10万円程度であることが多い)の対象となることです。

しかし、実務上は多少期限を過ぎても過料の対象となることはまれで、何年も登記期限を過ぎて登記を行っても過料の通知が来ないこともあるようです。

以前、登記の専門家である司法書士に聞いてみたことがありますが、2週間という期限があるものの、半年程度の遅れでは過料の対象にならないことの方が多く、法務局が実際にどのような基準で過料の対象を選択しているかはよく分からないとのことでした。

会社法施行から13年が経過し、既に役員が任期満了を迎えているものの、重任登記がされていない登記簿謄本を目にすることが増えてきました。

皆さんは、役員に就任されてどれくらいの年月が経ったでしょうか。

これを機に自社の登記簿謄本、チェックしてみてください。

麻薬的

芸能人の麻薬関係の報道が続いています。
興味本位の使用から常習者となった末の逮捕劇なのでしょう。

企業活動においては脱税と粉飾による報道をよく見かけますが、麻薬と同様に常習性を伴う危険なものです。

ということで、今回は麻薬的なつながりで脱税と粉飾について少し触れます。
まずは下記のイメージをご確認ください。


*利益がそのまま税金に直結するという前提です。

【脱税】
納税義務があると見なされている人が、その義務の履行を怠り、納税額の一部あるいは全部をのがれることである。 

【節税】
法(租税法)の想定する範囲で税負担を減少させる行為である。偽りその他不正な行為、すなわち犯罪的手法をもって納税を免れる脱税とは区別される。

【粉飾】
業績悪化や赤字などの、企業・組織やその経営陣にとって都合の悪い情報を外部の目から覆い隠すため、データを改竄(かいざん)したりして、見かけ上問題ないように装う(ドレッシングする)ことを表す経営・会計用語。企業会計を粉飾する粉飾決算がその代表例である。

(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

原則的処理を中心に、「例外として法律の範囲内で想定している部分」、「そもそも法律で想定していないために事件が起きるまで判断が保留されている部分(いわゆるグレーゾーン)」、「明確な法律違反」と分かれます。

最終的にブラック領域に手を出す企業も、最初に手を出すのはグレーゾーンかと思われます。そこから、ばれない(まだばれていないという状態)ことに味を占め、ブラック領域に足を踏み入れます。

ブラックである脱税は、納税を認めれば終わってしまう軽微なケースと、納税を認めても刑事事件にまで発展する重大なケースに分かれます。つまり脱税額や悪質性も考慮されるのですが、白黒はっきり決着するという意味で非常に分かりやすいといえます。

これに対して厄介なのは粉飾です。脱税の場合は最初から税務当局が関係してくることがほとんどですが、粉飾の場合はまず関係してきません。

たとえば上場企業の粉飾がばれると金融商品取引法違反ということで課徴金が課せられますが、よほどのことが無い限り刑事事件にまでは発展しないと言われています。脱税が報道される=刑事事件ですが、粉飾が報道される=刑事事件とは限らないということです。

実は、粉飾は粉飾それ自体が問題ではありません。粉飾を行った結果をもって行った行為が問題となります(例えば粉飾された決算書で本来受けられない融資を受ける等)。

ただし、粉飾を行った決算書で過大な融資を引き出したとしても、その会社が潰れて金融機関に具体的な被害が出ない限り問題となることはありません。そのうえ潰れた場合には経営者は自己破産でしょうから、問題となったときには粉飾なんてどうでもよいということになってしまいます。

つまり、刑事事件にならない、そもそも問題となることが少ないという点に粉飾の怖さがあるのです。

以上を踏まえると、脱税の常習「犯」は想定できず、粉飾の常習「社」は想定ができてしまいます。

なお、粉飾をグレー領域とブラック領域に分けてみましたが、ブラック領域に足を踏み入れれば近い将来潰れること(または再起不能)は避けられないと考えます。

ということで、企業活動で一番麻薬的だと考えられるのはブラックな脱税でもブラックな粉飾でもなく、社会的な影響がほとんどないグレーの粉飾です。

特に中小企業の場合、調整してしまえば何とかなってしまうレベルの赤字(または赤字すれすれの黒字)がとても多いのです。これを調整して赤字を回避(または利益を少し増やす)するという処理は日常的に行われていると思われます。

当初からギリギリの利益を狙っているケースで、最後に調整しようとするケースも同様です。「うまく調整できた!」としか思われていないはず。

残念なことなのですが、私どもの経験上このような行為を繰り返している企業が健全な会社になることは少なく、内部留保を積み重ねることもできません。

おそらく経営者の方は問題と考えていないでしょうし、自分で自分をだましていることに気づいてもいないと思われます。

確かにグレーな粉飾などの調整で乗り切ってきたのが中小企業という事実は否定できないのですが、かつては当然だった考え方も現在の経営環境では厳しくなってきました。

ビジネスであるからには赤字は負けです。もちろん負け自体が悪いわけではなく、負けを認めないビジネスに将来が無いということは皆さまもよくご存じかと考えます。

赤字を思い切って出せない企業に、大きな黒字も訪れません。

このまま逮捕されないで済むのではないかと考える麻薬常習者のように、調整による経営をいつまでも続けられるのではないかという幻想は抱かぬよう、ブラックのみならずグレーな領域にもなるべく足を踏み入れないことをお勧めします。

これからは、より良くなっていく中小企業にしかリソースも集まってきませんので。

問題が起きてからでは遅いと分かる、勤労統計問題

勤労統計問題がメディアを賑わせていますが、おそらく誰もが「どうでもよい…」と思われていることでしょう。

国家としての問題は大きいといえども、私たちへの影響は皆無…。しかし、気にされている方も多いと思われるのが、この問題の原因が「忙しい」にあると報道されている点です。

では、実際はどうなのかと調べたところ以下のような資料がありました。

*引用:霞が関国家公務員労働組合共闘会議
「中央府省等に働く国家公務員の第26回残業実態アンケート(2017年1月から12月の1年間)の結果について」

まず、結論部分から引用します。

霞が関に働く国家公務員は(1)月平均 33.0 時間の残業をし、(2)58.3%の人が休日勤務をしており、(3)退庁時間が 23 時以降が 9.7%、(4)6.3%が過労死ラインで働いていて、(5)過労死の危険を感じた者が 28.0%、(6)「体調不良」「薬等の服用」「通院加療中」32.2%、(7)「からだの具合が悪く休みたかったが、休めなかった」人が約半数の 45.7%に達していることなどから、霞が関の中央府省の過酷な勤務実態が組合員等の尊い生命を奪いかねないという危機的状況にあることを示しています。

そして、その残業の要因のアンケート結果が以下です。

この中でも厚生労働省は残業時間が突出しているらしく、月平均の残業時間は50時間超とのことでした。

このデータはあくまで労働組合の組合員のアンケートを基にしている…ということを考慮しつつも、各部署の中心で働く方の実態はもっとひどいと想定できます。

そう考えると「なるほど、これは大変だ…」と同情できる部分はあるかもしれません。児童虐待問題で揺れる児童相談所の対応も労働同問題と合わせて考えると、他人ごととは思えません。

経営者の皆さまからすれば「忙しいを理由に自社でこんな仕事をされたら困る!」と言いたいところではありますが、自社で大きな問題が起きた際、その背景にこのような労働実態があったとしたら、これを放置していた経営者の責任ということになってしまいます。仕事ができないとか要領が悪いとか言っても始まりません。

働き方改革や生産性の向上など、実際は名ばかりなのです。旗振り役の自己満足に過ぎません。

形だけの改革を進めたとしても、現実問題として必ずどこかで歪みが生じてしまいます。結局はそれがいつ露呈するのかというタイミングの問題だけで、それまでは現場が巧妙に隠ぺい工作をつづけます。

今回の統計問題も、全数調査が理想であるとはいえ、現場として対応ができないのであれば抽出調査しかあり得ません。

結局、労働力と業務量が一致していなければ必ず仕事は破綻するということを、働き方改革を主導するはずの厚生労働省がみごとに証明してくれました。

こういうことを自社にて客観的に判断することはとても難しいことですが、自社の労働時間を改めて把握したり、間接的な調査になるとはいえCUBIC等で社員のアンケートを取る方法もあります。

問題が起きてからの対処では遅いのですから、皆さまの会社もまずは現状把握から始めてください。社内アンケートを取るのはとても怖いですが…。

2019年における経営計画の問題


「今年のことだって分からないのに、数年後のことなんてもってのほかだよ」

税理士が中期計画の作成を促した場合のお決まりの返答です。

今年は消費税の増税があります。
来年は東京オリンピックがあります。
原材料費や人件費は高騰し、採用難はより一層ひどくなっています。
生産性向上の号令のもと、システム導入も検討しなければなりません。

だから先のことを考えても…。
経営者であれば誰もが感じていることです。

数年後のことを考えるなんて本当に面倒なことだと、私どもも分かっております。

そして「先のことは分からない…」とおっしゃる方が中期計画を考える場合、良い計画を立てるわけがありません。お先真っ暗な計画になる可能性の方が高いでしょう。

結局、お先真っ暗な計画を立てるくらいなら、そんなものはわざわざ見たくないというのが正直なところでしょうか。

しかし、私どもの立場からすると「だからこそ先のことを考える必要がある」という説明になります。

この先バラ色の状態が待ち受けていると分かっているのであれば、計画を立てる必要などありません。儲かるのですから何だってできるはず。

また、破綻するのが分かっているのであれば、先のことを計画するのではなく現実的な準備を開始するだけです。

つまり、中期計画は「先のことなど分からない」とお考えの方にとって一番必要なものとなります。

それはなぜか?

「見たくない現実」を数値で見たあとにこそ、危険な未来を回避するための行動をあぶりだせるからです。

皆さまも十分お分かりのとおり、今年黒字を達成するために必要な行動と、5年後に黒字を達成するために必要な行動は異なります。

いま、いま、いま…の繰り返しの行動は火消しで終わってしまいます。しかし「もし5年後に売上高が半減するとしたら」という仮定の下であぶりだされた行動は、その会社にとって絶対に必要なものとなるはずです。火消しではなく土台の再構築です。

したがいまして、経営計画とは数値を予測するための計画ではなく、必要な行動を導き出すための計画であるということを頭に入れておかなければなりません。

この行動のみを導き出せるのであれば、そもそも数値の計画など不要です。ただし、行動の検証のためには数値との突き合わせが有効であり、逆も然りということになります。

皆さんが強調する節目である2020年。これは東京オリンピックが念頭に置かれていますが、その前年、消費税増税が意図的に設定されました。

節目の年の1年前にはじめて中期計画を考えるというのは遅すぎるといえますが、2021年以後の見たくない現実を見ておくには最後の機会ともいえます。

いま正に必要と考えて行っている行動が、3年後または5年後にとって本当に必要な行動なのか?

検証するにはいましかありません。

なお、本来であれば中小企業の中期計画の検討に今後の税制も絡めてお伝えしたいのですが、国が消費税対策に躍起で、“いまの税制”しか考慮できません。まさに中期計画を見失っているのが日本です。

いまの日本のように、この先どうなるか分からないけど計画もない(少なくともほとんどの国民はそのような計画は知らない)という状況を良いと思われる方はいらっしゃらないはず。

その状況を自社でも作り出しているようでは、政府を批判できる立場にはありません。“いまこそ”、この先に必要な行動をあぶりだしてみてはいかがでしょうか。

 

最後に宣伝になりますが、今年の税制改正の音声は消費税増税時における中小企業の考え方について岡本が解説しております。よろしければ参考にされてください。経営者にとってはタイトルにある“ふるさと納税”よりも重要な話です(笑)

増税前にオサライ 消費増税と駆け込み需要の関係

10月15日、安倍首相は臨時閣議で、来年10月に消費税を10%へ引き上げると表明しました。

消費増税の再々延期を疑う声が根強くありましたが、今度こそ増税は実施されると考えたほうがよいでしょう。

増税が実施されるとなれば、予想されるのが、増税前の「買いだめ」に代表される「駆け込み需要」です。

前回、税率5%から8%への増税の際に、経営者や経理担当者からよく聞かれたのが
「増税前にできるだけ買って(仕入れて)おいたほうがいいんですよね?」
という質問です。

結論から言います。
増税前に買った(仕入れた)方が得なのは、「個人消費者」「消費税の免税事業者」「簡易課税方式を選択している事業者」だけです。

つまり、原則課税方式によって消費税を計算している法人及び個人事業者にとっては、増税前に駆け込んで仕入などをしても、損も得もしないのです。

では、それぞれの立場に応じて、税抜き10万円で商品を買い(仕入)、税抜き15万円で売った場合に増税前後でどう変わるのかを見ていくことにしましょう。

まずは個人消費者です。個人消費者ですので、買った商品を売ることはありません。

 

消費税を納めることとない個人消費者にとっては、同一商品を増税後に購入すれば、当然増税分だけ支出が増えますので、増税前に購入したほうが得になります。

次に法人、個人問わず、事業を行っているものの消費税を納める必要がない、免税事業者である場合です。

 

 

個人消費者同様に消費税を納めることのない免税事業者にとっては、増税後に商品を仕入れれば当然、増税分だけ支出が増えますので、増税前に仕入れたほうが手元に多くのキャッシュが残ることになります。

続いて法人、個人問わず、消費税の課税事業者ではあるものの、基準期間の課税売上高が5000万円以下で、届け出により簡易課税制度の適用を受けている場合です。

 

簡易課税制度は消費税の納税額の計算にあたっては、業種に応じた「みなし仕入れ率」を使用して計算をするため、実際の仕入れの消費税額の影響を受けないといった特徴があります。

そのため、簡易課税制度を選択している課税事業者にとっては、増税後に商品を仕入れれば当然、増税分だけ支出が増えますので、増税前に仕入れたほうが手元に多くのキャッシュが残ることになります。

最後に、このメルマガを読んでいただいている多くの方が該当するであろう、法人、個人問わず、消費税の課税事業者であり、原則的な課税方式で納税をしている事業者の場合です。

 

 

原則課税方式の場合、売上によって預かった消費税から、仕入などによって支払った消費税を差し引いて残った差額を税務署に納めることになります。

つまり、増税前に仕入れた場合は購入時の消費税支払額は少なくなりますが、売上で預かった消費税との差額残が多くなる分は税務署に納税することになります。

また、増税後に仕入れた場合には購入時の消費税支払額は多くなりますが、その分売上で預かった消費税との差額が少なくなる分、税務署に納税する額が少なくなり、結果として増税前に仕入れても増税後に仕入れてもキャッシュ・フローは全く同じになるのです。

これから、来年10月までの間、世間では消費増税に乗じ、人々の心理につけこんだセールやキャンペーンなどがあちこちで展開されるはずです。

繰り返しになりますが、増税前の購入(仕入)が有利なのは「個人消費者」「消費税の免税事業者」「簡易課税方式を選択している事業者」だけです。

原則課税方式の課税事業者は増税前に慌てて購入しても増税後に購入しても基本的に損も得もしません。

また、増税前に購入したほうが有利な、私たち個人消費者、免税事業者、簡易課税適用事業者であっても、周囲の駆け込み需要の雰囲気に飲まれて、結果として過剰な在庫を抱えてしまうことのないように気をつけたいものです。

今回の消費増税では軽減税率が取り入れられるなど、複雑な税制となることが予定されていますが、今回お伝えした消費税の基本的な仕組みを理解し、新税制に踊らされることなく、しっかりと地に足をつけた経営をしていきましょう。

人はみな、いつか死に、それは明日かもしれない

私は生命保険を使った節税を、お客様に勧めることは基本的にありません。
保険で節税はできないと考えているからです。
一方で、中小企業経営者にとって生命保険を使った『万一への備え』はとても重要なものだとも考えています。
しかし、自らに万一のことがあった際に必要な金額をきちんと算定したうえで備えている中小企業経営者は、残念ながらそう多くありません。
中小企業経営者の『万一の備え』に対する考え方、ぜひ知っておいてください。
まず、あなたが死んでしまった場合に、会社はどうなるのかを考えます。
中小企業の場合、経営者が亡くなれば『その会社は終わり』というケースが少なくありません。
1つ目の試算として、今、あなたが亡くなることで会社を清算した場合に、どれだけのお金が要るかを計算します。もちろん、あなたの退職金を残された遺族に会社から支払うことも計算に入れます。
簡単に言えば、会社の資産と負債を簡易時価評価し、全ての資産負債を精算した場合に不足するキャッシュを求めるのです。
2つ目の試算は、経営者であるあなたが亡くなった場合に、後継者によって会社を存続させる場合にどれだけのお金が要るかです。今ある借入金の返済も視野に入れるべきでしょう。
会社はあなたがいなくなっても、営業を続けます。
中小企業の場合は特に経営者の存在は営業面でも大きく、直接業績に影響が出ることが少なくありませんが、もちろん影響がない企業・業種もあります。
具体的には、その影響を加味したうえで、あなたが不在となった会社が安定した営業を再開できるまでの必要運転資金を試算します。
後継者が決まっていない場合や後継者が決まっていたとしても、現時点では実力が伴っていない場合、既にいつ引き継いでも大丈夫な場合、それぞれの企業の状況によって、必要である運転資金の見積もり金額は異なってきます。
そして3つ目は、残されたあなたの家族の生活に必要なお金の試算です。
あなたの会社からもらう退職金、それに遺族年金も加味したうえで、生活費はもちろん、お子様の年齢を考慮したうえで、教育費にどれだけかかるのかも試算します。
当然、お子様が小さいほど、多くのお金を確保する必要があります。
この時、忘れてはならないのが、保険はあくまでも保険だということです。
起こらない可能性が高いけれども、起こったら困らないように備えるものです。
過度な保障は必要ありません。
お子様が既に成人して、社会人として立派に巣立っていれば、奥さまが残りの人生を不自由なく暮らせるにはいくら要るのか。それだけでいいのです。
もしかしたら今までの貯金と退職金、それに遺族年金が加われば十分かもしれません。
試算の結果、会社も家庭もこれらを内部留保によるキャッシュで既に備えることができていれば、当然、保険は必要ありません。
残念ながら、節税のために保険を勧める税理士はたくさんいるようですが、保険本来の目的に沿った、必要な保障の試算と、その確保を提案する税理士はあまり多くないようです。
『もし明日、あなたに万一のことがあった場合、会社と家庭にどれだけのお金が必要なのか』
ぜひ、試算してみてください。

不正または搾取が絡む取引の危険性

不動産投資関連において、『かぼちゃの馬車』のサブリース家賃の不払い問題から端を発し、スルガ銀行の不正融資、さらにはアパート開発・管理会社であるTATERUでも融資資料の改ざんが発覚しました。
これらの一連の問題は、規模が大きく組織的であったために大きく取り上げられましたが、不正資料の作成、不正融資などは中小企業の取引でも少なくはありません。
資金繰りに困る企業が行う粉飾などは、会計の考え方次第でいくらでも調整可能ですし、金融機関もそれを分かった上で融資を行っています。結局、お互いが暗黙の了解で取引している場合は公になる可能性が低いと言えます。
しかし、取引の一方のみが不正を行っている場合は話が別です。
不正を行っている側は意図的な行為であり、もう一方は不正を行っていないものの、自分が受け取れるであろう利益を期待して、仮に不審な点があっても「大丈夫だよな…」と目をつぶってしまいます。
そして、不正を自ら行わなかった側が後になってだまされたと訴えるのがこれらの問題点です。不正には加担しなくとも、当初から疑念があった点については、ほとんどの方や企業が認めることでしょう。
では、このように最初から意図的に不正行為を行っている会社、または資金繰りに困った末に詐欺的な行為に手を染める会社を見破ることはできないのでしょうか。
あるいは、不正や詐欺が行われていなくても、「この会社の経営は大丈夫か?」という点について判断することはできないのでしょうか。
基本的にこの答えは簡単で、その会社と実際に取引をしようと試みれば判明します。そして、取引を試みる際の判断基準は以下のようなものがあります。
【取引相手が極端に売上やお金を欲しがっていないか?】
もちろん、どの企業も売上やお金は欲しいものです。しかし、「そこまでするか?」という言動が透けて見えると危険です。カボチャの馬車やTATERUの融資資料の改ざんなどは典型です。特にハイリターンの取引を簡単に実行できるような提案の場合はアウト。その取引は誰にとってメリットがあるのか、誰が一番利益を得るのかについて十分に注意をする必要があります。
【商品またはサービス品質、スタッフの接客レベルに問題はないか?】
これは購入または契約直前まで進み、具体的に商品やサービスを確認して初めて分かるものですが、「この品質で取引して大丈夫か?」と疑念が生じる場合には極めて危険性が高いです。末期状態の企業の品質レベルはとにかく低い。かぼちゃの馬車が問題となった後に、実際の物件の構造が取り上げられていましたが、現物を見て契約した方がどの程度いたのかについて疑問があります。
【取引過程で、本来であれば出てこないであろう幹部クラスが出てきていないか?】
これがある意味一番分かりやすいかもしれませんが、挨拶程度ではなく、幹部クラスが契約の後押しや状況の説明などを始めると、危険度が高いかもしれません。特に取引後の支払について幹部クラスが説明を行うような場合は、資金繰りが赤信号の可能性が高まります。
以上、簡単に説明するとこのようなものが挙げられますが、帝国データバンクや東京商工リサーチで取引相手の財務データを取得するという手もあります。しかし、机上のデータだけでは判断しきれませんし、データが古い場合は現時点での参考にはなりません。
例えば、多額の資金運用を行うファンドマネージャーは、投資先の会社を訪問して経営状況を確認しますが、一般人を装って現場では実際どうなのかを調査することもあるようです。上記のような判断基準を見極めるためでもあるでしょう。
私も、お付き合いがあるお客様の商売を知る一番の方法は、自らのお金でお客様の商品を購入したり、サービスを受けたりすることだと考えておりますので、実際に実行しています。
それにより気付いたことをお客様にフィードバックさせていただくこともありますし、問題点があれば一緒に改善案を検討いたします。お客様の商売が、取引相手から不信感を抱かれているようであれば目も当てられません。
結局、リスクの高い取引の典型は、取引相手に犠牲を強いて、自分の利益を確保しようという意図が透けて見える搾取の構造です。
皆さまの周りでも、自分だけ安全な場所で利益を得て、相手だけが苦しんでいるケースを目にしたことがあるのではないでしょうか。もし、自社のお客様が苦しんでいるようであれば自ら危険性を高めている可能性があります。
このような取引は不正や搾取の温床となり、必ず一方または双方が破たんします。そして、不正や搾取の温床に第三者(例えばスルガ銀行など)まで絡んでくると、さらに被害が大きくなります。
かぼちゃの馬車やTATERUのように不動産投資という高額な取引だからリスクが高いと言ってしまうことはできますが、一般的な取引や金銭の貸し借りでも問題点は同じです。
繰り返しますが、不正や詐欺、不信感を与える取引、資金回収について危険性が高い取引の特徴は、お金を支払う側の利益が高く見えるという点にあります。そして、お金を受け取る側のリスクが極めて低いと想定できる点です。
ニュース等で事件を目にすると、「こんな取引をする人がいるんだな…」と思われる方が多いと思いますが、自らが当事者となっている場合は、その危険性に気付きにくいものです。
自社が被害者になる危険性は避けなければなりませんが、知らないうちに自社が加害者になっている可能性こそ絶対に排除しなければなりません。
社員が勝手にやったなどという言い訳をしたところで、問題が発覚した瞬間、中小企業程度の財務力では一瞬に消し飛んでしまうのですから…。

経験

私は今年、父を亡くしました。
人が1人亡くなれば、財産の多寡は別として必ず相続が発生します。
私は初めて相続の当事者になったのです。
相続、相続税に対する知識があることはもちろんのこと、今まで仕事で多くの相続を税理士という立場で経験してきましたが、当事者になってあらためて深く実感したことがいくつかあります。
・良好な関係を築いている親、兄弟の間でも相続をきっかけに、過去の出来事を含めてさまざまな感情が湧き上がる
・優先順位は税金が1番ではない
・でも、できるだけ税金は払いたくない
これらは全て、私が今回、相続の当事者になる前から仕事を通じて理屈で分かっていたことですが、当事者として経験したことで、『実感』へと変わりました。
そして、他人様の相続をお手伝いさせていただく人間として、この経験を通じて得た、『実感』が持つ意味は決して小さくないことだと理解し、税理士である私に、自らの死をもって相続を経験させてくれた父に、深い感謝の念を抱かずにはいられませんでした。
それと同時に、相続業務における今までの私のアドバイス等が、知識と間接的な経験に頼った、表面的なものでなかったか、自問する機会となりました。
経営者の多くは、税務申告を依頼するとともに、税理士事務所に対して経営の相談にのってもらえることを期待しています。
しかし、税務知識があるだけの若い担当者を充てがわれても、経営者の悩みが分かるはずもありません。
従業員を雇っていない、個人事務所の税理士には組織運営の悩みは分からないかもしれません。
そして経営者は税理士を、税理士事務所を嫌い、期待しなくなります。
私たちに足りないものは何なのでしょうか。
私は父の相続を経験し、こう思いました。
大切なのは、自らの経験を通じた、『お客様の感情へ寄り添う姿勢』。
税理士を選ぶ側にも問題があることも否めません。
なぜか税理士を決める時には、「知っている税理士はいないし、どうやって選んだらいいのか分からない」といったことを理由に、身近な知り合いの紹介などで比較的安易に決めてしまい、後悔しているケースが非常に多いのです。
ニーズは人それぞれ違いますし、税理士もみな同じではありません。
もちろん顧問料が安いことを一番に選ぶことだって間違いではありません。
申告さえきちんとやってくれればよいのであれば、顧問料の安い事務所で十分かもしれません。
その代わり、多くを求めてはいけません。
安価な顧問料の事務所は当然給料が安いので、優秀な担当者はいません。
いても数年の経験を得て、辞めます。だから担当者はしょっちゅう変わります。
もし皆さんが税理士を変えたいと考えているならば、まず何を望んでいるのかをはっきりと認識し、それなりに手間と時間をかけて自社に合う税理士を探すべきでしょう。
そして、顧問契約を検討する段階では、じかに御社の担当者となる人が、皆さんが望む業務に対してどういった「経験」を積んできたのか、聞いてみるとよいかもしれません。
悩みや苦しみは、経験した人でないと分からないのです。

事業承継のコツ

『事業承継』について、とても難しく考えている経営者が多い。
という現実があります。
実際の経営とは異なり、ご自身の判断だけではどうにでもならないという理由もあるのでしょう。基本的に勝負は一度切りですし、失敗したら目も当てられないとお考えなのかもしれません。
例えば、IPO(株式公開)を目指している経営者であれば、事業承継などは頭にないはずです。IPOの良し悪しは別として、実現すれば所有と経営の分離が大前提となるからです。その場合、考慮すべきは社長の交代のみです。能力選考であり、ドライな判断が行われます。
しかし、中小企業は所有と経営が一体であるからこその面白味があるとともに、オーナーと経営者を切り離して考えることができないために事業承継の問題が生じます。
近年では事業承継対策の一環として、中小企業でも持ち株会社を設立するケースが増えてきました。この場合、親族に後継者がいないけれども、会社は売りたくない。そして、役員や従業員を後継者に据えられるという場合にも利用価値があります。
持ち株会社化は中小企業における所有と経営の分離の一つの型ですが、短期的には良くても、中長期的にはその型を維持できるかは疑問です。それこそIPOをしてしまえば解決できますが、通常はオーナー家が絶対的な影響力を持ちますので、サラリーマン社長がどこまでやり切れるか…想像に難くありません。
やはり事業承継の勝負は一度切りです。そうであるにも関わらず、漠然と事業承継に向かって時だけが経過し、最後の最後になってどうしようか…と悩まれる方がとても多くていらっしゃる。
この点、事業承継のコツという程のものではありませんが、「最終的に会社をどうしたいのか?」と常に自問し続けるのが、事業承継の成功の確率を高めます。ここでいう成功とは金銭面のことではありません。納得して終えられるかという点が一番重要です。
いざそのときになって考えても何とかなるというのは、最大でも年商数億円レベル、従業員10人程度が限界かと考えます。
つまり、超・長期計画となりますが、毎期の事業計画を立てることと事業承継の間には大きな違いはないのです。
例えば、将来M&Aで会社を高く売りたいと考えている経営者が、会社を私物化しているようでは目も当てられません。M&Aの会社の価値の算定の際、どんどんボロが出て、想定以上に低く見積もられることでしょう。
「そうと分かっていれば、公私を分けたのに!」というのは、あまりにもお粗末です。
私どものお客様でも、事業承継について真剣に考えている経営者の年齢はバラバラで、30代の方からも真剣に相談を受けます。
中には、さすがに方向性を決めるのは早いのではないか、まだお子様も生まれたばかりだし…。という方もいらっしゃいますが、お子様が継がなかったら仕方がないにしても、継ぎたくなるような会社にしていくという確固たる意思を打ち明けられ、そのために今から準備しておくべき点について、相談を承っています。
当然のことですが、このような方々は、事業計画も短期と中期に分けてきちんと作り込みます。その先に、事業承継も見据えています。
ここまで読まれて、皆さんの中に「このような経営者の会社は、さぞ大きく立派なのだろうな」とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、現在の事業規模は関係ありません。
年商数億円レベルのまだまだこれからの会社もあります。ですが、これからグングン伸びるのだろうなと私どもの経験からもヒシヒシと感じます。
時流に乗って、よく分からないけどいつの間にか大きくなったという会社は、時流から外れるとピタッと成長が止まり、迷走を始めます。自力で大きくなったと勘違いしてしまい、その後の準備をしっかりとせずに、さらなる成長を求めるからです。
これに対して、時流に乗ったか否かにかかわらず、着実に準備をされている会社は何事に対しても淡々と計画と実行を繰り返します。
結局は経営も事業承継も『計画と実行』。この一点に尽きるのだと考えます。
そして最後に一つ。
その会社に最後までしがみつこうとしているのは創業経営者だけであり、従業員を含めた利害関係者は意外とサラリとしているという隠れた事実は見過ごせません。
会社のことを考えたとき、何が最善か?
この問いも少しずつ温めていけるとよろしいかと考えます。