人はみな、いつか死に、それは明日かもしれない

私は生命保険を使った節税を、お客様に勧めることは基本的にありません。
保険で節税はできないと考えているからです。
一方で、中小企業経営者にとって生命保険を使った『万一への備え』はとても重要なものだとも考えています。
しかし、自らに万一のことがあった際に必要な金額をきちんと算定したうえで備えている中小企業経営者は、残念ながらそう多くありません。
中小企業経営者の『万一の備え』に対する考え方、ぜひ知っておいてください。
まず、あなたが死んでしまった場合に、会社はどうなるのかを考えます。
中小企業の場合、経営者が亡くなれば『その会社は終わり』というケースが少なくありません。
1つ目の試算として、今、あなたが亡くなることで会社を清算した場合に、どれだけのお金が要るかを計算します。もちろん、あなたの退職金を残された遺族に会社から支払うことも計算に入れます。
簡単に言えば、会社の資産と負債を簡易時価評価し、全ての資産負債を精算した場合に不足するキャッシュを求めるのです。
2つ目の試算は、経営者であるあなたが亡くなった場合に、後継者によって会社を存続させる場合にどれだけのお金が要るかです。今ある借入金の返済も視野に入れるべきでしょう。
会社はあなたがいなくなっても、営業を続けます。
中小企業の場合は特に経営者の存在は営業面でも大きく、直接業績に影響が出ることが少なくありませんが、もちろん影響がない企業・業種もあります。
具体的には、その影響を加味したうえで、あなたが不在となった会社が安定した営業を再開できるまでの必要運転資金を試算します。
後継者が決まっていない場合や後継者が決まっていたとしても、現時点では実力が伴っていない場合、既にいつ引き継いでも大丈夫な場合、それぞれの企業の状況によって、必要である運転資金の見積もり金額は異なってきます。
そして3つ目は、残されたあなたの家族の生活に必要なお金の試算です。
あなたの会社からもらう退職金、それに遺族年金も加味したうえで、生活費はもちろん、お子様の年齢を考慮したうえで、教育費にどれだけかかるのかも試算します。
当然、お子様が小さいほど、多くのお金を確保する必要があります。
この時、忘れてはならないのが、保険はあくまでも保険だということです。
起こらない可能性が高いけれども、起こったら困らないように備えるものです。
過度な保障は必要ありません。
お子様が既に成人して、社会人として立派に巣立っていれば、奥さまが残りの人生を不自由なく暮らせるにはいくら要るのか。それだけでいいのです。
もしかしたら今までの貯金と退職金、それに遺族年金が加われば十分かもしれません。
試算の結果、会社も家庭もこれらを内部留保によるキャッシュで既に備えることができていれば、当然、保険は必要ありません。
残念ながら、節税のために保険を勧める税理士はたくさんいるようですが、保険本来の目的に沿った、必要な保障の試算と、その確保を提案する税理士はあまり多くないようです。
『もし明日、あなたに万一のことがあった場合、会社と家庭にどれだけのお金が必要なのか』
ぜひ、試算してみてください。