これは誰に頼むべきか?

とうとう中国から、「会計事務所」が進出してきます。
中国国内第3位の会計事務所「信永中和」が、日本での会計監査の拠点と
して、国内事務所を設立しました。
この春から中国企業の日本子会社の会計監査や日本企業のM&A、対中投
資の支援などを行うようですが、これら中国関係の業務は、これまで大手の監査
法人や中国に強いコンサルティング会社などが担ってきましたので、今回の進出はひとまず彼らにとっての「脅威」となるかもしれません。
しかしながら、一番影響を受けるのは、上場企業などの大企業を相手にする監査
法人などではなく、むしろ私たちのような中小企業をお客さまに持つ「税理士事務
所」であると言えます。
というのも、一般的には知られていませんが、企業が税理士事務所などに依頼
して いる記帳代行や経理代行などのアウトソーシング業務は、すでに人件費が
安くて「漢字」にもなじみの深い中国へのシフトが進んでいます。顧問税理士は
黙っていますが、皆様の会社の伝票も、すでに中国で優秀な中国人が入力して
いるかもしれません(苦笑)。
今回の進出を足がかりに中国の会計事務所が本格的に進出し、これらのサービス
を表立って開始することになった場合には、中小企業にとって業務を依頼する先
として有力な選択肢となるかも知れません。結果、これまで「安いだけ」で勝負をして
きたような国内の税理士事務所は、自然淘汰されていくことになるでしょう。
ですが実は、中国が進出してこなくとも、この税理士事務所の淘汰の流れはすで
に国内の税理士業界で加速しているのです。
私共はこのメルマガのタイトルの通り、税務会計の「セカンドオピニオンサービス」
も行わせていただいているのですが、その中で面白いことがわかってきました。
当初、私共はこのサービスを「ある事柄について、お客様がまず顧問税理士に
相談をし、その税理士が出した回答に納得がいかないときに、別の税理士にも
相談したいというお客様がいるはず」だと考えてスタートしたのですが、実際に
お客様からご相談をお伺いしてみると、顧問税理士に意見を聞く前に、最初に
私共にご相談いただくケースが以外と多いのです。
一応、その後に顧問税理士の意見も聞いて最終的な結論を出していらっしゃる
ようですが、これは私共の当初の想定とは、全く逆のものでした。
つまりこれらのお客様は、顧問税理士をすぐに変える予定ではないけれど「普段
あまりコミュニケーションを取らず、事務処理だけを依頼する税理士事務所」と
「大切なことを相談する税理士事務所」をうまく使い分けているといえます。
このように税理士業界は、すでに昔ながらの悪しき(?)「先生業」ではなく、お客様
と対等な関係の「サービス業」に変貌を遂げています。
これからは、皆様が関係者にうまく情報を共有させることにより、「記帳代行に
ついては中国」に依頼、「通常の申告業務はA税理士」に、「重要な相談について
はB税理士」に依頼、などと目的に応じて相手を選んで相談するといったことが
可能であり、それはもうすでに皆様の隣で始まっているのです。

4月1日は運命の分かれ道

相続税の課税対象者を増やしたい・・・。
民主党による「富の再配分」の旗印のもとに、とうとう相続税にも大幅にメスが入りました。
相続税の課税対象となる人は、年間に亡くなった方のうち約4%。
今回の税制改正でこの数字が6%程度に増やされることになりそうです。
相続税の計算は、亡くなった方の「相続財産」が「基礎控除」という一定の控除額を超えた部分に課税されます。
今回の税制改正大綱では、その「基礎控除」が4割も減らされました。
夫が亡くなり、相続人が妻と子供2人のケースで見てみましょう。
3月31日までに夫が亡くなった場合、「基礎控除」は、
5,000万円+1,000万円×法定相続人の数(3人)=「8,000万円」
ですが、4月1日以降に亡くなった場合、「基礎控除」は、
3,000万円+600万円×法定相続人の数(3人)=「4,800万円」
となります。
なんと、4月1日を境に、相続税の対象となる額が差し引きで3,200万円も増えてしまうのです。
その上、生命保険金に対する控除も減額されたり、課税所得が1億円超の場合の税率までアップされたりと、今年の改正案はかなりキビしい・・・。
「先生、お願いです!3月31日に亡くなったことにしてください!!」
4月1日は、病院でこんなやり取りが多発しそうです。本当に切実。
国は以前から相続税の算出方法を根本的に変えたいと考えていましたが、まずは算出方法でなく、安直に「金額をいじる」という方法を選びました。
国民の悲鳴とは裏腹に、官僚はこのようにしか考えていません。
「なあに、最近の税金が少なかっただけ。一昔前の状態に戻しただけだよ。」
さて、この4月1日を見据えて、やることは一つ。
とにもかくにも、早めに相続税対策をとることが必要です。
上記の例でもわかるように、今回の税制改正、これまであまり相続税の心配がなかった方や過去に試算をしたことがある方でも、4月1日を境に課税の対象となってしまう可能性や、見込んでいたよりも納税額が増える可能性が出てきました。
そのため、必ず、過去に行った相続税の試算をやり直してください。
生前贈与などを活用して準備さえしておけば、まだ間に合います。
残念なことですが、官僚が決めてしまった流れには逆らえません。
できることは、少しでも早く情報をつかみ、対策をとること。
特に、税金の対策に「ウルトラC」はないのです。
中途半端な子ども手当てや法人税減税との引き換えに、所得税と相続税はとうとう増税の方向に舵を切ったのです。今後もこの増税の流れが加速していくと思われますが・・・。
国民が民主党に託した「未来」とは、本当にこんな景色なのでしょうか。

次の環境適応

先週、フォレスト出版に
『もう古い!会社にお金が残らない本当の理由』的な本をやらないか・・とメールをしました。
そして、数分後に返事。
「ぜひ、やりましょう」
本能的に、メールを送ってしまいましたが、
出版社の反応を見て、私は少し後悔しました。
とにかく、今年は、昨年以上に忙しい状況で、
年明けから、忙しさに恐怖を感じているというのに、
自分で仕事を増やしているのですから話になりません。
しかし、
こうした本の企画を出したくなるほどに、
昨年12月に公表された税制改正大綱以後、
私たちの中では、節税感が変わってしまいました。
現在の日本は、
田中角栄的なものに翻弄されています。
年金問題は、まさにそうですし、
税制にも、その足跡が残っています。
そして、今回、民主党は、
税制に残る田中角栄的なものに手を付けました。
それが、高額所得者の給与所得控除に
上限を設けたことです。
もちろん、今回の改正は、
あいかわらず、政治が、取りやすいところに
ターゲットを絞った感がぬぐえず、
完全に、田中角栄的なものを払拭したわけではありません。
しかし、過去に田中角栄が行ったリップサービスに
やっと手を付けたわけです。
つまり、この給与所得控除の改正は、
このままでは終わらない可能性がありますし、
税制改正大綱には、その可能性を匂わせているように思います。
いずれにしても、
法人税率の改正とこの給与所得控除の上限の設定は、
中小企業の節税方法、いやいや、運営方法を根本的に変えることになります。
そのため、
私が過去に書いた本は内容が古くなり、
現在、ゲラを制作中の本は、一部書き直しが必要になってしまいました。
毎年年末に行う『年末放談 ユーストリーム版』でも
言わせていただいていますが、
国は、すでに国家総動員を決めていると思います。
第一次世界大戦の後に
軍人が痛感した国家総動員は、
彼ら軍人の考えでしかありませんでしたが、
21世紀の国家総動員は、
政治家も官僚も感じていることでしょう。
もちろん、
今でも、そういう感覚がない的外れな政治家もいますが、
民主党の中枢や官僚は、そう思っているはずです。
そして、
そうした考えを具現化する第一歩としても
今回の税制改正はあるのでしょう。
しかし、
私たちは、そうしたことに一喜一憂しても
意味はありません。
環境適応。
それが私たちのやるべきことです。
ですから、
今までのことは、今までのこととして、
新しい枠組みを考えましょう。
中には、今までの節税がムダ、いやムダ以上の
状況になったりもしますが、仕方がありません。
感情的になっている
暇があったら、対応策を考えましょう。
時代は、
私たちに、過去を捨てるように
強いているのだと思います。