「税務訴訟」してみますか?

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最近、このように納税者が税務の訴訟を行い、国と争って勝訴するといった記事を多く目にするようになってきました。
もともと司法は行政から独立しているはずなので当然と言えば当然なのですが、これまでの裁判ではどちらかというと国が行った課税処分をくつがえす判決を出すことは滅多にありませんでした。ですが最近は、裁判所も少しずつ中立な立場に立った判決を出し始めたようです。
中小企業の場合には、税務調査等で指摘された点について納得いかないことがあっても、「税務署と争うなんて面倒だし時間ももったいない。そもそも顧問税理士は税務署の言いなりでどっちの味方かわからないから、国と争うなんて無理!」というご意見が多く、「税務署の言うとおり修正申告するしかない。」という経営者が大部分かと思います。
そんな悔しい思いをしながらも安易に修正申告をしてしまうその前に・・・
税務調査に臨む前には、以下の3点だけは押さえるようにしてください。
(1)疑念を持たれそうな点について、事前に準備して説明できるようにしておく。
(2)根拠となる書類は、必ず作成して残しておく。
(3)日頃から税務の処理について分かりやすく説明してくれて、税務調査でしっかりと戦ってくれる顧問税理士を雇う。
最後が一番難しいかもしれません(苦笑)が、これだけで結果は変わってきます。
さて、これでも納得いかない場合には最終的に裁判となりますが、その前に「異議申し立て」や「審査請求」という手続きも可能ですので、流れを見ておきましょう。

そしてこの「国税不服審判所」の裁決にまだ不服があるときは、裁決から3カ月以内に訴訟を起こすことになりますが、訴訟となるとその費用や税理士・弁護士などの費用もかかります。
争点となった部分の税額を考えると割に合わないため、ここまでで断念する方が多いのも、残念ながら事実です。
ですが「金額の問題ではない!こちらが正しいと思って行った事を否認されるなんて、許せん!」とおっしゃる方。今回の話は覚えておいて損はありません。
まずは事前準備をしっかりと行い、もしものときに備えるようにしてください。

名目GDPが3位に転落ですって

「名目GDP 日本、中国に抜かれる!」
以前からニュースにはなっていましたが、改めて3位確定と先月発表がありました。
“経済規模で”42年間、世界第2位だったそうです。
どの報道を見ても論調が冷静で、
「当然のことですよね。だってあれだけ人口が多いですもの・・・」
そして、行きつく先は、
「一人あたりGDPでは、日本の方がまだ10倍大きい!」
しかも、日本の一人あたりGDPは世界で17位(2009年度)。
意外と普通の順位ですね・・・。
一人あたりGDPが日本より上位で、日本よりも人口が多いのはアメリカだけです。
世界の国別人口を上位から列挙すると、
『中国、インド、アメリカ、インドネシア、ブラジル、パキスタン、バングラデシュ、
ナイジェリア、ロシア、日本・・・』と、日本の人口は世界で10位です。
人口数が日本より上位で、日本より経済的に裕福と感じるのはアメリカだけではないでしょうか。
ご存知のとおり、GDPは【一人あたりGDP × 人口】の積で求められます。
一人あたりGDPが世界17位で、人口は世界10位・・・。
こう考えると、日本のGDPが世界第2位であり続けたのは、単純に“人口が多いから”、あるいは“人口が多い国の中で、一人あたりGDPが2番目に高かったから”という結論に達します。
ですが、今後、日本の人口は減少傾向に入ります。
それでは、人口の減少に引きずられ、GDPも下がり続けるのでしょうか?
これは、企業の売上高に置き換えてみればヒントが隠されています。
仮に、皆さんの会社の社員が1割減ったからといって、売上高も引きずられて1割下がるでしょうか?
10人の会社なら1人、30人の会社なら3人、100人の会社なら10人。
実際に下がったら経営者は頭を抱えてしまうはず・・・。
しかし、社員数の減少に応じて、下がりそうで下がらないのが売上高です。
それは残りの社員が懸命にカバーするからです。
つまり、一人あたりGDPが増加しているのと同じ現象です。
企業の数年間の連続分析を行っても、人数が減少している事業年度というのは、一人あたりの生産性は増加している傾向にあります。
もちろん、減少人数分を雇うのは簡単です。
とはいえ、簡単に雇ったら大変なことになると分かっているから、どこの中小企業も雇う事が出来ていません。
それでも、売上高を落とさないように努力は続く・・・。
そして、一人あたり生産性は増加する・・・。
いつまでたっても仕事は大変・・・。
これは中小企業のジレンマですが、大きな枠組みで見れば日本の今後のGDPの構造と同じです。
労働人口が減少していくのですから、仕方ありません。
また、皆さんの会社が、こう言われたらムッとくるはず。
「あなたの会社の売上高が大きいのは、社員数が多いからですね」
それよりも、こう切り返せるような形が目指すべき方向性ではないでしょうか。
「うちの会社の一人あたり生産性は業界平均の2倍だよ」
これが日本の現状です。
労働人口は減少するという大前提の下に、企業の一人あたり生産性に焦点を当てて経営される事が、今後の日本のGDPにも少なからず影響を与えるのではないかと考えます。

現実を歪める

林原グループが破綻しました。
「バイオ企業の雄」
「岡山の大地主」
と言われたグループの実態は、
架空の決算書で銀行を信用させ、
約1300億円もの借入残高を抱える
問題企業でしかありませんでした。
1883年に創業した同社は、
元々は、水飴事業を営む企業でしたが、
4代目社長になった林原健氏の社長就任で、バイオ企画を展開。
食品の甘味料に欠かせない「トレハロース」や
抗ガン剤「インターフェロン」の量産化に成功。
「バイオ企業の雄」として世界的に名前が知られていました。
しかし、『日経ビジネス』(2011.2.14号)によると、
2009年10月期の林原単体の売上高は281億円。
当期利益はわずか1億円。
その企業に対して、銀行の債権総額は約1300億円。
バブル時代を彷彿させるハチャメチャ度です。
架空の決算書を受け取り、融資を続けた銀行は、
林原に対して怒り心頭だと思いますが、
どう見たって、どちらも狂っています。
お互いに、現実を見なかった。
企業における不祥事の典型的なパターンが
ここにもあります。
通常、企業は、望む状況と現実にギャップがあると、
そのギャップを埋めるために、
分析をし、新たな仮説を立て、行動します。
企業経営とは、
決算書に代表される現実を示す各種数字を
客観的に受け入れ、それを味わい
次の行動をしていくものです。
これに対して、
林原グループは、「現実」を歪めることを選びました。
これは、人間で言えば、ウツの典型的な症状です。
そのウツ企業に、
銀行は大量の融資をしました。
その額は、このグループの規模からは
常識外れの融資額です。
林原グループは、
金融機関に対して、他の金融機関の融資残高について
虚偽の報告をいていたようですが、
最低限、融資トップの金融機関ならば、
おかしい・・と思ったはずです。
林原グループには、
28もの金融機関が融資をしていました。
この事実だけでもおかしいはずです。
それを見ないふりをしてきたのです。
28の金融機関の末端の金融機関にいたっては、
何の志もない提灯融資。
話題の企業に少しでも融資で入り込みたいという
スケベ根性だけのコソ泥融資と言っても良いでしょう。
しかし、これを笑うことはできません。
私たちだって、
現実を歪めてみていないでしょうか?
決算書を見て、言い訳をしていないでしょうか?
そして、どこかにコソ泥棒がないでしょうか?
こういう事件が起きた時は、
他人事の顔をしてニュースを楽しむのではなく、
我にも同じ色はないか・・と自省することをお勧めします。