“売り”の怖さ

どの企業でも、売上高を上げるのには必死です。
そして、営業マンもノルマ達成のために、毎日、得意先回りをしてることでしょう。
しかし、売上高の明細を見ていると、「?」と思うことが時々起きます。
例えば、ある得意先に対する売上げの急上昇。
回収が90日手形だとして、3ヶ月後にその手形が落ちなければ大変なことになります。売上げが上がるのはうれしいことですが、売上げの急上昇の理由をきっちり押さえておかないととてんでもないことになる場合が・・・・・。
新規得意先の開拓でもそうです。
ライバルから移ってくる得意先というのは、ライバルにとって優良得意先ではない場合が多い。カンタンに言えば、ババを引いたようなものです。
当社では、クレーマー対策のアドバイスも行っていますが、そのアドバイスの中に、「クレーマーをライバルに渡す」という秘策もあります(笑)。
新規取引先が、そうしたライバルの秘策で移ってきたとしたら・・・・。
実は、「売り」は怖い。
このことを知らずに、深追いし、大きな傷を受けることがあります。
基本的な「売り」の姿勢は、“急がず、休まず”。
売上げの急上昇はうれしいことですが、回収されるまでは本当には利益は実現しないのですから、慎重に行きたいものです。
中小企業の決算書には、こうしたことを念頭に置かなかったことでできたウミがあるものです。
「売掛金」という項目には、そうしてできたウミが回収されないまま残っていたりします。
昔、私が融資の担当をしていたとき、新規取引先の決算書が手にはいると、こうしたゾンビ売掛金があるかどうかを探したものでした。
ちなみに、ゾンビの金額の大きさは様々でしたが、ゾンビがない会社はほとんどありませんでした。
売上げが立てば、法人税や所得税、そして消費税を納めなくてはなりません。つまり、その売掛金がゾンビ化すれば、税金の納めすぎになっている状態が続くということです。
確かに、貸倒処理により納めすぎの税金の回収は可能ですが、大きく「売り」に失敗した企業ほど、売掛金をそのままにして粉飾を続けるところがほとんどです。
来年の消費者金融の総量規制の開始を前に、自主規制の動きが消費者金融に限らず割賦販売などでも昨年から出てきています。
今までならば300万円で通っていた審査が、100万円しかダメだというような話はよく聞くようになりました。
現在の法改正では、総量規制にクレジットカードも入れるような話しも出てきています。ネット販売などの場合、クレジットでの回収が当たり前になっていますが、クレジットカードが総量規制の対象になれば、クレジットが使えない例は結構多く出ると思われます。
日本国内版サブプライム問題と言われている、こうした問題は、「売り」の怖さを改めて知るきかっけになりそうです。