税理士の嫉妬は海よりも深い?!

「あなたとは今後一切お付き合いはしません!」
私が以前にある社会保険労務士から言われた言葉です。
何故、社会保険労務士がそのようなことを言ったのかについて詳しくはお話いたしませんが、一言でいうと『妬みと嫉妬』です。
今回は専門家と言われる私たちの情けない一面についてお話いたします。
税理士や社会保険労務士をはじめとする”士業”の中には、プライドだけが高い者が多く、そのことで本来はお客様である多くの中小企業の経営者が使わなくてもいい気を使っていらっしゃいます。
弊社では以前より、『税理士セカンドオピニオン』というサービスを行っております。
このサービスは文字通り、顧問税理士がついている企業の経営者や経理担当者が、他の税理士の意見や見解を聞くことを目的としたものです。
先日も事業承継をお考えのお客様からこんな相談がありました。
コンサルタントを依頼し自社株移転スキームを提案してもらったのだが顧問の税理士がそのスキームには問題があり認められないと言っているというものでした。
実はこの手の相談はとても多いです。
この手のスキームや税金対策を税理士が認めないという場合の理由はいつも決まっています。
・・・
「税務署から否認される可能性があります。」
「そんなことやっても意味がない。」
「こっちのほうが税金がかからないですよ。」
いかにも専門家らしい言い方に聞こえますが、
これを言い換えると、次のようになります。
「私には責任が持てません。」
「私は面白くありません。」
「私ならもっといい方法を知っていますよ。」
これが税理士が本当に言いたいことです。
いかがでしょう?
税理士のコメントがいかに自分を正当化するためのもので顧問税理士である自分を差し置いて他人の意見を求めたことに対しての『妬みと嫉妬』によるものであるかがわかります。
経営者は何も税金のことだけを考えているのではなく、それ以上に会社を継続発展させていくためにどうしたらいいのかを必死に考えていらっしゃいます。
ところが、税理士は自らのプライドと保身、そして『税金』の世界から頭が離れることはありません。
その結果、このような後ろ向きコメントになるのです。
とはいうものの、税理士を一方的に責められるものでもありません。
これは質問をする経営者の方にも問題があります。
このような場合、恐らくは税理士に対し次のように質問をしているのではないでしょうか?
「このスキームに問題がありませんか?」
「このスキームどうでしょうか?」
このように聞かれればスキームとして100%完璧なものなどないのですから、税の専門家として『否認される可能性があります』とか、『もっといい方法があります』といった回答になってしまうのは仕方がありません。
逆にこの質問に対して「まったく問題ありません。」と答えてしまうほうが専門家としては問題です。
そこで、このような場合に次のように質問をかえてみてください。
「私がやりたいと言ったら、先生はこのスキームの遂行に協力していただけますか?」
経営者がやってもいいかな?問題がないかな?と頭を悩まされることには多かれ少なかれリスクはあります。
そのリスクを含めて『私を支援する意思がありますか?』と税理士に問うてみてください。
そこでかえってくる答えの第一声が誰のための答えであるか?それこそが税理士が貴方と向き合う真の姿です。
つい先日もお客様の経営者より次のような電話がありました。
社長:「うちには以前からお世話になっている社労士がいるんですが、その先生は全然アドバイスとかくれないんです。」
社長:「別のところで知り合った社労士の方が、いろいろな助成金のもらい方をアドバイスしてくださるんですが、その部分のお仕事だけお願いしてもいいものでしょうか?」
笹川:「まったく問題ありませんよ。」
笹川:「それで顧問の社労士さんが面白くないと言われるようであればそこまでの器の方だということです。」
社長:「そうですね。わかりました。」
企業は専門家に依頼する立場であって、専門家のご機嫌を伺う必要はありません。
だからといって横柄な態度でどんな失礼なことを言ってもいいというものではありませんが、その専門家をビジネスパートナーの一人と考えるのであれば、少なくとも何でも言い合える関係でありたいものです。

消費税増税による、バラまき政策が始まりました!?

消費税増税による混乱も一服ついて、すっかり8%の生活にも慣れてきてしまった、そんな今日このごろですが、この増税による消費の下支えのため、臨時に実施される給付金があることをご存知ですか?
そう、厚労省管轄で始まった、【臨時福祉給付金】と【子育て世帯臨時特例給付金】です。
漢字ばかりの、いかにも!というようなネーミングですが、あまり大体的に宣伝していないようで、ご存知ない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、この制度を簡単にご紹介いたします。
まずは厚労省のHPです。
http://www.2kyufu.jp/
なお、少し見にくいですが給付を実施するのはお住まいの市町村になります。
★臨時福祉給付金
・趣旨:消費税増税にともなう所得の低い方の生活への影響を鑑みて給付金を支給する
・対象者:(1)H26年度の市民税が非課税の方、(2)生活保護を受けていない方
・給付額:対象者1人につき1万円(給付は1回限り)
すなわち、H25年中の給与や年金などの所得が無い、あるいは所得が低いため住民税が課税されておらず、誰の扶養親族にもされていない方で、かつ、生活保護を受けていない方が該当します。
★子育て世帯臨時特例給付金
・趣旨:消費税増税にともなう子育て世代の消費の下支えの観点から給付金を支給する
・対象者:(1)H26年1月分の児童手当の給付を受けている方、(2)H25年分の所得が児童手当の所得制限限度額未満の方
・給付額:対象児童1人につき1万円(給付は1回限り)
なお、所得制限の金額の目安はこちらをご覧下さい。
http://www.2kyufu.jp/kosodate/youken/
夫婦子供の3人家族でも、年収920万円以内であれば支給対象とされます。
要は、児童手当をもらっている家庭で、給与年収が900万円を超えない場合には、給付金の支給を受けられると考えて良さそうです。
しかし、受給を受けるには、申請を行わなければいけません。
http://www.2kyufu.jp/kosodate/shinsei/
黙って待っていても給付はされませんので注意が必要です。
なお、各市町村の申請の状況はこちらでも確認できます。
http://www.2kyufu.jp/shichouson/
7月より、ぼちぼち役所では受付の受付を開始しているようですが、いま見ていただいたとおり、給付は1回きりの限定です。しかも申請方式です。
たった1回の給付で、この給付を受けた家族にとってどの程度の効果があるのでしょうか。。。
例えば夫婦子供の3人家族が申請により受けられるのは1万円です。果たしてこれが消費の下支えになるのかは疑問に思えてしかたがありません・・・
しかも、もし申請を知らなかった方がいたら、当然給付はされません。
趣旨からみても、そんな制度では問題ではないか、と感じてしまいます・・・
しかし、もらえるものは貰っておかない手はありません。
申請用紙は一斉に各家庭に送られているようですが、繰り返しになりますが、給付を受けるには申請をしなくてはいけません。
あなたの家にも、申請用紙が送られてきていませんか?
該当する方は、申請のし忘れのないよう、気をつけましょう!!

コンビニの一杯100円のコーヒーが、あなたには200円だったら

「は?何を言っているんだ?一杯100円のコーヒーは、誰が買ったって100円にきまっているじゃないか!」
確かにその通りなのですが、ちょっと角度を変えて物事を見てみると、一概にそうとは言えない事実があるのです。言い方を変えてみましょう。
「コンビニの一杯100円のコーヒーを買うには、あなたはいくら稼がなければいけませんか?」
さあ、どうでしょう?
私達は労働によって得た収入から税金を支払い、残ったお金を自由に使うことになります。そして、みなさんご存知のように、日本の所得税は累進課税といって、所得が高い人ほど税率が高くなる仕組みになっています。
つまり、同じ一杯100円のコーヒーを買うにしても、支払う税金を考慮すると、その価値が人によって異なってくるのです。
例えば年収が90万円ほどのAさんであれば所得税・住民税ともに非課税ですので、100円のコーヒーを買うには100円稼げばよいことになります。しかし、年収が1800万円を超えるBさんは所得税・住民税を合わせると50%の税金がかかります(実際の計算は異なりますが、ここでは便宜上50%とします。)ので、Bさんが100円のコーヒーを買うには200円稼ぐ必要があることになります。
Aさんにとって、100円のコーヒーは100円の価値ですが、Bさんにとっては200円の価値ということになるのです。
「そんな当たり前のこと・・・」と言われてしまいそうですが、実際に普段からこうした“税金を計算した思考で行動”している人は多くないはずです。
次に、これに“労働時間”という物差しを加えて考えてみましょう。
あなたは乗っていた乗用車が故障してしまったので、新しく車を買い換えることにしました。車の値段は200万円でした。さて、この車を買うのにどれくらいの時間働かなければならないのでしょうか。
みなさんの年収が仮に500万円で、扶養家族なしであった場合、所得税・住民税・社会保険料を考慮すると、手取りは約400万円ほどになります。一般的な週休2日の企業の場合、年間休日は120日くらい、年間労働日数は250日程度です。1日8時間労働とすると、1年間の労働時間は2000時間になります。
手取り額400万円を2000時間で割ると時給は2000円です。購入する車の値段200万円を2000円で割ると、購入する車は労働1000時間分の価値ということになります。1カ月の労働時間が8時間×20日間=160時間とすると、6ヶ月分以上の労働に値することになります。
6ヶ月分以上の労働に値すると言いましたが、これは生活費などを一切考慮せずに、稼いだお金全てを車の購入に費やすと仮定して出した数字です。実際には私達は税金を支払った後に残る手取り額から、生活費を出さなければなりません。
仮に毎月必要な生活費を30万円として、税金と同じように考えて計算すると、年収500万円の人にとって、税金と生活費を差し引いて残る、自由に使えるお金は年間40万円(手取400万円-生活費360万円)。これを年間労働時間2000時間で割って時給換算にすると、なんと200円にまで減ってしまいます。すると200万円の車の価値は、労働10,000時間分、つまり5年分の労働に値することになるのです。
私達は普段、生活に必要な消耗品であれ、趣味にかかる物であれ、何気なく購入してしまいがちです。しかし、税金などを考慮して自分の1時間あたりの労働価値を算出したうえで、購入する物の価値を算出すると、かなりの価値になることに驚くはずです。
“税金を計算した思考で行動する”ことで、物の価値が、今までとは違って見えてきます。これは経営者の方だけでなく、従業員の方にも是非、知っておいていただきたい考えた方です。こうした思考を身につけることで、物の価値観が変わると同時にコスト意識が自然と高くなり、会社においても私生活においても、必然的に無駄な経費を使わなくなります。是非、実践してみてください。

節税と準備

「法律に反しない範囲なら最大限にメリットを追求する」
5月29日の日経新聞に日本IBMの税務訴訟についての記事が掲載されていました。冒頭は、今回の訴訟について語ったIBM関係者の言葉として掲載されていたものです。
この記事は日本IBMという大企業の税務訴訟について書かれたものですが、その内容は、私達中小企業にとっても、非常に参考になるものでしたのでご紹介させていただきます。
5月9日、約4千億円の申告漏れを指摘された日本IBMと国税局が争った裁判で、東京地裁はIBM勝訴の判決を出しました。(国側は今回の判決を不服として控訴しています。)その内容は、持株会社を通じて行った自社株売買で、持株会社に譲渡損として発生した赤字を、連結納税制度を使って自社の黒字と相殺、納税額を約1200億円圧縮したというものでした。
国税側は「会社側の行為に経済合理性はなく、制度を乱用している」と主張しました。これに対してIBM側は「グループ再編のためであり、譲渡損を作り出す意図もなかった」と反論しています。ちなみにこの手法は現在では法改正で使えなくなっており(IBMの取引は法改正前に行われています)、専門家の間でも国税側の勝利を予想する声が多かったようです。
ではなぜ、専門家の予想に反してIBMは勝訴することができたのでしょうか。記事を読むとそこには、大きく分けて2つの理由があったことがわかります。
(1)IBMは、はじめから訴訟を見据え、税務調査開始前に日本屈指の税務弁護士に依頼し、弁護士立会いという先手を打って、調査手続きに違法な部分がないかチェックしてきた
(2)国税側に提出する証拠を厳選した
つまり、IBM側は今回の取引について、国税が異議を唱えることを予め想定し、訴訟に耐えられるように、事前にしっかり準備を整えていたということです。
おそらくIBM側は、今回の取引について、経済合理性を裏付けるような証拠を積極的に残すと同時に、「経済合理性がなく、制度を乱用している」と判断されかねないような証拠はできるだけ残さないようにしたのではないのでしょうか。そしてさらに、経済合理性を裏付けるために積極的に残した証拠の中でも、事前に厳選したものを国税に証拠として提出したのでしょう。
そうした入念な事前準備が功を奏したのでしょう。判決では「不合理とまでは断定できない」「事業上の目的がないとも言いがたい」など、国税側の主張を退ける言葉が続いています。この判決を受けて税務訴訟で有名な弁護士は「租税回避を裏付ける証拠が不足していたのが国税側の敗因」と指摘しています。
経営において最大のコストの1つである「税金」。当然、違法な節税手段は言語道断です。
しかし、コストである以上、私達は税金を合法な範囲で、できるかぎり削減する努力をしなければなりません。それは、まさしく冒頭のIBM関係者の言葉の通りです。
「法律に反しない範囲なら最大限にメリットを追求する」
これはとても大事なことです。
しかし、納税者の取引について、税務当局が違法ではなくても“租税回避行為”(形式的には合法だが、経済合理性のない異常な形式による取引を行うことで、税金の支払いを逃れる行為)であると認定すれば課税されてしまう恐れがあります。
重要なのは、税務署から指摘される恐れがあるような取引を行った際には、そのことを認識し、実際に指摘された時には、「どう主張するのか」を明確にしておき、主張を裏付ける「客観的な証拠を予め残しておく」ことです。
「法律に反しない範囲で節税メリットを最大限に享受するために、万全の準備をする」
言葉にすると当たり前すぎのように感じますが、当たり前のことがとても重要なのです。

「株を買ってくれませんか?」と言われたらどうしますか?

中小企業のオーナーの中には、古参の従業員や新たにビジネスパートナーとして役員に就任することとなった者に自社の株式を持たせることがあります。
株を持ってもらうことによって経営への参画意識をもってもらいたいというオーナーの想いは分かりますが、残念ながらその想いが叶うことはほぼありません。
それどころか、将来に向かって大きな問題を残すことになるのです。
この株を巡って以前にもこんな相談を受けたことがありました。
社長「株主の一人が株を買ってくれないかと言ってきたんですが…」
私 「何株ですか?」
社長「100株です。」
私 「社長のところは発行済株式数が400株ですから25%ですね。」
私 「随分と持っていらっしゃいますね?どんな方ですか?」
社長「会社を立ち上げたときに出資をお願いした方です。」
社長「時価で買って欲しいと言っているんですがうちの時価って幾らなんでしょう?」
株を発行した時には額面(現在は額面株式は廃止されています。)だったものが、何年もの時を経てその価値が何十倍にもなっていることは珍しくありません。
株価の定義をどこにおくかによっても変わりますが、今回のケースでは時価純資産価額で評価した場合、株価は十数倍になっていました。
ざっと計算しても、総額で数千万円となります。
この場合、次のような選択肢が考えられるでしょう。
1.申し出を断る
2.会社で買い取る
3.社長が個人で買い取る
では、それぞれについて詳しく検討していきます。
なお、取得時における時価と取得価額との乖離による課税関係が生じないことを前提とし話をすすめていきます。
【1.申し出を断る】
株主から株式を買い取ってほしい旨の申し出があった場合、基本的に会社にはこれに応じる義務はありません。
みなさんの中には「株式買取請求権という言葉を聞いたことがある。」とう方がいらっしゃるかも知れません。
確かに、株主の権利として株式買取請求権は存在しますが、これは合併など企業組織再編等の株主総会決議が行われたときに、その決議に反対する株主が行使できる権利であって、間違っても『ちょっとお金が欲しくなったので』と買取を請求できる権利ではありません。
従って、買取りの申し出を断ることはできます。
しかし、その場合、断られた株主が次に取りうる手立てについて検討をしておく必要があります。
中小企業の株式はまず間違いなく『譲渡制限株式』となっています。
これは、会社にとって好ましくない株主を入れないために、株式の譲渡にあたっては、会社の承認を得ることを定めたものです。
しかし、譲渡制限があるといっても、株主が投下した資金を回収する権利を保証しています。
それが、『譲渡承認請求手続』です。
もし仮に買取りを断られた人が、その会社およびオーナーとの関係を断つ覚悟があるのであれば、ライバル会社等に買取り話を持ち掛けます。
会社は当然そのような相手への譲渡を承認はしませんので、その場合には、会社自身が買い取るか、又は新たな買取人を指定しなければなりません。
この場合の指定買取人は、一般的にはオーナーである社長自身ということになります。
その後、会社又は指定買取人は承認請求者との間で『価格交渉』を行います。
ここで価格が合意に至ればいいのですが、合意に至らない場合には、会社又は指定買取人並びに承認請求者は、裁判所に対して株式の売買価格の決定の申立てを行うことができます。
この決定の申し立てが行われた場合には、裁判所は、認請求時における会社の資産状態、収益状況その他一切の事情を考慮し価格を決定しますが、多くの場合、買取人にとって想定を上回る価格で決定されています。
結論を申し上げます。
譲渡承認の請求があることが想定されるのであれば、最初から買い取りの申し出を断るべきではありません。
次に、買い取りの申し出を断るべきでないという判断をした場合についてご説明いたします。
【2.会社で買い取る】
会社で買い取る場合は、それは『自己株式の取得』となります。
自己株式の取得については『株主平等の原則』から、会社法によって次のような厳格な手続きと、一定の規制が設けられています。
(1)株主総会の特別決議
(議決権の過半数の出席かつ議決権を有する株主の3分の2以上の賛成で可決)
(2)財源規制
(3)売主の追加請求権
特定の譲渡人からの自己株式の取得にあたっては、まず、取得株式の数、買取価格、買取総額の上限について株主総会の特別決議による承認を受けなければいけません。
自己株式の取得にあたってこのような承認が必要となるのは、自己株式の取得による金銭等の受け渡しが、会社法において配当と同じく『剰余金の分配』と位置付けられているためです。
剰余金の分配については、債権者保護の目的から無制限に配当等をすることを禁止するために『財源規制』を設けています。
そのため、財源規制に違反して自己株式の取得が行われた場合には、その株主は善意・悪意にかかわらず、交付を受けた金銭等を会社に対して支払う義務を負うだけでなく、取締役についても責任を負うことになります。
なお、財源規制に反する自己株式の取得の効力は、学説上は『無効説』と『有効説』が対立しており明確な判例はありません。
そのような状況において財源規制に反した取得を行うことは、その後のトラブルを招く恐れがあることから行うべきではありません。
最後に、売主の追加請求権についてですが、売主となる株主以外の株主についても自己株式を買い取る旨を通知し、平等に株式を換金する機会を与えなければならないこととなっています。
売主の追加請求があった場合には、株主総会で承認を受けた予定取得株式数を超えてしまう可能性があります。
その場合には、当初から予定されている株主の買取数量に、追加買取請求のあった株式数を合算し、それぞれの買取希望株式数で按分計算することとなります。
この場合には、当初買取りを希望した株主より全ての株式を買い取ることができなくなりますので、予め、追加買取請求に備えて買取枠を高めに設定しておくことも考えられますが、財源規制があるため無制限に買取枠を設定することはできません。
そこで、定款を記載することでこの追加買取請求権自体を無効にする方法がありますが、一部の株主に不利益となることから定款の変更にあたっては全株主の同意を得ることが必要となります。
従って、特定の株主から買い取りの申し出があったあとからの定款変更では手遅れとなりますので、全株主から同意を得られる環境のうちに手続きをしておくほうがよいでしょう。
【3.社長が個人で買い取る】
最後に、社長が個人で買い取る場合について考えます。
個人対個人の取引には、会社法のような規制を受けることはありません。
当然に、前段でお話した譲渡承認のための手続きを行う必要はありますが、オーナーが買い取る場合には、譲渡承認が得られないということはありません。
さらに、自己株式のときのような財源規制や売主追加請求の問題も起こりません。
取得にあたっての財源をどのように調達するかという問題は残りますが、それ以外は単純明快です。
唯一、取得対価をいくらにしたらよいのかという『時価』の問題や、取得後における事業承継の課題は残されますが、すでに買取りを迫られている状況においてはこれが最善の選択と言えます。
最後になりますが、このような問題は自分の会社には関係がない話と思わないでください。
今順調に経営されている会社様ほど、潜在的にこのような問題を抱えているとお考えください。
最善策は、このような問題が起こる前にその可能性のある株主を整理することにつきます。
このメールマガジンを他の株主様がお読みになる前に、社長様にお読みいただけていることを願っております。