社会保険料削減(案) ~その2~

それでは、前回に引き続き、社会保険料の削減(案)をお伝えいたします。

【その2】ある意味、加入者全員の社会保険料が下がる

前回お伝えしたのは、かなりイレギュラーな案でしたが、今回は国が推し進める制度をお伝えいたします。

それは、「確定拠出年金制度」です。

「確定拠出年金制度」を簡単にお伝えすると、従来からの退職一時金制度に替えて、退職金を年金で受け取ることを認める制度です(もちろん、併用することも考えられます)。

退職一時金制度は、企業が従業員の将来の退職に備えて積み立てていかなければならないものであり、業績の浮き沈みによっては重い負担になります。さらに将来の退職金のための引当金は経費に算入されないため、お金だけ準備しておかなければなりません。

これに比べて、「確定拠出年金制度」は、掛金を随時外部拠出することになるため、将来に備えてお金を準備するのではなく、いま経費に算入することができます。受け取る従業員側にとっても、企業が倒産しても掛金は既に確定している権利であるため確実に受け取れます。

また、日本の全企業に締める中小企業の割合は99%超であり、中小企業において最も一般的と思われる「中小企業退職金共済制度」の加入者数は約330万人。

これに対して、「確定拠出年金制度」の加入者数は、2015年3月時点で500万人を超えています。
上場企業を中心に、退職一時金制度からの移行が進んでいるからです。

このことから、今後は最もメジャーな退職金制度となってゆくと考えられています。

しかし、今回は「確定拠出年金制度」について説明する内容ではないため、制度についての詳細は下記に譲ります。

>> 厚生労働省HP『確定拠出年金制度の概要』

それでは、確定拠出年金制度が、なぜ社会保険料の削減につながるのか?

今回は、最も社会保険料が削減される可能性がある制度設計にて、導入による変化をお伝えいたします。

確定拠出年金掛金は、掛金の上限が月額55,000円まで認められています(他の企業年金に加入している場合は27,500円)。ちなみに、中小企業退職金共済は月額3万円が限度です。

そして、確定拠出年金掛金の「選択制」を導入した場合、掛金を拠出するのは社員自身となります。
掛金の拠出は給与内にて行うため、現在の給与の内訳を変更することになります。

例えば、月額30万円の給与の場合、従来通りの給与が24.5万円、確定拠出年金の枠として5.5万円の合計30万円となります。

つまり、企業としては企業負担の掛金の拠出無しに、社員の給与に確定拠出年金の枠を設定できるのです。この場合、社員から掛金を預り、拠出することになります。

そして、上記のケースで、社員が確定拠出年金の掛金として1.5万円を積み立てるとどうなるのか?

下記をご確認ください。

(シミュレーション表)

シミュレーション表なので詳細に過ぎる部分がありますが、上記のケースでは、社員が毎月1.5万円の確定拠出年金の掛金を積み立てると、年間3.4万円の社会保険料が削減されます(社員本人と企業負担の双方が削減対象となりますので、合計6.8万円)。

なぜ、社会保険料が下がるのかと言うと、確定拠出年金掛金は給与としてはみなされないため、社会保険料の算定対象外となり、社会保険の等級が下がる可能性があるからです。

さらに、上記のケースで5.5万円を掛金として拠出すると、社会保険料の削減効果は年間10.3万円(両者で20.6万円)となります。

さらにさらに、社会保険のみならず税金も下がるため、個人の節税商品として最強とも言われています。仮に10年の間、給与、社会保険料及び税金が変わらなかったとして、掛金1.5万円を拠出し続ければ、この社員は48.6万円の節税が可能となるのです。

簡単に説明すると、確定拠出年金制度導入に伴う社会保険料の削減案は以上となります(簡単ではないと思われますが…)。

当然、一人当たり削減額×社員数となりますので、社員が多い企業ほど削減効果が上がります。ただし、今回説明した制度において、社員が掛金を拠出するかどうかは任意です。制度を導入しても、企業は掛金の拠出を強制出来ません(せめてお願いでしょうか)。

とはいえ、社員にとっても、手取り後のお金を貯金するより圧倒的に有利なのは間違いありません。この辺の理解が進めば利用者が増加する可能性があります。

また、今回は企業の掛金拠出を0円として説明しましたが、企業の負担額を1.5万円(最大5.5万円)とすれば、社員の掛金の枠は4万円となり、実質的な退職金の前払い制度に移行できます。役員も社員同様に参加可能です。

確定拠出年金制度の導入は、確かにハードルが高いです。しかし、使い方によっては、中小企業においてネックの退職金制度の導入と社会保険料の削減に効果を発揮します。

中小企業においても導入が少しずつ進んでいるようですので、一度ご検討いただくのもよろしいかもしれません。

以上、二回にわたり、社会保険の削減(案)をお伝えいたしました。