消費税増税時代だからこそ契約書に入れたい気の利いた一言

前回に引き続き消費税増税についてお伝えいたします。

今回は、消費税増税後にしっかりと消費税をもらうために契約書に入れていただきたい『言葉』についてです。

前回、消費税率が上がる前には国民生活への負担を軽減する目的で経過措置が設けられているという話をいたしました。

それ自体は悪いことではないのですが、その一方で経過措置の適用がない取引にもかかわらず、契約時点でお客様にしっかりとお伝えしていなかった、もしくは、曖昧にしていたために本来であればもらわなければならない消費税を貰えないというケースができてきます。

そこで、今回は『消費税増税に対応した契約書の作成方法』についてお話しいたします。

      

 

【契約書作成時の重要ポイント】

1.金額は税抜きで記載し消費税等は別途徴収することを明らかにする

例えば、『月額賃料540,000円』としてしまうと消費税分が40,000円なんだろうなという想像はつきますが、消費税率改定後には賃料改定の通知をしなければ相手もそのままでいいだろうなと思ってしまいます。

正直に申し上げれば、「向こうが言ってくるまで(自分からは)黙っていよう」というのが一般的ではないでしょうか。

そこで、契約金額は税抜きで記載し消費税等は別途徴収することを明らかにするため次のように記載しましょう。

<記載例>

月額○○円(消費税別)
金額○○円(税抜、別途消費税)

2.消費税等の税率改訂に対応する条項を盛り込む

取引の態様ごとに契約書に盛り込むべき条項の記載例をご紹介いたします。
なお、請負工事に関する経過措置の説明については前回のメールマガジンをご参照ください。

<記載例>
(1) 経過措置の適用を受ける請負工事

第○条 消費税等の取扱いについて

消費税等は上記請負金額とは別に徴収する。
本契約は改定消費税法附則5条3項の規定によって、契約物の引渡日が消費税率改定日後であっても消費税率を契約日における消費税率により計算する。
なお、平成28年10月1日以後に何らかの理由で請負金額を増額した場合で、かつ、契約物の引渡日が消費税率改定日以後となった場合においては、その増額分に係る消費税率は改定後の消費税率により徴収するものとする。

(2) 指定日以後に契約した請負工事

消費税等は上記請負金額とは別に徴収する。
なお、消費税率については当該契約物の引渡日における税率によるものとする。

(3) 不動産等の賃貸借契約

不動産等の資産の賃貸借契約についても指定日前に契約した一定の契約については経過措置の適用がありますが、その用件の一つに『対価の額の変更を求めることができる旨の定めがないこと』というものがあります。

対価の額の変更を求めることができる旨の定めがないこととは、契約書において賃料改定の条項がないことをいい、次のような条項がない場合をいいます。

賃料については、公租公課の変動、諸般の経済情勢の変化、近隣の賃料比較等により、当事者間で協議の上改定することができる。

つまり、一般的な不動産等の賃貸借契約においてはこの条項が入っているため経過措置は適用はありません。

したがって不動産等の賃貸借契約においては次の文言を入れてください。

本契約は消費税経過措置の適用はない。
なお、契約期間の中途において消費税率の改定が行われた場合には、賃貸人からの通知の有無にかかわらず、消費税率改定後の賃料に係る消費税等については改定後の税率により計算するものとする。

(4) 一括受領の長期の保守契約、メンテナンス契約等の役務提供契約

契約が3年間や5年間など長期にわたる契約で、月ごとに役務提供が完了する場合において、施行日以後における保守料金に係る消費税については、新税率が適用されます。

なお、施行日前に一括して契約期間に係る保守料金を受け取っている場合であっても、施行日以後に係る部分は新税率となることから、施行日以後の保守料金について10%と8%の差額である2%部分を追加徴収しないと本体価格を値引したことになるので注意が必要です。

契約期間が1年間で、その1年分の保守料金を一括して収受している場合において、事業者が継続して当該対価を収受した時に収益計上しているときは、施行日前までに収受し収益計上したものについては旧税率を適用することとなります。

ただし、『中途解約をした場合には未経過期間分の保守料を返還する』旨の条項がある場合には、裏を返すと時の経過に応じた保守料金等が決められていることになるため、施行日以後の期間における保守料金に係る消費税は新税率が適用されますので注意してください。

月ごとに売上計上している企業が多いことから考えると次のような記載をすべきです。

消費税は上記保守料金とは別に徴収する。
なお、本契約は消費税経過措置の適用はないため契約締結後において消費税法の改定により消費税率が改定された場合には、契約時に領収した消費税額との差額を追加徴収するものとする。

すべての契約に共通して言えることは、『消費税率は変わるものだ』ということを前提に契約に臨むということです。

消費税率は必ずまた改定されます。

税金に関する条項をしっかりと盛り込んで思わぬ損失を被らないよう気を付けてください。