内部留保はなぜ必要なのか?

答えはもちろん1つではありません。色々と言い方はあるでしょう。
しかし、私はこの問いに対する明確な答えの1つを次のように考えています。

「何か問題が起きた時に、お金で解決できるようにしておくため。」

こういう書き方をすると、少々いやらしい感じもしますが、非常に重要なことです。

企業経営を行っていれば、経営者は様々な“問題”にぶつかります。“問題”というとトラブルを連想しがちですが、なにもトラブルに限ったことではありません。自社のステップアップのための前向きな問題にだってぶつかります。そのたびに経営者は、それらの問題をどのようにして切り抜けるべきか頭を悩ませ奔走します。

しかし、これらの経営者を悩ませる様々な問題の多くには、実はある共通点があります。それは【お金で解決できることが多い】ということです。

もちろん全てのことがお金で解決できるとは限りません。当たり前ですが、お金ではどうしても解決できない問題もたくさんあります。

しかし、今まで自社で起こった問題を思い出してみてください。そしてこれから起こるであろう問題のいくつかを想像してみてください。おそらく、お金があればお金で解決できる問題の方が圧倒的に多いはずです。

そして、実際に何か問題にぶつかった時には、その問題はお金で解決できる、お金で解決すべき問題なのかを判断します。それがお金で解決すべき問題であると判断したら、出し惜しみをせずに、できるだけ早くお金で解決してしまうことが重要です。

しかし、お金で解決しようにも、そのお金が無ければ、どうしようもありません。問題を解決できないばかりか、往々にしてそのことにより経営者にも従業員にも余計な時間と労力がかかることになり、疲弊した挙句に新たな問題を生んでしまいがちです。

これらのことは、私たち個人の家庭においても全く同じことが言えます。会社を家庭、内部留保を貯金、経営者を親、従業員を子供に置き換えて考えてみてください。

例えば、子供(従業員)に何かしらの問題が生じたとします。その問題は、お金で解決することがわかりました。しかし、家庭に(会社に)貯金(内部留保)がないことによって、その問題を解決することができないとしたら、親(経営者)にとってはとても辛いことです。極端な話し、その問題が解決できないことにより、その家庭(会社)はバラバラになってしまうかもしれませんし、子供(従業員)の将来に影響してしまうかもしれません。

だから内部留保は重要なのです。

もちろん内部留保することそのものに抵抗を感じる人はいません。誰だってお金は貯めておきたいはずです。しかし、内部留保をするには基本的に利益を出して税金を納めるしかないことが、ことをそう単純にはしてくれません。

税金を払うことへの強い抵抗感から節税に躍起になった挙句、利益を減らし内部留保まで減らしてしまったりします。節税保険などがこの典型です。

企業にとって内部留保は重要であり、内部留保の確保には税金というコストが必ずかかります。コストである以上、可能な限り削減に努めるべきなのは確かです。しかし、税金コストの過度な削減は利益に影響し、結果として内部留保を減らしてしまいがちです。

もちろん節税は大切です。無駄な税金は1円たりとも払ってはいけません。その為にはまず、ごく当たり前の合法的な節税を、ごく当たり前に漏れなく行うことです。

節税、節税と声高に言っている会社が、ごく当たり前の節税手法を知らずに実行していなかったり、使える税額控除の適用が漏れていたりすることが本当に珍しくありません。

漏れのない適度な節税を実効した後は、税金は内部留保を最大限にするための必要コストと割り切りましょう。そして、内部留保を最大限にすることで、これから出現するであろう、様々な問題を乗り越えられる体力をつけておきましょう。

「内部留保はなぜ必要なのか?」
それは
「何か問題が起きた時に、お金で解決できるようにしておくため。」
なのです。