現場検証 ~成果を達成するための指標の管理~

皆さま、KPIをご存知でしょうか?

Key Performance Indiecatorの略で、『重要業績評価指標』という意味になります。

バランスト・スコアカード等で用いられるので、ご存知の方もいらっしゃるかと思われます。また、KPIで検索するとWEBサイトの解析のための説明が多いので、WEBのお仕事をされている方にとってはお馴染の指標でしょうか。

では、「KPIとは何?」に対して、単刀直入にお伝えすると、下記の図が分かりやすいか考えます。

 

図

 

これはECサイトの売上高を分解した図(KPIツリー)です。売上高を成果とし、目標とする成果を達成するために管理すべき指標(KPI)によって構成されています。

例えば、「なぜ売上高が減少しているのか?」という抽象的な問い掛けではなく、「既存客の訪問回数が減少しているのはなぜか?」など、これが改善すれば成果に直結するであろうとして設定する指標です。

当然のことながら、売上高には構成要素が複数存在します。一つの指標を改善したからといって売上高が増加するとは限りません。回数が改善しても、単価が悪化すればむしろ減少する場合もあります。そのため、構成要素を全体的に管理し、統合的なアプローチを行うためには非常に分かりやすい管理手法です。

この点、KPIなど小難しい言葉を使わずとも、皆さまが普段から思考されている内容であることは間違いありません。しかし、普段から思考されていることも、上記のようにツリー上に落とし込むことによって、より明確になります。

そして、「会社として実効性のある経営計画はどのように作るの?」とご質問があると、KPIのご説明をさせていただくことがあります(さすがに、KPIという言葉は使いませんが…)。KPIは現状分析のみならず、将来の目標設定としても利用できます。

企業の成果を売上高や利益と設定すると、KPIはその根拠となるべく指標です。その根拠となる指標は非財務的な指標となり、行動回数や割合、単価などで示されることになります。

極端な話でお伝えすれば、全ての収益及び費用項目について目標とするKPIを設定しても構わないわけです。数字だけの経営計画よりも根拠が明確になります。

では、その根拠となる指標を達成すれば、経営計画が達成できるのか?というと、当然そんなことはありません。

そもそも、成果を達成するために設定した目標となるKPIが、その成果達成のために正しい指標とは限りません。あくまで仮説ですから、KPIも適宜見直しが必要となります。また、KPIを管理するために、より具体的な行動にまで落とし込んだ下位のKPIを設定する場合もあります。

成果のみ(営業成績など)を重視するだけではなく、プロセスのみ(行動など)を重視するだけでもなく、この2つを一体として管理するということにより、目的達成の確立を上げていきます。そういう意味で、KPIは経営計画の達成度合いを視える化するための指標とし有効となる可能性があるのです。

ただし、ありがちなのが、“KPIを作って終わり”というケースです。経営計画と同じく、毎月測定し、毎月検証し、それを毎月現場にフィードバックしていくサイクルがあって初めて有効に機能します。

中小企業でKPI的な管理が行われているのは、売上高を成果とした、集客・成約関連のみと言っても過言ではありません。少しもったいない気がします。固定費が高過ぎる企業などは、”固定費を10%減少させる”という目標成果の下にKPIを設定して管理すれば、意外と問題点が明確になります。プロジェクトごとでも構いません。経営計画とKPIを無理に連携させる必要はないのです。

例えば、日経情報ストラテジー2016年7月号の記事に、パーク24のカーシェアリングサービスのKPIは『入電率』一つのみであると紹介されていました。

入電率とは「カーシェアの利用件数当たりのコールセンターへの入電数」のこと。要は1回のサービス利用で、顧客から何回電話がかかってくるかを見る指標である。

 パーク24が入電率にこだわるのは「お客様が電話(コールセンター)に頼らないと困るような、ストレスの大きいサービスを提供していること自体が"悪"と考えているため。入電率が高いうちはお客様の評価は低い」(齊藤執行役員)。

つまり、パーク24のカーシェアリングサービスのKPIは財務的な成果を達成するためのものではなく、サービスの質を計るために設けられています。

管理や指標を好む企業は、KPIを過剰に設定する場合がありますが、KPIはあくまで特定の成果を達成するためのものです。管理のための管理になってはいけません。

また、いま何かと話題の金融庁が地方銀行の取り組みを評価するために設定したKPIもあります。

・金融機関が主力とする企業の経営改善や成長力の強化
・持続可能性に懸念がある企業の抜本的事業再生や早期転廃業等円滑な新陳代謝の促進
・担保・保証依存の融資姿勢からの転換

この三つのKPIはそれだけで判断できる指標ではないので、これらを基にさらなるベンチマークが設定されました。

このKPIは皆さまもよくご確認しておいてください。実はこの金融庁が進めている地方銀行への改善要請は、その先にある中小企業の経営に大きな影響を与える可能性があります。このお話はまた後日…。

以上、皆さまも自社の計画や業務について、KPIを利用してみてはいかがでしょうか?今まで視えなかったものが視えるかもしれません。