違和感

毎年恒例の税制改正を控え、新聞紙面では現在行われている様々な税制改正論議の内容について連日のように報じられています。
既に感じている方もいらっしゃるかと思いますが、今年の税制改正論議、例年のそれとは少し毛色が違っているように私は感じています。
この国の考えていることが透けて見え、なんだか恐ろしいのです。
先週のメルマガでは、財務省と国税庁が脱税調査に際し、クラウドなどインターネット上に保存されているメールなどの情報を強制的に押収できる権限を認める検討に入ったことをお伝え致しました。国税犯則取締法68年ぶりの改正です。
先週お伝えしたように、これは、いわゆる『マルサ』が行う国税犯則取締法に基づく裁判所の捜査令状を得て行う強制調査事案に関する改正ですので、私たち善良な納税者が受ける所轄税務署による通常の任意調査において、クラウド上に保管されている電子メールや会計データを押収されるようなことは、今のところありません。
しかし、今年の改正論議を見ていると、既に導入済みのマイナンバー然り、この国は我々の監視を一層強めようとしていることに間違いはありません。この流れには違和感と恐ろしさを感じるのは私だけではないはずです。
実は、今回の報道に先立つこと2ヵ月前の8月にも税制改正について、もう一つ驚くべき報道がなされています。
【租税回避策に開示義務 ~財務省など、税理士に 拒めば罰則検討~】
財務省と国税庁は、企業や富裕層に税理士が租税回避のノウハウを提供し、成功報酬を受け取った場合などに、税理士にその具体策を開示させ、拒んだ場合には罰則を設ける改正の2018年度実施を目指しているというのです。しかも適正な助言も開示対象に含むというのですから驚きです。
こうした改正を論議している背景には、近年、脱税の摘発件数や金額が減少しているという事実があると言われています。これは脱税そのものが減っているわけではなく、ITの発達などによって複雑多様化する脱税手法に法律がついていけておらず、証拠の収集が難しくなっていることや、税務当局が把握しきれていない税制の抜け穴を突いた仕組みが横行していることが原因として考えられているのです。
もちろん、脱税や実態の伴わない行き過ぎた租税回避行為は認められるべきではありません。しかし、自分たちが作った法律の抜け穴を、発見した税理士に開示させるというのはいかがなものでしょうか。
抜け穴がないように、立法するのが彼らの仕事であるように、法律を守りながらも、なんとか税金を低く抑え、会社に1円でも多くのお金を残そうと考えるのが経営者と私たち税理士の仕事でもあります。
電子メールや会計データを勝手に「のぞき見」されたり、必死に考えた節税手法を開示させられ、封じ込められたのでは、たまったものではありません。
恐ろしいのと同時に腹立たしさを感じる、こうした改正の動きは、当然、今後の我々の税務戦略にも影響を与えることは間違いありません。
今年の税制改正論議は特に目が離せません。今後もメルマガをお読みいただいている皆様には随時、最新の情報をお伝えしていきたいと考えておりますのでよろしくお願い致します。