弁護士もセカンドオピニオン

近年、中小企業においても弁護士に相談する機会が増えていると思われます。
私どももお客様と相談の上、弁護士に協力を依頼するケースが多くなりました。
さらに、依頼する弁護士によって「結果」が大きく変わるため、どの弁護士を選ぶかが重要なのは言うまでもありません。
今回は、中小企業が弁護士へ依頼する際、最低限気を付けるべきことを経験則からお伝えいたします。
まず、私どもはセカンドオピニオンを主たる業務の一つとして行っていますが、そもそも税理士は継続的にお付き合いがある顧問契約がベースとなっています。
どの税理士に依頼するかで中小企業の数字の結果も変わると言えますが、それは長期的な観点に近いです。
これに対して、顧問弁護士がいる中小企業はごく少数ですから、弁護士への相談はスポット案件がほとんどのはず。
従って、スポットで、短期に、結果を出していただかなければならないのが弁護士です。この時点で弁護士はとてもハードルが高いです。とりあえず近くの弁護士、知り合いの弁護士に相談するなんてことは危険極まりない…。
そして、税理士の場合、代表税理士が直接お客様の担当をするという事務所は概ね個人事務所であり、組織として活動している税理士法人等では、税理士資格を有していないスタッフがお客様の担当として付くケースがほとんどです。
担当は有資格であるのに越したことはありませんが、勉強した分だけ税法の知識が多いという程度で、単純に有資格であるから優秀という図式には当てはまりません。税法の知識は経営のアドバイスの一要素でしかないからです。税法に偏った知識が邪魔をして、経営の総合的なアドバイスが出来ない税理士が多いというのも現実です。
しかし、弁護士に相談する場合は、当然有資格者が相手になります。弁護士事務所に相談に行って、弁護士以外のスタッフが相談を受けるという事はあり得ません。そして、弁護士=優秀という図式が当てはまらないことは繰り返す必要さえありません。
個人の弁護士事務所に相談に行ったら相談すべき弁護士は一人しかいない訳ですが、組織として活動している弁護士事務所の場合は、担当がどの弁護士になるかで結果が全く異なります。
これは知人から紹介を受けた有名な弁護士事務所に相談に行っても同じです。税理士事務所同様、弁護士事務所も徐々に大規模化が進んでおりますが、そうであるが故にペーペーの弁護士が担当に付く可能性があります。
当然、各弁護士も専門領域がある訳で、「勉強のためにお前が担当してみろ」という事も多いことでしょう。
これが顧問契約となれば別ですが、スポット、かつ、一般的な案件であれば、代表を含めたエース弁護士が担当することはほとんどありません。
私どもも様々な弁護士の仕事を見てきましたが、依頼する弁護士によってこれほどまでに結果が変わるのかと不思議になるほどです。素人の私が対応しても何とかできそうな案件を、弁護士の対応のまずさで大きな損害を被ったケースも少なくありません。
その場合には弁護士は決まってこう言います。
「このようなケースでは、いつも同じような感じなので今回は仕方がありません」
そうであるならば、最初にこのように言ってくれる弁護士に依頼するべきです。
弁護士に依頼する以上、ある程度損害の可能性がある訳で、弁護士の対応次第でその損害が最大となるのか、最少となるのかが変わります。損害が確定しているのであれば、損切りのための対応を検討すべきであって、弁護士に依頼したが故に損害が未確定のままになってしまうことは避けなければなりません。
以上、経験則から弁護士選定の基準をお伝えすると下記になります。
・企業間の取引に関連する争いの場合、ビジネスを理解していない弁護士や
企業法務に詳しくない弁護士に依頼するのはNG!
→何の商売でも同じです。専門外の依頼を受けてしまう弁護士は論外です。
・対応が遅い弁護士は絶対にNG!
→トラブルの解決はスピードが命です。初動が遅れると損害は大きくなります。
メールおよび電話でその弁護士の対応スピードは測れます。
・代表弁護士が話を聞いてくれるのは最初だけで、その後は全てペーペーの弁護士が
対応するだけという場合はNG!
→全てについてエース弁護士に対応してもらう必要はありませんが、ペーペーの
弁護士だけが対応して良い結果が得られる可能性は低いと言えます。
・無駄なことは無駄とはっきり言ってくれる弁護士に依頼する!
→時間を浪費させる弁護士は厄介です。結果として費用も高くつきます。
・一度依頼した弁護士も、ダメだと思ったらすぐに他の弁護士に相談に行く!
→弁護士もセカンドオピニオンが重要です。スピードが重要である以上、
弁護士を変えることに躊躇してはいけません。
つまり、弁護士だからといって、何か特殊な条件がある訳ではなく、弁護士の選定もビジネス上の取引基準と全く同じです。
低価格で気軽に弁護士に相談できるサービスも増えてきましたが、力のある弁護士がわざわざこのようなサービスで回答することは少ないのではないかと考えます。緊急を要する場合に、このようなサービスで解決しようなどと考えてはいけません。
もし、損害額が大きくなることが予測されるトラブルが発生したら、弁護士費用は惜しまず、良い弁護士を探してください。それが最終的な損害額と時間の浪費を最小化してくれます。
税理士同様、「弁護士先生」と敬う時代は終わりました。弁護士もサービス業ですので、サービス業を意識させる弁護士を選ぶようにしてください。

会計業務クライシス

『法人税 電子申告を義務に』4月20日付の日経新聞の一面に、こんな記事がデカデカと掲載されていました。ご覧になった方も多いのではないでしょうか。
記事によれば、納税手続きをめぐる事務作業の効率化を狙って、早ければ2019年度から法人税と消費税の税務申告について電子申告を義務化する方針とのことです。
国税庁の発表によると、2015年度の電子申告の利用率は、法人税が75.4%、消費税が73.4%となっていますが、記事では大企業の電子申告率は約52%であることが伝えられています。
大企業の方が電子申告の利用率が低いということを意外に感じるかもしれませんが、これには理由があります。
大企業の場合、自社に合わせた独自の経理・会計システムを構築していることが多いことに加え、確定申告書の作成自体も税理士に依頼するのではなく、社内で行っていることが多いため電子申告を使わないのです。
これに対して中小企業の場合、多くは確定申告書の作成、申告を税理士に依頼しますので、結果的に電子申告を利用している率が高くなっているというわけです。
皆さまの会社の申告書は電子申告されていますでしょうか?
セカンドオピニオンなどで顧問先様以外の申告書を見させていただくと、紙で提出しているケースがまだまだあります。
中小企業で電子申告が利用されていない場合、それはほぼ例外なく申告を依頼している税理士の問題です。
いまだに電子申告を利用していない税理士は概ね高齢か、そうでなければ極端にIT音痴であることが考えられます。
そして、中小企業の場合、顧問税理士がIT音痴であれば、必然的に経理周りのIT化は進みません。企業側が効率化を目指してクラウド会計の導入などを望んだとしても、税理士が使い慣れたソフトの使用を強要したりするのだから困ったものです。
しかし、IT音痴の税理士に合わせて経理のIT化に遅れを取っている場合ではない事態が、実は迫ってきていることを、多くの方はまだ気が付いていません。
消費税の改正です。
2019年10月1日以降、消費税は10%に上がり、飲食料品などには軽減税率が用いられます。ご存知のように、同じ食事でも、店で食べるのか、テイクアウトなのか等によって税率が異なってきます。
個人はもちろん、企業でも日々、打ち合わせで飲食店を利用したり飲食料品を購入したりします。
想像してみてください。
経理担当者が1枚1枚レシートを確認して税率が10%なのか8%なのかを確認して会計ソフトに入力をする姿を。
言うまでもなく、おそろしく非効率です。
この作業は、クラウド型の会計ソフトを導入して、レシートをスキャンして自動で仕訳を起こしてしまえば、解決してしまいます。
現状は開発途上ということもあり、まだまだな部分もありますが、2年後までにはさらに精度も上がり、かなり使い易いものに進化しているはずです。
多くの中小企業の場合、2年後に法人税の電子申告を義務付けられたとしても、それは顧問税理士の問題なので影響は特にないでしょう。
しかし、繰り返しになりますが顧問税理士がITに疎ければ、そのクライアント企業のIT化は遅れがちです。そうなれば、時代遅れな非生産的な業務に追われることになり兼ねません。
今ならまだ全然遅くありません。
2019年10月1日、消費税改正まであと2年半を切りました。
経理・会計業のIT化が遅れている企業も、そろそろ真剣に考えなければいけない局面かもしれません。