ビットコイン狂想曲

「バブル」さながら価格が急騰し、その後乱高下を続けるビットコイン。
こうした投機的で適正価格を判断しにくいものへの投資についての是非はともかく、ビットコインは今や世界中でその名を馳せています。
このメルマガをお読みの方の中にもビットコイン取引をされている方や興味をお持ちの方が多くいらっしゃるのではないでしょうか。
こうなってくると、皆さんが気にし出すのはビットコインに絡む税金です。
その取扱いについてはいろいろと言われてきましたが、昨年12月に国税庁は、寄せられた9つの質問に回答する形で、仮想通貨で得た所得の計算方法を公表しました。
基本的なところだけ押さえておくと、ビットコインを始めとした仮想通貨で得た所得は以下のような扱いになります。
・原則として「雑所得」に該当する
・給与所得などの他の所得と合算して納税額を計算する「総合課税」になる
・損失が出ても他の所得との「損益通算」はできない
・損失の「繰越」はできない
お気づきのように、多額の利益には多額の課税が待っており、損失に対する手当もない、納税者にとっては厳しい課税となっています。
こうなると私たち専門家には「そもそもビットコインで得た利益って、税務署はどうやって把握するの?申告しなくてもバレないんじゃない?」という声が必ず寄せられます。
仮想通貨のような、これまでにない経済取引等については行政の対応が後手に回りがちで、事実、現時点では仮想通貨の取引に係る情報提出を取引業者等の第三者に義務付ける「法定調書」は定められていません(ちなみにアメリカでは既にビットコイン取引に情報報告義務が課せられているようです)。
では、現時点では仮想通貨取引を税務署が捕捉することはできないのでしょうか。
残念(!?)ながら、そうはいかないようです。
仮想通貨はご存じのように「ブロックチェーン」という技術を利用しています。
そしてこの「ブロックチェーン」技術には「全ての取引履歴が記録される」という特徴があります。
つまり、現時点でも税務署は必要に応じて取引業者等に利用者の情報を求めれば取引の内容を調べることができ、仮想通貨に係る所得を捕捉することは可能なのです。
世界的に「旬」な案件でもあるビットコイン取引への課税について、日本の税務署が高い関心を持っていることは想像に難くありません。
今年も確定申告の時期が近づいてきました。
今回の税制改正の内容といい、現在の日本では「稼ぐ人」を狙って税金を取るという方針を固めてしまったようです。
思うところはさまざまありますが、われわれにはどうにもできませんので仕方ありません。
個人も法人も合法的な節税をしっかりと行い、払うものは払って、より内部留保を増やしていくことが今年も引き続きわれわれが取るべき戦略ではないでしょうか。
本年も皆さまの経営の一助となるべく、有意な情報をお伝えしていきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

税金は、より複雑に…

全体的には大きな目玉となる改正がなかった平成30年度の税制改正大綱…。
ほとんどが事前に報道されていたため、皆さまも既にご存じのものと思われます。
所得税に関しては、単純に高所得者に対する増税とお考えいただければ結構ですが、その高所得者の基準も年々下がっており、今回の改正では給与所得控除額の上限となる給与収入が850万円にまで下がりました(平成32年分以後)。
現在の給与収入の上限は1,000万円(控除額は220万円)なので、まだなんとなく高所得者とイメージされる方も多いでしょうが、給与収入850万円(控除額は195万円)となると少し微妙に感じる方が多いのではないでしょうか。
ちなみに、平成24年分までは給与所得控除額に上限はありませんでしたから(例:給与収入1億円の場合の控除額は670万円)、実はすごい勢いで所得税”額”が上がっていることになります。
また、今年からは配偶者控除額についての改正が行われましたので、収入が給与のみの方の場合、給与収入が1,220万円を超えると、配偶者控除が適用不可能となります(配偶者控除を満額受けるには、給与収入が1,120万円以下である必要)。
所得税率自体は平成27年に最高税率が上がっただけですが、率と控除額の増税を使い分け、一般の方にはまず理解できないような増税ペースとなっております。
これらは、安倍政権がぶち上げている「賃上げと生産性の向上」のため、法人税は抑えて賃金として還元されるようにし、賃金に対する所得税は上げるという手法です。
ただ、実際は賃上げが思うように進まないため、今回の改正では、大企業が一定以上の賃上げや設備投資を実行しない場合は研究開発税制等を適用できないようにしました。アメとムチのメリハリがすごい…。
そして、このメルマガをお読みいただいている皆さまの多くがお悩みであろう事業承継については、とても効果的な改正が行われました。
いわゆる事業承継税制の大改正(オーナー経営者についてのみ、目玉の改正です)。
5年以内に都道府県に承継計画を提出し、10年以内に事業承継を行うという条件がありますが、この税制を使うと贈与税または相続税を100%繰り延べることができます。
この税制を用いる際に最もネックだったのが、雇用維持要件(5年平均で雇用者数の80%を維持する必要がある)でしたが、これが実質的に撤廃されました。
これまで事業承継の重要性を認識しながらも、なかなか進まなかったというオーナー企業については、この5年間でこの税制を受けるか否かの判断がとても重要となります。
10年という時限措置が、今後伸びるかどうかは現時点では不確定のため、対策が進んでいないオーナー企業はぜひご検討ください。
また、大企業に対する電子申告の義務化、地方税も含めた電子納税の環境整備、代表者による自署押印の撤廃、年末調整の電子化など、申告・納税面においても電子化を進める改正内容が盛り込まれました。
これらのように、改正の内容が多岐にわたりますが、現在の税理士業界は微妙な時期に差し掛かっています。
高齢の税理士は税制の複雑化と電子化を急速に進める国の対応に付いて行くことが難しく、若手や中堅の税理士は事務所収益の最大化のため、効率的な処理となんちゃってコンサルティングに重点を置いており、
「法人税も所得税もそれなりに支払っているし、事業承継も待ち受けている…」というオーナー経営者と正面から向き合える税理士が少なくなっているように感じます。
今後は納税者である皆さまと正面から向き合ってくれる税理士のアドバイスがないと、納税額でとても不利な扱いを受けることは間違ありません。つまり、いまほど税理士による個別の税務コンサルティングが重要になった時期はないのです。
税金の複雑化は国の弱体化の象徴ですが、納税者である皆さまと皆さまをサポートする私どもの力が試されているのでしょう。
短期・中期的には日本の税制が改善するとは考えられないため、皆さまも早めに自衛の手段をお取りください。