広く、薄くをアマゾンから学ぶ

アマゾンジャパンが国内の食品や日用品メーカーに対し、同社の通販サイトで販売した金額の1~5%を「協力金」として支払うよう求めているとの報道がなされました(日本経済新聞:2018年2月28日付朝刊1面)。
ヤマト運輸からの値上げ要請受け入れに続き、今度はアマゾンから仕入先への玉突き事故の様相ですが、値上げ交渉も見越したうえでアマゾンが用意周到に準備していたのは間違いありません。
何かと話題のアマゾンの次の手ですから話題にもなりますが、増えたコストをどこで回収するのかという判断は、あらゆる企業でなされるべき当然の事でもあります。
ただ、物流費のように本来一般消費者に直接転嫁してもおかしくないであろうコストであるため、仕入先に広く転嫁するというのは本来おかしなことかもしれません。
とはいえ、低コストで利便性を高めてお客を囲い込むのはアマゾンの戦略でもありますから、アマゾンと取引したい企業にとっては受け入れざるを得ないことでしょう。
そもそも、センターフィーや協力会費など名目はそれぞれですが、業界特有の慣習として自社で負担しているコストを取引先から広く薄く徴収するというのは特段珍しい事ではありません。
なお、アマゾンも、囲い込んだ一般消費者に対して最終的にはアマゾンプライム会費の値上げという形でさらにコストの回収を図ってくるはずです。
同じようにお客様から広く薄く徴収する例として、銀行が口座維持手数料を導入するという議論も出始めています。
大手スーパーなどでレジ袋が有料になったのも同じ理屈でしょう。ecoという考え方もありますが、経営側からすれば価格転嫁の良い名目になります。高級レストランなどのサービス料だってそうです。
この点、中小企業においては、増加したコストをお客様や取引先から広く薄く回収するという選択肢を放棄している企業が多いなと感じております。
「増加したコストはお客様からいただくべきものではあるが、実際にはお客様に請求ができないから我慢するしかない!」
こうお考えなのでしょうか。
お客様に対して値上げをすることができないのであれば、コストをコントロールするしかありません。
コストといっても、大まかには原価と販売管理費に分かれます。原価は取引先に条件の見直し依頼やアマゾンの協力金のように対応するしかありません。自社でコントロールすべき販売管理費を取引先に転嫁するのは本来あってはならない事ではありますが、例えば広告宣伝費のような販促費の一部負担を求めるのは”なし”ではありません。
また、最近はキャッシュレス社会が叫ばれていますが、キャッシュレス社会が進むほど、一般消費者から直接からお金をいただいている企業にとっては死活問題です。決済手数料の増加分をどこで回収していくのかも考えなければなりません。
アマゾンの協力金の事例は、コスト負担を相殺するための重要な一手です。そして、中小企業こそ、広く薄くというやり方をしたたかに行っていくべきだと考えます。
仮に、取引先1社から年間1万円(月833円!)回収としても、100社あれば100万円です。自社が苦しくなったときにやろうとしても取引先に足元を見透かされます。取引先に要請しやすいタイミングも重要です。
「取られるばかりで取りに行かない」。このような判断は度が過ぎると罪でもあります。最終的に苦しむのはお客様であり、従業員なのですから。