税理士はデータサイエンティスト?

データサイエンティストという職業が注目されているのは皆様もご存じのとおり。
AIやビッグデータなど、データが重要なのだと騒がれてはいますが、何がどのように重要なのかはさっぱり分からない方が多いものと思われます。
かく言う会社の業績もデータという意味では同じですが、会社の業績がさっぱり分からないというのはさすがに問題があります…。黒字なのか、赤字なのか。資金繰りは問題ないのかという判断は、会社の継続性にとって死活問題だからです。
ただし、データだけが重要なのでしょうか?
私どもは『税金はお客様の痛み』と定義しております。従って、税金はデータとは認識しておりません。運転資金として実際に動いているお金も同様です。
しかし、税金やお金を除けば、お客様の会社の数字はデータとしての側面も強く認識しています。監査やアドバイスも、データを元に判断しています。そういう意味では、データサイエンティストの端くれと言えるのかもしれません。
一方で、いわゆる経営分析は好きではありません。依頼されれば経営分析も行いますが、基本的にはごく一部のお客様ごとの主要な比率を抑えるだけで、普段は気にも止めません。そもそも、お客様に経営分析結果をお伝えしたところで、「それで?」と言われるのがオチです。
経営分析などは、外部の識者や金融機関が、人ごとのように皆様の会社を評価する際に用いるものだと考えております。一方的な通知表に近いかもしれません。
例えば金融機関が企業を評価するのは融資のためでもありますが、融資については、主にデータを対象とする定量分析と、データ以外を対象とする定性分析があります。
最近、融資にもAIが導入され話題となっておりますが、AIによる融資判断などは定量分析のみで皆様の会社を勝手に評価する典型例です。
「あなたの会社の将来性などは関係ない。過去のあなたの会社のデータと中小企業のビッグデータのみで融資の可否と金額を決定します」つまりこういうことになります。
一昔前の金融マンであれば、経営者の人となりを十分に考慮(定性分析を重視)した上で、データ度外視で融資を通した場合もあったはずです。
何が何でも黒字を出せば良いという訳ではありませんし、お金が十分にあれば良いという訳でもありません。データ以外の判断が重要な場合も多々あることは皆様の方がご理解されているはず。
私も、ある程度お付き合いをしているお客様であれば、ご相談を受けた際に、お客様以上に「これなら大丈夫です。それはダメです」と判断ができることがあります。
「なぜ、そう言い切れる?」とお客様から確認を求められることもありますが、過去から現在までの状況をデータで把握しており、お客様の人となりを十分理解した上で、この先のお話を伺えば、おおむね見当がつきます。そもそも、すぐにお客様自身がその事実に気付かれます。
AIは定量分析が得意ですが、経営者やその企業の定性分析はできません。今後、金融機関が定性分析の能力を失えば大変なことになりますし、税理士が流行に乗ってデータサイエンティスト気取りになったら目も当てられません。
データだけで会社の業績を判断しているようでは、そのお客様の事は何も分かっていないという事になります。そして、AIやビッグデータが重要になればなるほど、目に見えるデータ以外の情報の重要性も際立ってきます。
この事実は、あらゆるサービスにおいても言えるのではないでしょうか。最近のデータ偏重の傾向にハマり過ぎると、痛い目を見るかもしれませんので、皆様もご注意ください。