補助金を使いこなせる企業

もらえるものはもらえばいい。

コロナ禍での補助金受給は、ある意味義務でもあります。
しかし、国からの補助金を受け取らないと潰れてしまうようであれば、それは民間企業の経営ではありません。

補助金はあくまで補填。
補助金が無くても継続企業として成り立つ状態であり続ける必要があります。
(そのための内部留保であり、借入に困らない業績を続けることが重要)

そして、次は継続企業としてあり続けるために、コロナ関連の補助金として最大級のものが登場します。

事業再構築補助金

持続化給付金や家賃支援給付金、雇用調整助成金など要件を充たせば確実に受給できるものに対して、「当選」or「落選」という審査をくぐり抜ける必要があるものです。

既にご存じの方も多いとは思いますが、簡単にまとめると以下のとおりです。

*コロナ以前に比べて売上減少が10%以上の中小企業が…

*税理士等の認定支援機関と一緒に事業計画を作成し…

*補助事業終了後3~5年で「付加価値額」または「一人当たり付加価値額」が
 年率平均3%以上増加することを目標として事業を遂行することにより…

*6,000万円を限度に、総事業費の2/3を補助する

コロナによる環境変化に対応して、新分野の進出や業態転換、事業・業種の転換、これらを通じた規模の拡大などを目指す取組みを対象に、「建物費、建物改修費、設備費、システム購入費、外注費、研修費、広告宣伝費など」幅広い経費を認めている点が大きな特徴です。

繰り返しますが、コロナ関連の補助金です。簡単に当選するわけではありませんが、これまでの補助金に比べたら当選の確立が格段に高いと考えられます。

現時点で詳細は発表されていないため上記リンクの情報以上のものはありませんが、事業の再構築を検討されている企業はぜひご検討ください。

「じゃ、うちも補助金もらおう!」

と、誰しも手を挙げたいところでしょうが、誰しもができるものではないとも考えております。

なぜなら、常日頃から事業計画を真剣に検討していなかったり、そもそも事業計画なんて作ったこともない企業にとってはハードルが高すぎます。

また、補助金を受取りたいがために慌てて検討した事業計画が本当に中長期的にプラスになるかは大きな疑問があります。そもそも補助率は2/3です。残りの1/3は自己負担であり、事業の継続にはランニングコストが発生し続けます。中途半端な計画で補助金を受けることはとても危険です。

スケジュール的には令和2年度3次補正予算案が成立しだい、2月前後に公募が開始され、3月前後に申請の受付けを開始という流れが想定されています。予算は1兆円以上が予定されているので、今後数年に渡って行われる可能性が高く慌てる必要はありません。

ただし、公募回数が増えるごとに審査が厳しくなるのは常ですし、補助金の受付に合わせて事業を再構築しようとすればスピード感がなくなります。

したがいまして、事業再構築を計画中であり、さらにそのタイミングに補助金の申請がピタリと合う企業にとっては宝くじのようなお話です。

そして、今後はこのような補助金が主流になっていきます。国も口には出さないものの、持続・継続できない企業、計画できない企業は退場して欲しい…という裏返しです。

いまある大企業も過去に国・公的団体のさまざまな支援を受けてきたはずです。補助金に頼る経営はダメですが、補助金の波に乗れる企業には理由があります。

それはもちろん常日頃から中長期を見据えた計画を立てることです。

 

発想

昨年は新型コロナによる緊急事態宣言を契機に、デジタル化・クラウド化推進の波が一気に訪れました。

年末に公表された税制改正大綱でもDX投資促進税制を始めとし、電子帳簿保存法の大幅要件緩和など、デジタル化への政府の意気込みが伝わってくる内容となっていました。

一方で、世の中のそんな流れにあらがうようなサイゼリヤの「アナログ化」への取り組みが12月25日の日本経済新聞で紹介されていました。

多くの外食産業が人手不足に加えて人と人との接触を避けるために、タッチパネルなどの最新機器を導入して料理の注文を受けるなか、サイゼリヤは携帯端末の使用をやめ、紙の注文票にお客様が手書きして注文する方式に変えたのです。

メニューには料理に対応する「DG01」といった4文字の英数字が割り当てられており、店員がコールベルで呼ばれたときにはお客様によって記入済みの注文票を受け取るだけ。接客時間は従来に比べ半分程度にまで減らせたそうです。当然、携帯端末にかかる費用も削減できます。

ここで注目したいのは、あえてアナログに戻すことによる効率化の実現と、注文票を「お客様に書いてもらう」という発想です。

皆さまの事業の中で、本来であれば、お客様から対価をいただいて提供すべきサービスについて無償で提供してしまっていることはないでしょうか。それは、言い換えれば対価をいただかないのであれば、お客様自身に行ってもらうべきことかもしれません。

年の初めに改めて自社が提供するサービスと対価について考えていただきたいのです。

もちろん、店員が注文を取る作業に対して対価をいただくことはできませんが、サイゼリヤのように低価格でお客様を満足させる商品の提供を実現するためには、お客様にも協力していただくという発想があってもいいはずです。

サイゼリヤがこの手書き式を導入したのは、特徴である末尾が「9円」のメニュー、ミラノ風ドリアを299円から300円、ガーリックトーストを189円から200円などに「値上げ」をしたタイミングと同時です。

にもかかわらず「値上げをしておいて、客に注文を書かせるのか」といった声は聞こえてきません。私も利用しましたが、注文を自分で書くことに特に何の違和感も覚えませんでした。

未だ終息が見えてこない新型コロナ騒動の開始から間もなく1年になろうとしています。

はっきりとしているのは、ここまで前提条件が変わってしまった今、過去の慣習や常識は何の意味も持たないこと、今やデジタルが当たり前のことも再度疑ってかかる必要があるということです。

そして、戦略の要である値上げを実行する次のタイミングに向けて、今から周到に準備を進めておかなければいけません。

今年もまた1年が始まります。
ともに見たくない現実に目を向けていきましょう。

本年もどうぞよろしくお願い致します。