税務調査もDX

コロナ禍において、税務調査の件数が激減しました。
そのため、より確実に申告漏れを指摘できる先を調査対象として選定しているとのこと。

ご存じのように、税務調査はとてもアナログです。電子帳簿が増えてきたとはいえ、まだまだ少数派。帳簿や請求書・領収書などの紙の資料をひたすら手作業で確認し、現場で使用するのは紙とペンと電卓。調査官はパソコンを持ち込めないのでExcel集計などの作業もできません。

事前に精査を行うとはいえ、現場(皆さまの会社ですね)に足を運び、書類をめくりながら、経験と知識が物を言うアナログ行政…。調査官も大変でしょうが、調査を受ける企業も大変です。なかなか改善されない調査環境に、コロナ禍がダメ押しとなりました。

そんな折、国税庁から「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション」なる資料が公表されています。

これまでの方針のアップデートであり、取り立てて注目すべき内容は含まれていません。しかし、税務調査も本格的にデジタル化されるという方針が具体的に示され始めました。

【課税・徴収の効率化・高度化】

  • 申告内容の自動チェック(申告内容と各種データのマッチング)
  • AI・データ分析の活用(高リスク対象の分析・抽出・結果の活用)
  • 照会等のオンライン化(金融機関への預貯金のオンライン照会)
  • Web会議システム等の活用(リモート調査)

『より効率的に、より高度に』、『誠実に納税を行っている多くの方々が不公平を感じることのないよう』という方針のもと、国税庁の基幹システムを令和8年にリプレース、最新の分析ツールなどを用いて調査を行っていくとのこと。

この流れがどこまで成果を上げるかは分かりませんが、適正な申告納税を行なっている企業としては調査のDX化、および効率化は大歓迎のはず。

そもそも、税務調査は黒字企業が対象とされやすいのですが、赤字企業といえども怪しい形跡があれば調査対象として選定されます。逆に、どれだけ長期間黒字を継続していても、税務調査の対象先として選定されにくい申告書類の作成の仕方もあります。これは当社も実践している技術です。

税務当局のみならず、私ども専門家も、特定企業の数年分の申告書類一式に目を通せば、怪しい数字の構成や動きを把握できます。これを機械学習で日本全国の企業のデータをマッチングしながら分析を行えば、どのような結果になるかは想像に難くない…。

つまり、今後は税務調査の対象先と選定されやすい企業に効率よく調査が入り、調査が入った時点ではデータのマッチングにより裏取りも終わっている可能性がある。また、怪しいとは言い切れないものの、曖昧な感じの申告書類を提出している企業は、AIがうまく判定できないが故に調査対象として選定される可能性がある(後ろめたいと曖昧になるのは皆さまもご経験があるのでは…)。

この「怪しい」はロジックですので、データの蓄積が進めば進むほど精度が上がります。

その結果、近い将来、税務調査は定期的に行われるものではなく、クロ、またはグレー判定されている企業に集中的に行われるということになると考えられます。

企業がどんなに真面目に活動を行っていたとしても、税理士の申告書類の作成の仕方が甘ければ狙われやすく、逆もしかり。調査が継続して行われるということは、そもそもどこかに問題があるとみなされているということになります。

税務調査のDX化はまだ先ですが、昨年から今年に掛けて税務調査が入った企業、そして税務署の事務年度が替わる今月から来年に掛けて税務調査が入る企業はお気を付けください。

税務調査が絞られている中で、それなりに怪しいとみなされている可能性がありますので。