変わらないもの

皆さまご認識のとおり、銀行融資は超がつく低金利時代。
多くの銀行が業績不振に苦しむなか、業績をあげているのが広島市信用組合です。

1月19日の日本経済新聞によれば、2021年3月期の税引き後利益は41億円と6期連続で最高益を更新し、その利益水準が他県の第二地銀にも匹敵するそうです。

記事から読み取れる、成長のキーワードは3つ。

「対面」と「スピード」、「やらない仕事を決めること」です。

広島市信用組合では1人あたりが担当する法人150社、個人150人の計300顧客ほどに、預金の集金などでアポイントを入れて、最低でもそれぞれ毎月1回は会うようにしているそうです。

顔を合わせて信頼を高め、雑談の中から事業環境の変化を探り、新規融資につながる話題にアンテナを張ります。

金利は他の金融機関より0.7~0.8%ほど高いものの、融資の稟議を本部にあげたあと、3日以内に可否を判断するスピード決済を強みとしています。

投資信託や生命保険を売ることをやめ、複雑な商品説明に時間を費やさないことで、多くの訪問を可能にし、金融機関の本業である預金・貸出に特化しているのです。

記事では顧客である経営者の声も紹介しています。

「広島市信用組合の担当者は度重なる面談で「社長を見る目」を鍛えている」

コロナ過で対面での面談が難しいケースが増えていることは事実ですが、私たちは今回の経験を経て、バーチャルやリモートで十分な場面がある一方で、それらが決してリアルに取って代わるものではないことを知りました。

「仕入は他社と取り合いになるため、まとまった資金がすぐに欲しいときが多い。低い金利よりもスピードを求めている」

仕事において速さはそれだけで大きな武器になり得ます。
進化し続けるツールの登場により、たくさんの仕事を格段に早くできるようになったにも関わらず付加価値を上げられずに単価が下がり、それを補おうと量を求めることで、皮肉にも仕事の速度が奪われていく。そんな景色をあちこちで目にします。

「他の金融機関は用事がないと来ないが、広島市信用組合は用事をわざと作って会いに来る」

低金利時代で利ザヤを稼ぐことが難しいなか、金融商品を売って手に入れる手数料収入は、喉から手が出るほど欲しかったはずです。
しかし、当たり前のことですが、時間には限りがあります。「やらない仕事」を決めることで一時的に売上が下がったとしても、本来欲しい売上獲得に力を注ぐ時間が必ず確保できます。

今、世の中はこれまでにないスピードで変化を続けています。
もちろん、私たち中小企業はこうした変化に対応し続けていかなければなりません。

しかし、経営において大事なことの根底は、そう変わるものじゃない。

広島市信用組合の経営は、そんなことを教えてくれているような気がしてなりません。