今週中にも公表される令和5年度税制改正大綱で、どうやら生前贈与加算が現在の3年から7年になりそうです。
ご存じのように、現行の生前贈与加算は「贈与を受けた日から3年以内に贈与者(あげた人)が亡くなってしまった場合には、その生前贈与はなかったものとみなされ、贈与済みの財産が相続財産に加算されて相続税の課税対象となる」制度です。
亡くなる直前で「相続税逃れ」のために行われる駆け込み贈与を防止するためのもので、この加算期間が7年になれば贈与者の死亡から遡って7年間に行った贈与が相続税の計算対象となるため、贈与による節税効果は大きく減少します。(延長する4年間に受けた贈与は総額100万円までは相続財産に加算しない案のようです。)
ただし、先に納めた贈与税は相続税から差し引くことができますので、2重に税金がかかることはありませんし、相続(遺贈)によって財産を取得しなかった者(例えば孫)への贈与が相続財産に加算されることもありません。
今回の生前贈与加算の改正案については「課税負担が重くなる期間を長くすることで、早い時期からの生前贈与を促し、子育て費用などが必要な若年層への資産移転が進みやすいようにする」ことが狙いだと説明しています。(本音は課税強化が狙いに決まっていますが)
基本的に節税だけを目的とした贈与には弊害が多いこともあって賛成しないことも多いのですが、早い時期から相続について考え備えることには賛成です。相続の準備は、なにも税金対策に限りません。
特に中小企業経営者の事業承継を考えた場合には、早くから贈与を使った対策が効果的に機能します。ものごとの結果の八割は準備で決まります。
世間のイメージとは異なり、財産がそれなりにある方の相続で揉めることは実はあまりありません。相続する側もされる側も、早い時期から対策の必要性を認識して感情の問題にも配慮しながら周到に準備を進めていくからです。
一方で「うちは揉めるほどの財産はないから」「兄弟みな仲が良いので大丈夫」と言って何も準備していない家庭ほど危うかったりします。
相続は一部のお金持ちだけの話しではありません。財産の額が少なくても必ず相続は発生します。財産も債務も誰かが引き継ぐのです。
家族の死が目の前に迫ってから初めて行われる話し合いでは、逝く側も残される側も冷静さを欠き、それぞれの想いがよりストレートに色濃く全面に出てきがちです。
人の感情はとても複雑です。差し迫った場面で行われる財産の話しには、本人はもちろん、周囲の感情も激しく揺り動かされることになります。とっくに忘れていたはずの昔の記憶もよみがえります。
家族の死を目の前にしての負の感情のぶつかり合いは、やり切れないほど悲しく切ないものです。
互いの感情に寄り添った争いのない相続とするための準備は「まだだいぶ先のことだけど・・」くらいの時期から始めてちょうどいいのです。
贈与の利用価値は節税だけに限りません。もし、個々の感情にも配慮した望ましい形で活用できるのであれば、結果として相続の際に加算の対象となってしまったとしても、それ以上の意味があるはずです。
今年も残すところあとわずか。
今年の贈与は、もうお済みですか?