今こそ自己株式を『消却』しよう!

第430号『本当はタダより”安い”ものはない!』において、地方税法の改正によってすべての会社に平等にかかっている法人住民税の『均等割』について引き下げとなる可能性が出てきたことをお伝えいたしました。

しかし、今回は逆に均等割が引き上げとなる場合があることについてお伝えいたします。
引き上げの対象となるのは、過去において『自己株式』の取得によって均等割の引き下げを受けている法人です。

改正の内容は以下のとおりです。

法人住民税の均等割りの税率区分の判定の基準となる『資本金等の額』が『資本金と資本準備金の合計額』を下回る場合の均等割りの税率区分の判定の基準は、「資本金と資本準備金の合計額」とする。

 

(図)

⇒上記に該当する場合には、法人住民税均等割の税率区分の基準を『資本金の額+資本準備金の額』とします。

なお、ここでいう『資本金の額+資本準備金の額』は貸借対照表に計上されている金額です。

 

(貸借対照表)

 

 

自己株式を取得しても貸借対照表上の資本金の額と資本準備金の額は減少しないため、典型的に今回のケースに該当することとなります。

また、ここで注意をしなければならないのは、過去に自己株式を取得している法人も対象になるということです。

そこで、過去に自己株式を取得し均等割りの引き下げを受けている法人については何らかの対応を迫られることとなりました。

具体的には、次の二つの手順を踏むことになります。

 

(手順)

この二つの手続きを踏むことによって貸借対照表の資本金の額を減少させることができます。

自己株式の取得をし、そのまま保有している法人はたくさんあります。

何故、すぐに消却をせずに今日まで保有していたのか?という疑問が生じます。

その最大の理由は『消却をする必要がなかった』からです。

実は、減資と株式消却については会社法に従った厳格な手続きと法務局への登記が必要となります。

つまり、そこまでしなくても均等割りを引き下げることができていたので当初の目的は達成されていたのです。

繰り返しになりますが、このまま取得した自己株式を放置していると均等割りのランクが引き上げられる結果となります。

今こそ金庫の中で眠ったままの自己株式を消却すべき時なのです。

 

みんな結局、「ふるさと納税」が大好き?!

「今年からは、ふるさと納税の適用額が増えて、さらに確定申告も不要になるんですよね?」

いまだに良く聞くご質問のひとつです。
なんだかんだ言っても、みなさんふるさと納税の魅力にハマってしまっているようです。

みなさんも、ふるさと納税に改正が入り「どうやらこれまで以上にお得になったようだ」というのはお耳にされているのではないでしょうか。

ところで、本当にお得になっているのでしょうか。
今回はこの改正の概要について、改めてお知らせしたいと思います。

■ワンストップ特例!?
「ふるさと納税」これ自体のご説明はもう不要かと思います。

そう、ご存知のとおり、お住まいの市町村等以外の自治体に寄附をすることで、原則として寄附金相当額の所得税・住民税の税額控除を受けることが出来、かつ寄附をした市町村によっては、お礼品が贈られてくるという、なんともお得な制度です。

これまでは、寄附金をした場合には、サラリーマンであっても確定申告をしなければこの控除は受けることが出来ませんでした。
しかし今年の改正により、H27年4月以降の寄附に関しては、一定の条件により確定申告が不要となる「ワンストップ特例制度」が創設されました。

なお、この場合には「5団体の自治体(5か所)」までの寄附が、確定申告不要の対象となっています。

■控除額が2倍に?
「どうやら、控除できるのが2倍になるらしい・・・」

このように記憶されている方も多いのではないでしょうか。
しかし、実際には少し違います。

控除額が2倍になるのではなく、控除額の限度額が住民税額の約1割から約2割へ増加されるというものです。

所得の状況や所得控除の状況などは、その年によってその金額は変動するかと思いますが、その変動後の課税所得をベースとした住民税額に応じることとなるので、単純に2倍になる訳ではありませんから注意が必要です。
しかし、確実に控除となる金額は増えることになります。

■「ワンストップ」の落とし穴!?
上記を見ると、手続きが簡単になり、さらに控除も増えたようで、なんだかお得で身近になった気もしますが、果たしてそうなのでしょうか。

実は「ワンストップ」といっても、もうひと手間の手続きが必要なのです。

寄附をした自治体へは「寄附金控除にかかる申告特例申請書」を提出しなくてはなりません。それも通常はその「申請書の取り寄せ」から始めなくてはなりません。

先ほど「ワンストップ」、すなわち確定申告不要とするには「5団体の自治体」への寄附まで、ということを申し上げました。

すなわち、仮に5団体の自治体へ寄附をした場合には、計5回、申請書を取り寄せて提出する必要があるのです。

さらに、同じ自治体へ2回に分けて寄附をした場合には、その寄附の都度、上記の申請が必要になってきます。

これ、果して「ワンストップ」といえるのでしょうか・・・。

■さらに・・・
医療費が多額にかかり、「医療費控除」を受けていらっしゃる方も多いかと思います。
家族が多く、また高齢の親族がいらっしゃるような方は特にそうかもしれません。

仮に、この「医療費控除」を多額に受けられる場合には注意が必要です。
医療費控除を受けたばっかりに、上記の「寄附金控除」が受け切れない、あるいは受けることが出来ない、なんてことも考えられるのです。
「寄附金控除」は「医療費控除」の適用後の所得税等から受けるという、適用の順番が法令により決まっているからです。

すなわち、「ワンストップ」の恩恵を受けようと申請書を提出したものの、確定申告時に医療費控除を受けたために寄附金控除を受けることができず、結果、その「ワンストップ」のための申請書の提出が無駄になった、ということも考えられるのです。

(そもそも、こうなると寄附金自体も無駄では?というお話しになりますが、今は、手続きとしての「申請書の提出の手間」という論点で見て頂ければと思います!)

さらにさらに、こんなことも考えられます。年の途中で寄附金をして申請書を提出したが、その後引越しをした場合です。
この場合には、引越し後に、寄附をして申請書を提出した自治体に対し、新たに「引越しをした旨の届出書」を提出しないと寄附金控除の適用はされません。

なんとも面倒な話ではないでしょうか。

■結論
上記を考えてみると・・・
確定申告の必要のないサラリーマンであり、かつ、引っ越しもしない方で、1団体のみの自治体へ1回だけ寄附をして、さらに医療費控除を受けない方は、「ワンストップ特例」の適用を受けるべく、1回だけ申請書を提出することで、その適用が受けられます。

当たり前ですが、この場合は1度きりの申請書の提出で済み、ある意味「ワンストップ」といえると考えます。

それ以外の方はどうでしょうか・・・。
例えば2団体以上の自治体へ寄附をする場合や、同一の自治体へ2回以上寄附をする場合、また、医療費控除を受ける予定の方などは、年明けに1回で済む「確定申告」をする方が、実は手間が少なく無駄がないのではないかと考えています。

いつも通り会社で年末調整をしてもらい、その結果の源泉徴収票と寄附金関係の書類、あるいは医療費の領収書を持って確定申告すれば、手続きは1度で済んでしまうのです。
手続き自体もそう難しいものではありませんし、税務署でも親切に教えてくれます。

これから寄附をしようと考えている方、あるいは寄附はしたけれども、まだ「特例申請書」の提出はしていない方などは、ご自分の状況に応じて、1度の手間で済む年明けの確定申告を考えてみてはいかがでしょうか。

 

本当はタダより"安い"ものはない!

赤字の会社にとっては、1円でも税金が安いに越したことはありません。

先に行われた税制改正によって、すべての会社に平等にかかっている地方税の『均等割』についてランクが引き下げになる可能性が出てきました。

対象となるのは、資本金が1千万円を超える会社です。

『均等割』とは、資本金と従業員数の2つを基準にしてすべての会社に対して一律にかけられている税金です。

そのため資本金が1千万円を超える会社については資本金を減少させることによって『均等割』を減らすことが可能となります。

このように会社設立後に資本金を減少させることを『減資』といいます。

減資をする場面はいくつかありますが、その一つが節税を目的としたものです。

経営再建中のシャープが、減資をして税法上の『中小企業』になることで、中小企業に認められた税制優遇を受けようとしたことはまだ記憶に新しいと思います。

減資の方法には、金銭の支払いを伴う減資と金銭の支払いを伴わない減資の二つの方法があります。

これを『有償減資』と『無償減資』といいます。
(注)会社法上、有償減資は存在しませんが、あえてこのように説明させていただきます。

どちらも資本金を減少させる手続きなのですが、『均等割』のランクを決める基準となる『資本金』は決算書上の資本金ではなく、法人税法上の『資本金等の額』であり、この資本金等の額は『有償減資』でしか減少させることができませんでした。

さらに、この『有償減資』を行うことができるのは内部留保のある黒字会社だけで、債務超過の赤字法人は『有償減資』をしたくても会社法違反となるため、指をくわえて我慢することしかできないという現実がありました。

しかし、今回の改正によって『欠損てん補』のために資本金を減少させる『無償減資』を行った場合には、地方税法上では資本金等の額を減少したものとすることとなりました。

この取り扱いは、これから行う『無償減資』のみならず、平成13年4月1日以後に行われた『無償減資』も対象になりますので確認が必要となります。

また、注意すべき点が一点あります。

それは、資本金の『無償減資』から1年以内に欠損てん補に充てた金額に限ると規定されていることです。
通常は『無償減資』と同時に行われるため、気にするほどのことではありませんが、覚えておく必要はあります。

これによって、今までは『均等割』を下げたくても減資をすることができなかった会社においても、お金を払い出さずにタダで節税を行うことができるようになりました。

ただし、タダとは言っても手続きに費用がかかります。

では、減資を実行した場合の費用対効果を確認しておきましょう。

『無償減資』は、会社法の手続きに従って処理する必要があるため、官報への『公告』債権者への『催告』といった耳慣れない手続きが必要になります。

概算でかかる費用は以下の通りです。

≪減資にかかる概算費用≫

概ね20万円といったところです。

 

これにより、引下げとなる均等割額は以下の通りです。

(東京都の均等割額)

 

1年あたり『11万』の節税になりますので、2年で手続費用の元がとれる計算です。
そして3年目以降はプラスになります。

なお、この改正は平成27年4月1日以後に開始する事業年度から適用となり、期末時点での資本金で判断されます。減資が期末までに完了していれば適用されますが、減資の効力発生までに1ヶ月以上の期間が必要となります。余裕をもってご準備ください。

タダで税金が安くできるこの機会をお見逃しなく。

 

思いもよらない贈与税課税にご注意を!!

社 長:建設業の許認可の関係で1,000万円増資して資本金を2,000万円にしようと思うんです。
税理士:ほう、特定建設業ですね。
社 長:そうなんです。現状の株主は私以外の家族もいますが、今回はすべて私が追加で出資します。面倒なんで@5万円の200株でいこうと思ってるんです。
税理士:それはダメですよ!200株発行してしまうと、社長さんに贈与税が課税されてしまいますよ!
社 長:ええぇ~、贈与税ですか?!
先日、監査で伺った会社さんでの会話です。
単なる増資の話に、なぜ贈与税が関わってくるのでしょうか。
今回は、うっかり税理士に相談しないでやってしまいがちな、この論点について触れてみます。
■なぜ贈与税が課税されるのか?
上記の会話のような、いわゆる第三者割当の増資(注)の場合には、その発行時の時価で株式を発行しないと、贈与税が課税される場合があります。
(注)第三者割当とは、会社の役員や従業員、取引先などに対して新株を発行する方法をいい、現在の株主の中の特定の者に対して発行する場合も含まれます。
それは、株主間で「一株当たりの価値の移転」が起こるからです。
★上記の会話を簡単な例題で見てみましょう。
・ 増資前の貸借対照表の純資産の額が3,000万円
・ 資本金は1,000万円で発行済株式は200株
・ ここで1,000万円の増資を行い@5万円で200株発行する

(図)

上記のように、
1. 増資前の発行株数は200株で純資産額(所有時価)は3,000万円
⇒すなわち1株当たりの純資産額が@15万円(ここでは時価と仮定します)であったものが、
2. 増資によって、3.合計では発行株式400株で純資産額(所有時価)は4,000万円
⇒すなわち1株当たりの純資産額が@10万円となり、増資前より▲@5万円が減少することになります。
言い換えれば、社長は@5万円の払い込みで@10万円の株式を取得したことになり、他の既存の株主から1株当たり5万円の価値の贈与を受けた状態となります。
ここに、株主間の「一株当たりの価値の移転」が起こったこととなり、この移転に対し贈与税が課税されるリスクが生じる、ということになるのです。
■第三者割当増資は時価発行!!
このように、上記のような課税のリスクを排除するためには、増資をする時点の時価による新株の発行が必要となります。
例題で言えば、1.増資前の@15万円で発行することになります。
こうすることで、増資前も増資後も、その時点で1株当たり@15万円の株式のみが存在することとなり、価値の移転を起こさずに済むわけです。
また、上記では簡便的に1株当たり純資産額を「時価と仮定」しましたが、税務上のリスクを回避するためには、税務上の評価方法による株価算定が必要不可欠となります。
このように「単なる増資」と簡単に考えていると、思わぬ落とし穴にはまる可能性がありますので、何を行うにも、まず税理士等の専門家にご相談することをお勧めいたします。
当社では「株価評価サービス」も行っております。
増資を検討している、あるいは自己株式の取得(金庫株)などを考えている場合には、まずはお気軽にお問い合わせください。

要注意!シロウトが税金を計算しています

毎年5月になると『住民税(※注)特別徴収税額の決定通知書』という書類を職場からもらっていることと思います。
(※注:市町村民税・都道府県民税の略)

これは給与から天引きされる住民税を市区町村の役所が計算し、その結果を職場に送ってきたものです。

ほとんどの方は中身を確認することなく捨てているのではないかと思いますが、実はその計算に誤りがあることも珍しくはないので注意が必要です。

以前にもこんな相談がありました。

お客様 「住民税が所得税と比べてかなり大きいのですが・・・」

私 「所得税の最低税率は5%で住民税の税率は10%の固定ですからそのようなこともありますが、○○さんの場合にはそれはおかしいですね。」

お客様 「そうですよね!」

私 「わかりました。私が市役所に連絡して確認してみますね。」

お客様 「よろしくお願いします。」

市役所 「はい○○市役所です。」

私 「住民税の納税通知書のことでお聞きしたいのですが」

市役所 「それでは税務課におつなぎいたします。」

担当者 「はい、税務課です。」

私 「住民税の納税通知書のことでお聞きしたいのですが」

担当者 「通知書に記載された個人番号はお分かりですか?」

私 「○○○番です。」

担当者 「はい○○さんですね」

私 「住民税が所得税に比べて多すぎではないかと思うのですが、どのような計算をされていますか?」

担当者 「今お調べいたしますので少しお待ちください・・」

担当者 「あっ、医療費の控除が抜けていますね!間違いです。新しい通知書をお送りいたします。」

私 「どうしてそんな間違いが起こるのですか?」

担当者 「すみません、入力誤りとしか・・・」

人がやることですから稀に誤りがあることは仕方がないと思われるかもしれません。

ところが住民税や固定資産税は自分で申告するのではなく市区町村が計算して通知される税金については重大な計算誤りをしているケースが多数報告されています。

その一番の原因は計算する人が『シロウト』だからです。

役所では毎年人事異動があります。

通常同じ部署に3,4年在籍するのが通常ですが中には1年で異動する人もいます。

そのため、つい先日まで教育課や福祉課にいた職員が次の年から税務課に配属となることは当たり前のことで、つまりは税金の計算など初めてやる職員もいるのです。

長く在籍している職員でも4、5年ですのでシロウトに毛が生えた程度です。

そのため住民税については自分で簡単なチェックをすることをオススメいたします。

簡単なチェック方法をお伝えします。

1.所得を確認する

お勤めの方は会社からもらった特別徴収税額の決定通知書の所得欄の『給与収入』と前年末に同じく会社からもらった源泉徴収票の『支払金額』が一致しているかを確認してください。

給与以外の収入があり確定申告をした方は特別徴収税額の決定通知書の『総所得金額欄』と確定申告書第一表の『所得金額欄の合計』が一致しているかを確認してください。

2.所得控除を確認する

控除額は所得税の計算と同じものと異なるものがあります。

雑損控除・医療費控除・社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除の4つは所得税も住民税も同じです。

源泉徴収票もしくは確定申告書に記載された金額と違いがあるかを確認してみましょう。
保険料控除・寄附金控除・扶養控除等は所得税と住民税とでは金額に違いがありますので、同額ではないまでも源泉徴収票もしくは確定申告書に記載がある場合には決定通知書の所得控除欄にも記載があるかどうかを確認してください。

所得税で控除があって住民税では何もありませんということはありませんので。

もしも、税額や計算内容に不明な点がある場合には市区町村の役所の税務課に連絡して見直していただくことをおすすめいたします。

賃上げと103万円の壁

6月1日の日本経済新聞に賃上げを拒否するパート社員の記事が掲載されていました。
「賃上げを拒否する!?なんで!??」と思う方が多いでしょうが、このお話、いわゆる「103万円の壁」が絡んでいます。

記事によれば賃上げの結果、年収が103万円を超えてしまうことによって夫の所得税を軽くする配偶者控除が使えなくなること、また、夫の会社からの配偶者手当が打ち切りになることを懸念して賃上げ拒否する人、賃上げを受け入れ、勤務時間を減らしたいと希望する人が増加しているとのことです。

増加する社会保険料の負担などを考えると、中小企業にとって優秀なパートスタッフの確保は非常に重要です。そのために時給を上げたら、勤務時間を短くしてほしいと言われてしまう・・・なんとも皮肉な話しです。

また、年末近くになると「103万円の壁」を理由に「休ませて欲しい」と願い出るスタッフのシフト調整に頭を悩ませている企業も多いはずです。

しかし、この「103万円の壁」、雇う方も雇われる方も「103万円を超えない方がいいんでしょ?」という非常にザックリな理解をしている方が多く、実際に103万円を超えると、どれくらい税額に影響があるのかを知らずに、頑なに拘っているケースが少なくありません。

実際の影響額を知っておけば、「103万円の壁」に必ずしも拘る必要がないという結論に至る人も少なくないはずです。そうなれば、企業も多忙な年末にシフト調整の必要がなくなります。では次の表をご覧ください。

 

(配偶者控除及び杯空車特別控除による控除税額)

この表は配偶者控除・配偶者特別控除を適用した場合、妻のパート収入金額に対して、実際に夫の所得税住民税が、いくら減るのかを計算したものです。

夫が課せられる税率は、所得金額に応じて異なります。所得控除は人によって異なるため、一概には言えませんが、税率5%は年収~400万円ほどの方、税率10%は年収500~600万円ほどの方、税率20%は年収700万円~800万円ほどの方がおおまかな目安になります。

夫の年収が500万円ほどで適用税率が10%の方の場合、奥様のパート収入が103万円以下であれば、夫の税金が所得税住民税合わせて71,000円減ることが表からわかります。同じ条件で、奥様のパート収入が118万円だった場合は、夫の税金は52,000円減ります。

次に、これを“妻のパート収入が103万円以下であった場合と、そうでなかった場合を比べると、夫の税額がどれだけ増加するのか”という観点で見てみることにします。

 

(妻の収入が103万円以下との税増加額)

先ほどと同じ、夫の年収が500万円ほどで税率が10%の人の場合、妻が年収103万円以下に抑えた場合と、年収が124万円であった場合の夫の税金の増加額は29,000円であることがわかります。

確かに、妻の年収が21万円上がったことによって夫の税金は29,000円増加します。
しかし、世帯での手取り額についてはどうでしょうか。夫の税金は29,000円増加しますが、収入が増えたことによる妻の所得税・住民税の増加額3万円程度を考慮しても、世帯の手取り額は15万円程度増加するのです。

もちろん、妻の収入が103万円を超えると夫の会社で配偶者手当が出なくなるといったような場合には、そこも含めての検討が必要になりますが、もし、そうした事情が無い場合に税額だけで見ると、必ずしも103万円に固執せずに、妻の収入を増やすという選択肢が当然に生まれてきます。

ただし、ご存知のように年収が130万円以上になった場合、妻が自身で社会保険に加入する必要が出てきてしまいます。社会保険に加入した場合、手取り額は一気に減りますので、そういった意味では「103万円の壁」よりもむしろ「130万円の壁」の方が重要です。

多くの人は実際にどれくらいの影響が金額として出るのかを知ることなく「103万円の壁」という言葉に囚われてしまっています。実際の影響や感じ方は個々の状況等によって変わってはきますが、夫の会社での配偶者手当を気にする必要が無い方は、年収を130万円未満に抑えておけば、「103万円の壁」はそれほど気にする必要がないと言ってもよいのではないでしょうか。

今年も早いもので、もう半分が過ぎようとしています。年末まであっという間です。労働人口が年々減少していく現在、パートスタッフは貴重な戦力です。年末の忙しい時期にこそ活躍してもらえるよう、パートスタッフさんに正しい知識を持ってもらいましょう。

新設の「結婚・子育て資金の一括贈与」を斬る?!

最近、良く耳にする「贈与税の非課税の制度」ですが、ご存知の通り、今年のH27年4月より「結婚・子育て資金の一括贈与」の制度がスタートしました。
なんだか意味のない制度ができたものだ・・・と感じているところですが、つい最近(といっても2年前ですが・・)も、同じような贈与税の非課税制度である「教育資金の一括贈与」の制度が創設され、こちらも皆さん良くご存知だと思われます。
ところで、なんだか・・・似たような制度ですが、皆さんはこの2つの制度の違いをご存知でしょうか。
今回はこの違いを確認しながら、新制度の「使いよう」について考えてみたいと思います。
まずはこの制度の概要を簡単に比較してみましょう。
簡単にまとめると以下のようになります。

(制度の比較表)

このように、制度の適用が出来る子供や孫などの年齢や、拠出できる金額、非課税となる用途等が違っていることが分かります。
また特に大きな違いは、表の最下部の「契約終了前に贈与した方が死亡した場合」の課税関係です。
まず、「教育資金一括贈与」の場合では、課税関係がありません。
すなわち、この制度で贈与した金額は、完全に将来の相続とは切り離しが可能になります。
こういう意味では、この制度を利用しておくことには「相続税の節税」という意味では大きな効果が期待できます。
一方、「結婚・子育て資金の一括贈与」の場合では、贈与を受けた子供や孫等に対してその残額に対して相続税が課税されてしまいます。
この点では、一括で贈与したことの効果は「相続税の節税」という観点では見いだすことが出来ない、ということが考えられます。
なぜなら、これらの用途のための贈与は、もともと贈与税の非課税だからです。
この2つの制度における用途、すなわち「教育資金関係の贈与」も、「結婚・子育て資金の贈与」も、扶養義務者相互間(父母や祖父母と子供や孫などの間)においては、その必要となった都度、通常必要な金額の範囲での贈与をする上では、この制度を利用しなくても、非課税となっているのです。
ここでは、この「必要となった都度」というのがポイントとなりますが、一括で贈与することのメリットが無いとしたら、その必要な都度、必要な資金を贈与してあげれば無税で済んでしまうことになるのです。
改めて、なんだか意味のない制度ができたものだ・・・と感じてしまいますが、ここで考えられるメリットを絞り出してみました。
(1)その都度、資金の贈与をお願いする手間と、都度、贈与する手間が省ける
(2)贈与をする祖父母等が元気なうちに資金移動ができる
(3)祖父母等から贈与があった場合には、「これだけの資金が既に準備されている」という意味で贈与を受けた両親へのメンタル的な余裕が生まれる可能性がある
(4)通常、確実に孫へ相続財産を残すためには、遺言書などでその旨を明記しておく必要があり、またこの場合には相続税額が2割増しになるが、この制度を利用した場合で契約期間中に贈与をした者が死亡した場合には、確実にその一括資金の残高は孫へ残されることとなり、また、孫には相続税が課税されるが、相続税額が2割増しにはならない
かなり無理やり感がありますが、このようなことが考えられます。
特に、(4) については、成就するための前提条件は厳しいものがありますが、例えば、「年齢50歳未満の孫にお金を残してあげたい、余命いくばくもない祖父母等がいる場合」などの場合には、その用途の利用予定がなくとも「結婚・子育て資金の一括贈与」の制度を利用して、孫へ相続した場合の相続税額の2割加算を回避しながら、かつ、確実に孫へ相続させる、というような、レアケースでの利用価値はあるのではないかと考えます。
とはいえ、やはり、なんだか意味のない制度・・・と感じないではいられません・・
このように、使いづらい制度ではありますが、両制度の違いをしっかりと確認して、ピンポイントでうまく利用してもらえればと考えています。

何もしないという対策

相続税増税により、相続税に対する注目度は高くなる一方です。なんとかして相続税を減らしたいと考えている方、相続した資産を運用して増やしたいと考えている方に、一つの考え方として知っておいていただきたい対策法があります。
それは、あえて「何もしない」という対策です。
私たちは基本的に自分が稼ぎ出した資産の範囲でしか資産の運用はできないものだということを知っていただきたいのです。それは、つまりこういうことです。
会社経営者が一生をかけて3億円の資産を蓄えることができたとします。ということは、この経営者が資産を運用できるのは3億円までなのです。当たり前過ぎてピンと来ないかもしれませんが、それがこの経営者の実力という意味です。
もちろん上手くいくケースもあるでしょう。ただそれはあくまでたまたま。不思議と多くは自分の稼いだ範囲での運用しか、うまく行かないものです。繰り返しになりますが、何故ならそれが“実力”だからです。
しかし、こうしたことは実際に自分で経営をして実力で稼いできた経営者はなんとなく肌で分かっているものです。実力以上の投資をしたりは、あまりしないものなのです。
気を付けなければいけないのは、相続により財産を手にした人。つまり、実力以上の資産を、ある日、相続という原因により手にした人なのです。夫である経営者が実力で稼ぎ出した3億円の資産を相続する妻や、その子供たちに3億円を運用できる実力はありません。
相続税を減らすために、または、相続した資産を増やそうと、相続した土地に借金をして賃貸物件を建設しようと考えている方。もちろん有効な節税方法の一つであることは事実ですし、上手くいけば資産を増やすことも可能でしょう。
通常、相続した土地に借金をして賃貸物件を建てようと計画する場合、その投資判断基準の一つとして誰もが利回りを考えます。ここで自分の実力とは関係なく、相続により土地を手にした人は、土地代を考慮することなく建築にかかる費用のみで利回りを考えがちです。これが大きな間違いであること、皆さんはおわかりでしょうか。
たとえ土地を相続で手にしたとしても、利回りについては土地を時価で購入したとものとして投資判断をしなければならないなのです。なぜなら、その土地建物を将来売却することになった時、その土地建物を購入するかどうか検討する買主は土地建物の金額で利回りを計算し、投資判断を行うからです。
実際に売却するか否かは問題ではありません。投資判断として当たり前のことなのです。土地を相続で取得したからといって、建物への投資金額だけで利回りを計算した物件は、まず、土地建物で利回りを計算して投資判断を行った他の物件にかないません。
実力で資産を手にした人は、こうした判断間違いはあまりしないものです。もちろん、頼りになる専門家を味方につけていれば、実力外で資産を手にした方もこうした間違いをせずにすみます。
ただ、考えていただきたいのです。「手にした資産と、その投資・運用は、ご自身の実力の範囲内なのか。」
実力を超えた投資・運用は多くの場合、資産を実力の数値まで目減りさせます。
何もせずに資産を蓄えておく。これだって場合によっては立派な対策の一つなのです。

甘やかし税制による高齢者の『やり過ぎ貧乏』にご用心!

仕事柄、ハウスメーカーや工務店からのご依頼でセミナー講師を務めることがあります。

賢い住宅ローンの借り方やら固定資産税の節税法などいろいろな話をさせていただくのですが、参加者の関心が一番集まるのはやはり『住宅資金贈与』についてです。

中でも「いくらまでなら(もらっても)税金がかからないのか?」
という質問を一番多くいただくのですが、その質問を受ける度に、私は、「皆さんよくそんなに親から贈与を受けられるもんだなぁー」と関心させられます。

今、アベノミクス政策によって住宅取得等資金の贈与をはじめとした『甘やかし税制』が増え、これによる高齢者の『やり過ぎ貧乏』が懸念されています。

『相続税の節税』という大義名分もあって、子供や孫は祖父母にお願いし易く、また、話をされた祖父母もその期待に応えようと、多額の資金を一括贈与してしまいます。
その結果、自分達の生活資金が足りなくなるというものです。

アベノミクスの『甘やかし税制』には次のようなものがあります。

  1. 住宅取得資金の一括贈与(消費税増税後は3,000万円に拡充)
  2. 教育資金の一括贈与
  3. 結婚・子育て資金の一括贈与

このうち、結婚・子育て資金の一括贈与は今年度の税制改正で新たに創設されたものです。

教育資金の一括贈与については本年度より制度が拡充し、『通学定期券代』、『留学渡航費』が非課税対象となりました。

さらに、平成28年からは『子ども版NISA(ニーサ)』も開始されます。

NISAは『少額投資非課税制度』のことで、子ども版については年間80万円以下の投資額が認められており、この口座内での譲渡益や配当金の所得税が『非課税』となります。

アベノミクス政策によって、高齢者から若年層への資金移転がしやすい状況にありますが、当の贈与をする側の祖父母は必ずしも快く思っていない向きがあります。

平成25年に教育資金贈与の制度が創設されたときに数件のご相談をいただき、ご説明、お手続きをさせていただきました。

このとき私のところにその相談を持ってこられたのは、贈与をされる祖父母ではなく100%そのご家族でした。

今年から相続税の基礎控除が6割に減額されたこともあり相続税の心配をされるご家族が増えています。

「今のままでは相続税がかかるのではないか?」
「それならば制度を使って節税をしたい」
というのですが、私が受けた相談のうち、少なくみても半分は相続対策の必要がない案件です。

確かに現状では相続税がかかるかもしれない案件はあるのですが、当の贈与をする祖父母からしてみたら、最大の関心事は相続対策ではなくこれから先、老後の『生存対策』なのです。

そこで資金の贈与を行う前には必ず必要老後資金の計算を行ったうえで、贈与可能な余裕資金を確認して欲しいのです。

計算はザックリで結構です。
計算方法は次のとおりです。

(必要老後資金の図)

『年間の生活費』については生活ランクでわけて考えます。
自分がどの老後を送りたいかで決めましょう。

Aランク
Bランク
Cランク 

VIPな老後生活
ゆとりある老後生活
普通の老後生活

1,000万円
700万円
450万円

次に『余命年数』についてですが、日本人男性の平均寿命も80歳を超えたことから考えると少なくとも90歳までの老後資金はみておいたほうがいいでしょう。

自分は100歳まで生きると思えば、それでも構いません。

こうして計算してみるとお孫さんたちに贈与可能な資金などそれほどないということがお分かりいただけると思います。

相続税の改正によって相続税への関心が高まっていることから国税庁ホームページでは相続税の申告要否を判定するコーナーが設けられました。

国税庁 『相続税の申告要否判定コーナー』
https://www.keisan.nta.go.jp/sozoku/yohihantei/top#bsctrl

こちらのサイトで相続税の申告の要否を確認してみてはいかがでしょうか?

試算するときには今の財産額から十分な老後資金を控除していただくことをお忘れなく。

ふるさと納税は節税か…

と、聞かれれば節税ではありません。

しかし、ご存じのように「ふるさと納税」ブームです!!

個人的にふるさと納税には全く興味がなかった私ですが、お客様が確定申告時に証明書をたくさんご提出されるのを見て、驚きました。

当社の個人確定申告は、ほぼ顧問先の経営者さまですので、ご自身の限度額が高く、メリットがあることもお分かりのようでした(おそらく奥様が!)。

しかし、それでも
「ふるさと納税分の還付額はこれしかないの?」
「いえいえ、ふるさと納税は、個人住民税からも控除されるのです」
という会話が繰り返されたくらいですから、やはり節税と思っていた方が多いのです。

繰り返しますが、ふるさと納税は節税ではなく、最終的な税金は“変わりません”。どちらかというと、税金の前払いですね。ですが、ふるさと納税は、外れない懸賞品に応募するようなものです。

一般の方は限度額があまり高くはないので微妙ですが、高額所得者の方であれば、今年から数十万円程度の限度額となってもおかしくはありません。

ですから、お手間でなければ、ふるさと納税バブルに乗るのもよいかもしれませんね!

と、前置きが長くなりましたが、ふるさと納税のように、「節税、節税」と世の中で言われているものなど、実際には節税にはならないことがほとんどです。

ふるさと納税も、特産品というメリットは別として、“節税”という表現のアナウンス効果は非常に大きかったと思います。

法人でよく行われる生命保険を使った“節税”も、「単なる課税の繰り延べ商品なのですよ」と正直に表現したら、契約数は激減するはずです。あくまで“節税”商品として売られているため、ニーズが非常に強いわけですから…。

ということで、改めて法人の“節税”と呼ばれているものをご説明いたします。

いわゆる節税を単純分類すると、下記の4パターンのようなものがあります。
(他にもありますがとりあえず…)

  • 支払う税金が確実に少なくなる『消費型』
  • 今は支払う税金が少なくなるけれども最終的には変わらない『繰り延べ型』
  • 課税対象者を移転する『移転型』
  • 今ある資産を処分などする『オフバランス型』

『消費型』は、お金を使えば経費が増えて税金が減るという意味なので、「来月買うくらいなら今月買いましょう」という感じです。
つまり節税ではありません。

『繰り延べ型』は、夏休みの宿題を後回しにする小学生のようなパターンで、どこかで清算を迫られます。清算を迫られるときには法外な利息が付いているようなものなので、原則として、確実に終わると分かっていない限りは宿題を受け取ってはいけません。
もちろん、これも節税ではありません。ご存じのとおり、生命保険がトッププレイヤーです。

『移転型』については、「法人税を払いたくない!」、「それなら役員報酬を上げましょう!」という感じで、法人から経営者個人へ利益を移転するのが代表的です。
当然、決算時に支払う法人税は減りますが、所得税を源泉徴収されて毎月分割納付しているので、正確にシミュレーションをしない限り、節税になっているかどうかは微妙です。

また、以前からお伝えしているとおり、我が国の法人税は減税の方向性が示されており、個人課税である所得税と相続税は増税の方向性にあるため、利益を法人から経営者個人へ移転し過ぎる方法も再考の時期です。

『オフバランス型』は、「おっ、こんなお宝が倉庫に眠っていたのか!」と、過去の失敗を取り返すチャンス的な節税です。自社の貸借対照表をよくご確認いただき、お宝を探してください。探した後は処分(廃棄、売却など)です!
アンフィニッシュを清算しましょう。節税というよりも、リベンジに近いです。

以上のパターンには、節税に掛ける金額の大小と期間の長短に特徴があります。
『消費型』は、金額は小さくなりますが、即実行が可能です。
『繰り延べ型』は、金額も期間も比較的融通が利きますが、一度始めたら止めるのが難しい。
『移転型』は、役員報酬や事前確定届出給与であれば期間は短く、退職金は非常に長期間必要となります。金額は自由ですが、支払と同時に所得税を支払うことにもなるので少し微妙。
『オフバランス型』は、比較的短期間で実行可能で、金額も大きいケースが多くなります。ですが、オフバランスする資産がなければできないため超限定的です。

「とにかく税金を払うのは嫌だ!」という方がやりたがるのが、節税額が大きく、短期間で行う方法です。ということで、『繰り延べ型』が一番人気であり、これが節税の代表のようになっています。

中小企業の経営者のパターンで言えば、法人税を回避しようと利益を移転すれば、役員報酬で所得税が増えます。役員報酬を抑え所得税を回避しようとすれば、法人税が増えると同時に、貯まった内部留保が自社株の価値を押し上げ相続税が増えます。

法人税と所得税の落差が大きいため最も有効と言われる退職金に関しても、最終的には相続税で持っていかれることを考えると、さらなる課税の繰り延べとなる可能性もあります。

さらに課税を逃がすためには、贈与などで親族に分散し続けるしかありません。そのための制度としては、年間110万円の非課税贈与枠であり、住宅取得等資金の贈与であり、新設されたばかりの教育資金の一括贈与などが存在します。

節税など、すでに幻想レベルになってきていますが、それでも打つ手がない訳ではありません。表現は悪いですが、課税を逃がし続けるというのも一つの選択肢です。M&Aによる売却も、お金にならない自社株への課税を逃れるという意味では柔軟性を持ちます。

以上となりますが、“節税”と“商品”が付くものに手を出すのは十分気を付けてください。太陽光発電だって、つい最近まで節税商品として売られていましたし、その結果は散々たるものでしたので…。