岡本の今度の新刊は、3,360円です。

いつもお世話になっております。
岡本吏郎です。
久しぶりに、私の新刊が出ることになりました。
価格は3,360円。
初めての高くて分厚い本が完成しました。
書き出したのが2005年。
書き終わったのが2008年。
書くのだけで3年間。
そこからゲラチェックや税制改正などなどに
翻弄されて3年間。
書きはじめた時、上の娘は中学1年生でしたが、
今は大学1年生・・・・・。私もあと少しで50歳。
よく考えてみたら、40代の多くの時間をこの本に割いていたことに
愕然としています。
世間様の評価がこれからどうなるかはわかりませんが、
3日間で約30万円をいただいている当社のセミナーの内容の
60%くらいをぶち込み、
私が持っているノウハウの30%くらいはぶち込んだ意欲作です。
出版社が『パーフェクト会計』とネーミングしてくれたように、
この本が中小企業会計の基準になってくれたらと願っています。
かなり真面目な本のため取っつきにくいところはありますが、
使い倒したらかなりの成果が出る本だと思っています。
なお、当社キャンペーン・ページには、
プロモーション映像もアップしていますので、是非ご覧下さい。
(後日、アマゾンにもアップされます)
→ http://www.awn.jp/book/perfect/(キャンペーンは終了しています)
なお、明日から14日まで6回に渡って、
新刊の内容の一部についてのコメントを送らせていただきます。

なぜタクシーは増え続けるのか

タクシー業界が厳しいというお話し、1度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
実際、運転手さんは月収20万円を稼ぐのも、なかなか難しいようです。
でもタクシーたくさん見ますよね?むしろ増えているような気がしませんか?
運転手さんは稼げないのに、なぜタクシーの台数は増えているのか。
結論から言ってしまえば、タクシー会社はそれでも儲かる構造になっているからです。
それでは、タクシー会社の収益構造とは、いったいどのようなものか、見ていくことにしましょう。
会社の収益構造は、通常の税務申告用の損益計算書からは、なかなか見えてきません。
収益構造を明らかにするには、損益計算書を戦略用の変動損益計算書に組み替える必要があります。
変動損益計算書とは、簡単に言うと損益計算書上の全ての経費を売上の増減に比例して増減する変動費と、売上の増減に関わらず発生する固定費に分け、並び変えたものを言います。
売上高から変動費を引いた限界利益と言われるものが商品(製品)やサービスの付加価値を意味し、この限界利益と固定費を見ることで収益構造を明確にしていきます。
タクシー会社の場合、売上の増減に応じて増減する変動費は、運転手さんの人件費、燃料代などです。
通常、人件費は固定費ですが、タクシーの運転手さんの場合は歩合制で売上に応じた賃金体系であるため、会社にとっては変動費となります。
売上の増減に関わらず発生する固定費は、車の減価償却費、事務員や経営者の給料、事務所の維持費等です。
各タクシーの売上高の合計から変動費を引いたのが限界利益で、この限界利益が会社全体として多ければ多いほど固定費をまかない、利益を確保することができます。
タクシー会社の場合、限界利益を多くするには2つの方法があります。
1つは運転手さんの人件費、燃料代等の変動費を減らすこと。
もう1つは限界利益を稼ぎ出す台数を増やすことです。
台数が増えれば当然、競争が増すため1台あたりの売上は下がりますが、トータルで限界利益が固定費をカバーできる限りは、台数を増やせば増やすほど利益があがるという構造になります。
1台あたりの限界利益が減れば、台数を増やして限界利益を増やすことで固定費をカバーしようとするため、余計に台数が増えるのです。
この収益構造こそが運転手さんは稼げないにも関わらず、タクシーの台数が増えていく理由です。
しかし、台数が増えれば増えるほど、運転手さんの収入が減少しているということになりますので、この収益構造が良いとは言えないでしょう・・・
簡単にではありますが、変動損益計算書の考え方によりタクシー会社の収益構造を紐解いてみました。
経営者にとって自社の収益構造を理解するツールとして非常に重要な役割を成す変動損益計算書ですが、意外とその存在をご存じなかったり、知ってはいても作成したことのない方が多いようです。
変動損益計算書は自社の収益構造を明らかにすることができ、目標設定、人材採用、設備投資等、様々な経営判断に役立つものです。
もし、これまで変動損益計算書を作成したことがなければ、是非作成してみてください。
難しいようであれば、顧問税理士の先生に作成の依頼をしてみてください。
通常の税務申告用の損益計算書からは見えてこなかった、自社の収益構造が見えてくると同時に、そこから見えてきた数字が、この先の経営判断に、きっと役立つはずです。

マブチモーターは、森をみて、木をみず

「成功企業のクリティカル・コアは、一見して非合理に見える」
楠木建氏は、著書『ストーリーとしての競争戦略』において、そのように語っています。
同氏が定義する“クリティカル・コア”とは、要約すると、その企業の主たる成功要因であり、例を示すならば次のようになります。
■ マブチモーターにおける、自社モーターの標準化
■ アマゾンにおける、大規模な物流センター
■ デルにおける、自社工場での組み立て
■ サウスウエスト航空における、直行便(≠ハブ方式)
(一例として説明すると)マブチモーターが、モーターの標準化にシフトした頃は、セットメーカーの様々な規格に合わせてモーターを製造・納品するのが業界の常識でした。
しかしながら、メーカーの規格に合わせて多種な商品を製造していては、繁忙期と閑散期が発生しコストが平準化できず、さらに、繁忙期には不良品率が高くなってしまう、というデメリットが生じます。
そこで、モーターの標準化、つまり、メーカーの規格に合わせるのではなく、あくまでもマブチのモーターに合わせてメーカーサイドに製品を製造してもらうことで、コスト削減、安定した在庫の確保、不良品・クレームの大幅減少を実現していったのです。
しかし、メーカーから見れば、マブチモーターは川下の業界です。
同業他社は、「モーターに合わせて製品をつくる? そんなことできるか。」というメーカーからのクレームが容易に予測できたため、誰も真似しようとは思いませんでした。(実際、マブチもメーカーの説得には苦労したそうです・・・。)
つまり、モーターの標準化は“一見して非合理”に見えるため、(マブチモーターの成功を追いかけようとしつつも)成功の要因はそれ以外のところにあると思い、誰も(クリティカル・コアである)モーターの標準化には手を出さず、ことさら、マブチモーターの地位は確固たるものになったのです。


私も最近、税務顧問の現場で“一見して非合理”な行動を目の当たりにしました。
顧問先様である某社の試算表を見ると、単年のキャッシュフローが明らかに足りない。
社長に今後の展望を尋ねると、「さらに人員を追加する」と言います。
財務状態を改善しようとするならば、まず優先すべきはコストの削減であり、人員の増加は明らかに逆行しています。
更なる説明を求めると、「当社は人員が足りず、売り場に十分な商品を陳列できていない。商品さえ並べば(その会社の特異性ゆえ)売上げは確実に伸びる。今は端境期ゆえに歪みが生じているが、今はコストを抑える時期ではない、むしろ逆だ。」とのこと。
この社長は、目の前の小さな利益に捕われることなく、全体的なストーリーの中での大きな利益が見えています。
だからこそ、勇気を伴うこのような判断を下せるわけであり、私も非常に納得させられました。
皆様の会社でも、毎月や毎年の会議で、様々な業務改善が議論されることでしょう。
「このコストは無駄だ。」
「この業務とこの業務は重複しており、合理化がはかれる。」
「どうしてこの地域に営業をかけない?」
一見して合理的に見えても、全体としては非合理な事があります。
逆に、一見して非合理に見えても、全体としては合理的な事もあります。
経営に関わる判断をくだす際に、検討を重ねた結果それが最適解だと思えたとしても、あえて一度立ち止まり、その事項が局所的な最適解ではなく、全体的なストーリーとしての最適解であることを再確認する必要があるでしょう。


私は1月1日に家族を連れて、弊社代表の岡本の自宅へ新年の挨拶に行きました。
面識のある方ならお分かりかと思いますが、なかなか癖のある性格で、なんか変なこと言われなければいいけどな・・・、なんて思いつつ、その予感はやっぱり的中するわけです。
「こいつ税理士試験に一度落ちているからね!俺はストレートで受かったけど。馬鹿だよねー。ガハハハハ。」なんて、妻、子供の前で言われる始末です・・・。
でも、帰るときには、子供達にお年玉と、(お古ではありますが)ポケモンや戦隊もの、仮面ライダーの人形を50体位くれました。
子供達は当然大喜びです。
・・・、一見して非合理に見える『岡本家への新年の訪問』も、実は合理的だったりするのです。

2012年問題、その時中小企業は・・

2012年問題といっても、マヤ文明とか地球崩壊の話ではありません。
『中小企業の2012年問題』です。
以前に、2007年問題が社会的にクローズアップされたことがありました。
これは、団塊の世代と言われる1947~1949年生まれの人たちが60歳で定年を
迎える、2007年~2012年までの間に大量退職すると見込まれていた問題です。
しかし、フタを開けてみれば、高年齢者雇用安定法の改正や一時的な好景気に
後押しされ、2007年に大量に退職するはずであった「団塊世代」の退職(いわゆる
『2007 年問題』)が5年間先送りされる格好になった、これが今に続く『2012年問題』
です。
2007年問題と騒がれた大量退職は、2012年頃から再就職期間がおわる、65~75歳
の間にリタイアすると見込まれています。
一方で、団塊世代の経営者が60歳で社長を退くことは稀ですが、2012年以後、65歳を過ぎるようになると事業承継もいよいよ避けては通れない問題となってきました。
中小企業の事業承継というと、ひと昔前は、身内の者が後を継ぐのが当たり前でした。
しかし、中小企業の事業承継は時代とともに変化してきました。
中小企業の経営者が身内に事業を承継する割合は、20年前の80%から、30%
台に減少し、その代わりに、身内外に承継する割合は、6%から40%に増加しています。
その背景には以前まで上場企業や大企業だけの話と思われていたM&Aが、
中小企業にまで広がってきたことがあげられます。
リーマンショック以降、M&Aの件数は減少しましたが、2007年には年間約2700件のM&Aが成立しており、これは土日を除いた平日に1日約10件ものM&Aが
全国のどこかで行われていた計算になります。
そして、そのうちの約7割が非上場企業が当事者となった案件です。
中小企業のM&Aは話題性からして、マスコミにとりあげられることはありませんが、中小企業のM&Aが身近なものになっていることを物語るひとつの事実です。
それでは、私が以前に関わったM&Aの事例をお話いたします。
その会社は、年商1億円程度のサービス業で、役員を含めた従業員数は5名の小規模な法人でしたが、従業員の高齢化と後継者不在という問題を抱えていました。
他で勤めていた長男を入社させ、事業承継を試みましたが、従業員と馴染むことができず、また、経営者としての適性もなかったことから親族内承継を断念いたしました。
相談をうけた私は、すぐに株式譲渡によるM&Aを提案しました。
相談を受けた当時は、売上の半分以上を行政からの仕事を受託していたため、
利益率も高く、内部留保も十分にありました。
しかし、市の予算縮減と規制緩和の流れが徐々に強くなっていたため、M&Aを
行うなら今しかないと思ったのです。
幸いにも買い手企業はすぐに見つかりました。
その会社は同業者ではなく、類似のサービス事業を行っており、シナジー効果が
期待できる企業でした。
社長の希望額は5000万円でしたが、デューデリジェンスの結果、売上げの下降
要因、設備の老朽化等があったことから、私は譲渡価格を約4000万円と算出し
ました。
買い手企業の提示してきた売却希望価格も私の算出した評価額を若干下回る程度の価格でした。
しかし、売り手企業の社長は一歩も譲らず、歩み寄りができなかったため、このM&Aは破談となってしまいました。
その数年後です、心配していたとおり、行政の仕事は競争入札となり、さらに規制緩和から、他地区の業者が進出してきた結果、売上げはあっというまに減少してしまいました。
その後、社長の体力も低下し、もはや会社を誰かに任せるしかないという状態にまでなったときに、ようやく社長は会社を売る覚悟を決めました。
なんとか買い手企業を見つけることができましたが、売上はかなり落ち込んでいたことから、M&Aというよりは、仕事を引き受けてもらうだけの形になり、のれん評価はゼロ評価となってしまいました。
結局、株はいらないと言われ、雇用維持を条件とした、事業譲渡を行いました。
それでも、取引先に迷惑をかけられないという思いから、社長は事業を譲渡され、
その後自ら残った会社を清算しました。
結果論に聞こえてしまうかもしれませんが、M&Aを見極めるうえでの重要なポイントは、自社の価値を客観的に見る目と譲渡のタイミングです。
譲渡のタイミングは本当に長くありません。
具体例を一つだけあげます。
『2期連続で赤字をだすとM&Aのハードルは確実にあがります。』
タイミングを逃してしまうと、企業の価値はどんどん下がってしまうだけでなく、最悪の場合、自主廃業の選択肢しか無くなってしまいます。
中小企業の6割が後継者不在という現実を抱えています。
事業承継でお悩みの方やまだ後継者が決まっていない方は一日も早く専門家にご相談ください。
具体的に何も考えておらず、何を相談していいかわからないとおっしゃられる方がたくさんいらっしゃいますが、ご相談の段階では何も考えていただく必要はありません。
現状と社長のお悩みをそのままお聞かせください。
いただいた情報から最善の選択肢をご提案し、社長と一緒に考えさせていただくことが我々専門家の務めです。

見えない資産

『見えない資産』みなさんの会社にはどれくらいありますか?
損失隠し問題で世間を騒がせ、第三者委員会にガバナンス(企業統治)不在を
指摘されたオリンパスですが、M&A市場では高い評価を受けているようです。
主力事業である内視鏡の生産拠点は原発事故の不安を抱える福島県に集中して
おり、かつ今回の損失隠し問題発覚。
この逆境下において、何故、M&A市場でソニー・富士フィルム・テルモを初め
国内外の巨大企業が目の色を変えてオリンパスを手に入れたいと考えたの
でしょうか。
それは貸借対照表に決して載ることのない、オリンパスの『見えない資産』を
手に入れたいからです。
『見えない資産』とは人財・技術・お客様・組織力・ブランドなど、従来の会計上の
ルールでは反映されない、けれども企業の姿をより正確に知るためには欠かす
ことのできない重要な企業の資産です。
オリンパスの『見えない資産』の正体は内視鏡を売る仕組みです。
簡単に言ってしまえば、人脈や、内視鏡を扱う医師の細かい要望に応える
サービス力です。
医師達は製品そのものはもとより、内視鏡の扱い方を教えるトレーニング施設を
拠点に持ち、故障や微調整に細かく対応するオリンパスのファンになっている
のです。
オリンパスのトレーニング施設でトレーニングを受けた医師が、他社製の内視鏡
に乗り換える例は少ないといいます。
このことは、製品を生かす仕組みやサービスが、製品そのものの価値を何倍
にも引き上げてくれることを、私達に教えてくれます。
現在、中小企業の決算書のほとんどが税法の基準に従って作成されたものです。
その結果、既に実在していなかったり、全く価値のないものが『資産』として
存在しているケースが多く見受けられます。
一方で人財や仕組みといった、本来、企業の『資産』として評価されるべきものが、
決算書に載ることはありません。
しかし、こうした『見えない資産』である人財・技術・仕組・お客様・組織力・ブランド
こそが企業価値を高めていくことは間違いありません。
貸借対照表に載っている『見える資産』の中で、最も重要なのはキャッシュです。
キャッシュ以外の資産は資産でないと言っても過言ではありません。
『見えない資産』と『キャッシュ』
この2つを十分に内部留保していくことができたならば、みなさんの会社が
生き残っていく、一つの大きな要因となることでしょう。

敷金は払わなければならないか

敷金・保証金を支払わなくても済む方法、ご存じですか?
おそらく大多数の方が事務所・店舗を借りる際に家賃については値段交渉をしていることでしょう。それでは敷金についてはどうでしょうか。
日本経済新聞によれば、全国で約60店舗を運営している、ある洋風居酒屋チェーンでは店舗を借りる際に差し入れる保証金について、金融機関が不動産業者に代りに現金を差し入れる『保証金代預託契約』を導入したとのことです。
なんとこの居酒屋チェーン、この契約を結ぶ以前の昨年9月末時点で7億円の保証金を差し入れていたとのことです。
この契約により、借入金の金利を上回る水準の手数料を銀行に支払うことになりますが、多額の支出を長期間、固定化しなくて済みます。
これにより保証金を7割圧縮し、捻出した資金を出店や運転資金にあてます。
資産の水膨れを回避しつつ、積極出店を進めることが狙いです。
通常、敷金は最低でも家賃の3ヶ月分の支出を要します。しかし、ご存じのとおり、これを経費で落とすことはできません。
敷金は家賃を滞納したり、退出時に修繕費がかかったりした時の為に前もって大家さんに預けておくお金です。
しつこいようですが、支出時においては経費になりません。
だったらこの敷金を払わなくても済むように交渉すれば良いのです。
退出時に原状回復の為に修繕費が必要になれば、当然これは支払わなければなりません。
しかし、これは全て支出時に経費で落とすことができます。
言うまでもなく経費節減は大切ですが、こうした発想の転換と交渉により支出を見直すこともとても重要です。
電気代の節約や、裏紙の使用といった節約方法は、もちろん環境保全といった観点からは意味がありますが、経営の観点からは従業員のモチベーションを下げるだけで、特に業績が不調な時においては効果的とは言えません。
それよりも前出の居酒屋チェーンのように、支出時に経費とならない支出を可能な限り抑えることができれば、その支出を事業の運転資金や拡大の為に回すことができます。
世間一般には敷金は借りるときに払うのが慣習でしょう。
しかし、今までの慣習といったものに固着せずに、ちょっとした発想の転換を試みることで、経営にとってとても重要な影響が生まれることがあります。
このように、無意識のうちに固着してしまっている概念が、まだきっと他にもあるはずです。
そこから脱し、自由な発想で経営を行うことが、ライバルとの差を生みだすのです。

否認

少し前の統計になりますが、平成22年度(平成22年4月1日~平成23年3月31日終了事業年度)の赤字申告割合は74.8%でした。
過去最高です。
平成2年度の赤字申告割合が約50%であったことを考えると、20年間で赤字企業が1.5倍増加したことになります。
このペースで増えると、さらに20年後は赤字申告割合が100%・・・。
とまではならないでしょうが、このペースを考えると恐ろしいですね。
5年後に赤字申告割合が80%を超えるというのは、十分考えられる状況です。
実際、リーマンショック直前の平成19年度から22年度までの4年間ですら赤字企業が6.9%増加しています。
このような赤字申告割合という客観的な数字について、皆さんはどのようにお考えでしょうか?
もちろん、現時点で好調な企業は気にされていないかもしれません。
とはいえ、ここ数年のうちには好材料と考えられる環境は望めません。
泥沼に入った欧州危機や北朝鮮の動向、日本国内による消費税の問題、昨年の大震災のように予測不可能な事象もあり得ます。
また、慢性的に赤字申告を行っている企業などは既に諦めているかもしれません。
「仕方ない。どうにもならないのだから・・・」
正直、一番怖いのはこの反応です。
岡本が繰り返し紹介している本に『生き残る判断 生き残れない行動』(アマンダ・リプリー:著 光文社)がありますが、この本では危機に陥ったときに人はどのように判断し、行動するかということについて、事例を通して説明しています。
***本文より一部抜粋***
「火災時における実際の人間の行動は、“パニック”になるという筋書きとは、いくぶん異なっている。一様に見られるのは、のろい反応である」
~中略~
「人々は火事の間、よく無関心な態度をとり、知らないふりをしたり、なかなか反応しなかったりした」 ~中略~
なぜわたしたちは避難を先延ばしするのだろうか? 否認の段階では、現実を認めようとせず不信の念を抱いている。我が身の不運を受け入れるのにしばらく時間がかかる。ローリーはそれをこう表現している。「火事に遭うのは他人だけ」と。わたしたちはすべてが平穏無事だと信じがちなのだ。 なぜなら、これまでほとんどいつもそうだったからである。
**************
赤字への否認。
これ以上の説明は必要ないでしょう。
赤字の積み重ね、問題の先送りの先に待っているのは倒産です。
そのくらい、赤字企業が75%というのは異常な状態。
「今までも赤字だったし、それでもやって来れた。今年赤字になりそうだからといっても、今までどおりやっていくだけさ・・・」
私どもは、職業柄、数多くの経営者の否認の瞬間を見てきました。
幸い、私どもの直接のお客様にはそのような方々はいらっしゃいませんが、“相談にだけ”来られる方々の中には、こちら側の質問にも否認一辺倒の場合があります。
どうやら、経営危機は火災時の人の反応よりもさらにのろいようです。
このような状態を例えれば、イヤホンで音楽を聴きながらスキーでもしているとき、後ろからの雪崩に気付かず、ふと振り向いた瞬間に跡形もなく押し潰されてしまうようなものです。
繰り返します。
現在、黒字企業が赤字に飲み込まれています。
赤字から経営危機、経営危機から倒産・・・。
いち早く否認段階を通り抜け、赤字の波から逃げないと、出口も閉ざされてしまいます。
2012年、さらに厳しい1年が始まりました。

年始めのご挨拶

明けましておめでとうございます。
年末のご挨拶で、今の時代を
「収縮する時代」
と表現させていただきました。
そして、この「収縮の時代」の最大のコツは、“わからない”ということが
わかればなんとかなる・・・などと言い放って、ご挨拶に代えさせていただき
ました。
そもそも、人以外の生物は、無駄な予測や対処なんてしません。
時々の外部情報の変化に合わせて対応していく。そういうものです。
ですから、私たちが気をつけなくてはならないのは、見立てをしてしまう
自分に気をつけることです。
そこで、あらためて浮かぶ言葉は、
「自由自在」
です。
このことが本当に問われる時代がやってくるのだと思うのです。
夢や目的、過去や事情に固着するのではなく、自由自在に徹する。
もちろん、それを実行することは大変難しいことです。
なぜならば、「自由自在」とは、言葉を変えれば、「今までを捨てる」と
いうことだからです。
しかし、事前に、このことを意識していれば、きっと的確な時期に捨てる
べきものは捨てることができることと思います。
また、素晴らしい一年がはじまります。
2012年1月1日

年末のご挨拶

今年は、ドラッカーが流行ったので、ドラッカーの引用ではじめましょう。
ドラッカーは、『産業人の未来』でこう言いました。
************************************************************
ヒトラーが思いがけず自由に意味を与え、失われていた価値を蘇らせた
************************************************************
この言葉を、リーマンショック後の社会に当てはめて、私は、信用の重要性
が復活したと指摘させてもらいました。
ドラッカーの言い方に当てはめるとこんな感じでしょうか・・。
***********************************************************
リーマンショックが思いがけず「信用」に意味を与え、失われていた
価値を蘇らせた。
************************************************************
では、東日本を襲った大地震後、私たちは、さらにどういう意味を得たので
しょうか?
それは、誰もが言っている言葉です。
「新しい時代の幕開け」
しかし、私たちは、「新しい時代の幕開け」を感じながら、具体的な行動は
何一つ取っていません。
私たちは、多くの重要な変化について、すでに知っています。
例えば、日本の人口は、この1年でも12万人減りました(震災の死者を含まず)
。そして、この現実について知らない人はいません。しかし、行動は何も変わって
いません。今も、漫然と、そして漠然と売上増を目指して経営を行っています。
私たちは、あらゆることを知りながら、何となくぼんやりとやり過ごしているの
です。悪い意味で、「泰然自若」なのです。
しかしながら、それは仕方のないことだとも思います。なぜならば、今は、
それでもなんとかなっているのですから・・・。
そして、問題はここにあります。
私たちは、今、なんとかなっている。だから、頭だけの理解だけで、具体的な
行動は起こせないまま今日まで来たのです。
恐らく、来年または再来年に、そんな私たちに、大きなことが起こると思います。
それは、東北の震災のように劇的な事件として起こるのではなく、ジワジワと
私たちの足下を崩していく類のものでしょう。
それが、すでにはじまっている「収縮する時代」の景色です。
では、この「収縮する時代」に対して、私たちはどう具体的な対処をしなくては
ならないのでしょうか?
それは、今の段階ではよくわかりません。
・・・というか、おそらく、いつになってもわからないものなのです。
しかし、“わからない”ということがわかれば、いくらかの対処は可能のはずです。
おそらく、そのことが、生きるうえでの最大のコツになる。そんな気がしています・・。
今年も大変お世話になりました。
また、次の「一年」がはじまります。
これからはじまる動乱を少し感じながら、覚悟を決めて進んでいきましょう。
来年もよろしくお願いします。

 2011年12月30日

もしも、ウーロン茶税が施行されたら・・・

税制改正において、大衆の視点から注目されていたのが、自動車税の動向です。
税率の引き下げなどで減税路線にはなったものの、結局、廃止には至らず、自動車業界からは批判が噴出しています。
“モノ”に対する税を見渡すと、自動車税は“買い手”が払う税金であり、たばこ税や酒税は“売り手”が払う税金です。
しかし、『払う』=『負担する』という図式が成り立たないことは、ご理解いただけるでしょうか?
このような税は、税負担も含めた『価格』として需要供給曲線に収斂され、結局は、“売り手”と“買い手”が痛み分けで負担するような形に落ち着くのです。
(経済学においては、『税の等価性』といいます。)
しかし、“売り手”と“買い手”が双方で負担するとはいえ、その負担割合はどのように決定されるのでしょうか?
その決定に大きく作用するのが、『弾力性』です。
『弾力性』とは、その商品から、他の商品へ移り変わるエネルギーの大小をいいます。
一般的にコモディティ化している商品は、弾力性が大きくなります。
(例:トイレットペーパーは、A商品でもB商品でも大差はない。消費者は簡単に商品を変更する=弾力性が大きい)
そして、先ほどのような税は、弾力性の小さい方が、より多く負担することになります。


例えば、ウーロン茶税なるものが施行されたとします。買い手は、ペットボトル1本につき50円を払わなければならず、既存のペットボトル150円が、税の追加により200円になってしまいました。
今までウーロン茶を好んでいた消費者は、いとも簡単に、ウーロン茶を捨ててジャスミン茶へ乗り換えました。
つまり、『ウーロン茶の弾力性は大きい』、ということです。
ウーロン茶メーカーは販売不振で困ってしまい、既存価格150円のペットボトルを110円に値下げしました。
消費者は、50円のウーロン茶税を負担しなければならないため、実際の購入価格は160円になりますが、(もともとウーロン茶フリークなわけですから)ここまで値段が下がったことで、ジャスミン茶への浮気をやめました。


このように、“買い手”に対して課したはずの50円は、値下げという行為を通すことで、“売り手”が実質的に40円も負担することになります。
メーカーは、ウーロン茶を製造販売するしかない(ウーロン茶市場から移る力が小さい)わけですから弾力性が小さい、つまり、税を多く負担しなければならなくなった、ということです。
この『弾力性』について、中小企業経営者である皆さまが意識しなければならないことは、“商品価格”との関係です。
弾力性の大きな商品であれば、多少の値上げでも市場は敏感に反応し、消費者は簡単に別の商品へ移ってしまいます。
逆に、弾力性の小さい商品であれば、ある程度の値上げを断行しても、代替となる他の商品がないわけですから、消費者はそのまま留まることになります。
弾力性:大 ⇒
消費者の流動性:大
大幅な値上げは禁物。逆に、わずかな値下げで取り込める新規顧客はいないか?
弾力性:小 ⇒
消費者の流動性:小
遠慮した値上げにより、失っている利益はないか?
自社の商品価格の改定を行う際には、商品別、地域別、お客様のランク別など、一度各カテゴリーの弾力性を分析し、その弾力性に見合った商品価格の設計をしてください。