ABC会計

私の新著『実学 中小企業の”パーフェクト会計”』では、3つの章がカットされています。
カットされたのは、すべて応用編で、かなり内容的に難しいものが含まれていました。
私としては、本だけではわからないにしても、網羅性を重視して入れておきたい内容でしたが、それが叶いませんでした。
そのカットされた内容の一つが、「ABC会計」です。
世の中には、「ABC会計」の本がいろいろ出版されていますし、ドラッカーもいくつかの著作で言及している管理手法ですから、名前くらいは多くの方々がご存じのことと思います。
「ABC会計」のツボはいろいろありますが、中小企業の場合、最も重視すべきなのは、“作業量”でしょう。
具体的には、製品やサービスごとの作業の投入量を、コストとして引き直していきます。
私たちは、限界利益が大きい商品やサービスが、自社の有力商品と考えがちですが、その商品、サービスの提供までの作業量を加味すると、まったく違う景色が見えてくることがあります。
例えば、単価が安く、利益率も低いサービスがあったとします。
しかし、そのサービスの提供までの作業量は少なく、それもパートやアルバイトの作業投入だけで、済んでしまうとしましょう。
逆に、高単価で利益率も高い商品でも、作業投入量が大変多いサービスがあったとします。
おそらく、こうしたサービスを持つ企業は、高単価のサービスこそが自社の利益源泉だと思っていることでしょう。
しかし、こうした2種類のサービスについて、作業量を加味して原価を引き直してみると、驚くような結果になることがよくあります。
“成熟社会”とか“付加価値”などという言葉が踊っている今の世の中では、付加価値の高い商品しか生き残れないと思いがちですが、実は、付加価値の低い商品こそが企業の利益源泉になっているということが実に多いのです。
もちろん、付加価値の低い商品は、単独では成り立たない商品であることが多いと思いますし、市場の競争から単価が年々切り下げられるということも起こる可能性は高いでしょう。 しかし、だからといって、ダメな商品とは限らないのです。
ブランディングの難しいガソリンスタンドやクリーニングなどのビジネスは、「ノー・インタレスト・カテゴリー」と呼ばれますが、私は、来年以後、面白くなるビジネスは、こうした領域のものだと考えています。
理由はここでは書けませんが、ある想定から、そのように考えています。
「ノー・インタレスト・カテゴリー」というとブランディングができず、価格競争に巻き込まれがちな商品、サービスだと思われていますが、やり方によっては効率的なビジネス展開がやりやすいものでもあるのです。
「ABC会計」は、一つの分析手法でしかありませんが、こうした分析手法を実行することは、企業戦略を根本から見直すことになったり、そもそものビジネスの概念を変えることもあり得ます。
ぜひとも、経営の中に、作業投入量の概念も、もっと積極的に導入してみてください。

本当に来てしまうとは・・

1998年、ドラッカーは次のように言いました。
会計システム上の問題は単純である。
会計システムは、どれだけの収入があるかはつかんでいる。
どれだけの支出があるかもつかんでいる。
どこへ支出しているかさえもわかる。
しかし、支出と成果を結びつけることができない。
 
また、次のようにも言っています。
あらゆる企業が、組織が会計システムに基づいて意思決定を行っている。
それがいかようにも操作できる代物であることを承知しつつ、そうしている。
 
こうも言っています。
会計システムのどの部分が信用でき、どの部分が信用できないかは明かである。
われわれがとうてい歩くべきでない薄氷の上にいることは明かである。
 
私の新著『実学 中小企業のパーフェクト会計』は、このドラッカーの提言に対する
会計側からの答えです(中小企業だからできる答えです)。
もちろん、ドラッカーの言っていることは大企業会計に対するものであり、
中小企業会計を視野に入れているとは思われませんが、中小企業会計は、
大企業会計よりも酷いことになっているのが実態です。
そして、私は、今まで、そのことを何冊かの本で主張し、対応策を提案してきました。
今回の新著は、そうした私の考えを実務ベースでまとめてみた本です。
そして、中小企業会計側からのドラッカーの問題提起に対する回答としています。
もちろん、本には何もかも載せることはできません。
おそらく、本に書いたことは、私の実務経験から培ったものの30%程度の
ものでしかありません。
また、最も言いたいことは活字では無理という制約もありますから、100%回答
したとは思っていませんが、小さな企業向けの「成果会計」。そして、「思想として
の会計」というドラッカー先生が聞いたら何て言うかちょっと挑戦的な考えも入れて本にしました。
おそらく、2012年以後、会計の役割は変わると思います。
もちろん、2012年から「今日から変わります」と言って、ガラっと変わることは
ありませんが、少しずつ変わっていくはずです (その変わる様の予告も本の中に
さり気なく入れてあります)。
残念ながら、多くの企業はそのことに気づかずに、従来概念で数字を見ていく
ことになるとは思いますが、ドラッカーが10年以上前に提起したことの奥深い
意味を誰もが痛感する時は、すぐそこまで来ています。
会計が得意としてきた、収入と支出の把握は、これからも必要ですが、その意味が
変わってしまう時代になってしまいました。
そういう時代が本当に来てしまうとは・・と個人的にも驚きですが。ドラッカーが
提言した製造業労働者の激減同様に、すでに、事態は動き始めたとみていい
でしょう。
新著『実学 中小企業のパーフェクト会計』をそうした視点で読んでいただくのも
良いと思います。

特需の角度

次のグラフをご覧ください。
家計調査・商業販売統計、つまりは月別推移の消費動向を表したものです。
赤いラインの直前に消費指数は伸び、ラインを跨いだ途端に急激に下がっています。

今度は別のグラフをご覧ください。車・家電・旅行の販売推移です。
グラフの推移は上と同様で、赤いラインの直前で伸び、ラインを跨いで急激に下がっています。

(参考文献:1997年度の金融及び経済の動向 日本銀行)
もう皆さんお分りかと思いますが、赤いラインは“平成9年4月”。
つまり消費税率が3%から5%に引き上げられたタイミングです。 改めて特需の尖り具合を確認することができます。
現在、政府与党を中心に、震災の復興財源(きっかけ?)として増税が、特に消費税の増税が議論されています。
震災の復興に充てるならば緊急を要する話。
増税論議が始まってから、実際の施行に至るまでの助走距離が短い消費税増税となり、さらに税率の増加幅(5%→8%? 5%→10%?)も考慮すれば、平成9年当時よりも、さらに“鋭く尖った”特需となってくるはずです。

さぁ、準備に入りましょう。
“特需”商戦をものにするための多額の仕入代金確保に備え、資金残高を増やしておく必要があります。
当たり前すぎることですが、これに尽きます。
「それだけではないでしょ?自社使用の消耗備品・固定資産等の駆け込み購入のための資金も考えなければ。」
よく勘違いされる方がいらっしゃいますが、その必要はありません。
事業者であれば、支払った消費税は仕入税額控除されて、決算時に納付する消費税を減らす効果があります。
つまり、税率が上がって消費税を多く支払ったとしても、同額の控除がされるため影響はないのです。
(一般消費者は控除することができないため、やはり駆け込む必要があります。)
念のため確認いたしますが、なにも消費税増税が確定したわけではありません。
まだまだ議論されているレベルです。
ただ、実際に発動された時には、他社に初動の差を見せつけてやりましょう。

インセンティブと、シートベルト法と、会計

経済学において、人々の行動とインセンティブとの皮肉な関係を説明する際によく用いられるのが、60年代にアメリカで制定されたシートベルト法の話です。
今では考えられませんが、50年前の車には、シートベルトがほとんど搭載されていませんでした。
その後、自動車の安全性に関する消費者運動をきっかけに、アメリカ連邦議会は、全ての自動車にシートベルトの搭載を義務付ける法律を制定しました。
『これで自動車事故による死亡者数が減少する!』と、当時の政策立案者は考えたのですが、皮肉なことに、思惑通りにはいかなかったのです・・・。
確かに、シートベルトを装着することにより、運転手自身の死亡事故は減少しました。しかし、安全性が増したことにより、運転手はスピードを上げて軽率な運転をするようになったのです。
総合的な結果として、事故1件あたりの死亡者数は減少しましたが、事故件数は増大し、むしろ、弱い立場である歩行者の死亡者数は増加してしまったのです・・・。
このように、政策は、しばしば意図せざる結果をもたらすことがあります。
中小企業における政策として、経営者は、経理・会計の強化を図ることがあります。
今までは自身で会計帳簿を入力し、試算表を作成していたのですが、比較優位の原則から、有能な経理担当者を採用し経理業務を任せ、自身は経営判断に割ける時間を確保します。
『これで、経理体制の強化は図れた。出来上がった試算表から、必要な情報だけをピックアップし、経営分析や戦略会計、経営計画の立案を行い、より有効な“次の一手”を打つ!』 ・・・とは、なかなかいきません。
もちろん、見事に会計を使いこなしている経営者の方々もたくさんいらっしゃいますが、数字に触れる時間が圧倒的に減っているため、数字に疎くなってしまう経営者の方々がいるのも事実です。
社長 「うちの変動比率って何%だっけ? 労働分配率は? 固定費の月平均額は?」
経理担当者 「社長、それは前にも説明しました!」
社長 「・・・。」
このように、経理体制を強化することによって、会社自体の経理・会計能力は上がるものの、経営者自身の会計能力を低下させてしまう、という意図せざる結果を招くこともあるのです。
では、どのような対策をとるべきなのでしょうか?
昔のように、経営者の方自身に会計帳簿の入力を行っていただく、ということではありません。それでは退化になってしまいます。
経営者の方々には、“経理”ではなく、“会計”に触れていただきたいのです。
では、どのように“会計”に触れればよいのでしょうか?
それは、話のわかる会計事務所と付き合い、会計の書籍を読むことです。
当社代表の岡本は9月に、『実学 中小企業のパーフェクト会計』を出版しました。
岡本は本書において、「会計への理解不足が、中小企業経営のボトルネックになっている。会計は、税務対策でもなく、資金対策でもない。経営を安定させるための道具だ。」と述べています。
「いまさら会計?」とは思わないでください。
一度ご覧になっていただければ、岡本が描き出す圧倒的な“会計”の世界に、心が躍るはずです。

実学 中小企業の“パーフェクト会計”

久しぶりに本が出ます。
タイトルは、『実学 中小企業の“パーフェクト会計”』
価格は、少し高めで、3360円。
非常に、ボリュームのある本です。
辞書的にも使っていただけるようにしたためです。
この本は、2005年に書き始め、後書きは2008年に
書き終えました。
書くのに丸々3年かかった本です。
そして、それからが大変でした。
ゲラチェックには、通常の本の何倍もかかり
さらに、出版社の事情も重なり、
書き終えてから3年も経過しての出版です。
おそらく、私の過去の本とはカラーがずいぶん違う本になりました。
特に、第一部は、少し難しい文体に感じるかもしれません。
ただし、この本は、第四部から読んでいただく形を取っています。そして、この
第四部が、最も、私の過去の文体に近い雰囲気になっていると感じていただ
けると思います。
別に、本は最初から読む必要はないわけですが、
そのことを執筆時に意図するというのは珍しいことだと思います。
もちろん、「はじめに」に、そのことは書いてありますから、読者の方が間違う
ことはないようになっています。
さて、この本は“パーフェクト会計”を標榜するように、
中小企業のために使える会計を目指しました。
それも、大雑把にも使えますし、オタッキーに利用することも可能になっています。
また、実際に、実行していただくために、
一部のソフトの公開や体験のための個別相談も用意しました。
会計を本当に使い倒していただくことを目的としたからです。
この本にも書きましたが、
私は、会計は思想だと思っています。
会計の専門家は、標準というものが、どこかに存在するように、
「一般的には・・・です」とか
「優秀ですね・・」
などと言いますが、
そんなものはないと思うのです。
もちろん、赤字では困りますから、
赤字がダメという標準はありますが、
会計に対する私たちの態度は、思想的なものであるべきと考えています。
そして、自分が持った思想を実践するということは、
会計を普通ではないナニカにすることだと考え、この本ではそのことを主張して
います。
ドラッカーは、
知識社会では、卓越した知識労働者しか通用しないと言いました。
有能ではダメだと言うのです。
私が、この本で提起したことも同じです。
卓越した企業を作るための会計というものを提起させていただいたのです。
発売は、9月8日です。
ぜひともお買い上げ下さい。

くら寿司の顧客サービス

大阪に本部を構える回転ずしチェーン“くら寿司(株式会社くらコーポレーション)”。
東証一部に上場した2005年には345億円だった売上高が、2010年には707億円(利益額50億円)へ。
公開数字を見る限りは、『急成長の企業』と言っていいのではないでしょうか。
ビジネス誌等でも何度か紹介されているため、ご存知の方も多いと思いますが、くら寿司では次のような顧客サービスを行っています。
■食べた皿を、その都度、皿カウンターに投げ入れいていく
■皿を5枚入れるたびに、液晶パネルでゲームがスタート
■「当たり」が出れば、各席に設置されているガチャガチャから景品をゲットできる
このエンターテイメント、イメージできましたか?
液晶パネルを使ったゲーム、「当たり」が出たときにガチャガチャから転がってくるカプセル景品、そして、ゲームのギャンブル性(筆者の実感では約25%の当たり確率)。
もう、子供にとってはたまりません。
“子供の喜ぶ顔を見る”のが好きな模範的ファミリーであれば、5の倍数で食事を終えるよう(次フロー参照)、かなりの確率で誘導されてしまいます。
■24皿⇒25皿
「あと1皿、あなたがんばって。」(4%売上増)
■23皿⇒25皿
「私が1皿がんばるから、あなたも、もう1皿。」(8%売上増)
■22皿⇒25皿
「私が1皿、あなたも1皿。子供たちは2人で1皿がんばりなさい。」(13%売上増)
たまに、同サービスの一部(液晶パネルでのゲーム等)を借用している同業者のフォロワーを見かけますが、あまりうまくいっているとは思えません。
当社代表の岡本も著書『稼ぐ超思考法』で述べていますが、このようなアイデアを目にした時、同業者による単純な人マネではなく、他の分野の方がこのような「手法」、「構造」だけを借用し、自らの事業に生かしていく“ブリコラージュ”が有効になるのではないでしょうか。

震災後の在庫の考え方

在庫は少なく!
これが経営の鉄則でした。
しかし、震災によってこの鉄則が揺らいでいるのは皆さんもご存じの通り。
在庫を極端に圧縮し、その都度仕入れるという効率性を重視してきた結果、「売るものがない」、「作れない」という状況に陥りました。
また、“仕入先を集中して、調達コストを下げる”という、もう一つの鉄則も状況の悪化に拍車を掛けています。
5月は上場企業の3月決算の発表が相次ぎましたが、製造業に関しては生産能力の回復が不透明なため、当期の業績予想の発表を見送る企業が多くなっています。
まさに、日本経済を左右しているのは、“生産がいつ回復するのか?”という点です。
生産の回復待ちは自社ではどうにもならない事なので、今後の課題として検討すべき事項は、「在庫を増やす」、「仕入先を増やす」となります。
では、大企業の生産・物流体制の見直しが叫ばれている中、中小企業にこれが出来るのか?
まずは「在庫を増やす」という点について。
在庫をどの程度増やせば良いかという問題自体はシンプルです。
例えば、今後同じような状態に陥った場合、どの程度の時間があれば“代替品”、“代替取引先”、“代替設備”を確保出来るかに応じます。
その確保までの期間が10日なのか、1ヵ月なのか、3ヵ月なのか・・・。
その期間によって、その分の在庫を増加させればよいのです。
もちろん、在庫を増やさず、もともと扱っている品物の入荷を待つという選択肢もありますが、入荷待ちの状態に応じて売上高の減少というリスクが発生しますので、原則として余力のある企業のみが採用出来ます。
とはいえ、今回の件で、すぐさま在庫を増やすべきという結論には達しません。
なぜなら、在庫を多く抱えるという事は、お金がその分在庫に回り、資金繰りを悪化させる要因になるからです。
手元キャッシュが潤沢な企業を除き、在庫増加には別途資金手当てが必要です。
また、在庫を増やすという事は、同時に不良在庫の額も増える事を意味します。
さらに、在庫の保管費用の増加も起こります。
まさに売上高の減少を防ぐためのトレードオフの関係です。
次に、「仕入先を増やす」という点について。
これは単純に仕入先を増やせばよいというだけ。
それも、地域を分けつつ分散するのが安全です。
ただ、これは“選択と集中”というコストコントロールに重要なポイントを外すという事になりますので、すぐさま仕入額を均等に分散させるべきではありません。
その準備をしておけば十分です。
つまり、主要仕入先の所在地域から離れたエリアに別の仕入先をいくつか探し、少額の取引を始めておけばよいのです。
これであれば、主要仕入先に万が一の事態が起こっても、すぐに対応する事が可能です。
以上、突発的な事態に対しては、次の一手が事前に想定されているか否かで、初動とその後の業績に与える影響が大きく変わります。
在庫の問題も、在庫額を増加させるのが根本的な解決につながりますが、現実的に実行出来ない企業もあります。
しかし、次善の策として、仕入先の選択肢を増やすという手段を実行出来ない企業はありません。
特殊な品物で、仕入先の代替が効かないのであれば、借金をしてまでも在庫を積み上げるだけです。
今回の震災にかかわらず、原材料の値上げや、原油高により、ただでさえ企業コストは著しく上昇しています。
さらに、在庫増加によるコスト高と続けば、これを吸収するのに値上げという選択肢を排除するのは危険です。
そういう意味では、今回の震災は企業の危機管理上の重要なターニングポイントでした。
このターニングポイントで何もアクションを起こせないと、次のターニングポイントを乗り切れるのか・・・と、想像しておく必要があります。

半年後・・の景色

東北地方の巨大地震の発生から一ヶ月以上が経ちました。
その影響は被災地は当然として、被災地以外にも広がっています。
政府系金融機関を中心に、中小企業の資金繰りの手当のバックアップは
されていますが、被災地が優先されるため、資金繰りに苦しむところもある
ようです。
阪神・淡路大震災の際には、被災地以外の企業では、1年を待たずに
売上げが回復したところが多かったようですが、現時点では、都内の
飲食店でも、いまだに売上げの回復は見られません。
実は、小売業やサービス業の場合、震災後二ヶ月頃が正念場と言われ
ています。
製造業は、全般的に、震災復興の絡みから生産再開にさえなれば、売上げ
回復していきますが、後ろ向きな消費ムードが明るくなるには、どうしても
時間を要します。
さらに、ずるずると状況を打開できずにいると、半年以内の倒産もあり得ます。
企業には、良い時も悪い時もあります。
通常、順調な成長が止まり、状況が悪くなれば、それに対する対応を企業
は行っていきます。
企業経営を行っていれば、必ず、事件は起きますから、こういうとき時こそ、
企業の力がためされる時です。
しかし、今回のように日本中の企業が一つの事件に遭遇した場合は、
状況の対応を怠り、単に、仲間と傷をなめあう・・ということが起こりがちに
なります。
バラバラに各企業で事件が起きていれば、事件をきっかけに、新たな対応
をする・・という健全性の循環が起こるわけですが、日本中で同時に事件に
遭遇すると、その健全性の循環が止まってしまう場合があるわけです。
地域企業が、商工会議所などの地域団体に集まって、地元の経済の地盤
沈下をお互いに嘆き合う・・という景色は日本の地方でよく見られる景色ですが、
その景色が日本中で起こってしまうわけです。
そして、ずるずると状況を受け入れていってしまう・・。これは大変危険なこと
です。
したがって、苦境を震災のせいにするのは、そろそろ止めにして、健全性の
循環をはじめなくてはいけません。
なお、銀行は、震災を機会に、ゾンビ企業の整理に入るはずです。業績の
打開が見えず累積損失がドンドンたまっていく中小企業をゾンビ企業と言う
ことがあります。
こうしたゾンビ企業も、地域の金融機関は、地元経済のために、ギリギリまで
応援をしてきました。
しかし、多くの企業の資金要請に対して、金融機関は改めて対応を企業ごとに
考えてきているはずです。
そして、ゾンビ企業の支援を止めるきっかけに、今回の震災はなるはずです。
残念ながら、こうしたゾンビ企業の倒産が、まずははじまります。
そして、次には、するずると対応を遅らせる企業の倒産が待っています。
こうした動きが、震災の半年後くらいから具体的になるはずです。
そろそろ、震災について嘆くのは止めましょう。
この日本中を巻き込んだ事件でさえ、新陳代謝のきっかけと考えましょう。
私たちは、何があっても、商売を続けなくてはいけません。

名目GDPが3位に転落ですって

「名目GDP 日本、中国に抜かれる!」
以前からニュースにはなっていましたが、改めて3位確定と先月発表がありました。
“経済規模で”42年間、世界第2位だったそうです。
どの報道を見ても論調が冷静で、
「当然のことですよね。だってあれだけ人口が多いですもの・・・」
そして、行きつく先は、
「一人あたりGDPでは、日本の方がまだ10倍大きい!」
しかも、日本の一人あたりGDPは世界で17位(2009年度)。
意外と普通の順位ですね・・・。
一人あたりGDPが日本より上位で、日本よりも人口が多いのはアメリカだけです。
世界の国別人口を上位から列挙すると、
『中国、インド、アメリカ、インドネシア、ブラジル、パキスタン、バングラデシュ、
ナイジェリア、ロシア、日本・・・』と、日本の人口は世界で10位です。
人口数が日本より上位で、日本より経済的に裕福と感じるのはアメリカだけではないでしょうか。
ご存知のとおり、GDPは【一人あたりGDP × 人口】の積で求められます。
一人あたりGDPが世界17位で、人口は世界10位・・・。
こう考えると、日本のGDPが世界第2位であり続けたのは、単純に“人口が多いから”、あるいは“人口が多い国の中で、一人あたりGDPが2番目に高かったから”という結論に達します。
ですが、今後、日本の人口は減少傾向に入ります。
それでは、人口の減少に引きずられ、GDPも下がり続けるのでしょうか?
これは、企業の売上高に置き換えてみればヒントが隠されています。
仮に、皆さんの会社の社員が1割減ったからといって、売上高も引きずられて1割下がるでしょうか?
10人の会社なら1人、30人の会社なら3人、100人の会社なら10人。
実際に下がったら経営者は頭を抱えてしまうはず・・・。
しかし、社員数の減少に応じて、下がりそうで下がらないのが売上高です。
それは残りの社員が懸命にカバーするからです。
つまり、一人あたりGDPが増加しているのと同じ現象です。
企業の数年間の連続分析を行っても、人数が減少している事業年度というのは、一人あたりの生産性は増加している傾向にあります。
もちろん、減少人数分を雇うのは簡単です。
とはいえ、簡単に雇ったら大変なことになると分かっているから、どこの中小企業も雇う事が出来ていません。
それでも、売上高を落とさないように努力は続く・・・。
そして、一人あたり生産性は増加する・・・。
いつまでたっても仕事は大変・・・。
これは中小企業のジレンマですが、大きな枠組みで見れば日本の今後のGDPの構造と同じです。
労働人口が減少していくのですから、仕方ありません。
また、皆さんの会社が、こう言われたらムッとくるはず。
「あなたの会社の売上高が大きいのは、社員数が多いからですね」
それよりも、こう切り返せるような形が目指すべき方向性ではないでしょうか。
「うちの会社の一人あたり生産性は業界平均の2倍だよ」
これが日本の現状です。
労働人口は減少するという大前提の下に、企業の一人あたり生産性に焦点を当てて経営される事が、今後の日本のGDPにも少なからず影響を与えるのではないかと考えます。

現実を歪める

林原グループが破綻しました。
「バイオ企業の雄」
「岡山の大地主」
と言われたグループの実態は、
架空の決算書で銀行を信用させ、
約1300億円もの借入残高を抱える
問題企業でしかありませんでした。
1883年に創業した同社は、
元々は、水飴事業を営む企業でしたが、
4代目社長になった林原健氏の社長就任で、バイオ企画を展開。
食品の甘味料に欠かせない「トレハロース」や
抗ガン剤「インターフェロン」の量産化に成功。
「バイオ企業の雄」として世界的に名前が知られていました。
しかし、『日経ビジネス』(2011.2.14号)によると、
2009年10月期の林原単体の売上高は281億円。
当期利益はわずか1億円。
その企業に対して、銀行の債権総額は約1300億円。
バブル時代を彷彿させるハチャメチャ度です。
架空の決算書を受け取り、融資を続けた銀行は、
林原に対して怒り心頭だと思いますが、
どう見たって、どちらも狂っています。
お互いに、現実を見なかった。
企業における不祥事の典型的なパターンが
ここにもあります。
通常、企業は、望む状況と現実にギャップがあると、
そのギャップを埋めるために、
分析をし、新たな仮説を立て、行動します。
企業経営とは、
決算書に代表される現実を示す各種数字を
客観的に受け入れ、それを味わい
次の行動をしていくものです。
これに対して、
林原グループは、「現実」を歪めることを選びました。
これは、人間で言えば、ウツの典型的な症状です。
そのウツ企業に、
銀行は大量の融資をしました。
その額は、このグループの規模からは
常識外れの融資額です。
林原グループは、
金融機関に対して、他の金融機関の融資残高について
虚偽の報告をいていたようですが、
最低限、融資トップの金融機関ならば、
おかしい・・と思ったはずです。
林原グループには、
28もの金融機関が融資をしていました。
この事実だけでもおかしいはずです。
それを見ないふりをしてきたのです。
28の金融機関の末端の金融機関にいたっては、
何の志もない提灯融資。
話題の企業に少しでも融資で入り込みたいという
スケベ根性だけのコソ泥融資と言っても良いでしょう。
しかし、これを笑うことはできません。
私たちだって、
現実を歪めてみていないでしょうか?
決算書を見て、言い訳をしていないでしょうか?
そして、どこかにコソ泥棒がないでしょうか?
こういう事件が起きた時は、
他人事の顔をしてニュースを楽しむのではなく、
我にも同じ色はないか・・と自省することをお勧めします。