現実を歪める

林原グループが破綻しました。
「バイオ企業の雄」
「岡山の大地主」
と言われたグループの実態は、
架空の決算書で銀行を信用させ、
約1300億円もの借入残高を抱える
問題企業でしかありませんでした。
1883年に創業した同社は、
元々は、水飴事業を営む企業でしたが、
4代目社長になった林原健氏の社長就任で、バイオ企画を展開。
食品の甘味料に欠かせない「トレハロース」や
抗ガン剤「インターフェロン」の量産化に成功。
「バイオ企業の雄」として世界的に名前が知られていました。
しかし、『日経ビジネス』(2011.2.14号)によると、
2009年10月期の林原単体の売上高は281億円。
当期利益はわずか1億円。
その企業に対して、銀行の債権総額は約1300億円。
バブル時代を彷彿させるハチャメチャ度です。
架空の決算書を受け取り、融資を続けた銀行は、
林原に対して怒り心頭だと思いますが、
どう見たって、どちらも狂っています。
お互いに、現実を見なかった。
企業における不祥事の典型的なパターンが
ここにもあります。
通常、企業は、望む状況と現実にギャップがあると、
そのギャップを埋めるために、
分析をし、新たな仮説を立て、行動します。
企業経営とは、
決算書に代表される現実を示す各種数字を
客観的に受け入れ、それを味わい
次の行動をしていくものです。
これに対して、
林原グループは、「現実」を歪めることを選びました。
これは、人間で言えば、ウツの典型的な症状です。
そのウツ企業に、
銀行は大量の融資をしました。
その額は、このグループの規模からは
常識外れの融資額です。
林原グループは、
金融機関に対して、他の金融機関の融資残高について
虚偽の報告をいていたようですが、
最低限、融資トップの金融機関ならば、
おかしい・・と思ったはずです。
林原グループには、
28もの金融機関が融資をしていました。
この事実だけでもおかしいはずです。
それを見ないふりをしてきたのです。
28の金融機関の末端の金融機関にいたっては、
何の志もない提灯融資。
話題の企業に少しでも融資で入り込みたいという
スケベ根性だけのコソ泥融資と言っても良いでしょう。
しかし、これを笑うことはできません。
私たちだって、
現実を歪めてみていないでしょうか?
決算書を見て、言い訳をしていないでしょうか?
そして、どこかにコソ泥棒がないでしょうか?
こういう事件が起きた時は、
他人事の顔をしてニュースを楽しむのではなく、
我にも同じ色はないか・・と自省することをお勧めします。