バランスを崩す経営

ソフトバンクの資金ショートの噂がまた出ています。
秋には資金ショートするというのがその内容ですが、銀行団がソフトバンクの申し出を簡単に断るとは思えませんから、何らかの形で乗り切るのでしょう。
この資金ショートの噂は今回が初めてではありません。
周期的に、ソフトバンク周辺で起こる噂です。
したがって、孫正義という経営者の行動は、財務的視点と心理学的な視点を交えて見てみるとおもしろいのかもしれません。
そのおもしろさを一言で言うと、
「孫正義という経営者は財務的な危機を自ら演出する性行がある・・」
というような言い方になるでしょうか?
まず、財務的視点から見て、財務的危機を演出することは決して悪いことではありません。
会計の専門家は、財務的に安全な経営をほめる傾向がありますが、財務的に安全なだけの会社は、成長余力に乏しく決して安全ではないというのが現実です。
何かの本にも書きましたが、経営者の仕事は財務的バランスを崩すのが重要な仕事であり、孫正義氏の行動は決して間違ったものではありません。
しかし、バランスを崩す程度という話になると、“間違っていない行動”にも問題があります。
経営では財務レバレッジや借入レバレッジなど、バランスを犠牲にするかわりに利益率を高くする手法がいくつかありますが、どれもバランスを崩しすぎては倒産になる可能性も出てきます。
そこで、そのバランスの「適正値」がどこかで誰もが悩むわけです。
ところが、孫正義という経営者は、一般の経営者が悩むラインを軽く超えて、バランスを崩しにかかります。
これは天才だからなのか、度胸があるだけなのかはわかりませんが、もしかしたら、孫正義氏の心理的な性行にある可能性もあります。
中小企業経営者の中には、少しうまくいきはじめると、そのうまくいっている状態が居心地が悪く感じられて、おかしな行動をし出す人たちがいます。
こういう人たちは決して少数派ではなく、中小企業経営者には結構な数がいると思われます。
中には、端から見たらナンセンスに思えるような投資ばかりを続ける、失敗に喜びを感じてしまうような人々も少なくありません。
こうした中小企業経営者の性行には、幼少期の親との関わりからおきている可能性もあるかもしれません・・というか心理学的視点から見ると、そういう言い方が成り立ちます。
私たちは、お金があり、家族が健康で・・・といった一般的な幸せ感が万人共通の幸せ感だと思いがちですが、個々に見ると、そうした一般的幸せ感を幸せ感として持つ人はほとんどいないのが現実です。
そして、孫正義氏の場合は、資金ショートなどの財務的危機を演出することに幸せ感を感じている可能性だってあるのです。
財務というと、絶対的な価値観のように思われがちですが、財務ほど相対的なものはありません。言い方を変えれば、いい加減と言っても良いでしょう。
そうした財務の世界にも、「ここまでいったら、ヤバイでしょ」という経験値があり、それを犯すと下に向かう重力が待っていることになりますが、それをも超える経営者は現に存在しますし、孫正義という経営者もそうした経営者の一人かもしれません(それは、今後結果が出ます)。
実は、財務の難しさはここにあります。
経営者によって百人百様なのです。
ソフトバンクの財務バランスが崩れている噂を聞くたびに、私はそんなことを思います。そして、財務屋の限界も感じます。
さらに、それ以上に経営者としての限界を感じます。
数字のプロである私には、バランスを崩しすぎた経営はできないからです。
時に、そうした経営ができる天才たちを羨ましくも思いますし、そんな思いから過去に、財務の常識を越えた天才たちの申し出を応援してきたこともあります。
ただし、ある種の経営者たちにとっては、そうしたギリギリ感は王道としても、そうしたギリギリが無知から生じた場合はもちろん論外です。
今回のソフトバンクはどうなるか?
注目しましょう。

大奥に見る現代の経営

妻 「映画観に行かない?」
妻から誘われた・・・何かおかしい。
きっと何か裏があるに違いない・・・きっとそうだ。
私 「何観るの?」
妻 「デトロイト・メタル・シティ」
私 「・・・」
最近、事業承継について考えさせられる出来事がありました。
一言で説明すると、兄弟喧嘩。
ところが兄弟喧嘩も事業承継が絡むと非常に厄介な問題になります。
日本の中小企業はピーク時には540万社ほどあったらしいが現在では100万社の減少となっている。この背景には倒産、合併、買収などの他に中小企業ならではの問題があるようです。
それが『後継者不在』という現実。
また、その一方で後継者はいるものの同族会社ならではの問題も出てきています。
日本の中小企業の9割以上が同族会社。ワンマン経営でやってきた同族会社の後継者と言えば社長の息子と相場は決まっています。
創業者である社長は苦労して大きくしてきた会社を息子に継がせたいと思うのは“親心”として当たり前。
その場合、兄が社長、弟が専務というように一緒に会社に入ることが昔から数多く行われてきました。
兄弟は幼少の頃より起居を共にしており、遠慮のない口喧嘩を繰り返しながら成長を遂げてきて、兄弟という“私”の部分が、会社の公的部分にまで影響してしまいます。
例えば経営会議や取締役会における討議の場にしても、兄弟の気易さが表面化し、他の従業員に対しては絶対に口にしないような露骨な表現を用いてしまい、それが感情的議論へつながり、気まずいしこりを残すことになるのです。
弟である専務からみれば、少々社長に反抗しても自分の地位は安泰だという甘えがあるでしょうし、社長である兄にしてみれば、まさにその甘えが我慢のならない図々しさとなって反映します。
そして、さらに問題を複雑にする出来事が起こります。それは兄である社長の息子の登場です。
これがまさに大奥の世界。
喧嘩もしながらそれでも何とか二人で大きくしてきた会社に、ある日突然経営に顔を突っ込んでくる社長の息子に専務は苛立ちがつのります。
そして、その苛立ちはあるキーワードによって爆発するのです。
それが二代目経営者が口にする『経営改革』という大義名分。
景気後退、業績低迷の中にあって、従来どおりの経営を続けていては会社は倒産してしまうと息子は親父に訴えます。
その話を息子から聞かされた社長は、以前から事あるごとに衝突してきた弟に、この時とばかりに詰め寄るのです。これによって身内間の紛争がはじまります。
本来,些細とも思える原因によって身内間の紛争が生じ、それが急速に拡大して、やめろやめないにまで至ります。同族会社においていったん紛争が発生すると、途中で和解できる例は少なく、最終的には一方が会社を退くことになってしまいます。
そこで、今度問題となってくるのが自社株の存在。
今までは市場に流通しない株など紙切れ同然でしたが、事業承継問題に絡んで、その存在は重要となってきます。
次回からは同族会社をとりまく自社株の取り扱いと事業承継問題について話をいたします。
・・・どうやら妻は松山ケンイチのファンになったらしい。
で、映画はどうだったかと言うとこれが尾を引く面白さ。
そのときはそうでもなかったんですが、今になってじわじわと面白さが込み上げてきた。
映画では、松山ケンイチ演じる「ねぎっちょ」が夢と現実の狭間で悪戦苦闘する中であることに気づく。
「僕にしか見せられない夢がある!」
会社でも同じだと私は思うのです。
その人にしかできない役割がある。みんなそれぞれ欠点もあって、でも、それぞれが補い合ってひとつの会社になっている。
それを肝に銘じ、私たちはみんなでひとつの夢を追いかけることができる、そんな素敵な会社をつくって行きたいものです。

何で、私が納めるの?

役人が“論理的”に作ったものには、いろいろな不条理があります。
一つ例を上げてみましょう。
ある女性が詐欺にあいました。
※正確には詐欺ではないのですが、彼女の心情的には“詐欺”なので、ここでは詐欺としておきます。
その彼女は彼に貢ぎ続け、その金額が数千万円に達したとき、彼は消えました(ずいぶんお金持ちだったようです)。
その事実を知った彼女は悲嘆に暮れました。
しかし、それだけではなかったのです。
数年後、彼女の元に一枚の紙が地元税務署から送られてきました。
贈与税を納めろ・・・というのです。
何のことかと、詳しく問い合わせてみると、彼に貢いだ数千万円の贈与税を払えと言うのです。
彼女は「おかしい・・・」と思いました。
お金を貢いだのは、彼女。
お金貰ったのは、彼。
贈与税を払うのは彼であるべきです。
どうして、騙されてお金を貢いだ彼女が贈与税を払わないといけないのでしょう。
ところが、税務署は驚くべきことを言いました。
「あなたは、この贈与税の連帯納税義務者です」
つまり、彼から贈与税を取ろうと税務署は考えましたが、彼は行方不明。
そこで税務署は、連帯納税義務者である彼女に納税を迫ったのです。
この税務署の行動を不服に思った彼女は、いくつかの抵抗をしましたが、どうにもなりませんでした。
法律に書いているのですからどうにもなりません・・・。
こうした“不条理”が税務の現場では時々起こります。
先般、あるお客様が相談に来られた内容も“不条理”を突きつけられる例でした。
私たちは、税務上では“不条理”が起こるので、その行動を別の形で実行するか、この“不条理”を受け入れるか、どちらかしかないことを説明しますが、カンタンには納得いただけませんでした。
そりゃそうです。不条理なんだから・・・・・・。
でもね、不条理でも、法律は法律です。
この国は、そんな不条理があらゆるところにあるために、国の力を失いつつあるわけですが、この国にいる限りは、“不条理”を理解して、別のやり方を考えるしかありません。
しかし、例に上げたような、“論理的”が極端なことになった“不条理”ばかりではありません。”
役人たちは、“論理的”を強調しながら、その“論理”をカンタンに隠すこともしばしばです。つまり、法律そのものが“不条理”であることはよくあります。
そして、税務には、そんな“非論理”もはびこっています。
実は、税務自体が“不条理”。
そう見えても仕方ない環境では、私たちは仕事をしている。
この事実は知っておきたいところです。

横領!

いきなり、シリアスな出だしです(苦笑)
ニュースでは定期的に見聞きしますよね。
最近も、6億円の横領事件が話題となっています。
とはいえ、報道される横領など、氷山の一角の、更にごく一部・・・。
なぜなら、報道されるのは、企業側が発表せざるを得ないケースだから。
やはり対外的なイメージの悪化は避けられないので、普通は隠したい事実です。
例え報道されなくても、中小企業レベルでさえ、情報はどこからか漏れ伝わります。
そして、警察に訴え出ても、常に刑事事件になるとは限りません。
警察は、余程の事がない限り、動いてくれないからです。
また、諸事情により、警察にも相談できずに泣き寝入りするケースもあります。
ですから、被害に合われた企業は、その額に関わらず、悔しい想いをされた事でしょう。
特に、中小企業は内部統制制度がしっかり整備されていないため、横領の事実が発覚しても、その根拠となる物的証拠が残っていないのです。
基本的には、その担当者に任せ切りになっていますので。
実際、社内に明確かつ直接的な証拠が残っていない限り、裏取りが出来るのは、個人の金融機関の入金記録くらい。
とはいえ、金融機関の記録を調査出来るのは、警察や税務署です。
ということは、警察が動かない限りは調べられないですし、警察に動いてもらうためには証拠が必要。
そして、警察を動かすほどの肝心な証拠はない・・・。
ぐるぐる、ぐるぐる・・・袋小路状態。
更に言えば、横領される方は、現金で持っているケースも多いのです。
そもそもお金がないから横領する訳で、発覚する頃には使い切っています。
従って、例え刑事事件になったとしても、お金を取り返す事も困難・・・。
ですから、横領は、“発覚してしまった時点でアウト!”
事後では、どうにもなりません。
どちらかというと、横領した社員にケジメをつけさせるため、及び、今後の社内体制の再構築のきっかけとして、事後処理が行われます。
結局、横領は発生する前の時点、つまりは、横領防止のための仕組みが構築されているか否かで勝負は決まっているのです。
私の今までの経験からすると、経営者のほとんどは性善説に立っています。
出発点は社員を信じること。
従って、社員を信じていないと想像させるような仕組みを取り入れている中小企業は少ないのが現実です。
「うちの社長は、私たち社員の事を信じているはずがない!」
そう考える社員の方もいらっしゃるかもしれません(苦笑)
ですが、経営者の普段の言動が全てではありません。
「うちの社員に限って・・・」
これが経営者の本音です。
特に、中小企業の経営者にとって、社員は身内も同然。
社員を信じなければ、何も始まりません。
だからこそ、何かが起こった時は苦しむのです。
横領防止の対策としては、最低限、内部牽制の仕組みを取り入れる事が重要です。
内部牽制の導入と税理士による二重チェックで、横領の防止と横領発生後の早期発見を図る体制作りが基本です。
あれだけ騒いだJ-SOX法までは必要ありませんので(苦笑)
信頼出来るとはいえ、担当者一人に任せるというのは、本人にとっても責任が重く、辛いもの。
経営者側は、社員を信じていないからという事ではなく、社員に誤った判断をさせないために、横領防止の対策を導入するという思考の切り替えが必要です。
社員側も、自分達を信じているかどうかではなく、自分達や会社にとって本当に必要な事という視点で、積極的に協力してあげて下さいね。
身近で横領が発生するというのは、何かと傷跡を残しますので。

中小企業の利益構造

中小企業の利益の源泉は3つです(財務モデル)。
・売上高成長率
・利益率改善
・M&A
これは大企業も同様ですが、大企業ではこの3つにEPSベースで自社株購入を加えることができるかもしれません。
この3つを並べて見ると、どれも当たり前のことであり、どの企業経営者もM&A以外は、日々改善に努めていることと思います・・・・・・。
しかし、「・・・・・・・」と書きました。
理屈ではわかっていることですが、本当にすべての中小企業経営者が、常に3つの利益の源泉を考えているでしょうか?
この間、3年ほどで売上げを2億円から10億円に増加させた経営者から相談がありました。
この春から売上げが急減しているというのです。
私は、2年前から今年のような状況が来ることを口を酸っぱくして言っていた男ですが、実際に2008年を迎えてみると、業種ごとに時期に差はありますが、今までのトレンドに変化が起きてきていることを感じる方が増えています(実際には、昨年夏以降から痛感している方もいらっしゃいます)。
私の予測では、このトレンド変化はまだ前哨戦で、ある時期から第二段階にはいると思います。また、時期もいつぐらいになるかは予測がついています。
いずれにしても、次のさらに大きなトレンド変化までにはいろいろな準備が必要です。
そこで、私が相談者に言ったことが、冒頭に上げた基本です。
この相談者は売上高成長率を最も重要な指標としてここ数年を過ごしてきました。
私たちも側面からサポートさせていただき、順調に売上げが推移してきました。
ご本人は気づいていないようですが、この会社は利益率向上のための打ち手を十分打っていたのです。そこで今回、それを理解いただくときが来たと思いました。
早速、私は、売上高以外の指標の提出を頼みました。
もちろん、利益率系の指標の提出です。
提出していただいた資料からはいろいろな情報が手に入りました。
うまくいっている点がたくさん明らかになり、売上げが落ちたことは問題ですが、そうした現象が起きても、十分に対応できる形ができていることが判明しました。
むしろ、売上げが落ちたことこそがベストだったのだ・・という判断までできてしまいました。
もちろん、営業体制の強化すべき点なども多く明らかになりました。
意外な重点項目がなおざりにされていたのです。今は卓越した利益率をたたき出していますが、このままの体制では利益率が落ちてくることが十分予測できました。
ここで書いていることは当たり前のことです。
ウルトラCは一つもありません。
しかし、その「当たり前」の効果はとても大きなものです。
これからのトレンド変化は、当たり前の戦いが今まで以上に重要になります。
残念ながら、環境の良かったここ数年は、いろいろな幻想が流布しました。
例えば、「固定費は少ない方がいい」という財務的な常識も幻想です。一面は正しいですが、ある角度から見直すと、この「言い切り」は大間違いです。
しかし、そうした幻想も常識的に考えれば、化けの皮をはがすことは難しくはありません。
だから、もう一度、中小企業の利益構造という基本から考えていただきたいと思います。
すべての答えは、基本的な構造に中にすべてあると思います。

「割る」ということ

武道などの本を読んでいると、「身体を割る」という表現を目にすることが時々あります。
武道をまったくしたことがない門外漢には、言葉の意味を体感することはできません。
ですから、安易に言語化するのは抵抗がありますが、身体の動きを意識して細分化していくことと理解しています。
そう理解すると(正しいかどうかは別として・・)、「身体を割る」というのは経営にも重要な要素だということが思いつきます。
先般、ここ数年非常に順調に売上げを伸ばしてきたお客様から相談がありました。
「4月、5月の売上げが急減しているんです。どうしたらいいでしょう?」
というような相談内容でした。
私は聞きました。
「各取引先ごとの売上げの昨年対比のデータは出ていますか?」
「いやー、売上げなんて全体でしか把握してませんよ。順調だったせいもあって、そこまで考えないでやってこれちゃいましたから・・」
「数字を取ってみないとわからないけれど、きっと一部の取引先でインストアシェアが低下しているはずだから、まずはその事実を突き止めましょう」
「言われてみれば、そうですね~。思い当たります」
「御社の弱みをライバルが突いてきていそうですよね」
「んー、言われてみると・・」
こんな会話をしながら、いくつかのデーターの作成をお願いしました。
これらのデーターは、本来は、毎月押さえておきたい数字ばかりです。
どれも作成には手間がかかりますが、これから起こる環境の悪化を考慮すると、こうしたものの用意ができていないことは命取りになります。
経営全体の数字を細かく割っていく。割ること自体は普通のことですが、割り方にはコツとセンスがあります。武道での身体を割る行為にもコツとセンスがあるのと同様です。
そして、こんな程度のことからでも戦略が立つことがあります。
こうした管理が、マーケティングなどよりも重要になる時代がやってきています。
時代は繰り返しますね。

“売り”の怖さ

どの企業でも、売上高を上げるのには必死です。
そして、営業マンもノルマ達成のために、毎日、得意先回りをしてることでしょう。
しかし、売上高の明細を見ていると、「?」と思うことが時々起きます。
例えば、ある得意先に対する売上げの急上昇。
回収が90日手形だとして、3ヶ月後にその手形が落ちなければ大変なことになります。売上げが上がるのはうれしいことですが、売上げの急上昇の理由をきっちり押さえておかないととてんでもないことになる場合が・・・・・。
新規得意先の開拓でもそうです。
ライバルから移ってくる得意先というのは、ライバルにとって優良得意先ではない場合が多い。カンタンに言えば、ババを引いたようなものです。
当社では、クレーマー対策のアドバイスも行っていますが、そのアドバイスの中に、「クレーマーをライバルに渡す」という秘策もあります(笑)。
新規取引先が、そうしたライバルの秘策で移ってきたとしたら・・・・。
実は、「売り」は怖い。
このことを知らずに、深追いし、大きな傷を受けることがあります。
基本的な「売り」の姿勢は、“急がず、休まず”。
売上げの急上昇はうれしいことですが、回収されるまでは本当には利益は実現しないのですから、慎重に行きたいものです。
中小企業の決算書には、こうしたことを念頭に置かなかったことでできたウミがあるものです。
「売掛金」という項目には、そうしてできたウミが回収されないまま残っていたりします。
昔、私が融資の担当をしていたとき、新規取引先の決算書が手にはいると、こうしたゾンビ売掛金があるかどうかを探したものでした。
ちなみに、ゾンビの金額の大きさは様々でしたが、ゾンビがない会社はほとんどありませんでした。
売上げが立てば、法人税や所得税、そして消費税を納めなくてはなりません。つまり、その売掛金がゾンビ化すれば、税金の納めすぎになっている状態が続くということです。
確かに、貸倒処理により納めすぎの税金の回収は可能ですが、大きく「売り」に失敗した企業ほど、売掛金をそのままにして粉飾を続けるところがほとんどです。
来年の消費者金融の総量規制の開始を前に、自主規制の動きが消費者金融に限らず割賦販売などでも昨年から出てきています。
今までならば300万円で通っていた審査が、100万円しかダメだというような話はよく聞くようになりました。
現在の法改正では、総量規制にクレジットカードも入れるような話しも出てきています。ネット販売などの場合、クレジットでの回収が当たり前になっていますが、クレジットカードが総量規制の対象になれば、クレジットが使えない例は結構多く出ると思われます。
日本国内版サブプライム問題と言われている、こうした問題は、「売り」の怖さを改めて知るきかっけになりそうです。

経営環境の変化を把握する

減価償却の改正、リース資産のオンバランス化、逓増定期保険の資産計上等。
近年、貸借対照表に大きな影響を与える制度会計の変更が続いています。
企業が健全な成長を図る場合、売上や利益の増減よりも、資産、負債、資本のバランス、つまり貸借対照表の方が重要な事は、皆さんご存知でしょう。
従って、この流れは企業経営にとって注意すべき事項です。
つまり、今まで目標にしていた基準が、今後は通用しなくなる可能性が高いのです。
仮に、ある会社のROA(総資産利益率)の目標値が5%、前年度実績が4%だとします。
当年度の業績は、売上高が前年度と同額、業務改善により費用はダウン。
新たな投資や借り入れも行いませんでした。
この場合、通常であれば利益の増加により、ROAは上昇します。
それが、制度会計という判断基準が変わっただけでROAが3%に低下したらどうでしょう?
自社の目標基準をどこにおけばよいのか分からなくなりますよね?
しかも、会社間で適用基準が変われば、比較自体が無意味になってきます。
全ての簿外資産や負債をオンバランス(貸借対照表に計上すること)している会社と、可能な限りオフバランス(貸借対照表に計上しないこと)している会社では、比較しても仕方がないからです。
どちらが実態を反映しているかというと、もちろんオンバランスの方。
今後、融資の際に、金融機関からオンバランスされた貸借対照表を求められる可能性も否定できません。
当事務所は、今までも、お客様の実態を反映した貸借対照表は検討していました。
しかし、今後は、著しい経営環境の変動をより正確に反映させるため、測定できる全ての簿外資産及び負債を貸借対照表に計上し、その上で実態に即した減価償却費の計上、不良資産の時価換算の導入等を行う準備をしております。
当然、必要に応じて、中小企業には求められていない関連会社の連結も行います。
つまり、制度会計に捉われない、その企業独自の実態貸借対照表を作成し、最も厳しい状態での実態ROAを算出する予定です。
これを行ったら、ROAがマイナスに転落する会社も出てくるでしょう(苦笑)
ですが、それが本来の状態であるのですから、早急に立て直しの方策を検討する必要があるとも言えます。
生ぬるい基準で経営を行っている企業と、厳しい基準で経営を行っている企業では、どちらがこれからの厳しい経営環境を乗り切る事が出来るのか?
皆さんであればお分かりになるはずです。
人や会社は、その置かれる環境によって成長の仕方が大きく変わります。
そして、自社の正確な環境を理解し、成長のための方策を立てるのが経営者の仕事です。
皆さんは、自社の環境を正確に理解されていますか?

【決算前夜】は【決戦前夜】

冬から春へと変わる季節の変り目、3月。
決算を迎える会社が最も多い月です。
現時点では決算日前ですが、既に業績も固まり、概算納税額も計算済みのはず。
また、新年度の予算編成が終了していなければならない時期でもあります。
皆さんの会社の新事業年度予算案は、どのようなものになったでしょうか?
私も、お客様の予算検討会に出席する事があります。
そのようなとき、お客様があまりにも当然の予算案を出してくると、生意気な事を口走ってしまう場合があります。
「それって、何もしないという事ですか?」
立場上、その会社が抱えている問題点は把握しています。
第三者の私でも予測し得る予算案を立てるという事は、問題点もそのまま放置するという様に捉えてしまうのです。
杓子定規の予算案を見たら崩しにかかり、あまりにも非現実的な予算案を見たら現実に引き戻します。
「来期必達売上高! 目標利益絶対確保!」
このような観点から作られる予算案は、願望を反映させた、ただの数値目標です。
会社を取り巻く全ての環境要因を反映させなければ意味がありません。
環境要因を意識すると、経営者は考え始めます。
考え始めると、問題点自体が動き始める。
後は、決断し、その決断を予算に反映させる。
そして、予算案を従業員に発表してしまえば、その決断は伝わり、経営者の退路は断たれます。
つまり、予算案を検討するという事は、その会社の問題点を浮き彫りにし、それをどう解決していくかのプロセスを検討するという事でもあります。
問題点から逃げた予算案に、将来性を感じません。
“やりたくはないのだけれども、やらなければいけない事”を、予算案の作成というプロセスを通じて、実行のタイミングに落とし込むのです。
このプロセスに関わっていると、我々も緊張感がみなぎってきます。
予算案の編成は、重大な決断を伴うことが多いため、本当に苦しい作業です。
それでも、予算案を片手に、新たな事業年度へと向かわなければなりません。
経営者にとっては、戦場に向かうのと同じ気持ちのはずです。
決戦の準備は万全ですか?
もうすぐ、夜が明けます。
例え勝てなくても、負けないで戦場から戻って来てください。
その戦場での教訓を胸に、次の戦場へ向かえばいいのですから。