意外と盲点

「取引先が倒産した!」
って聞くと、冷や汗をかきますよね?
さて、企業倒産の分岐点と言われていた3月から4月に切り替わりました。
そして、このテーマで書こうとしていた矢先の事です。
「山田さん、印刷業者が倒産しました!」
取引先の倒産という場合、まず考えるのは貸し倒れでしょう。
今の時期、債権管理の重要性は、ここ数年とは比較になりません。
“B to B”ビジネスの企業様は、本当に気を付けて下さいね。
「気を付けるって言ったって・・・」
って声が聞こえてきそうですが(苦笑)
ただ、倒産しそうな企業は、必ずその予兆があります。
それは、ほんの些細な事です。
普段と違う動きがあるとか、連絡の頻度が変わるとか。
危険を感じる取引先とは、取引自体を中止するという判断もあり得ます。
ただ、そうは言っても現実問題は難しい・・・。
そうであるならば、徹底した情報収集や前金の受領、信用取引に上限額を設定する等、何かしらの対策を講じるのは必須です。
連鎖倒産は確実に起きていますので。
・・・ここまで読んで、「今回は倒産と債権管理の話かー」と、お考えの皆さん。
実は違います。
債権管理については書きたい事はたくさんありますが、それは皆さんも常に考えているでしょうし、よく話を聞くはずですので。
冒頭の印刷業者の倒産話ですが、これは発注先です。
つまり、この企業様にとってはお金を支払う側。
「なんだ、それなら支払いも一時保留になるだろうし、大きな問題ってあるの?」
そうお考えなのは当然です。
しかし、意外と盲点なのが、発注先業者の倒産です。
このお客様で言えば、集客が生命線。
明日の折り込みチラシがいきなりストップしたら・・・。
考えただけでも恐ろしい。
この倒産情報、実はこの印刷業者の下請け先から連絡が入りました。
チラシの折り込み業務を請け負っていたのが、この下請け先です。
「週末の折り込みのために、直接ウチにお金を支払って下さい。そうでないとチラシの折り込みを行いません」
倒産の場合、債権債務の権利関係が絡んでいるので、話はそんな単純ではありません。
また、当然ながら、チラシの在庫がこの下請け企業にあるのです。
「受注先からまだお金をもらっていないから、この在庫は引き渡せない!」
って話になると、さらにややこしい。
実はこの下請け企業も倒産寸前で、お金を支払ってもチラシが折り込まれなかった!
なんて、あり得ない話ではありません。
大不況の中、「経費削減!」の号令で、真っ先に対象となるのが「広告宣伝費」。
ですから、広告関連業者の倒産リスクは、他業種に比べていち早く高まっています。
とはいえ、他社が広告宣伝費を削減し始めているからこそ、低い広告単価で大量に宣伝出来る可能性があります。
余力がある企業は・・・。
私も、担当先企業様の予算組みした経費の中で、真っ先に予算実績対比を行うのが、広告宣伝費です。
「広告宣伝費の実績が、予算を下回っていますよ。大丈夫ですか? このままで売上げを確保できるのですか?」
成り行きで経営してきた企業と、きちんと計画を立てていた企業では、いざというときの選択肢の幅に大きな差が出ます。
実は、その企業に余力があるというよりも、先の事を考えて、つまり経営計画を作成する過程において、あらゆる事態を想定していれば、乗り切れる場合が非常に多いのです。
この典型は資金繰りですが。
また、今回は広告業者のお話でしたが、最大の問題は仕入れ業者の倒産です。
1~2年前、夜遅くにお客様から電話がありました。
「最大の仕入先が倒産した! 今、預け在庫を回収するためにスタッフが飛び回っている!」
これほど恐ろしい事はありません。
仕入先が倒産したという事は、売る物がなくなるという事です。
しかも、代替がきかないような商品を扱っている場合、致命傷になります。
このお客様の例は、まさに代替がきかない仕入先でした。
一時期、商品が欠品してしまい、売上げが激減してしまったそうです。
下手をすると、貸し倒れとは別の連鎖倒産が起こりかねません。
売る物が無くなるという事は、入金がストップするのですから。
取引先を絞って取引額を増やし、取引単価を下げるという手段は王道です。
ですが、このような手段も、取引業者が倒産しないという大前提に立っています。
今のような大不況期においては、取引単価はあえて目をつむり、取引業者を分散するという選択も考える必要があります。
リスク回避の保険料という感じで。
残念ですが、これまで成り行きで経営を行っていた企業は、現時点では生き延びる事を最優先に考えなければなりません。
そうであるならば、リスクの高い取引先との取引は見直して、受注単価を下げてでも、安全な取引先との取引額を増やすという手段を取る事も視野に入れる必要があります。
逆に言えば、余力のある企業は、受注単価を下げてでも仕事が欲しいという業者を探す絶好のチャンスです。
仕入れ単価が下がれば、価格競争力も上がります。
広告単価が下がれば、物量作戦で一気にブランディングが出来ます。
さあ、皆さんの会社は、今、何をすべきでしょうか?