得意は不得意のはじまり

意外なことですが、会計が得意な人がいる会社の経理が、
時代遅れになることがよくあります。
売上げ数十億円以上の地方の中堅企業などは、多くの会社がそういう状態です。
しっかりした経営担当が居る。
そして、老舗の税理士事務所が顧問をしている。
こんなケースでよく起こることです。
そして、意外にも、経理担当者が経理の素人のような小規模企業の方が経理は進んでいます。
困らないと、解決は誰も図りませんから、経理担当がまともにいない企業の方が、会計の仕組みを作り上げてしまうのです。
さらに、こうした小規模企業の方が、若手の税理士が顧問になるケースが多いですからなおさらでしょう。
こうした経理の世界で起きていることを笑うことはできません。
明日は我が身の可能性があります。
自分が得意だと思っていることほど、時代遅れになる。
それは経理に限らず、いろいろな場面で起こるはずです。
言うまでもなく、典型はインターネットやITの世界。
こうした分野は、これからもどんどん新しい技術が出てきて、
私たちが今やっていることを陳腐化させていくことでしょう。
そして、それは、そうした分野に限らず、私たちそれぞれの本業の分野にも及ぶはずです。
1400年代に発明された“簿記”は、
ゲーテをして
「人類最大の発明」
と言わせました。
そして、本当にそれだけのものらしく、
この約600年間、その基本的な仕組みを変えていません。
そこで、このことにあぐらをかいてしまったのが経理の世界かもしれません。
私は、昔、税理士さんが集まるところで講演し、
「みなさんが金科玉条にしている会計は、価値がなくなる」
と言い放って、物議を醸したことがあります。
当時の税理士さん達の反応は、
「この若い奴は、何も分かっていない失礼な男だ!」
と言うものでした。
しかし、その後、経理ソフトが一般化し、
彼らが主要業務としていたことは、付加価値がなくなってしまいました。
ところが、中堅企業とされる中規模企業では、
まだ、その亡霊が巣くっています。
先般も、先代が経理に詳しいという中堅企業が、
まだ旧態依然の伝票会計を行っているという相談を受けました。
社長の妹が経理を牛耳っている中堅企業から相談を受け、
経理の仕組みを調査してみると、あまりの無駄の多さにびっくりしたという事例もあります。
別に、経理は正確な数字を出せば十分・・というのも一理です。
その過程は問わないというのもアリでしょう。
しかし、そのおかげで、本来できるはずだった社内の管理や分析ができていない・・という例が多いのが現実です。
歴史の長い企業ほど、社内システムを丁寧に見直す必要がある・・と多くの事例を経験しながら、いつも思っています。