セミナーメモ

現代経営の根幹は、収支の帳尻を合わせることと人を動かすこと

これ以上でも以下でもない

~岡本吏郎『組織コミュニケーションセミナー』~

ときどき、「伸び悩んでいるな…」と思う企業を目にします。これは、単純に業績が上がらないという意味ではなく、表面上受けるその企業の印象と、実際の収支にギャップを感じるという意味です。
つまり、もっと売上げが高くてもおかしくないし、もっと利益が出ていてもおかしくないと思われる企業です。
このような企業の経営者とお話しをすると、やることはやっていそうです。やることはやっていそうなのですが、最終的には、「でも、人がね…」という言葉を口にします。
逆に、表面上の印象と実際の収支が、良い意味でギャップがある企業も存在します。言葉は悪いですが、この企業がこれほどまでに…と驚いてしまいます。
そのような企業は、見栄えも何も気にせず、単に経営者が「でも、人がね…」と口にするような問題がないという印象です。
先日、自社主催の『組織コミュニケーションセミナー』に参加してきましたが、岡本が言うように、経営の根幹が「人を動かすこと」にあるのだとしたら、「動かされる人」の問題だけではなく、「動かす人」の問題もあり、より大きいのは「動かす人」の問題だということに改めて気付かされます。
私も、人事、コミュニケーション系のセミナーには色々参加してきましたが、ほとんどのセミナーが(コンサルタントが)、「組織の問題」をシステムや仕組みに落とし込むことによって解決させることを目的にしていました。
セミナーで紹介されるシステムや仕組みは、とてもロジカルで見栄えも耳障りもよく、まるで魔法のようなものに感じます。
しかし、実際にはそれで問題が解決する企業は数少なく、問題が解決しないにもかかわらず、システムや仕組みの運用に膨大な時間とコストが投入され続けます。
これは、システムや仕組みによって「動かされる人」をコントロールすることを目的にしていますが、「動かす人」=経営者本人のことを横に置いて解決を図ろうとしている限り、本当の問題は解決しないということがよく分かります。
とはいえ、外部から組織に何らかの刺激を与えることによって、問題を抱える社員を浮かび上がらせることには役立つかもしれません。これは、コンサルタントや経営者が意図していることではありませんが、システムや仕組みを導入することによって、業務がより複雑になり、それについて来れない又は反抗する社員が出てくるからです。
中小企業の場合、それでも救いがあるのが、やろうと思えば経営者はほとんど全ての社員に目が届くということです。つまり、経営者が社員の問題に気が付いて修正する機会があります。
そうなってくると、社員の問題を修正するには、「人を動かす」経営者自身の問題に気付かなければなりません。
以上、『組織コミュニケーションセミナー』にて、これらを自分の問題と照らし合わせました(苦笑)
私は「収支の帳尻」の専門家ですが、数字遊びをしていてもお客様の業績は良くなりません。
税理士の中には、経営計画やコンサルティングなどをお客様に提供すれば、お客様の問題は解決すると勘違いしている方々がたくさんいます。
そして、役に立たないと分かっていて、これらを提供している税理士もいます。
システムや仕組みに依存する経営が伸び悩むのは当然のことだとしたら、間違っても税理士がシステムや仕組みに依存させてしまうのだけは避けなければなりません。
大した人数を雇用していない税理士が、より大きな組織を運営するお客様に「人を動かす」経営の何たるかを語るなどおこがましいですから…。