節税 VS 返済

経済の先行きは怪しいけれど、目の前に納税が迫っていれば、節税したくなるのが経営者…。

聞けば、やはり保険契約は盛況の模様…。
時代が変わっても、税制が変わっても、「節税といえば生命保険!」というのは変わらないようです。

そして、契約数が急増するであろう3月決算が近付いてまいりました。

納税した方が財務状態が良くなると分かっていても止められない、止まらない。
では、この節税という魔力から解き放たれる方法を教えてくれ!

と言われれば、「一つあります」とお答えします。

返済はいかがでしょうか?

例えば保険で節税しようという場合、資金の流出が伴います。
だから納税も少なくなる。

納税は少なくなるけれど、お金も少なくなる。
逆を言えば、お金があるから節税したくなる。
このような関係性は否定できません。

節税するためのお金がなければ、結局は節税を諦めざるを得ない…と考えるのは私だけではないはずです。

それでは、節税以外でお金を使ってしまえばいい。
例えばそれは、繰り上げ返済です。

「住宅ローンを繰り上げ返済すると、総返済額が減少する」

これは皆さまもよくお耳にされることと思います。

節税に使おうとしているお金の裏付けは何?と考えると、意外と借入金でまかなっている中小企業が多いのが実際のところ…。

例えば、現預金1億円、借入金1億円の企業があったとします。
単純なお話しをすれば、その企業が持っている現預金の裏付けは借入金です。

もちろん、「借入は設備投資に充てているので、現預金は内部留保で貯めたお金だ!」と言い切ることはできますが、設備投資は過去の話、現預金と借入金は現在の話という側面を捉えれば、やはり現在の現預金の裏付けは借入金と結論付けてもおかしくはありません。

つまり、理屈を抜きにすれば、借入金で節税している企業が多く、節税のために利息を支払っていることにつながります。

そうであるならば、節税のためにお金を支払うのではなく、返済のためにお金を支払った方がお得ではありませんか?

「まあ、そうだよな…」

いま、ここで冷静に考えれば、納得される方も多いでしょう。
しかし、納税が迫れば冷静ではいられなくなります。

では、さらに冷静になるために、シミュレーションしてみましょう。

皆さまの会社の利益が、1,000万円と予測されたとします。

社長

「利益は800万円までが税率上有利と聞くし、少し節税できないかな?」

そこで、保険会社や税理士が提案します。

提案

「保険料500万円のこちらの保険に加入されると、半分損金に算入されますので、利益が250万円減少し、税引前利益が750万円になります。
ご契約いかがですか?」

社長

「そうか…。保険料500万円というのは少し大きいけど、先日、銀行が運転資金用に5,000万円を借りないか?と提案してきたばかりだ。借りてもすぐに必要という訳ではないから、この借入れを保険料に使えば、自己資金は必要ないな。毎年、1,000万円くらいの利益は出ると思うから、ここで節税しておくのもいいかな」

提案

「10年後には、解約返戻率が95%となります。解約返戻金が4,750万円でして、その期間の節税額が750万円(損金250万円×10年×実効税率30%)となるので、差し引き500万円お得です!」

社長

「よし、契約だ!」

上記の会話は、意外と多いパターンではないかと考えます。

もちろん、当メールマガジンの読者の皆さまは、節税額750万円というのが単なる先送りで、解約したときにまとめて課税されるということはお気付きのはず。すなわち、単純に考えれば差し引きゼロ。

実質的には、250万円(総額5,000万円の保険料から解約返戻金4,750万円を差し引いた金額)が掛捨ての保険料となっています(純粋な保険機能はありますので、無駄金ということではありません)。

ただし…、この仕組みが分かっている方でも、色々な理由を付けて、契約してしまう事が多いのです。これが節税という名の魔力。

それでは、この総額5,000万円の保険料を返済資金に回していたらどうでしょうか?

話を単純化するために、5,000万円を借りて、10年間で返済すると仮定します。
金利は信用保証料込みで1.5%。

この場合の10年間の利息総額は約380万円です。

解約しても戻ってこない保険料250万円と、借入による利息380万円。
10年間で合計630万円。

つまり、節税という名の魔力につかまると、10年間で630万円のコストが掛かっている場合もあり得るということです(実際、多くの企業がこのような状態に陥っています)。

もちろん、新たに借金して節税なんかしないという方がほとんどかと思われます。しかし、支払う予定の保険料と同額以上の借入金が既にあれば同じこと。

節税する代わりに、今ある借入金を優先的に返済していく、つまり、当初の借入の返済ペースではなく、繰り上げて返済するというお考えをお持ちの経営者は、おそらく少ないはず。

住宅ローンではよく知られる繰り上げ返済ですが、中小企業の経営において、繰り上げ返済はあまり行われていません。

繰り上げ返済というものは、不確実性が高い運用よりも、確実にコストカットが可能です。

一昔前までは税務署憎し、税金憎しという方が多かったのは事実ですが、最近は銀行憎し、返済憎しという方が多いような気がします。

ということで、税金を減らすことよりも、借入金と利息を減らすことを考えてみませんか?

納税すると内部留保がたまります。利息を減らすと、さらに内部留保がたまります。
借入金が減ると、自己資本比率が高まります。

節税よりも、繰り上げ返済の方がROAが高まります!

この構造に気付くと、少しは節税の魔力から解き放たれるのではないでしょうか?