RPA、ある意味衝撃

RPAというワードをご存じ無いという経営者は少なくなってきたかと思われますが、RPAの実態を把握しているという経営者は少ないというのが現実かと思われます。
もちろん使ってみなければ実態は分かりません。そして、いきなり使うにはハードルが高いソフトですので、当社でもRPAのプレゼンを受けてみました。
RPAについては一般的な情報を有していたものの、プレゼンを受けて直接ソフトを目の当たりにし、質問をしながらイメージをしていくと違ったものが見えてきます。
結論としては、想定していたよりも使いやすそうだと。しかし、代替させられる作業レベルは想定の範囲内(現時点ではかなり限定的)ということが確認できました。おそらく、皆様がイメージされているものと大きく変わらないと考えます。
中小企業における許容範囲内のコストを考慮すると、現時点では複雑な作業をRPAに代替させるのは現実的ではありません。従いまして、報道等で繰り返されているような大企業での成功事例は全く参考にならないというのは、皆様お考えのとおり。
ただし、RPAはボリュームのある複雑な作業を1つやらせるのではなく、ボリュームの少ない単純な作業を100やらせるためのソフトと考えると、考え方が変わります。
例えば、中小企業の実務の現場では、経営者の知らないところで無意味な単純作業がダラダラと繰り返されているというのが常です。
そして、「こんな作業はやり方を変えればいいじゃないか?」と問いかけると、
「この作業は10分程度で終わります。なので、改善したところで10分が5分になるだけで、その改善のために掛ける準備の方が大変です」と切り返され、
「それならとりあえずこのままにしておくか…」と尻すぼみになる会話が、日本全国、毎日繰り返されているはず…。
さらに問題なのは、実際には10分では終わっていないケースがほとんどだということです。このようなちょっとした作業は“ながら作業”です。アイドルタイムも発生します。10分の作業が10あれば本来100分の仕事となりますが、現実的には200分以上かかっていてもおかしくありません。
そして、この10分が5分の案件が、1人当たり毎月何件あるのか、そして、全員では何件あるのかを数えたことのある会社は極めて少数であるはずです。
国や経営者が「生産性の向上だ!」と号令を掛けてみても、この“10分が5分の案件問題”が解決しない限り、何も進まないというのが現実であると考えます。
このように考えた場合、この“10分が5分の案件問題”に有効となる可能性がRPAには感じられます。
大企業でRPAは大規模な業務改革であり、いままで単純作業を繰り返していた人材は最終的には減らしてくという流れでしょう。しかし、中小企業では、そこで余った時間を寄せ集めて、すぐさま他の業務に回す必要があるという点で、大きな違いがあります。
つまり、中小企業においては、RPAは業務の改革というよりも、社員の意識改革に近いのではないかと考えます。単純作業をマニュアル化してそのまま実行させるのがRPAです。RPAを使えないということは、そもそもマニュアル化できない業務が多すぎるという見方もできます。
では、誰がRPAを使いこなすのか?
“10分が5分の案件問題”を振りかざす社員にはあまり期待できません。改善意識の強い社員あるいは経営者自らが理解しないと先に進まないのが中小企業です。場合によっては複数の社員に、お互いの作業をRPAの動作シナリオ(つまりマニュアル)に登録させるというのも手段の一つです。
ひとまずは以上となりますが、積もり積もって、やっとRPAの効果の恩恵を受けられる。それが現時点でのRPAに対する期待レベルです。
パートスタッフ一人を新規に雇うのであれば、既存スタッフのちょっとした業務を寄せ集めてRPAに代替させるという感覚が、コスト面からも妥当でしょう。
RPAがここからどのように進化していくかは不透明な部分もありますが、作業のマニュアル化の一つと考えれば、先に手を付けておくのもよいかもしれません。