役員報酬“最適値”は存在するか

『社長、来期の役員報酬はいくらにしましょう?』
『先生、いくらぐらいにするのが良いのですかね?』

中小企業の決算前後に必ずといっていいほど、繰り返されるこの会話。

所得税増税、相続税増税、法人税減税、消費税増税、社会保険の強制加入・・・
中小企業の経営者を取り巻く環境は、ここ数年で急速に変化を遂げています。

しかし、いくら環境が変わっても、経営者が考えることに変化はありません。
『どうやったら1円でも多くのお金を残すことができるのか。』
これにつきます。

“私の役員報酬の適正額はいくらなのか?”
果たしてその答えはどこにあるのでしょうか。
役員報酬の適正額について考えてみます。

ご存知のように、税制は従来の“法人税が高く、所得税が安い”という構造から“法人税が安く、所得税が高い”という構造にどんどん変化しています。従来であれば、役員報酬を高く設定し、法人の利益を限りなくゼロに近づくようにすることが、中小企業が税金を安く抑える為の1つのセオリーでした。

しかし、個人増税、法人減税の流れの中、このセオリーは全く機能しなくなってしまいました。役員報酬の金額、法人に残す利益の額にもよりますが、従来のセオリーによれば、高額の所得税がかかり、法人・個人を一体と捉えた場合に手元に残るお金は以前よりも減ってしまうからです。つまり会社にお金を多く残して役員報酬は少ない方がいいという時代になったというわけです。

このことについては多くの方が既に気が付き、対策を講じているはずです。
その多くは法人税の実効税率と所得税・住民税の限界税率(所得の増加に応じて、その増加分に適用される税率)を比較、シミュレーションして法人・個人でのトータルの納税額が最も抑えられる金額を“役員報酬の適正額”として決めるという方法です。
現在の中小企業の法人税の実効税率は以下の通りです。

 

 

この方法によった場合、1つの結論の形として、年利益800万円までは積極的に法人で利益を出すようにして残りを役員報酬で取り、トータルの税額を抑えるということが考えられます。

しかし、こうした方法による役員報酬の決定には大きな欠点があります。なぜなら、このシミュレーションは“単年度の損得”しか考えていないからです。

こうしたシミュレーションを毎期行い、節税のために順調に法人に利益を残していった場合、法人には内部留保が積み上がっていきます。このこと自体はリスクヘッジにもなりますので一石二鳥とも言えます。しかし、単純にこれが全ての企業にとってベストの選択になるかといえば、そうとは限りません。

なぜなら、繰り返しになりますが、これはあくまで単年度のシミュレーション結果だからです。全ての経営者は、やがて退職を迎えます。従って『退職時の税金負担』も考慮する必要があるのです。もっと言えば、経営者の退職に伴って従業員にも退職金を払って会社を清算するかもしれませんし、M&Aにより売却するかもしれません。

ご存知のように現時点では退職金の税制には大きな優遇があります。しかし、優遇の大小は勤続年数によって変わりますし、税務上認められる退職金の額は受け取っていた役員報酬の金額によっても変わります。つまり、単年度での損得によって計算した税金負担額が、本当に得がどうかは、それぞれの会社、経営者の状況に応じて退職金の税金負担までトータルで考慮しなければ分からないのです。

税制の変化などにより会社経営は、会社の解散・清算、M&Aなども視野に入れて長期的な視点で考えていかなければならないことが、よりはっきりしてきました。最早、各社に共通する“役員報酬の最適値”など存在しないのです。つまり、それぞれ1社毎の数字の軸となる“会社経営スキーム”を組み立てる必要があるのです。

このことは弊社代表の岡本の著書『長く稼ぐ会社だけがやっている「あたりまえ」の経営』 で詳しく書かれています。そして私どもは今回、岡本が著書の中で使った長期的な税務シミュレーションにより自社のスキームを確定するためのソフト『役員報酬最適化シミュレーション』(有料)の製品版を完成させました。

このソフトでは経営者とその配偶者の生年月日や社会保険への加入の有無などの事前登録を行っていただいたうえで、毎年、会社で獲得した利益を、個人(役員報酬)と法人でどのように配分するかを設定し、現時点から会社を清算するまでの間に、経営者が1円でも多くのキャッシュを手元に残す為の、最大5パターンの長期的視点でのシミュレーションを行うことができます。そして、最終的に会社に残った内部留保を退職金・配当で個人の所得へと移行し、トータルで最も多くのキャッシュ(内部留保)が個人に残る方法をシミュレーションします。

現在こうしたシミュレーションを行うソフトは、私どもが今回開発した『役員報酬最適化シミュレーション』(有料)以外にはありません。

税制は毎年変化をしています。そういう意味でも最初に立てたスキームが常に有効ということはあり得ません。むしろ毎年スキームのメンテナンスを行う必要があります。このソフトでは3年間、税制改正、社会保険などの改正の無償サポートを致します。(4年目からは有料)

現代の会社経営においてはこうした長期的視点からのスキーム構築が不可欠です。自社のスキーム構築のためにシミュレーションの必要性を感じた方は是非ともご購入下さい。
1円でも多くのお金を残すために・・・

その決算賞与、未払計上して大丈夫ですか?

『社長、従業員の方に決算賞与を支給しますか?』

予想以上に業績が伸びた場合などに、税理士が決算時にする、ありがちな提案の一つです。決算賞与については要件を満たせば未払計上が認められますので、節税対策に有効な面も確かにあります。
しかし、この決算賞与、提案した税理士の確認不足により、税務調査があれば否認されかねない状況下で未払計上されているといったケースが少なくありません。

節税と従業員のモチベーションアップを兼ねて行った決算賞与未払計上が、“損金として認められない”そんなことがないよう、きちんと理解しておきましょう。

ご存知の方が多いと思いますが、決算賞与が税務上、経費として認められる為の要件は次の3つになります。

  1. 事業年度終了の日までに、賞与金額を従業員ごとに、かつ、全ての従業員に同時期に通知する。
  2. 事業年度終了の日の翌日から1ヶ月以内に全額支払う。
  3. 未払いの賞与として、決算時に経理処理をする。

『なんだ、そんなこと当たり前じゃないか・・・』

そんな声が聞こえてきそうですが、実は見逃されがちな大きなポイントがあるのです。

皆さんの会社には【給与規程】が存在しているでしょうか。もし存在しているのであれば、その規程に次のような文言がないか、必ず確認してください。

【賞与は、支給算定期間に在籍し、かつ賞与の支給日に在籍している社員に支給する】

この文言、給与規程が存在している会社において、特に社会保険労務士に作成を依頼した規程に、かなりの確率で記載されています。なぜなら、こう記載しないと“支給算定期間(例えば夏季賞与なら1~6月など)に在籍していれば、支給日までに退職した社員にも賞与を支払う”ことになってしまうからです。

経営者からすれば、当然、辞めた社員に賞与など支給したくないと考えますので、支給日に在籍していることを規程に盛り込む必要があります。

しかし、この規程が決算賞与の未払計上を不可能にします。
実は法人税基本通達9-2-43に次の記述があるのです。

【法人が支給日に在職する使用人にのみ賞与を支給することとしている場合のその支給額の通知は、支給額の通知には該当しない】

つまり支給日に在職する使用人にのみ賞与を支給することとしている場合、

  1. 事業年度終了の日までに、賞与金額を従業員ごとに、かつ、全ての従業員に同時期に通知する。

の要件を満たさないということになるのです。理屈はこうです。

支給日に在職する社員にのみ賞与を支給する→ということは、事業年度末までに通知したとしても、支給日に退職していれば、支給はしない→ということは、事業年度末時点で会社は債務(未払賞与)が確定していない(つまり債務が確定するのは賞与支給日)→ということは事業年度末時点では債務が確定していないので決算賞与の未払計上はできない。

これは、仮に事業年度末から支給日までに退職した社員がいなく、結果として未払計上した賞与を全て支給したとしても同じです。【賞与の支給日に在籍している社員に支給する】という規定がある以上、会社の未払賞与という債務が確定するのは賞与支給日になりますので、決算賞与の未払計上は認められないということになってしまうのです。

もちろんこうした規程は税務のことだけ考えて作れば良いというものではありません。トラブル防止の為、法務、労務からの視点が不可欠ですので、節税の為だけに改定するのはどうかと思います。

ただ、決算賞与の提案をするのであれば、本来、税理士が給与規程の中身を確認し、必要に応じて改定を含めた提案をすべきなのですが、こうした通達があること自体を税理士又は担当者が知らなかったということが実際によくありますので注意が必要なのです。

『顧問料を払って税理士に任せているんだから、そんなの税理士の責任だ!』と言ってしまえばそれまでです。しかし、残念ながら、どんな専門家でも人それぞれ、力量は一定ではありません。こうした知識を皆さんが身につけておくことで、皆さん自身を守ることができます。

ちなみにそもそも給与規程を作成していないという会社については、1.~3.の要件を満たせば、決算賞与の未払計上は可能です。給与規程を作成している場合には、これを機に中身の確認と検討を行ってみてください。

中小企業における採用難と人件費の高騰

中小企業にとって永遠の課題と言える、採用難と人件費のバランス…。
まずは、下記の統計をご覧ください。企業の従業員規模別の新規求人数の推移です。リーマンショックでの急激な落ち込みを除いて、求人数は増加傾向にあります。また、その中でもここ数年の【1-29人】規模の企業の求人数が群を抜いています。

(中小企業庁『中小企業白書2014』87頁)
次に、下記の統計をご覧ください。企業の従業員規模別の雇用者数の推移です。【1-29人】規模の企業の雇用者数の減少傾向が続いています。

(中小企業庁『中小企業白書2014』88頁)
これは、もっとも雇用者数が多い【1-29人】規模の企業数自体が減少(廃業・倒産・休眠など、個人企業の減少が著しい)していることも影響していますが、この統計グラフ上では、単純に小規模の企業から大規模の企業へ雇用者が移っているとも見えます。
この二つの統計を見ても、中小企業がどれだけ人材を欲しているか、そして、そうであるにもかかわらず、現実には採用ができていないという事実が浮き彫りになってきます。これは、新卒者・転職者が、より大きな、より安定していそうに見える企業を選択する傾向を示唆しています。
最近では、求人難・人件費の高騰による倒産が問題になってきたとの報道も出ています。昨年から今年にかけての消費税増税に伴う駆け込み需要も、求人難に拍車を掛けたと言えますし、“和民”や“すき家”等の人員不足による店舗閉鎖とその労働時間は大きな話題を呼びました。
まだ確定はしていませんが、消費税増税の駆け込み需要はもう一度ある可能性もありますし、建設業界を代表として、今後さらに人材不足が問題となると言われています。そういう我々の税理士業界も、税理士試験の受験者数が前年比90%という致命的な減少をしており、採用難に拍車を掛けそうです。
以上から、今後、中小企業の採用はさらに厳しくなっていく構造にあるのは間違いありません。
それでは、中小企業はこの死活問題ともいえる採用にどのように対応していくべきなのでしょうか?
採用のために自社の大規模化を進めるという思考は、中小企業にとって論外です。また、採用に際して提示する条件を引き上げるというのは“お金で解決する”という意味では選択肢の一つなのでしょうが、既存社員の待遇とのバランスを崩す場合があり公平性を欠く可能性があります。また、その分、人権費が上がることにつながりますので、収益性との関係で検討する必要があります。
また、採用を行う場合、欠員募集と増員募集があります。上記の統計を確認した場合、【1-29人規模】の企業については、欠員を補充できていないため、雇用者数が大幅に下がり、かつ求人数が増加しているという可能性もあります。純粋な増員であれば別ですが、欠員の場合、皆さんもお分かりのように、離職率を改善させるだけで採用の問題を相対的に低下させることにつながります。
欠員となる理由が、給与なのか、労働時間なのか、職場環境なのか…。経営者にとっては、辞めて欲しくない社員に辞められるのが一番困る訳です。だからと言って好待遇を行うというのは別問題ですが、採用よりも離職率を改善させるという視点で自社を再分析するというのは非常に重要な仕事になってくるかと考えます。
そして、今後、中小企業にとって一番必要なことの一つに、“人を採用しなければならない”という思考を捨ててみる点にあるのではないかと考えます。もちろん、言うまでもなく採用は超重要です。採用活動は常時行い、人材が余っていたとしても、余裕を持って確保するということも必要になってきます。
それと同時に、本当に採用が必要なのか?という視点は別の問題です。欠員が出たり、仕事量が増加した場合、まずは採用を検討されるはず。しかし、採用が困難になっているという状況で、採用できるまで待つというのは時間の浪費となる場合もあります。ではどうするのか?
ありきたりに言えば仕事の棚卸という表現になってしまいますが、本当に無駄な仕事がないのかという分析は、より重要性を増すのではないでしょうか。当社も例にもれず採用では困っておりましたが、ある意味、「こちらが求めているような人材は入社しない!」と諦めたことで仕事の見直しを徹底いたしました。
1年後の結果は、全スタッフの総労働時間が20%減少…。忙しいという状況から仕事が足りないという状況に様変わりしました。スタッフからすれば、暇になると不安になるのが当然ですが、経営サイドからすれば売上が上がっている状況で暇になったと言われるのは、何ともうれしい限りです。収益性が上昇して、さらに暇というのは、次の打ち手の選択肢を大幅に広めます。そして、今いるスタッフに暇と言われても、人材を先に確保という意味で、採用活動も同時に行っているという状況です。
前回のメルマガでも触れたように、いつまでも、「未払残業代を支払ったら潰れる!」というような思考がある経営者の会社に将来性はないと考えた方が間違いありません。特に中小企業は事件一つでガタガタになります。もちろん、何でも払えばよいというものではありませんが、払ったとしても経営上問題はないという状態は必要です。
従って、現在のような中小企業にとって不利な採用状況では、定量的な労働時間で、現状の仕事量が収まるように仕事の性質自体を変えてしまうという思考を社内に浸透させないと、採用難と社会保険コストを含めた人件費高騰の悪循環が、経営者の首を一気に絞めます。
さらに、中小企業では業務システムの強化がまだまだ遅れています。人を一人雇う分くらいの人件費を、継続的にシステム投資に使うというのは当たり前の時代になっています。このような継続的な投資が、長期的にも自社の最低必要人員数を引き下げることにもつながります。
繰り返しますが、皆さんがお考えのとおり、採用活動は超重要です。それと同時に、採用の代替策というは、一度真剣に考えられてみるべきではないでしょうか。
経営者の右腕になってくれるような人材というのは妄想の世界の産物ですが、自社の仕事の性質を180度変えたとき、今いる社員の仕事の質が大幅に変わる可能性があります。
一人の優秀な右腕の存在よりも、今現在平凡な10人の仕事の質が変わった方が、中小企業にとっては良い結果をもたらすのではないかと考えます。

某エステサロンの報道で高まる未払残業代リスクへの対応策を考える

某大手エステサロンの労働問題が明るみに出ました。
報道によれば、残業代の未払いや給与から違法な天引きをしているなどと労働基準監督署に内部通報したところ、その女子社員は名指しで長時間の詰問など精神的な圧迫をうけたとのこと。
今回の報道のなかで度々登場してきたのが『ユニオン』です。
ユニオンとは、その会社に労働組合がない場合であっても、また、正社員でなくても誰でも一人で加入できる労働組合のことです。
これらマスコミ報道によって人々の関心が高まれば、労働者の権利意識は一層高まり、弁護士やユニオンなどの労働組合に相談を持ち込む件数が増えるでしょう。
残業代の未払いがあった場合には、労働基準監督署からの是正勧告により、過去2年分の残業代の支払いを命じられます。
そうなれば、経営基盤の弱い中小企業にとっては人員削減、事業縮小を余儀なくされることも想定されます。
さらに、労働基準法の改正によって企業規模にかかわらず1ヶ月45時間を超える残業を行う場合の割増賃金率を25%を超える率とするようにする努力目標が示されるなど、中小企業の残業代への対策は急務と言っても過言ではありません。
しかし、ほとんどの中小企業ではギリギリの資金繰りのなかで給料を支払っているため、法律通りの残業代を支払うためには今以上の利益を出す必要があります。
ところが、多くの中小企業では利益を出すために最小限の人員で多くの残業をしてもらうほかなく、この連鎖が多くの経営者を悩ませています。
そこで多くの中小企業が採用を初めているのが『年俸制』による給与制度の導入です。
これは、あらかじめ残業代を含めた年間の給与総額を設定することで毎月の給与の支払いを一定額にするという方法です。
つまり、言い方を変えると、残業代を毎月定額で払っている『定額残業制』『固定残業制』ということになります。
これだけを聞くと簡単そうに聞こえますが、制度の導入にはいくつかの注意すべきポイントがあり、これを満たさなければ未払い残業代のリスクは回避できません。
定額残業制を採用するときのポイントは以下のとおり。
1.就業規則(賃金規定)の整備
2.全従業員から個別に同意を得る
3.最低賃金を下回らない
4.給与明細の記載変更
5.(定額制採用後も)労働時間管理は継続する
ひとつずつ簡単に説明いたします。
1.就業規則(賃金規定)の整備
定額残業制の運用でもっとも多いトラブルの原因が残業代が込みだということを口頭で説明しただけで、その後時間の経過によって、従業員は忘れてしまし、その結果、残業代が未払いであると誤認するケースです。
労働基準監督署に対し「私は確かに言いました」ではまず認められることはありません。
さらに、『営業手当』や『職務手当』等の名目で残業代を支給していたつもりでも、その手当が残業代だと従業員に認識されておらずトラブルとなることもあります。
そこで、就業規則や賃金規定を改訂することが必要です。
2.全従業員から個別に同意を得る
定額残業制への移行は従業員にとって『不利益改訂』にあたるため、事前に全ての従業員から同意を得る必要があります。
この場合も後日のトラブルに備えて書面で行うことが重要です。
3.最低賃金を下回らない
各都道府県ごとに『最低賃金』が決められています。
定額残業代を除いた基本給などの所定内給与(時給)がこの最低賃金を下回らない範囲で設定する必要があります。
これらの計算は手計算することが難しいので無料で配布されているソフトを利用することをお勧めいたします。
Google等の検索サイトで『固定残業代 計算 ソフト』で検索するといくつも候補が出てきます。
4.給与明細の記載変更
1番に通じることですが、定額残業代を支給しているという事実を確認できる項目として、『定額時間外手当』『定額深夜手当』『定額休日手当』などの項目で給与明細に表示することが望ましいと言えます。
5.(定額制採用後も)労働時間管理は継続する
これがもっとも重要な項目です。
定額残業制といっても『これ以上の残業代は払う必要がない』ということではありません。
予め定額残業代に何時間分の残業が毎月の給与に含まれるかを協議によって定めたうえで、その時間を超えた分の残業代は支払わなければなりません。
しかし、その逆に、定められた時間の残業を行わなかった場合にその分の残業代を支払わないということはできませんので注意が必要です。
それでは具体的に制度を採用した場合の給与項目の変化を確認してみましょう。
下の図をご覧ください。

現状の給与の内訳は以下の通りです。
【基本給】 235,000円
【職務手当】 30,000円
【営業手当】 10,000円
【家族手当】 10,000円
【通勤手当】 5,000円
総額 300,000円
これを次の通り変更します。
【基本給】 155,000円
【職務手当】 30,000円
【営業手当】 10,000円
【家族手当】 10,000円
【通勤手当】 5,000円
【定額時間外手当】 60,000円
【定額深夜手当】 10,000円
【定額休日手当】 10,000円
総額 300,000円
見てのとおり各手当の金額はそのままですが、定額残業代相当額だけ基本給が減額されています。
この給与体系の導入による効果は2つあります。
一つは一定時間の残業までは手当が増えないということ。
もう一つは、残業単価が引き下げられるため、定額残業時間を超えた残業があった場合に支払う残業代を抑制することができます。
以上が定額残業制を導入するポイントとなります。
『年俸制』や『定額残業制』は業種規模を問わず中小企業でも導入されるようになり、社会保険労務士の指導を受けずに自社で見よう見まねで行っている企業も多く、トラブルになっているケースが多いのも事実です。
導入にあたっては、社会保険労務士の指導を受けることをお勧めいたします。
今回報道にあった某企業の経営者は「労基法どおりにやれば潰れるよ!」と持論を繰り広げている音声がネット上で出回り、その人間性までもが世間に露呈する結果となりました。
定額残業制を導入する労使交渉にあたっては『壁に耳あり障子に目あり』を肝に銘じ真摯な姿勢で望んでいただくこともお忘れなく。

税務調査で「メールを見せてください」と言われたら?!

季節は税務調査シーズン真っ盛りですが、先日、このようなご質問を受けました。
調査官に「メールの内容を見たいのでパソコンを貸してください」
と言われたのですが、これは拒否できたのでしょうか?
さて、実際にこう言われたら、あなただったらどうしますか。
税務署の調査の権限は「質問検査権」として、国税通則法74条の2(当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権)に定められており、
調査官は「その者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件(その写しを含む。)の提示若しくは提出を求めることができる」とされています。
また、国税庁からは、次のようなQ&Aが公表されています。
「問5 提示・提出を求められた帳簿書類等の物件が電磁的記録である場合には、どのような方法で提示・提出すればよいのでしょうか。」
ここでは・・・
「帳簿書類等の物件が電磁的記録である場合には、提示については、その内容をディスプレイの画面上で調査担当者が確認し得る状態にしてお示しいただくことになります。
一方、提出については、通常は、電磁的記録を調査担当者が確認し得る状態でプリントアウトしたものをお渡しいただくこととなります。
また、電磁的記録そのものを提出いただく必要がある場合には、調査担当者が持参した電磁的記録媒体への記録の保存(コピー)をお願いする場合もありますので、ご協力をお願いします。」
と記載されています。
従って、メールが紙媒体ではなく電子媒体としてPCに記録されている前提で考えれば、メール自体も「電磁的記録」ということになり、上記のように必要があればその確認及び提出が必要になるものと考えられます。
上記の国税庁のQ&Aでは、「その内容をディスプレイの画面上で調査担当者が確認し得る状態にしてお示しいただくことになります」と書いてあるので、この「電磁的記録」としての電子メールは、会社の担当者がPCを操作して該当するメールを画面を表示しそれを調査官が確認する、という方法で調査が進められるということが予定されている、という解釈ができます。
さらに必要であれば、その画面をプリントして調査官に渡す、ということになる訳です。
従って、PCを調査官に渡して自由に閲覧させる必要はないものと考えられるのです。
先のご質問の「パソコンを貸してください」という状況が、仮に、マウス自体を調査官が操作し、PC内のメールを自由に閲覧したとするとどうでしょうか。
国税通則法には、このように書いてあります。
(権限の解釈)
第74条の8 第74条の2から前条まで(当該職員の質問検査権等)の規定による当該職員の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
すなわち、調査官の持つ権限は、あくまで「特定の取引についての資料の確認・提示を受ける権限」ということであり、犯罪捜査のため(何か不正が発見できるかもしれない)という理由で、PC内のメールをくまなく確認することはできない、と解することができます。
「何月何日の取引について、それを裏付ける証憑書類がありますか」という質問に対し、該当日の電子メールの確認を求められたような場合には拒否するのが難しいと考えられますが、「調査官がその目的を合理的に説明することなく、全ての電子メールの提出を求めてくる場合などには、その電子メールの提出(閲覧が)調査上の必要性に関する具体的な説明がなされていない以上、仮にその申し出を拒否しても検査拒否には該当しないものと考えられるのです。
私が立ち会った調査では、調査官からのこのような要請はまだ経験していませんが、これに近い状態は、実際に調査の現場では起こっているようです。
あなたの会社の調査では、このような経験はありませんか?
今後の調査においても、「なにか不正が見つかるかも」を前提にしたような調査は、拒否できる可能性があることを覚えておいてください。

社会保険が会社をつぶす

いよいよ本気のようです。
7月4日の日経新聞に【厚生年金、加入逃れ阻止】との見出しで社会保険についての記事が掲載されていました。要約すると次のような内容です。
・政府は厚生年金に入っていない中小零細企業など約80万社を来年度から特定し加入させる方針を決めた。
・国税庁が保有する企業情報をもとに厚生年金に加入していない企業を調べ、日本年金機構が加入を求める。
・応じない場合は法的措置で強制加入させる。
社会保険については全ての企業に加入する義務がありますが、会社が負担する保険料が重いため、実際には加入していない企業が少なくありません。今回、そうした企業を社会保険に加入させるために、国税庁が持っている企業のデータを日本年金機構に提供するとのことですので、国の本気度合いが伺えます。
ここで年金制度の是非を論じても意味がありませんので、現在、社会保険に加入していない企業が実際に加入するとなると、会社の数字にどの程度の影響があるのか、見てきたいと思います。
次の要約損益計算書をご覧になってください。こちらは年商1億円、限界利益率70%、労働分配率50%、売上高経常利益率10%の架空のA社です。規模は小さいですが、なかなかの業績です。しかし現在、社会保険に加入していません。
現在の社会保険料率は健康保険、厚生年金合わせて会社負担は、およそ13.5%ほどです。A社が給与支給額はそのままで、全ての社員について社会保険に加入したと仮定するとどうなるでしょうか。

なんと、経常利益、税引後当期利益とも、約半分近くにまで落ち込んでしまいます。
売上高経常利益率10%の企業でもこの結果です。では年商1億、限界利益率65%、労働分配率約54%、売上高経常利益率が5%ほどのB社ではどうなるでしょうか。

社会保険に加入することで500万円あった経常利益はほぼ無くなり、税引後当期利益は社会保険未加入の時の3.5%にまで落ち込んでしまいました。こうなると内部留保どころではありません。赤字転落は目の前で、何か手を打たなければ、この先、会社の存続すら危うくなりかねません。
これは従業員にとっても大きな問題です。現在、社会保険に未加入の会社に勤める月収30万円のCさんの会社が、社会保険に加入するとCさんの手取り額にどういった影響があるのでしょうか。

上記のように、会社が社会保険に加入したことによってCさんの手取り額は約4万円減少してしまいました。もちろん未加入の時は手取り額から個人で国民健康保険料と国民年金保険料を納めていたはずですので、単純に4万円手取り額が減るということではありません。しかし、従業員にとって給与明細の手取り額が4万円減少することの心理的インパクトはとても大きいはずです。
そこで、仮にCさんの手取り額を減らさないようにしてあげるとなると、会社はCさんの給与手当を35万円程まで増額しなければならなくなります。全ての従業員について、同様に手取り額が減らないように給与手当を増額すると、売上高経常利益率10%を誇っていたA社であっても完全な赤字。B社に至っては、しゃれにならない大赤字です。このまま行けば間違いなく倒産してしまいますので、従業員にとっては辛い話しですが、よほど他の部分で収益の改善が行われない限り、A・B両社ともに、従業員の手取維持のための給与増額は難しいでしょう。
■従業員の手取額を維持した場合

言うまでもなく、社会保険に加入していない会社が社会保険に加入することによって、従業員1人にかかるコストは確実に増えます。労働人口が減り、ただでさえ人材確保が難しくなりつつある現代において、社会保険に加入したからといって、その分、今いる従業員の給与を下げられるかといえば、そう簡単にはいかないのが実情でしょう。しかし、そのまま何も対策を講じなければ、確実に会社の利益は減ってしまいます。
では、どうすれば良いのか。
残念ながらウルトラCはありません。しかし、国が本気になってきている以上、現在社会保険に加入していない企業も、近い将来必ず加入しなければならない時が来る前提で経営の舵取りを行う必要があります。
パートやアルバイトであっても、常時使用されており、労働時間、労働日数が一般社員の4分の3以上であるなどの基準を満たせば、原則として社会保険の対象となってしまいます。であれば、パートやアルバイトなどの短時間労働者が社会保険の適用対象とならないように、今まで以上に1人1人の労働時間の管理を徹底し、その分多くの短時間労働者を雇用するなどの対策も必要になってくるでしょう。
また、社会保険の適用対象外となる短時間労働者の積極的な活用に加えて、社員の給与体系、評価・昇給制度の再構築や、これから入社する社員の給与設定の見直しを行うことはもちろんのこと、自社製品の価格設定、全ての経費についても見直し、予算管理を行い、社会保険料を納めても利益が残せるように備える必要があります。
社会保険の強制加入が本当に全ての企業に実施されれば、倒産してしまう企業もおそらく出てくるでしょう。しかし、絶対にそのような事態は避けなければなりません。社会保険に加入していない企業は、まずは社会保険に加入した場合、自社の損益に与える影響についてのシミュレーションを今すぐに行ってください。そして、社会保険料を納めても利益が獲得できる体質を築くために自社に必要なことは何か、今からすべきことは何か。考えて実行する。これしかないのです。

障害者手帳がなくても障害者控除が受けられる?!

皆さんは、障害者手帳を持っていなくても「障害者控除」を受けられることがあるのをご存知でしょうか。
「障害者控除」、その単語くらいは聞いたことがあるかと思います。
そう、障害者手帳を持っている扶養親族や相続人がいる場合には、その等級(障害の重度)によって、所得税や相続税から一定の税額控除ができる、という規定です。
一方、世の中には「成年後見制度」というものがあります。
これは、認知症、知的障害及び精神障害などによって物事を判断する能力が十分でない方について、本人の権利を守る援助者(成年後見人)を選ぶことで、成年被後見人(援助される者)を法律的に支援するという制度です。
実は、この「成年後見制度」の成年被後見人は、特別障害者(重度の障害者)として、所得税や相続税から一定の税額控除が受けられるのです。ご存知だったでしょうか。
では、なぜ障害者手帳を持っていない成年被後見人が障害者控除を受かられるのか、簡単にご説明いたします。
まず、「成年後見制度」では、成年被後見人となりうる方を、民法第7条により「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」としています。そして、家庭裁判所や医師の診断により上記の状態にあると認められる方は、成年被後見人と認定されることになります。
一方、所得税法上では、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」は特別障害者に該当する、と規定されています。しかし、その定義は所得税法上は明文化されていません。そう、具体的な定義はされていませんが、先の後見制度の民法7条と同じ言い回しとなっているのです。
また、相続税法上では、「障害者とは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者で政令で定めるものをいい、特別障害者とは、障害者のうち精神又は身体に重度の障害があるもので政令で定めるものをいう」と規定しています。そして、その政令には、「所得税法(政令)に掲げる者を相続税法上の特別障害者に該当する」として規定しています。
すなわち、先の所得税法所の特別障害者である「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」は相続税法上の特別障害者に該当する、ということになるのです。
そうすると、所得税法上の特別障害者である「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」といものと、「成年後見制度」における成年被後見人となりうる「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」が同じであると定義されれば、「成年後見制度」における成年被後見人は、所得税法上も相続税法上も特別障害者として税控除ができる、ということになる訳です。
ちょっとややこしいですね。。。
もし所得税法上で「民法第7条に規定する精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」とでも記載されていれば同じと定義できますが、残念ながらそのような記載にはなっていません。実は、国税庁がH24年8月に、その見解について文書回答をしています。
http://www.nta.go.jp/nagoya/shiraberu/bunshokaito/shotoku/120831/01.htm
繰り返しになりますが、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」という言い回しが同じなのです。すなわちこれは、所得税では民法での定義を引用しているのは明らかであると考えられます。
したがって引用している以上は、その定義(本質)は同じでなくてはならないものと考えられ、永く疑義のあったこの問題に対し、国税庁が見解を発表したものと考えられます。
皆さんの中には、これまでの所得税や相続税の申告において、成年被後見人である扶養親族や相続人がいたのにも関わらず、この障害者控除を受けていない・・・なんてことはないでしょうか。
実はこのことを知らない税理士も、まだまだ多くいらっしゃると聞いています。
思い当たる節のある方は、過去の申告書を見直してみてはいかがでしょうか。

税理士の嫉妬は海よりも深い?!

「あなたとは今後一切お付き合いはしません!」
私が以前にある社会保険労務士から言われた言葉です。
何故、社会保険労務士がそのようなことを言ったのかについて詳しくはお話いたしませんが、一言でいうと『妬みと嫉妬』です。
今回は専門家と言われる私たちの情けない一面についてお話いたします。
税理士や社会保険労務士をはじめとする”士業”の中には、プライドだけが高い者が多く、そのことで本来はお客様である多くの中小企業の経営者が使わなくてもいい気を使っていらっしゃいます。
弊社では以前より、『税理士セカンドオピニオン』というサービスを行っております。
このサービスは文字通り、顧問税理士がついている企業の経営者や経理担当者が、他の税理士の意見や見解を聞くことを目的としたものです。
先日も事業承継をお考えのお客様からこんな相談がありました。
コンサルタントを依頼し自社株移転スキームを提案してもらったのだが顧問の税理士がそのスキームには問題があり認められないと言っているというものでした。
実はこの手の相談はとても多いです。
この手のスキームや税金対策を税理士が認めないという場合の理由はいつも決まっています。
・・・
「税務署から否認される可能性があります。」
「そんなことやっても意味がない。」
「こっちのほうが税金がかからないですよ。」
いかにも専門家らしい言い方に聞こえますが、
これを言い換えると、次のようになります。
「私には責任が持てません。」
「私は面白くありません。」
「私ならもっといい方法を知っていますよ。」
これが税理士が本当に言いたいことです。
いかがでしょう?
税理士のコメントがいかに自分を正当化するためのもので顧問税理士である自分を差し置いて他人の意見を求めたことに対しての『妬みと嫉妬』によるものであるかがわかります。
経営者は何も税金のことだけを考えているのではなく、それ以上に会社を継続発展させていくためにどうしたらいいのかを必死に考えていらっしゃいます。
ところが、税理士は自らのプライドと保身、そして『税金』の世界から頭が離れることはありません。
その結果、このような後ろ向きコメントになるのです。
とはいうものの、税理士を一方的に責められるものでもありません。
これは質問をする経営者の方にも問題があります。
このような場合、恐らくは税理士に対し次のように質問をしているのではないでしょうか?
「このスキームに問題がありませんか?」
「このスキームどうでしょうか?」
このように聞かれればスキームとして100%完璧なものなどないのですから、税の専門家として『否認される可能性があります』とか、『もっといい方法があります』といった回答になってしまうのは仕方がありません。
逆にこの質問に対して「まったく問題ありません。」と答えてしまうほうが専門家としては問題です。
そこで、このような場合に次のように質問をかえてみてください。
「私がやりたいと言ったら、先生はこのスキームの遂行に協力していただけますか?」
経営者がやってもいいかな?問題がないかな?と頭を悩まされることには多かれ少なかれリスクはあります。
そのリスクを含めて『私を支援する意思がありますか?』と税理士に問うてみてください。
そこでかえってくる答えの第一声が誰のための答えであるか?それこそが税理士が貴方と向き合う真の姿です。
つい先日もお客様の経営者より次のような電話がありました。
社長:「うちには以前からお世話になっている社労士がいるんですが、その先生は全然アドバイスとかくれないんです。」
社長:「別のところで知り合った社労士の方が、いろいろな助成金のもらい方をアドバイスしてくださるんですが、その部分のお仕事だけお願いしてもいいものでしょうか?」
笹川:「まったく問題ありませんよ。」
笹川:「それで顧問の社労士さんが面白くないと言われるようであればそこまでの器の方だということです。」
社長:「そうですね。わかりました。」
企業は専門家に依頼する立場であって、専門家のご機嫌を伺う必要はありません。
だからといって横柄な態度でどんな失礼なことを言ってもいいというものではありませんが、その専門家をビジネスパートナーの一人と考えるのであれば、少なくとも何でも言い合える関係でありたいものです。

消費税増税による、バラまき政策が始まりました!?

消費税増税による混乱も一服ついて、すっかり8%の生活にも慣れてきてしまった、そんな今日このごろですが、この増税による消費の下支えのため、臨時に実施される給付金があることをご存知ですか?
そう、厚労省管轄で始まった、【臨時福祉給付金】と【子育て世帯臨時特例給付金】です。
漢字ばかりの、いかにも!というようなネーミングですが、あまり大体的に宣伝していないようで、ご存知ない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、この制度を簡単にご紹介いたします。
まずは厚労省のHPです。
http://www.2kyufu.jp/
なお、少し見にくいですが給付を実施するのはお住まいの市町村になります。
★臨時福祉給付金
・趣旨:消費税増税にともなう所得の低い方の生活への影響を鑑みて給付金を支給する
・対象者:(1)H26年度の市民税が非課税の方、(2)生活保護を受けていない方
・給付額:対象者1人につき1万円(給付は1回限り)
すなわち、H25年中の給与や年金などの所得が無い、あるいは所得が低いため住民税が課税されておらず、誰の扶養親族にもされていない方で、かつ、生活保護を受けていない方が該当します。
★子育て世帯臨時特例給付金
・趣旨:消費税増税にともなう子育て世代の消費の下支えの観点から給付金を支給する
・対象者:(1)H26年1月分の児童手当の給付を受けている方、(2)H25年分の所得が児童手当の所得制限限度額未満の方
・給付額:対象児童1人につき1万円(給付は1回限り)
なお、所得制限の金額の目安はこちらをご覧下さい。
http://www.2kyufu.jp/kosodate/youken/
夫婦子供の3人家族でも、年収920万円以内であれば支給対象とされます。
要は、児童手当をもらっている家庭で、給与年収が900万円を超えない場合には、給付金の支給を受けられると考えて良さそうです。
しかし、受給を受けるには、申請を行わなければいけません。
http://www.2kyufu.jp/kosodate/shinsei/
黙って待っていても給付はされませんので注意が必要です。
なお、各市町村の申請の状況はこちらでも確認できます。
http://www.2kyufu.jp/shichouson/
7月より、ぼちぼち役所では受付の受付を開始しているようですが、いま見ていただいたとおり、給付は1回きりの限定です。しかも申請方式です。
たった1回の給付で、この給付を受けた家族にとってどの程度の効果があるのでしょうか。。。
例えば夫婦子供の3人家族が申請により受けられるのは1万円です。果たしてこれが消費の下支えになるのかは疑問に思えてしかたがありません・・・
しかも、もし申請を知らなかった方がいたら、当然給付はされません。
趣旨からみても、そんな制度では問題ではないか、と感じてしまいます・・・
しかし、もらえるものは貰っておかない手はありません。
申請用紙は一斉に各家庭に送られているようですが、繰り返しになりますが、給付を受けるには申請をしなくてはいけません。
あなたの家にも、申請用紙が送られてきていませんか?
該当する方は、申請のし忘れのないよう、気をつけましょう!!

コンビニの一杯100円のコーヒーが、あなたには200円だったら

「は?何を言っているんだ?一杯100円のコーヒーは、誰が買ったって100円にきまっているじゃないか!」
確かにその通りなのですが、ちょっと角度を変えて物事を見てみると、一概にそうとは言えない事実があるのです。言い方を変えてみましょう。
「コンビニの一杯100円のコーヒーを買うには、あなたはいくら稼がなければいけませんか?」
さあ、どうでしょう?
私達は労働によって得た収入から税金を支払い、残ったお金を自由に使うことになります。そして、みなさんご存知のように、日本の所得税は累進課税といって、所得が高い人ほど税率が高くなる仕組みになっています。
つまり、同じ一杯100円のコーヒーを買うにしても、支払う税金を考慮すると、その価値が人によって異なってくるのです。
例えば年収が90万円ほどのAさんであれば所得税・住民税ともに非課税ですので、100円のコーヒーを買うには100円稼げばよいことになります。しかし、年収が1800万円を超えるBさんは所得税・住民税を合わせると50%の税金がかかります(実際の計算は異なりますが、ここでは便宜上50%とします。)ので、Bさんが100円のコーヒーを買うには200円稼ぐ必要があることになります。
Aさんにとって、100円のコーヒーは100円の価値ですが、Bさんにとっては200円の価値ということになるのです。
「そんな当たり前のこと・・・」と言われてしまいそうですが、実際に普段からこうした“税金を計算した思考で行動”している人は多くないはずです。
次に、これに“労働時間”という物差しを加えて考えてみましょう。
あなたは乗っていた乗用車が故障してしまったので、新しく車を買い換えることにしました。車の値段は200万円でした。さて、この車を買うのにどれくらいの時間働かなければならないのでしょうか。
みなさんの年収が仮に500万円で、扶養家族なしであった場合、所得税・住民税・社会保険料を考慮すると、手取りは約400万円ほどになります。一般的な週休2日の企業の場合、年間休日は120日くらい、年間労働日数は250日程度です。1日8時間労働とすると、1年間の労働時間は2000時間になります。
手取り額400万円を2000時間で割ると時給は2000円です。購入する車の値段200万円を2000円で割ると、購入する車は労働1000時間分の価値ということになります。1カ月の労働時間が8時間×20日間=160時間とすると、6ヶ月分以上の労働に値することになります。
6ヶ月分以上の労働に値すると言いましたが、これは生活費などを一切考慮せずに、稼いだお金全てを車の購入に費やすと仮定して出した数字です。実際には私達は税金を支払った後に残る手取り額から、生活費を出さなければなりません。
仮に毎月必要な生活費を30万円として、税金と同じように考えて計算すると、年収500万円の人にとって、税金と生活費を差し引いて残る、自由に使えるお金は年間40万円(手取400万円-生活費360万円)。これを年間労働時間2000時間で割って時給換算にすると、なんと200円にまで減ってしまいます。すると200万円の車の価値は、労働10,000時間分、つまり5年分の労働に値することになるのです。
私達は普段、生活に必要な消耗品であれ、趣味にかかる物であれ、何気なく購入してしまいがちです。しかし、税金などを考慮して自分の1時間あたりの労働価値を算出したうえで、購入する物の価値を算出すると、かなりの価値になることに驚くはずです。
“税金を計算した思考で行動する”ことで、物の価値が、今までとは違って見えてきます。これは経営者の方だけでなく、従業員の方にも是非、知っておいていただきたい考えた方です。こうした思考を身につけることで、物の価値観が変わると同時にコスト意識が自然と高くなり、会社においても私生活においても、必然的に無駄な経費を使わなくなります。是非、実践してみてください。