税理士事務所のABC feat.岡本吏郎

最近、低価格の税理士のネット広告をよく見かけませんでしょうか?
「顧問料月額10,000円から! 今なら○○も無料で」
毎月の顧問料が1万円を下回ると集客を仕掛けている税理士事務所が
増えています。
お客様も年間数百社ペースで増えているそうですよ!
また、低価格だからといって品質が低いかというと、そうでもなさそうです。
お客様からすると、悪くないですよね。
とはいえ、低価格の顧問料で契約できるのは、概ね年商5,000万円以下の
零細企業が中心です(色々な税理士がお互いを牽制し合っているのがよく
分かります)。
年商1億を超えてくるような企業ではそう簡単に低くはなりませんが(契約形態
によっては下がります)、低価格の広告につられて問合せをするケースも多い
でしょう。
現在のような経済状況の中、顧問料は低い方が良いというニーズは当然の
流れですが、サービスの供給者である税理士の経営が成り立たなければ
意味がありません。
一社当たりのお客様から頂く報酬が低いわけですから、経営的にきつくなる
のではないかという想定がされます。
では、なぜ、自身の経営を悪化させかねない低価格路線が拡大しているの
でしょうか?
今回は、11月2日の当メールマガジンにて岡本が書いた『ABC会計』を受けて、
ご説明したいと思います。
ABCとは、『Activity Based Costing』(活動基準原価計算)の略で、
その名の通り“活動”に主眼を置き、活動を加味した収益性を分析計算する
ものです。
岡本のメルマガにも書かれていたように、高い単価・高い限界利益率の商品
又はサービスであったとしても、ここに掛かる他の費用(例えば人件費)が
高ければ、最終的に残る利益は多くはありません。
一方、低い単価・低い限界利益率の商品又はサービスであったとしても、ここに
掛かる他の費用が低くければ、意外と利益が残るわけです。
そして、大量生産に向いているのは、明らかに後者の
“低い単価・低い限界利益率”。
ここで一つの結論。
低価格のお客様は、税理士にとって“割りの良い”お客様となる可能性が
高いのです。
もちろん、低価格のお客様には低いコストを投入しなければならないわけ
ですから、大量生産の仕組み化が出来ていなければなりません。
この低価格路線を拡大する税理士が用いている大量生産の仕組み・・・。
この効率の良い仕組みを担っている外注先(当然、ほぼ外注です!)は
かなり限定されています。
結局、どの税理士も裏でやっていることは一緒(笑)
低価格で契約し、さらに低価格で外注し、決算や申告を担当するのはパートや
新人職員。
そして、最大のポイントは、低価格路線で契約する規模のお客様であれば、
税理士側としてもリスクが小さいという事です。
なぜなら、企業規模が小さいので、大きな問題が起こる可能性が極めて少ない
のです。
正直なところ、黒字の企業も少なく、税金の計算すら必要がないところが多い。
赤字が多いから、税務調査に来ても低リスク、そもそも税務調査に来る確率も低い。
ここでもう一つ目の結論。
低価格のお客様は、大量生産ラインに乗るための低コスト・低リスクの要件に
合致します。
ここまでくれば、あとはお客様の数を増やせるだけ増やすだけ。
そのためにPPC広告を突っ込むだけ突っ込みます。
高い広告代に付いて来れる税理士だけが契約数を増やすことが出来る・・・。
この低価格モデルはお客様に解約されても単価が小さいので、経営的なリスクも
少ないのです。
集客さえ出来ていれば、すぐに新しいお客様が増えるのですから。
また、新規開業したばかりでお金がない法人を狙いうちも出来ます。
うーん、低価格ながら中々の高収益モデルですね。
あるセミナーに出たら、実際に低価格路線を売りにしている税理士が、
「儲かって仕方がない」と笑っていました。
もともと税理士業務は“高い単価・高い限界利益率”の代表格モデルでしたが、
コスト構造も高いため、近年の報酬下落と共に、旧来型の経営が破綻して
きています。
そのため税理士事務所経営も二極化してきており、“さらに”高い単価・高い
限界利益率の高付加価値サービスを提供するか、低価格路線に対応するかに
分かれてきました。
この両方に対応できない税理士は淘汰され始めています。
結局は、低価格路線を推進する税理士の傘下に入るしかないのでしょうか・・・。
とはいえ、“お山の大将は儲かっても、子分は儲からない”というのが物事の
道理ですので、更に状況を悪化させかねません。
今後の税理士業界がどうなるか見物ですね!
高単価と低単価の収益モデルを両立させるのがベストなので、
エー・アンド・パートナーズ税理士法人もABC会計的に低価格モデルを
検討でもしてみますか(笑)

アレが付いてないと気になるようです・・

先日、税務調査が行われました。
雑談も終わりこれから調査を始めるというときです。
調査官が私に小声で話しかけてきました。
調査官「先生はいつもは、アレ付けてますよね?」
笹川 「ええ、基本的には付けるようにしていますが・・」
調査官「でも、今回は付けていませんよね?」
笹川 「えっ、まさか、そんな理由で来たんじゃないでしょうね?」
みなさんは、何の話か分かりますか?
実は、これ『書面添付』の話です。
経営者の中にはこの書面添付という制度自体をご存じでない方も多いと思います。
書面添付とは一言でいうと、『申告書についての保証書』といったところです。
保証書付きの申告書ですから、税務署は税務調査を実施する前に、申告書を
作成・提出した税理士の『意見聴取』をすることが義務付けられているのです。
そして、意見聴取の結果、調査が必要ないと判断された場合には、実地調査は
省略されます。
私どもの経験値でいくと、5割強が調査省略となっています。
もしも、実地調査の必要があると認められた場合でも、税理士に意見聴取結果と
「調査へ移行する」旨を連絡することとなっています。
つまり、朝に突然税務職員がきて「調査に伺いました。」という事は少なくなります。
“少なくなる”と言ったのは、実地調査の中には、事前通知無しに調査に行くことを
予め決めている事案があるためです。
これについては、国税庁のホームページに掲載されています。
「調査課における書面添付制度の運用に当たっての基本的な考え方及び
事務手続等について」

書面添付によって無予告の調査が無くなることはありませんが、書面添付が無い
場合と比較すると、ひとつの抑止力になることは間違いないでしょう。
納税側にとってはいいことずくめの制度ですが、実は、この書面添付が提出されて
いる法人の割合は、法人全体の7%(前年6.5%)に過ぎません。
これは財務省が公表した
「平成22事務年度 国税庁が達成すべき目標に対する実績の評価書」
に記載されています。
国税としては、この書面添付制度の普及・定着を図る必要があることから、
書面添付提出法人に対しての調査省略の流れはこれからさらに拡大していくと
私はみています。
ここまでの話しを聞いて、うちの税理士は書面添付しているのか?という疑問が
でてきたことでしょう。
確認方法は簡単です。
確定申告書をご覧ください。
下の図の、該当箇所に○印があるかどうかです。

最初に申し上げました。書面添付は『保証書』ですから、それを提出する税理士
にも、それに合わせた『仕事の仕方』と『覚悟』が必要です。
この書面添付はあくまでも税理士が作成・提出するものであるため、その責任は
税理士にあります。
税理士が内容に虚偽があることを知っているにも関わらず、虚偽記載を行った
場合には、戒告や業務停止の処分を受ける可能性があります。
つまり、税理士が書面添付をしない申告書は、税理士が何かしらの不安を抱いて
いる可能性があると考えられます。
例えば、現金出納帳の記載がなく、記帳代行を行っているような関係では、
税理士としては書面添付は提出できません。(少なくとも私は提出しません。)
もしも、みなさんに心当たりや、やましいことが無いとした場合、この書面添付は、
みなさんと税理士との関係性を測るバロメーターになると私は考えています。
みなさんは、今の税理士と良好な関係が築かれていますか?
答えが“イエス”なら申告書を確認してみてはいかがでしょう?
もしも、書面添付がされていない場合にはその理由を税理士に聞いてみてください。
納得の行く答えが返ってきますか?
その税理士、本当に社長のビジネスパートナーと言えますか?

税理士増加は良い事か?

それは当然に良い事でしょう。
税理士が増え、競争原理が働けば報酬も安くなる。
と、皆さんはお考えのはず。
そして、今年も税理士が増えます!
というのも、8月は税理士試験が行われる月でした。
合格発表は12月で、資格登録出来る合格者は毎年1,000人くらい。
では、税理士増加は皆さんにとって本当に良い事なのでしょうか?
新規営業先でよく聞かれます。
「顧問契約したら、担当になっていただけるのは税理士の方ですか?」
ここで税理士ではない旨を伝えると、露骨にがっかりされる方がいらっしゃいます。
もちろん、資格はなくても優秀なスタッフですとお伝えしますが、内心こう思います。
「せっかく経験豊富なスタッフを担当につけようと考えているのに、経験浅い税理士
資格者の方がいいのかな? 」
つまり、この業界、仕事が出来るか否かと税理士資格の有無はあまり関係あり
ません。
絶対的に経験の方が重要です。
医師や弁護士のように、資格がなければ実務が行えない仕事と異なり、税理士
業界は資格がなくても、資格を持っている者の指揮監督の下で同じ仕事を
行えます。
これがいわゆる税理士補助業務というやつですが、行う仕事は全く変わりません。
申告書も作りますし、税務調査の立会いも行えます。
出来ないのは申告書の署名くらい。
昔は、所長先生よりも、無資格の番頭格のスタッフの方が優秀というのが当然
でした。
なぜなら、実務をより多く経験しているのは、税理士よりもスタッフだからです。
最近は、税理士も個人事業から法人化が進み、昔でいう番頭格のポジションに
税理士が付くケースが増えてきました。
特に、若い税理士の事務所が増えてきているので、大分様変わりしてきたように
感じます。
そして、近年の税理士事務所が行う業務の多様化も影響しています。
税理士試験で勉強する税法だけでは実務に対応出来ません。
会計、金融、保険、労務、法務等、別の専門家の守備範囲のものでも一通りの
知識がないとお客様との会話にさえ困ってしまいます。
これは実務を通して勉強していくしかないので、税理士試験に集中している者に
とっては疎かになりがちです。
また、税理士業界は、20代に試験勉強にどっぷりはまる人間が多いので、20代
から30代にかけての実務経験(=社会人経験)が絶対的に少ないのです。
実際に経験年数を聞いてみると、年齢とのバランスが合っていない方が結構
います。
仮に30歳で税理士資格を取得しても、経験が浅かったらひよっこもいいところ。
それでも税理士であることには間違いないので、お客様からは仕事が出来ると
思われてしまいます。
このイメージが、若手税理士が増えれば増えるほど、実態と乖離します。
ここで最初の問いに戻ると、税理士増加自体は良い事だが、それによって実力が
分からない税理士が増えると、その見極めが難しくなるという事になります。
もちろん、税理士に限らず、誰であれ経験を積むまではお客様にご迷惑をお掛け
する事もありますし、その過程を経なければ成長出来ません。
要は、その税理士の仕事をフォローする上役などの存在がいれば問題ないのです。
実際、ある程度の人数の税理士事務所であれば、税理士資格者の上司が無資格
のスタッフという事は多々あります。
ですから、“税理士だから大丈夫”、“税理士ではないからダメ”ではなく、その担当
者のキャリアを把握して仕事を依頼する方が、皆さんにとっても有益な結果を
もたらすはずです。
と、ここまで言っておきながら、
「税理士資格がなく、経験は長いが仕事も出来ない方もいるのではないか?」
というご質問に関しては、苦笑いするしかないのですが・・・。
ちなみに、皆さんご存じの国税OB税理士という方々について。
この国税OBの税理士は税理士全体の4割以上を占め、国税に23年勤務すると
税理士登録出来るようになります。
従って、税理士登録する国税OBの方々は40歳以上になるので、試験組みの
税理士に比べて圧倒的に平均年齢が高い!
ですから、若手で国税OBという税理士は基本的にはいらっしゃらないのです。
国税OBというだけで23年以上のキャリアがあるので大ベテランです。
まあ、国税OBの方は貫録が違いますからね(笑)
とはいえ、民間経験年数(=納税者有利判断年数)は浅いので、このパラドックス
をどう埋めながら仕事を依頼するかが難しいところ。
とにもかくにも、税理士を選ぶのって難しいですよね。
この業界年数が長くなるほど、そう思わずにはいられません。

あえて両手でボタンを押す煩わしさ

生産技術屋さんが書いた“失敗学”に関する書籍に触れる機会があり、その書籍には次のようなくだりがありました。
『エンジニアが絶対的に安全な装置を設計しても、オペレーターが故意にそれを外せば事故が起きても不思議はない。
エンジニアは、絶対に外せない安全装置を設計するか、安全装置の意図についてオペレーターに理解を得る必要がある。』
この一文から遠い記憶を思い出しました・・・。


私は高校2年生の夏休みに友人と町工場でアルバイトをしていました。
その町工場は、食器棚のドアと、本体をつないでいる“留め具”を生産する工場で、私と友人は加工された“留め具”に、機械で穴をあける工程作業をしていました。
その機械の真ん中に留め具を置き、左右にあるボタンを両手で同時に押すことで、ドリルが下降し留め具に穴をあける、このような作業でした。
両手でボタンを押す・・・、この行為に煩わしさを感じつつ辺りを見渡すと、機械の下にフットスイッチを発見することができました。
フットスイッチを使えば、両手でボタンを押す必要はなく、留め具を設置したコンマ何秒後に、ドリルを下して穴をあけることができるため、作業効率は格段に上がりました。
その方法を友人にも教え、友人もその方法を実行し慣れてきたころ、悲劇は起こってしまいました。
友人は、留め具を真ん中に設置してから、手を離す前にフットスイッチを押してしまい、指にドリルが当たり(幸い、かすった程度)、何針も指を縫う怪我を負ってしまったのです。
“あえて両手でボタンを押す煩わしさ”は、事故を防ぐための安全装置だったと、その時初めて気づくことができたのです。


税理士には、税務顧問先様にとっての安全装置のような役割があります。
お客様からしてみれば、納税額は多いよりも少ない方がいいに決まっています。
そのような意思のもとで行ったお客様の税務処理が、税法に耐えうるものかどうか、その判断を税務調査の前に行うのが税理士の一つの仕事です。
しかしながら、税務の世界にはグレーゾーンがつきものです。つまり、税務的に通る処理なのかどうかがわからない・・・。
このようなケースでは、税理士とお客様の間で意見が分かれ、特に、保守的に考えすぎる税理士ほど、その溝は深くなり、お客様は自らフットスイッチを押してしまう事があります。
つまり、安全装置として税理士が保守的な判断をしても、一つの税務処理についてどのようなベネフィットとリスクが存在するかをお客様にきちんと説明せず、その意図が伝わっていないため、お客様は故意にその安全装置を外し、場合によっては修正を受け、多額のペナルティーを受ける可能性が出てくるのです。
また、税理士の推奨する処理に従ったとしても、税理士が保守的に考えるあまり、もしかしたら払わなくてよい税金を払っている可能性も考えられます。
グレーな判断を迫られた時には、必ず税理士にその処理についてのベネフィットとリスクについて説明を求めてください。
そして、その両極について十分に理解されてから、自らが然るべき方法を選択されてください。
このような動作が、経営者と税理士の良好な関係を築いていきます。
それでも不安で、第三者の客観的意見も参考にしたい場合には、是非とも当社の
税理士セカンドオピニオンサービスをご活用ください。

更新されているか?

「顧問税理士が、そう言っていたんですよ」
とAさんは言った。
私は返した。
「そんなことをしたら、とんでもないことですよ!」
その件は、税務署の重点項目にも上げられているから、もし、Aさんが、顧問税理士の言うとおりにしたら大変なことになる。
私は、その旨も告げて、顧問税理士の言うことは、5年前に使えなくなったことも付け加えた・・・・・・・・・。
世の中は変わる。
私が電話で対応した件は、あまりにも、勉強不足すぎる内容だったが、そうした簡単なものも含めて世の中は変わる。
だから、
私たちの「最低限」は、「変わること」だ。
当たり前のことを確認するようだが、
変化は、特別のことではない。
それが普通だ。
しかし、それがわかっていない人は意外にも多い。
それは、素人に限らない。専門家でもそうだ。
私が、ここ数ヶ月で驚いたことは、
歯医者さんでも同様のことが起きていることだった。
私は、歯のメンテナンスを目的に、
一件目の歯医者に行った。
この歯医者の言うことは、初めて聞くことばかりで、
私はすぐに信頼した。お金もかかった。
しかし、この歯医者で行った虫歯の治療は最低だった。
「まだ、痛い」という私の訴えは無視され、そのまま詰められて治療は終わった(それ以外にも、回を重ねることに不信は募った)。
その歯医者から治された歯のうちカンタンに詰めた方の詰め物が取れたので、1ヶ月後、別の歯医者に行った。
前の歯医者が、ただ、詰めただけの歯は、虫歯だった。
そして、最新の治療と言われて、余り削らない方法で治療された。
さらに、事情があって、私は、他の歯医者に行くことになった。
ここでも、その前の二人の歯医者と違う処置がされた。
歯の治療も、どんどん進化をしている。
ところが、どこもがその進化を捉えているわけではない。
歯医者も税理士と同じ・・、いや、それ以上に差が大きいのだと知った。
変化には、膨大な時間と経費がかかる。
しかし、止まれば、すぐに古くなる。
コンピュータのプログラムは、更新がなければ使えなくなる。
専門知識も同じだが、随時更新がされているかどうかは、人による。
少なくても、Aさんの顧問税理士と私が行った最初の歯医者には、それがない。
専門家と付き合う場合、更新に対する姿勢は、しっかり聞いて付き合うべきだと思った。

税務調査で分かる税理士のタイプ

6月は決算月です・・・。
税務署の!
正確には事務年度と言い、7月1日から6月30日が対象期間。
7月に人事異動が行われ、新しい年度がスタート。
本格的に税務調査が始まるのは8月に入ってからです。
今年は東日本大震災の影響があるので、例年に比べて風向きが異なるかもしれません。
被害が大きな地域では税務調査どころではないでしょうし。
また、震災に関連した寄附等の処理に注目が集まるでしょうから、ここは注意しておかなければなりません。
全額経費として処理出来ると考えていた支援行為が、まさか・・・という具合に。
「そういう場合は調査官の情に訴えるんだ。人として恥ずかしくないのか!と・・・」
とおっしゃる税理士が意外に多いのがおもしろいですが(笑)
ところで、税務調査と言えば、企業側が税理士の評価を一変させるタイミングでもあります。
「税務調査の結果に納得できない!」
とはいえ、このような場合は既に税理士に違和感があって、税務調査の結果に対して評価を確定させただけです。
逆に、このような機会が無いと税理士を替えられないというのが企業側の難しいところ。
「あまり納得していないのだけれども、5段階評価の3の評価の税理士をいきなり首に出来ない・・・」
まるで社員に対する評価と一緒ですね(苦笑)
そういう意味でも、一番白黒付きやすいのが税務調査です。
3の評価の税理士が、1になったり4になったりします。
例えば、普段から細かく指導してくる税理士と、細かい事は何も言わない税理士では、前者の方が煙たがられます。
つまり、普段の評価は低め。
「あれもこれもダメと言われました・・・」
実は、細かく指導してくれる先生の方が、比較的きちんとした先生と言えます。
ですから、税務調査では指摘事項が少ない傾向にあります。
ただ、ここでよくご相談があるのが、ダメと言われた後の対応です。
「税理士にこれはダメと言われたのですが、無理ですか?」
「そうですね。先生がおっしゃる通りです。ただ、このような方法がありますが、ご存じですか?」
それはダメだけど、“こういう方法がある”という代替案を教えてくれる税理士はかなり少ないようです。
そして、大抵ダメな理由も説明してくれない。
意外と思われるかもしれませんが、本当に相談が多いのです。
それだけ、“ダメ”という拒否型コミュニケーションは印象が悪い。
税理士への一番の要望はコミュニケーションです。
生真面目で正確な指摘をする先生ほど損をしています。
逆に、細かい事は何も言わない税理士は、“ダメ”とも言いません。
この時点の評価は良くもなく悪くもない。
しかし、曖昧のままにしていた場合は、税務調査のときにツケが回ってきます。
「先生、調査官がこれもあれもダメって言っています・・・」
「そうですね。それは“ダメ”なんです」
税務調査になった途端に“ダメ”と言う。
このような税理士が、税務署寄りと言われる所以です。
ちなみに、前者の税理士は、税務署寄りとは少し違います。
税理士はあくまで法律家ですから、その法律を真正面からお伝えしているだけ。
弾力的運用が出来ない法律家というのが残念ですが。
また、もともと継続的な赤字企業は税務調査を受けにくいと言われていますが、このような企業でミスが見つかっても、税金が発生しなければ曖昧のまま終わります。
「まあ、いくつか指摘事項がありましたが、税金は出ませんでしたよ。良かったですね」
この税理士が良いのか悪いのかよく分からないままです。
以上、税務調査だけが税理士の評価ポイントではありませんが、やはり大きなウェートを占めているのは間違いありません。
そして、普段5の評価の税理士が税務調査で1の評価になったり、普段1の評価の税理士が5の評価になったりすることはあり得ません。
税務調査で評価が大きく変わるのは、普段3の評価の税理士です。
しかし、税務調査の結果が出てからでは取り返しがつかなくなる場合もあります。
普段から税理士の評価を見極め、早めに対処する事が会社を守る事にもつながります。
税務調査等でご心配な点がございましたら、いつでもエー・アンド・パートナーズ税理士法人にご相談ください。
 
P.S.
「税務署上がりの税理士なので、税務調査の対応は任せてください!」
という宣伝文句は、
「私、普段はきちんと指導しません!」
と言っているのと同じだと思うのは私だけでしょうか・・・。
帳簿がしっかりしていれば、税務調査で対応することなど無いのですから。

税理士の探し方について考えてみた

『税理士セカンドオピニオン』とメールマガジンのタイトルを変えてから3カ月が
経過しました。
たまにはタイトル負けしないような内容もお伝えしなければと思い、地方の方
から特にご相談が多い「税理士の探し方」について触れてみます。
とはいえ、これを真正面から取り上げても、抽象的な話で終わってしまいます。
あるいは、具体的過ぎてメルマガでは書けません・・・。
そこで、今回は都道府県別の下記データを用いて考察してみます。
(1)税理士事務所数(公認会計事務所を含む)
(2)企業等数(個人事業を含む)
(3)1税理士事務所当たり企業等数
(4)1税理士事務所当たり県内総生産
(5)1km2当たり税理士事務所数
まずは、下記表をご覧ください。

このデータから税理士の探し方の何が分かるのか?
お客様からお話を伺うと、税理士を探すポイントは大きく分けて次の3つです。
・税理士報酬は高くないか?
・頼みたい税理士事務所は近くにあるか?
・希望するサービスを行ってもらえるか?
■税理士報酬は高くないか?
どの業種においても競争相手が多いほど価格が下がるという理屈はご存じの通り。
つまり、税理士事務所が多い地域ほど、その報酬も低くなるという図式が成り立ち
ます。
税理士事務所が多い上位3地域は、東京、大阪、愛知(データ(1))。
とはいえ、この3都府県は企業等の数も上位3位を占めるので(データ(2))、一概に
税理士事務所が多いとは言えません。
そこで、企業等の数を税理士事務所数で割ったのが、「1税理士事務所当たりの
企業等数」(データ(3))。
東京、大阪、愛知は見事に下位3位に沈みました。
1税理士事務所当たりのお客様の数は少なく、それだけ競争が激しいと言えます。
ここで最初の理屈に当てはめて考えてみると、この3都府県の税理士報酬は
“意外と高くない”可能性があります。
その補完データとして「1税理士事務所当たり県内総生産」(データ(4))をご確認
ください。
県内総生産とは国民総生産(GDP)の都道府県別のようなもので、これを税理士
事務所数で割ってみました。
データ(3)と同じように、大都市地域の1税理士事務所当たりの県内総生産は下位
に沈み、お客様の数が少ないとともに、お客様の企業規模合計も少ないと推定
できます。
これが大きければ、数は少なくても比較的規模の大きな会社が多く、1企業当たり
の報酬も高いという図式が成り立つはず。
「いやいや、東京の税理士事務所の報酬は高いよ!」
という方もいらっしゃるでしょう。
当然、大都市に拠点を構える一部の大手税理士事務所は非常に高い報酬を
取っています。
こういう事務所はもともと大規模企業のお客様が多いため、人件費の高いスタッフ
を雇い、一等地に事務所を構えているからです。
もし、中小規模事業者がこのような税理士事務所に顧問を依頼すると高くつきます。
これは、企業の規模に照らして相対的にという意味です。
つまり、大都市地域の大手以外の税理士事務所は、その競合状況から、企業の
規模等に照らして報酬は低めに抑えられていると考えます。
当法人は東京と新潟に事務所があり、全国のお客様の相談を受けているので、
かなりの地域の報酬相場を把握しています。
正直なところ、大都市地域と地方の相場は同等レベルです。
例えば、東京の税理士事務所に頼むのならば“大きなところ”というのが盲点で、
地方と同じような感覚で探せば、数は多いし、報酬も変わりません。
■頼みたい税理士事務所は近くにあるか?
やはり、税理士事務所は“近くがいい!”というニーズは根強いです。
“近くがいい”だけならば問題はないのですが、これが“近くて、良い”税理士事務所
と続くので厄介です。
こうなると、大都市地域は狭いエリアに数多くの税理士事務所があるので、“近く
の”税理士事務所は探しやすいと言えます(データ(5))。
しかし、“良い”税理士事務所に巡り合えるかどうかは、“宝くじで1万円が当たる
くらいの確率”です。
当たる人には当たるけど、当たらない人には当たらない・・・。
だから、税理士事務所も当たるまで“買い続ける”のが現実的。
また、近くにないのなら、遠くに買いに行けばいいのです。
それも、隣県ではなく、思い切って大都市地域へ。
地方の方も、宝くじを西銀座チャンスセンターに買いに行くように!
そして、こういう声もよく聞きます。
「税理士が来ない」
もちろん、毎月来てくれる“近くて、良い”税理士事務所が見つかればベストです。
これが探せないのであれば、“遠くて、毎月来ないけど、満足できる”税理士事務所
を探してください。
これであれば、どこの地域の税理士事務所でも問題ないはず。
ちなみに、当法人は東京と新潟に事務所を置いておりますが、顧問契約を結んで
いるお客様の所在地域は15都府県です。
セカンドオピニオン契約を合わせると倍近くになります。
当然、遠隔地のお客様は近場のお客様に比べれば訪問頻度は下がります。
しかし、当法人を含め、遠隔地のお客様と契約しているような税理士事務所は、
訪問しなくてもサービスを提供出来るようにと工夫も行っております。
このような税理士事務所も大都市地域に多く、WEBで探しやすいはずです。
“近くて、良い”から“遠くても、良い”と基準を変えるだけで、税理士事務所の選択肢
も飛躍的に増加します。
■希望するサービスを行ってもらえるか?
昔の税理士事務所は、ほどほどの報酬で“何でも”やっていました。
しかし、近年は税理士事務所もメニュー化が進み、最小構成単位で仕事を依頼
すれば報酬は安くなります。
特に大都市地域の税理士事務所ほどメニューの細分化が図られ、少しでも報酬を
安くしてお客様を取り込もうと懸命です(東京、大阪、愛知はこの傾向が顕著です)。
これに比べ、地方の税理士事務所はまだ“何でも”の傾向が強いと言えます。
“何でも”だから、サービスが陰に隠れてしまう場合もありますので、まずは今の
税理士事務所に、「このサービスをやって欲しい」と明確にお伝えしてください。
意外とこれを言わない方が多いのも事実。
言ってダメだったら税理士事務所を変えざるを得ませんし、言うのが嫌であれば、
やはりメニュー制の税理士事務所の方が依頼しやすいのではないかと考えます。
とはいえ、気をつけなければならないのは、メニュー制を取り入れている税理士
事務所に“何でも”頼むと総額はかなり膨らんでしまうという点です。
最近は“顧問料なし”の税理士事務所も増えてきましたが、これにもカラクリが
あって、“顧問料あり”のときと同じような仕事を依頼すれば、むしろ報酬が高く
なる仕組みです。
その実態は、お客様のためというよりも、事務所の経営効率を高めるための場合
も多く見受けられます。
また、サービスメニューが多彩という事と、サービス品質が高いかどうかは別問題
です。
これも、税理士事務所という宝くじを買い続ける事によって“当たり”を探さざるを
得ません。
以上、なんだか大都市地域の税理士事務所が良いと推奨しているようになって
しまいましたが、そうではありません。
地方の方からの「良い税理士がいない」というご相談に対し、圧倒的に税理士
事務所が多い大都市地域も選択肢に入れる事によって、「税理士の探し方」に
幅が出る事をお伝えしたかったのです。
競争が緩い地方の税理士事務所は寝ている所が多く、昔からのお客様が多い
ので、口で言うほど危機感はありません。
危機感がなければお客様へのサービス向上など期待できませんので。
是非、皆さんに税理士業界をたたき起していただきたいです(笑)

【参考】
今回用いたデータは、統計局の統計データ「平成21年度経済センサス基礎調査」
です。
『政府統計の総合窓口』というサイトがあり、ここで様々な統計データを調べる事が
出来ます(URL:http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/eStatTopPortal.do)。
私も今回このデータを加工していて、この地域に新しく事務所を出したら結構行ける
んじゃないかと思ってしまいました。
エリア戦略等、使いようによってはおもしろいのではないかと考えます。

今日が最後のメールです(新刊のご案内)

たくさんの方々に新刊を
ご購入いただきありがとうございました。
お礼と言っては何ですが、
最後に、本にならなかった部分の原稿から
一部を引用させていただきます。
気になっていながら、購入がまだの方は
ぜひともご購入ください。
新刊『実学 中小企業のパーフェクト会計』は、
中小企業のための究極の会計書です。
なお、今回は、『無料講演会』を行うこととしました。
本をご購入いただいた方々から抽選で80名様をご招待いたします。
なお、抽選に漏れた場合にも、当日の映像を無料で
ご覧いただける予定ですからご安心下さい。
詳しくは、こちらをご覧下さい。
→ http://www.awn.jp/book/perfect/(キャンペーンは終了しています)
—————————————————————–
「重要な“その他”」
財務会計では、売上高や経常利益が重要視されますが、
それ以外に重要な“その他”はたくさんあります。
例えば、顧客数。
顧客数は、売上げの数字を作る元となるものですから、
どんな経営者でも気になる数字でしょう。
例えば、苦情の件数。
きっと経験上の標準値を各企業が持っていて、
その指標を基準に評価をしているはずです。
こうして考えてみると、経営者が気にしている
“その他”は結構たくさんあります。
顧客数、見込み客数、新規客数、
平均顧客定着期間、顧客減少数、
接客時間、平均顧客待ち時間、
平均一顧客売上高、苦情件数、
苦情率、返品高、伝票滞留時間、
処理時間、納期遅れ率、
開発リードタイム、改善提案数、
不良品数、設備稼働率、
従業員離職率、従業員数、
従業員平均年齢、欠勤率・・・・・・・・
こうして上げればキリがないくらいあるでしょう。
しかし、こうした“その他”をどこまで管理しているかと言えば、
顧客数や見込み客数のような売上げに直結する数字は別にしても、
それ以外はそれほど意識的に管理されていることはあまりないでしょう。
そこで、財務会計という世界から少し離れた
こうした数字の管理について考えることは重要です。
中小企業が導入するためには、少しハードルが高くなる場合もありますが、
アイデアの一つとして知っておくべきでしょう。
・・・・・・・・・・・・・・・・
—————————————————————–
この文章の後、
ボツになった原稿が続いていきますが、
諸事情から削除することになりました。
まだ、この削除部分を『無料講演会』で
お話しするかどうかは決まっていませんが、
本に入れきれなかったことを含めて講演会を行う予定です。
ご興味のある方は、是非ともお申し込み下さい。
→http://www.awn.jp/book/perfect/(キャンペーンは終了しています)

管理数値は、ライフサイクルや環境で変わる(新刊のご案内)

本日も、新刊の内容のコメントをお送りします。
興味のある方はぜひお買い上げください。
—————————————————————–
「管理数値は、ライフサイクルや環境で変わる」
通常の会計の本では、いろいろな管理すべき数値が出てきます。
しかし、これらの全てを管理する必要は、ありません。
管理すべき数値は、その企業のライフサイクルや環境で大きく変わるのです。
例えば、売上高という中小企業にとって絶対的に見える数値でさえ、
管理の数値として重要性を失う時はやってきます。
しかし、多くの中小企業は、
いつまでも、売上高を追い続け、落とし穴に落ちる運命にあります。
岡本 吏郎
—————————————————————–
新刊のタイトルは、
『実学 中小企業のパーフェクト会計』
です。
出版社が、
『パーフェクト会計』とネーミングしてくれました。
この本の内容にぴったりのタイトルだと思います。
そして、この本が中小企業会計の基準に
なってくれることを願っています。

本当に、売上高や利益の管理で良いのか?(新刊のご案内)

本日も、新刊の内容のコメントをお送りします。
興味のある方はぜひお買い上げください。
—————————————————————–
「本当に、売上高や利益の管理で良いのか?」
通常の会計の本では、いろいろな管理すべき数値が出てきます。
しかし、これらの全てを管理する必要は、ありません。
管理すべき数値は、その企業のライフサイクルや環境で大きく変わるのです。
例えば、売上高や利益という中小企業にとって
絶対的に見える数値でさえ、 管理の数値としての
重要性を失う時はやってきます。
信じられないかもしれませんが、それが事実です。
特に、環境変化に応じた売上高管理の変更は重要です。
しかし、多くの企業はここを間違えます。
それは、大企業においてもです。
過去に、新日鉄をはじめ多くの企業が間違ってきました。
そして、多くの中小企業も、
いつまでも、売上高を追い続け、落とし穴に落ちる運命にあります。
岡本 吏郎
—————————————————————–
新刊のタイトルは、
『実学 中小企業のパーフェクト会計』
です。
出版社が、
『パーフェクト会計』とネーミングしてくれました。
この本の内容にぴったりのタイトルだと思います。
そして、この本が中小企業会計の基準に
なってくれることを願っています。