税金の世界でも『年金問題』!?

税理士は各地域の税理士会に所属しており、2、3ヶ月毎に所轄税務署と
『事務連絡会』というものを開いています。
これは、その連絡会の中での税務署とのやり取りです。
税理士 「この場合、本当に確定申告しなくていいんですね?」
税務署 「しょうがないですね。申告をしろという規定がありませんから・・・」
税務署 「それで結構です・・・。」
また、この国は行き当たりばったりの制度を作ってしまいました。
それは『年金取得者の申告不要制度』というものです。
大ざっぱに言うと、年金400万円以下の人は確定申告をしなくてもいいという
制度です。
このようなできたばかりの制度には多くの欠陥があるものです。
もう少し詳しくお話いたします。
年金をもらっている人の中で、一定の金額以上の年金をもらっている人に
ついては『扶養親族等申告書』というものを提出しています。
もちろん出している人にしかわからない話ですが、一言でいうと沢山の年金を
もらっている人のところに届く書類です。
この書類に扶養となる家族をたくさん書いて出すことによって、本来は年金から
控除される税金が少なくなったり、ゼロになったりします。
事例でお話しましょう。
例えば、お爺さん、お婆さん、お父さん、お母さん、子供2人という
家族がいたとします。
ここでは、お父さんは会社を経営しているオーナー社長だと思ってください。
そして、お爺さんは前経営者で、退職して沢山の年金をもらっています。
この場合、お婆さん、お母さん、子供2人は誰の扶養につけるでしょうか?
通常であれば、一番収入の多い、お父さんの扶養にするでしょう。
オーナー社長とお爺さんはそれぞれ確定申告を行い、税金を納めています。
ところが、今回の年金申告不要制度を乱用すると次のようなことが
できてしまうというのです。
1.年金機構の『扶養親族等申告書』にお婆ちゃん、お母さん、子供2人を
記載して提出
2.社長が確定申告を行う。その際、お婆ちゃん、お母さん、子供2人を
扶養親族として申告をする。
つまり、扶養親族の変更です。
これで、お婆ちゃん、お母さん、子供はお爺さんと社長の二人の扶養親族と
なることになります。
従来であれば、扶養に変更があり納税が発生する場合には確定申告が
必要になりました。
しかし、今回の申告不要制度については、年金が400万円以下であり、
かつ他の所得が20万円未満である場合には確定申告が不要となっています。
ただし、今までの話はすべて国税だけの話です。
住民税についてはこの申告不要制度がありません。
つまり、所得税の確定申告は行う必要はありませんが、住民税の確定申告は
必要なのです。
先ほどの扶養変更についても住民税の申告では扶養を変えたことをちゃんと
申告しなければいけません。
これによって扶養が重複していることが明らかとなり税務署より何らかの
お尋ねが届くことになる筈です。
この手の税法の抜け穴を使ったテクニカルな節税ノウハウが出回る可能性が
ありますが、これは明らかな脱税行為であり、制度上の瑕疵を悪用するものです。
このような瑕疵は必ず立法手段によって対処されます。
目先の怪しい話に飛びつくことのないように十分ご注意ください。

当社にとっては無縁の話だ!と思っていませんか?

“減価償却”・・・、皆さんを悩ませている会計・税務の制度の一つです。
会社が固定資産を購入した場合、その支出は購入した年度の一時の経費とはならず、減価償却という制度を通じて、数年にわたって経費化されていきます。
キャッシュアウトしているにもかかわらず、経費化されるのは一部であるため、税金を減らす効果は少なく、また、利益とキャッシュの乖離を生む大きな原因となっています。
経営者であれば誰しもが、固定資産の早期経費化を望んでいます(経費算入額が増える=節税効果につながる)。
そんな減価償却の世界には、“特別償却”という制度があります。
特別償却とは、対象となる固定資産を購入した際に、通常の減価償却費に上乗せして30%の追加償却を認める制度です。
とても便利な制度なのですが、巷では、このような誤解があるようです。
『特別償却の対象となる資産は、大変高価なものや特殊なもの。当社には、まったくもって無縁の話だ。』
特別償却の対象となる固定資産は、160万円以上の機械や、120万円以上の備品。3.5トン以上の車や、船舶など、確かに特殊なものが多いです。
しかし、このような対象資産もあります。
「“電子計算機(パソコン)”及び“インターネットに接続されたデジタル複合機”で、それぞれの取得価額の合計が120万円以上のもの」
1台あたりではなく、合計額が120万円以上であるため、何台もまとめて購入した場合には、適用となるケースが出てきます。
ここでいう“それぞれの合計額”とは、パソコンはパソコンの合計で、複合機は複合機の合計で判断する、という意味であるため注意が必要です。
(パソコンと複合機の合計額では適用不可)
また、特別償却制度は、30万円未満の資産を一時に経費化する“少額減価償却資産”の制度とのダブル適用はできないため、通常のパソコンであれば30万未満であることにより、一時に経費化しているため、特別償却を考える必要はないでしょう。
やはり漏れやすいのは、複合機を何台も購入した場合の特別償却の適用です。
また、リースで取得した場合にも、特別償却の適用こそありませんが、“税額控除”の適用はあります。(取得価額の7%が、法人税額から控除される)
リースの場合、複数のいろいろな資産(複合機、サーバー、パソコン、プリンター等)をまとめて一括リース契約しているパターンをよく見かけますが、それでは、対象となる資産にかかる金額だけを抽出するのは困難であるため、税額控除の適用はできません。
リースの際には、対象資産を認識し、それについては、別契約することをお勧めします。(個別金額が分かれば、その必要はありません。)
特別償却や税額控除の規定は、とても複雑で、また、条文も多岐に渡っているため適用の判断はなかなか難しいものです。
しかしながら(だからこそ、と言うべきか)、適用の有無によって節税効果が大きく変わるものです。
実際、当社が新しく税務顧問契約を結ばせて頂くお客さまを見渡すと、適用漏れのケースを散見いたします。
何か大きな買い物をする際には、必ず事前に顧問税理士へ相談されてください。
また、確実に事を進めたい、第3者の意見も聞いてみたい、と言った場合には、是非とも当社の税理士セカンドオピニオンサービスをご活用ください。

雇用調整助成金について

震災等の影響で売上が減少しているが、固定費は通常通りに発生してしまう・・・。
固定費の大部分を占めるのは人件費・・・。
しかし、従業員の生活を考えれば、急にリストラするわけにもいかない・・・。
すでに“何度も”聞いたことがあるかとは思いますが、『雇用調整助成金』という助成金制度があります。
今回も、その“何度も”に該当し、すでに自社について検討をした結果、当てはまらないと結論づけられた方であれば、読み飛ばしていただいてもかまいません。
しかし、冒頭のようなお悩みをお持ちの方で、『雇用調整助成金』について聞いたことはあるが詳しくは知らない、または、初めて聞いた、という方々にとって、わずかながらでも手助けになれば幸いです。


(概要)
『雇用調整助成金』とは、経済上の理由により業績が悪化し、やむなく “休業等”を行った事業者が、従業員の生活を守るため休業手当を支給した際に、その休業手当の80%を国が助成する制度です。
“休業等”とは、会社全体が休むことを言っているのではなく(もちろん、会社全体で休む場合も対象になりますが・・・)、従業員毎の休業を指します。
つまり、各人別の休みの予定表を組み、その休みに対して休業手当を支給すれば、その支給額の80%が助成される、という制度です。
(具体的な活用事例)
以下は、厚生労働省のHPからの抜粋です。
■交通手段の途絶により、従業員が出勤できない、原材料の入手や製品の搬出ができない、来客がない等のため事業活動が縮小した場合。
■事業所、設備等が損壊し、修理業者の手配や部品の調達が困難なため早期の修復が不可能であり生産量が減少した場合。
■避難指示など法令上の制限が解除された後においても、風評被害により観光客が減少したり、農産物の売上が減少した場合。
■計画停電の実施を受けて、事業活動が縮小した場合。
(主な支給要件)
上のセクションに活用事例を挙げましたが、事業の不調がどこまで経済上の理由や震災の影響によるものなのかは計り知れない部分があります。
そこで、次のような客観的な支給要件が定められています。
■最近3ヶ月の生産量、売上高等が、その直前の3カ月又は前年同期と比べ5%以上減少していること
■休業等を実施する場合、都道府県労働局又はハローワークに事前にその休業計画を届け出ること
(出典、参考:厚生労働省HP)


この制度は今回の震災を機に創設されたものではありません(1981年に制定されています。)
しかし、今回の震災を受けて、支給要件の緩和が行われたり、厚生労働省のHP上で新たにQ&Aが掲載されたため、お伝えさせていただきました。
少しでも気になられた方はただちに、都道府県労働局又はハローワークにお尋ねください。 お願いします。

なぜ、あの社長は税務調査を歓迎するのか?

社長 「先生、今、税務署の方が来られまして・・・」
税務署の調査です。
私 「分かりました、私が行くまで中には入れないでくださいね。」
社長 「あっ、いいんです先生、もう調査はじめていただきました。」
私 「エェーそうなんですか!」
私 「今すぐ行きますから待っていてください(汗)」
普通の社長であれば税務調査は少なからず嫌がるものです。
ところが、この社長は快く税務調査を受け入れてしまいました。
実は、そこにはある理由がありました。
以前、税務調査を受けたときに、従業員による多額の不正が発見されたと
いうのです。
実は、税務調査では、税金の申告漏れだけではなく
社内不正や経理の不備が発見されることが少なくありません。
所轄の税務署より調査の連絡があったことを知った従業員が
横領の告白をしてきたというケースもあるくらいです。
また、その逆に、以前の税務調査で不正を指摘されなかったため
その後、不正金額が増加したというケースもあります。
一般の調査官による税務調査は、決められた期間で一定の
件数をこなす必要があり、見落とされることも珍しくありません。
ところが、調査官の中には査察部出身の者もおり、彼らは一般の調査官と
目の付けどころが違います。
帳簿書類の日付や筆跡、印鑑の種類まで確認し、書類の偽造までも見破ります。
その結果、申告漏れの税金よりも、発見される不正金額のほうが大きい場合
があるのです。
これは本当に珍しいことではありません。
多くの税理士が経験していることです。
税務調査が行われるまで、従業員の不正が続いてしまうのでは
困りますし、できれば、税務調査を受けずに不正を防止できるに
こしたことはありません。
まず、ある職務が一人の従業員に集中している仕事は要注意です。
・発注業務を一人の従業員が行っている。
・経理業務を一人の従業員が行っている。
・集金業務を一人の従業員が行っている。
・業者との折衝が 一人の従業員が行っている。
・請求書の発行を一人の従業員が行っている。
これらは全て不正の温床となります。
次に、不正を防止するために、次のことを徹底しましょう。
・予算制度の採用
・貯蔵品の受払簿を作成
・定額資金前渡制の採用
・現金回収は避ける
・領収証にはナンバリングをする
(書き損じは破棄させない)
・売掛金残高は確認状を送付
・定期的な棚卸(立会人を付ける)
・リベートの有無を確認する。
また、ある社長はこんなことも行っています。
その社長は、どんなに量が多くても全ての請求書に目を通し、
自ら決裁をします。
そして、その決裁は、必ず社員が揃っている前で、大きな声で全員に
聞こえるように質問をしながら行うのです。
これは実に上手いやり方です。
社長 「おーい、この外注なんでこんなに高いんだー?」
社員A「先月の○○が一緒になっているからです。」
社員B「それは先月に請求になっているはずです・・・」
社長 「おい、どうなってんだー(怒)」
こんな感じで、従業員どうしが牽制し合い、
社長も現場で起こっている問題が見えてきます。
その他にも不正を防止する手段は沢山ありますが
あらゆる手段を徹底したとしても不正は完全には無くすことが
できません。
それは、経営者自身による不正が残っているためです。
以前に、こんなことがありました。
預金の受払いと経理を全て奥さまが一人で行っていた会社がありました。
以前からどうしても預金の受払いが合わなかったため調査していったところ
犯人は社長の奥さまだったのです。
もちろん、その逆もありました。
売上金の集金をすべて社長が行っていたのですが、
入金額が少なく現金がマイナス残高になってしまうのです。
社長が奥さまに内緒で売上げの一部を抜いていました。
いずれも立派は『横領』です。
社長とその親族による横領は税務調査では大きなペナルティーと
なります。
日頃から、適切な経理を心がけ、税理士による監査を受けることは
税務調査対策だけではなく、大きな意味があるのです。

税率が変わるタイミングでよく耳にする話

税率が変わるタイミングでよく耳にする話
◆“消費税率が上がるタイミングでは、金(ゴールド)の購入がいい”
これはよく耳にする話です。
10,000,000円分の金の購入・売却を例に考えてみます。

■金の購入には消費税がかかるため、旧消費税率(例えば現状の5%とします)で金を購入すると税込みで10,500,000円の支出になる。
■その後、消費税率が上がった直後(例えば噂されている10%とします)に金を売却すると11,000,000円の収入になる。
■つまり、税率差分の500,000円が儲かることになる。

一見すると、非常においしい話に見えますが・・・、これには相場観が全然考慮されておりません。
このようなおいしい話があるのであれば、それは相場に反映され、消費税率が上がる前にはある程度の上昇を見せることになります。
そして、消費税率が上がった直後に値段が落ち着くことになる。つまりは、高く買って安く売ることになるため、税率差のうまみは消えてしまうのです。
◆これに似た話を最近耳にするようになりました。
“法人税率が下がるタイミングでは、保険の購入がいい”
皆さんご存知のとおり、4月より法人税率が下がります。(現時点では、正確には、下がるだろう・・・ですが。)
税制改正大綱にも記載されていましたが、実効税率ベースで約5%も下がることになります。
これを利用した保険購入のロジックは次のとおりです。

■法人税率が下がる前に保険に加入する。
■損金部分があれば、それに係る節税額は、高い旧法人税率で計算される。
■その後、税率が下がってから保険を解約する。
■損金となっていた部分は、解約時に雑収入として受け入れることになるため、法人税が課税されるが、その時には税率が下がった後の低い法人税率で課税されるため、税率差分のおよそ5%が儲かることになる。

先ほどの消費税と同様で、表面だけとらえると非常にロジカルでいい話のように聞こえます。
ですが、きちんとした検証を行うことは必要です。
むしろ、いい話に聞こえるからこそ、適切な検証を行う必要があるのです。
例えば、年払10,000,000円で全額損金となるタイプの保険に加入したとします。
払込額や返戻額、実質返戻率等の推移は次の通りとします。

1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 合計
払込額 10,000,000 10,000,000 10,000,000 10,000,000 10,000,000 0 50,000,000
法人税率 30% 25% 25% 25% 25%  25%
節税額 3,000,000 2,500,000 2,500,000 2,500,000 2,500,000 0 13,000,000 A
返戻額 50,000,000 50,000,000
単純返戻率 60% 70% 80% 90% 100%
納税額 12,500,000 12,500,000 B
A-B= 500,000 C

※税効果を除いた単純返戻率で100%を超えるのは、どんなに早くても丸5年はかかるので、解約のタイミングを6年目と仮定しました
節税額(A)から納税額(B)を差し引くと、1年目に払い込んだ10,000,000円に対する税率差として500,000円が儲かることになります。(C)
確かに、表面的な話どおりの
効果はあるようです。
ですが、その500,000円は、5年間資金を凍結させた見返りとしての500,000円(いわば利息)であり、また、単純返戻率が100%に達するという前提での話になります。
しかしながら、単純にすべてを否定できるわけでもありません。
資金に余裕がある会社であれば、5年間資金を凍結させても何ら困ることはなく、その結果として、年利1%の利息を受けながら保険の役務提供を受けることは悪い話ではないはずです。
また、被保険者の年齢や保険会社によっては、単純返戻率で100%を超えることもざらにあります。
つまりは個別事情による、ということです。
いずれにしろ、表面的な話だけに踊らされず、適切な検証を行ったうえで行動に移すことが必要です。
それは肯定的な話にしても、否定的な話にしてもです。

なぜ、税理士は社長を怒らせたのか?

「先生、お久しぶりです。また、お世話になります・・」
三年前に一度弊社にご相談に来られた社長さんが、人の縁で回りまわって
再び弊社に来社されることとなりました。
しかも、私に連絡をくれた人の話を聞いてみると、三年前にいらしたときと
まったく同じ内容のご相談についてです。
その内容とは、ある経理処理について納得がいかないというものです。
その社長さんは、税理士と退職した経理担当者が処理を間違っていると
考えています。
その話を聞いて、私は『これは不味いことになったなー。』と直観的に
思いました。
数日後、その社長さんより面談予定日の電話があり、三年前に解決した筈
なのに一体、どういうことなのか聞いてみました。
すると、「あの当時(三年前)はまだ会計のことがよくわかっていなかった。」
「あれから自分で勉強し直したのでもう一度話を聞いて欲しい」ということでした。
数日後、社長さんがいらっしゃいました。
挨拶もそこそこに早速本題に入りました。
最初は穏やかだった社長さんも、話しているうちに興奮してこられ、
しまいには「訴えてもいいと思っている。」と憤怒する始末です。
厄介なことになったなーと思いながらも社長さんの話を聞き続けました。
ところが、話を聞いているうちにこれはとても単純な話だということがわかりました。
実は、その社長さんは、経理処理の間違いを糾弾したいのではなく、ご自分の
納得がいかない点を『理解したい』と思っていらっしゃったのです。
仕事柄、かなりきびしい口調ではありましたが、“知りたい” “教えてほしい”と
言っていました。
そこで、私は、社長さんの目の前で、その顧問税理士に直接電話をし、調査に
必要な資料の提出を依頼し、場合によっては、私の説明に同席するように
依頼しました。
その税理士さんは、地元では名の知れた先生です。
電話をすると、先生は興奮された様子で、
「もう何度も説明したんです。」
「そもそも言っていることがおかしいでしょ?」
「もう先生の好きにしてください。」
とおっしゃいました。
私はすぐに思いました。
「あぁーこれが話をこじれさせた原因か」と。
社長さんと言っても相手はシロウトです。
しかも、お客様です。
そのお客様を相手に「言ってることおかしいでしょ?」はオカシイデショ?
お願いした資料は、翌日には私の手元に届きました。
私は、届いた資料の一つ一つに目を通したうえで、あらためて社長さんの
お話を聞き、資料で確認しながら、疑問点の一つ一つに十分な時間をかけて
話し合いました。
その結果、経理処理に問題はなく、社長さんの思い違いであることがわかりました。
確かに、結果だけみれば、社長さんの思い違いです。
しかし、専門家であれば、その思いの一つ一つに誠実に耳を傾け、寄り添うことが
できなければ意味がありません。
みなさんの中で同じようなことで悩んでいらっしゃる方がいらっしゃいましたら
弊社の『税理士セカンドオピニオンサービス』をご利用ください。
今回の件は、(税理士)先生だけに反面教師となりました。

遺言書だけで大丈夫と思っていませんか?

ある日のこと、午前と午後で相続についての二組の相談者が
訪れてきました。
その2組の相談がとても対象的だったので私の記憶に
残りました。
1組目の相談は、すでに数年前に被相続人のお父様がお亡くなりに
なっており、その後、相続の手続きが行われず、手つかずになっていました。
とくに田舎ではよくある話です。
もちろん、相続手続きがされなかったのにはちゃんと“理由”が
ありました。
それは、相続人の一人がお父様が残された遺言書に不満が
あったため、他の相続人がどうしていいのか分からなくなっていたのです。
その手つかずになっていた相続の話が、何故、今回動くことに
なったのか?
それは、『名奉行』が現れたからです。
ここが今回の話でポイントにしたいところです。
世間では“遺言書”を作っておけばそれで相続は円満に進む
と思われているようですが、そんな単純なものではありません。
いくら故人が想いを記した最後の手紙であったとしても
残された家族にとっては今後の生活を左右する重大事です。
内容次第では素直に受け取ることはできない場合もあります。
そこで登場するのが名奉行の『遺言執行人』です。
遺言執行人とは、遺言の内容を実現するために必要な権利義務を
もった、いわば相続奉行といったところです。
遺言書があったとしても、中にはその遺言を快く思っていない人や
名義変更等に協力しない人がいて、遺言の実現にはとても時間がかかって
しまします。
そんなときに名奉行の裁きが必要なのです。
これは理屈ではありません。
ガンコ親父の『説教』と同じです。
だれか説教をしてくれる人でもいなければ、
まとまる話もまとまらないというものです。
実は我々、税理士には遺産分割協議に口を挟むことは
許されていません。
しかし、遺言書を作成する際に、その遺言書において遺言執行人
としての権限を与えられた場合は別です。
その場合には、税理士は故人の意思に沿い、遺言執行を速やかに
行います。
これから遺言を作成しようとお考えになっていらっしゃる方は、
作成の相談だけではなく、執行まで含め長く付き合える専門家に
相談をしてください。
それでは、もう一組のご相談はどんなものだったのか。
こちらは、事務所に入って来られたときからちょっと独特な
雰囲気がありました。
話を聞いてみると、ご兄弟4人だけでいらっしゃたとのことです。
普通、相続のご相談で、奥さんが抜けるというのはあまりないケースです。
事前にインターネットで調べてきたのか遺産分割協議書のひな形を
持っており、若干の知識も持っていました。
相談者「遺産の分割は相続人で話し合って決めるんですよね?」
私「その通りです。遺言がなければ皆さんの話し合い次第です。」
相談者「わかりました・・話し合いですか・・。」
終始、遺産分割協議の方法について聞いていらっしゃいました。
ご長男が中心でいろいろと質問されていましたが、どことなく
皆さん核心部分に触れられないご様子です。
私は仕事柄多くの方と接しているので、言葉の端々や抑揚から
相談されている方の『思惑』がだいたい推察できます。
どうやらこの相続、ご兄弟それぞれに思惑があるようです。
私(この相続、いったい誰がまとめるんだろう・・・。)
しかし、今、私にできることは質問に答えることだけです。
専門家をただの情報屋として質問に答えてもらうだけでいいのか?
はたまた、名奉行役として采配をふるってもらうのか?
みなさん、専門家を上手に使ってください。

何故、疑問に思わないのか?

先日、お客様の役員様よりこんなご質問をいただきました。
お客様:「当社では、代金の回収にクレジットをご利用いただくことがあります。」
お客様:「その際、利用伝票(お客様控)をお渡しするのですが、中に、領収書を
欲しいとおっしゃる方がいらっしゃるのです。」
笹 川:「なるほど、心配性な方もいらっしゃるんでしょうからねぇ。」
お客様:「そこで、ちょっと疑問なんですが・・・」
笹 川:「はい、なんでしょう?」
お客様:「当社では、代金を直接そのお客様より受領したわけではないのに、
『領収書』を発行するのはおかしくありませんか!?印紙だってかかるし・・・」
この話を聞いて、すぐに思い出すのが、飲食店や家電屋さんでクレジットカードを
利用したときのことです。
あのときに印紙が貼ってあったでしょうか?
この事案については、国税庁より取り扱いが公表されています。
《国税庁》クレジット販売の場合の領収書
結論としては、クレジット販売の場合には、『信用取引』により商品を引き渡す
ものなので、その際に発行する領収書であってもお金の受け取りの事実が
ないので、たとえ表題が『領収書』となっていたとしても、課税文書には該当しない
こととなります。
ただし、注意点があります。
クレジットカード利用の場合であっても、その旨を『領収書』に記載しないと、
課税文書となりますので、必ず、但し書きに『クレジットご利用』とお書き
いただくことが必要です。
これを書き忘れてしまいますと、ただの『領収書』となりますので、印紙が必要と
なります。
いかがでしょう、電気屋さんでクレジットカードを使ったときの領収書には、
クレジットの利用であることがちゃんと書いてあったことを思い出しませんか?
裏話になりますが、このお客様のところでクレジットが利用されるようになったのは
今にはじまった話ではありません。
以前よりずっとクレジットを使われてきました。
それでは、何故、今回この役員さんがこのような質問を突然してきたのかというと、
そこには、社内で起こっていたある『変化』を感じたからだそうです。
その変化とは、最近、『クレジット利用のお客様に対する領収書の発行が増えた』
という事実です。
本来であれば、クレジット利用伝票(お客様控)がいっている訳ですから、一部の
お客様より領収書の発行を依頼されることはあっても、多数のお客様より一度に
依頼されることはまずありませんでした。
そこに、この役員さんは何かがおかしいと感じ取ったのです。
そして、よくよく調べて行くと、その領収書を欲しがっているのは、お客様ではなく
自社の従業員だということが分かったそうです。
実は、リフォーム工事を行う場合に、市が助成金を出していたのですが、その申請
に必要な書類の中に『領収書』があったのです。
それに対して疑問をもったその役員さんは、市の担当者に連絡したところ、
「クレジットの利用を想定していなかった。すぐに対応いたします。」との
回答をいただいたそうです。
はじめからこうすればよかった話だとは思いませんか?
私たちの会社では、部分的に見ると一見正しそうに行われていることも、全体から
みた場合にはおかしいことが行われていることが少なくありません。
ただ、その違和感を感じ取るアンテナを張って仕事に望んでいるかという姿勢の
違いです。
私は小学生のころに『なぜナゼ坊や』というあだ名を付けられたことがありました(笑)。
大人になって、一から十まで「なぜ何故?」と聞いていては仕事になりませんが、
ただ、いつも部分でおきていることの正しさに疑問を持つアンテナは忘れずに
持っていたいものです。

お粗末行政に税務署長も“ダメ!”

弊社の新潟事務所がある新潟県上越では、あまり知られていない話ですが関係者の間ではちょっとした騒動が起きています。
それは、契約錯誤による、約1億2千万円の納税問題です。
これは、平成18年の4月に、上越市が上越地域医療センター病院の運営管理を指定管理者制度に移行する際に、本来課税の対象とならない『人件費』分を課税対象となる『委託料』に含めて(契約)支払っていたため、本来、支払いを避けることができた消費税約1億2千万円相当を指定管理者に対して支払っていたという問題です。
ちょっと読んだだけでは、一般の方にはわかりにくい問題です。
誤解を恐れず言いますと、『ちょっと契約の方法を変えれば払わなくてよかった税金を、何も考えずに契約してしまったので税金が増えちゃった!』という話です。
予算削減の折、これに気付いた上越市は、平成20年10月以降、委託料から人件費相当分を切り離し、『診療交付金』として支払うことによって消費税相当を支払わないこととしました。
この報告に対し、市議会で議員の一人からの指摘によって、問題となった模様。
この問題について、議員より「過去にさかのぼって修正申告(本当は更正の請求)すべきではないか?」との指摘があり、税金を還付してもらうための請求『更正の請求』手続きをしたところ、税務署長より『NO』が突き返されたということです。
その理由は『更正すべき理由がない』というもの。
これは至極当然な回答です。
うまいこと言っておけば避けられた消費税があったことに気付いたので、それを『錯誤』がありましたと税務署長に言い訳したのです。
更正の請求ができる場合とは、『申告書の計算が法律に従っていなかったこと、または、計算に誤りがあった場合』に限られています。
しかも、申告書の提出期限から1年以内に限られます。。
(平成23年度の改正によって、5年以内になる予定。)
今回のケースでは、申告書の作成、計算には何の誤りもないことから更正の請求が認められなかったということです。
上越市との契約において、委託料を収受することには、契約時においては何らの思い違いもなかったのであって、交付金として収受することによって消費税が非課税(本当は非課税ではないが、わかりやすいので。)と計算されただけのことであって、もし、それが契約の錯誤に当るとすれば指定管理者制度自体の運用に違反があったことにほかなりません。
私が、今回の話からみなさんに学んでいただきたいことは、契約書の書き方一つで、あるいは、物の言い方一つで税金が変わるのか?ということ。
優等生の答えは『かわらない』
しかし、現実には『かわる』
だからこそ、上越市では契約を変更した、平成20年10月以降、指定管理者に対して消費税相当額を払っていないのです。
これはまさに、『事実は小説より奇なり』といったところでしょう。
さて、上越市は現在、税務署に対し異議申し立てを行っており、8月中旬までに
処分が決まる。
税務署長がこの還付請求を認めるようなことがあったら間違いなく、今後の税務訴訟のメルクマールになります。
この結果はいずれまたご報告いたします。

何で税金かかるの?

震災特例法によって、被害にあわれた方の税金の取り扱い
が国税庁より公表されました。
自動車重量税、登録免許税それから一定の場合の相続税又は贈与税が
減免される場合があります。
また、固定資産税についても、消滅した建物等については減免が
あるようです。
しかし、所得税、法人税並びに消費税等についての免除に関する
措置は出されていません。
既に確定した所得に対する税金ですので仕方がないでしょう。
これを見てもわかるとおり税金はちょっとやそっとでは
まけてもらえないものです。
以前、こんな話がありました。
ある日のこと、以前顧問をさせていただいていた会社の
社長さんから連絡が入りました。
その会社は数ヶ月前に、債務超過によって倒産し、
社長さんは県外に引っ越しておられました。


社長「笹川さん、○○です。お久しぶりです。」
笹川「ご無沙汰しておりました。○○さん、お元気そうですね。」
社長「はい、おかげさまで何とかやっていますよ!」
社長「もっと早く(会社のこと)決断しておけばよかったです・・・。」
笹川「まぁー済んだ話ですから。お元気そうで何よりです。
今日はどうかされましたか?」
社長「実は、税金のことなんですが。住民税で困っているんです。
何とかよい方法はないものでしょうか?」
笹川「といいますと?」
社長「倒産前に、役員報酬を多めに取っていたので、
そのときの住民税の通知が来ているんです。」
笹川「税金は破産でも免責されませんからね・・・」


皆さんは、『破産』についてどれだけの知識を
お持ちでしょうか?
少し前まで、多重債務による自己破産が社会問題に
なったこともありますので、名称くらいは皆さんも
聞いたことがあると思います。
しかし、実際に自己破産すると自分の身に何が
起こるのかまで知っている方は少ないと思います。
まず、これだけは覚えておいてください。
破産によっても税金は免責(免除)されません。
ただし、生活保護の適用を受けた場合については、
減免の申請をすることによって住民税の免除を受けることが
できるようになります。
それ以外の場合には、納税が免除されることはありません
ので納税しなければなりませんが、もしも納税できない場合に
は『差し押さえ』が行われます。
その場合にはどうなるのか・・・。
住民税の話は、会社経営者が破産した場合に発生する
トラブルの一部にすぎません。
経営者として、万が一、経営を続けることが困難な状況と
なっても、スタッフはもちろんのこと、ご自身の家族とその
生活を守る準備も万全にしておく必要があります。
倒産に直面した場合における経営者の対処法について、
ご興味のある方は、こちらをご参考にしてください。